異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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二章

84.彼らの目的

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「せいぜい楽しませてね!」
「!?」

 ルーシアはいきなりラムネに色白な生足で蹴りを入れる。
 ウグッとなりながらもラムネはなんとな痛みをこらえて次に来るかもしれない攻撃に備える。
 しかしルーシアは攻撃しようとしてこなかった。
 これは好機と捉えたハルトは火の弾を放とうとしたがルーシアが迫ってきてラムネと同様に蹴りを入れようとしてきた。
 その時ルーシアの着ているものが蹴りの動作で靡きパンツが見えそうになり思わずハルトは顔を赤らめたがそんな事に気を取られている場合ではない。
 ハルトは両手で蹴りをどうにか防御しそれほどのダメージを負うことなく耐え凌ぐことができた。

「ほらもっともっと!!」
「リル、気をつけろ!!!」

 次の標的がリルに移った事に気付きハルトは叫んだが間に合わずルーシアにお腹を思いっきり蹴られてしまった。
 リルは地面に四つん這いになり液体を吐き出した。
 そんなリルに追い打ちをかけるようにルーシアが背中に踵落としをしようとしていた。
 それを止めるべくハルトはルーシアに何発かの火の弾を放った。
 ルーシアは弾を避ける為にリルのもとから遠ざかった。当たることはなかったがリルから距離を取らせる事ができたので結果的には悪くないだろう。

「シノさん、あれを!!!」
「うん」

 ラムネがそう言うとシノはコートの中に手を突っ込み始めた。
 何をしているのかと思っているとコートの中からラムネの剣を取り出しそれを投げた。

「いつの間にコートの中に剣をしまってたんだ!?」
「馬車に乗ってる時にシノさんに預けてたんですよ!!」
「……だから剣を持ってなかったのか」
「ここからは私も本格参戦ですよぉ!!」
「頼むぞ」

 ハルトとシノはリルを守るために近くに向かった。
 ラムネは相変わらず剣を振り回しながらルーシアへと近づいていく。
 強く剣を握り跳躍して剣を振りかぶる。しかしルーシアは全くその場から動こうとはしなかった。
 その行動が気になっているハルトだがラムネがそんな事を考えているはずもなく見事にルーシアの手のひらで踊らされる。

「こうなったらもう私の時間の始まりだよ!!」
「!?……………」

 それまで早く移動していたラムネの動きがゆっくりになってしまった。
 そんなラムネに対してルーシアはお腹に蹴り、足に蹴り、顔に蹴りと様々なところを速く攻撃し始めた。
 ラムネを助けるために再びルーシアに対してハルトが火の弾を放つ。
 ルーシアは回避の為にラムネから少し離れるとそれまで行動が遅くなっていたラムネの速さが元に戻った。
 だがラムネは地面に倒れ込んで苦しそうにしていた。
 どうやらあの速度が遅くなっている間に喰らった攻撃が今になって全身に痛みが伝わっているようだ。

「何をしたんだ!!」

 ハルトは拳に火の魔法を使い殴る度に爆発が起こるようにした状態でルーシアへと接近していく。
 目の前まで来たところで殴りかかるが回避されてしまう。
 しかし何度も諦めずに殴りかかった。だがどの攻撃もルーシアは服の装飾をひらひらと靡かせながら華麗に回避をしていく。
 その後も何度か攻撃をしかけているとたまたま靡く装飾にハルトの拳が触れて爆発を起こす。
 だがかすったぐらいで堕とせるはずもなく煙の中からルーシアが手を左右に仰ぎながら出てきた。

「ちょっと、今のなに!? 私の見たこと無い能力スキル? 何それワクワクするんだけど!」
「楽しんでもらえたなら何よりだ」
「キャハッ、中々しぶといね。んまぁ、そういうの私は嫌いじゃないけど!」
「そうかよ。それよりちょうど間が空いてるから一応聞くけど何が目的だ?」
「それはね~、夢の核だよ! あれの制限を解いて掌握しちゃえばもう楽しいことが無限に広がるんだよ。それってワクワクしない? 生きてるって実感しない? だから私達は核を狙ってるの。あ、でも別にここの人達には何のワクワクも楽しみも感じないから安心して。でも君達はちょっとワクワクするけどね」
「ならもっと楽しませてやるよ」
「ほんと?! ならお礼に私も君達を楽しませてあげるよ!」

 するとハルト、シノ、ラムネ、リルの動きが異常なまでに遅くなってしまった。
 まずいと思い必死に体を動かそうとするが一定の速度でしか動かすことが出来ずどうすることもできなかった。
 そんな事をしている間にもルーシアはハルト達へと近づいてきている。
 
 ボゴッ!!

 ボゴッ!!

 ボゴッ!!

 ボゴッ!!

 速度が遅くなっているハルト達はそれぞれがルーシアに様々な場所を蹴られる。
 そしてルーシアがハルト達から離れた瞬間、速度が戻る。
 しかしそれと同時に体に痛みが走った。
 シノはお腹を抑えて、ハルトは口から血を吐き出し、ラムネは地面に横たわっていたが立ち上がり、リルは後ろへと飛ばされていた。
 ハルトがリルを助けに行こうとして後ろを振り向いた時、そこにはクロードが立っていた。

「僕はこういった事にはそこまで興味はないが時間がかかってしまうのは困る」

 そう言ってクロードはハルトのお腹を思いっきり殴る。
 ハルトはあまりの痛さに腹部を抑えながらふらついた。
 クロードは拳を解き手をぶらぶらとさせる。
 そのあと後ろを向きリルの方へと歩き出した。
 
「させない」
「待ちなさぁぁあああい!!!!」

 ラムネは剣を持って走り出しシノは氷の魔法を放つ。
 その二つは同時にクロードの目の前まで行ったのだがクロードが後ろを振り向かず手だけを後ろに向けると黄緑色の薄いバリアの様なものが現れそれらの攻撃を全て防いだ。
 なんとか破壊しようとラムネはより一層力を込めるが火花が散るだけでなんともならなかった。
 ひとまずラムネは体勢を立て直す為に引き下がった。

「起きた方がいいぞ」

 クロードがそう言うとリルは震えながら立ち上がる。
 そしてクロードはそんなリルにどんどんと近づき始める。
 怖くなったリルはそのままどこかへと走り出した。
 そのあとをクロードが歩いて追いかける。

「行くぞ!」

 リルを助ける為に追っているクロードをどうにかしようと考えたハルト達だったが目の前にルーシアが現れる。

「私を置いてどこに行くの? 楽しいのはここからなんだよ!」

 ハルト達はリルの無事を祈りながらそれぞれ力を込めるのだった。
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