異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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二章

88.夢はさらに現実へ

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 ハルト達は料理を食べ終えたあと各々好きなような事をする時間になったがやはりリルのこともあってなのかテンションが低く無言の時間が続いていた。
 そしてその日は特に何もすることはなく終わった。

 翌日、目を覚ましシノと一緒に一階の椅子に座っていたハルト。
 ラムネが起きてくるのをぼーっとしながら待っていると誰かが扉をドンドンと叩いてくる音が聞こえてきた。
 こんな時間に誰だ? と思いながら立ち上がり扉の方へと向かう。
 ゆっくりと扉を開けるとそこにはアインスが立っていた。

「新しい情報を手に入れた。共有をしたいから入ってもいいか?」
「……あぁ」

 ハルトは一瞬入れることを躊躇ったが結局アインスを家の中に案内した。
 ハルトはシノの隣の椅子に座りアインスは反対側に座った。
 家に入り座ってすぐ本題の入るのかと思いきやアインスはまずラムネはどこにいるのかと聞いた。 
 それに対してハルトは「まだ寝てる」と答える。
 そして次にリルはどこにいるのかと聞いてきた。
 
 なんと答えるのが正しいのか、本当の事を言うべきなのかと迷いはしたがこれももしかしたらこれからの【レアルタ】で起こる問題の解決に繋がるかもしれないと思い真実を打ち明けることにした。

「リルは……死んだ。あいつらにやられたんだ……」
「あいつらとは……まさか!?」
「あぁ、あいつらはルーシアとクロードと名乗っていた」
「そうか」
「それでアインスが新しく手に入れた情報ってのは何なんだ?」
「あいつらを目撃したということを報告しようと思っていたのだがそっちが接触までしているのなら私が情報を伝える必要はなさそうだ。それよりあいつらともしや戦ったりしたのか?」
「一応、ルーシアの方は攻撃したり近づいたりすると速度が落ちて何も出来なかった。クロードの方は結界みたいなのをいろんな使い方をしていた」
「話しを聞く限りクロードに関してはどうにかなりそうだが問題はルーシアという女の方のようだ。速度が減速する効果対象の範囲によってはもはや勝ち目はないだろう」
「何か弱点はないのか……自身を減速されない為にルーシアから離れ遠距離攻撃を行ったとしてもその攻撃は減速される……となるともう勝つ手段なんて」
「諦めるのはまだ早い。必ず弱点があるはずだ」

 ハルトは本当にルーシアをどうにかすることが出来るのかと思っていた。
 そもそもルーシアを倒す前提条件としてまずクロードを倒さなければならない。倒さないでいるとクロードの防御結界によって弱点かもしれない部分を補われてしまう。

 ハルトがそれ以降無言でいるとシノが裾を引っ張り窓を指さしていた。
 窓に視線を向けると外にはどこかへと走って行く大量の人々がいた。その誰しもの表情は夢の都で浮かべることのない恐怖の表情をしていた。
 アインスも外の異常さに気付き椅子から立ち上がって窓に近づく。
 その時大きな音と共に激しく【レアルタ】全体が揺れ始める。
 アインスはとっさに壁の突起にしがみつき耐えハルトはシノを抑えどうにか耐える。

「なんだよこれ!!」
「わからない。ただ言えるとすればあいつらが核に何かをしたのかもしれない」

 ゴゴゴォォォォォ!!!

 地が唸るような音が揺れと共にひたすら鳴り続ける。
 しばらくすると揺れはおさまり静寂が訪れるかと思いきや二階からズタズタと慌てて降りてくるラムネ。

「い、今の何なんですかぁ!!!」
「聞かれてもわからん。こっちも聞きたいくらいだ」

 ハルトがラムネの方を見てそう言った時どこかでパリンッという何かが割れたような音が聞こえてきた。
 アインスがまさかとポツリと呟きハルトはアインスのいる窓まで行き外の様子を確認する。しかし外は何ら変わりなくあるとすれば人が焦りながら走っていることくらいだろう。

「今の音は何だったんだ?」
「割れたんだ」
「割れた?」
「あぁ、核保管庫を守る結界が誰かに破壊された」
「そ、それじゃあまずくないか!」
「いや、まだ核保管庫自体にもさらに強力な防御結界が張られているらしい。それが本当だとするならまだ核は安全なはずだ」
「なら最後の砦が破壊される前に核保管庫に向かうしかない!!」

 そう言ってハルト達は急いで家を飛び出て離れた位置にある核保管庫を目指して走り出す。
 しかし前からは沢山の人が走ってきていて走るのには非常に邪魔でしかたがなかった。この人々をどうすることにも出来ないのでただひたすら前からやってくる人達はどうにか避け時間をかけてどんどん核保管庫へと近づいていく。
 どうやらこの逃げる人々は核保管庫方面から来ている者が多い。その為近づくに連れて人の量も増えてさらに進みにくくなりはじめる。

 ここでハルトは【ロイゼン王国】での事を思い出す。
 シノに全員が浮遊魔法を付与してもらえば人混みを避けてしかも歩きよりも早く移動できるため最悪の出来事が起こる前に到着することができるのではないかと考えた。
 そこでハルトはシノに全員に浮遊魔法をかけれるかと聞いてみるとシノはすぐに「うん」と答える。一人ひとりに指をさしながら付与していくと体が徐々に軽くなり始め宙に浮いた。
 走って逃げている人達は逃げながら浮遊しだしたハルト達を見てとても驚いた表情をしていた。

「これなら行けるぞ!!」
「やっぱり空中から見る【レアルタ】は絶景ですぅ!!」
「今そんなこと言ってる場合じゃない。しっかりハルトについてって」
「しかしこの空中を浮く能力スキルはすごいな」

 ハルト、シノ、ラムネはもう【ロイゼン王国】で一度浮遊魔法を使っているので感覚には慣れているのかスイスイと宙を移動していく。アインスは最初こそ驚いて慌てていたがすぐに状況を理解しものの数秒で浮遊を使いこなしていた。
 浮遊魔法を使ったことで確かに徒歩よりかは移動速度が上昇したのだがそれでも核保管庫までの距離はまだまだあった。
 さらにどうにか移動速度をあげられないかとハルトが考えている時核保管庫である大きな鉄の建物の一部が崩壊を始めた。
 ハルトはまだ最後の結界が壊されていないのになぜと思っているとアインスが何かを言い始めた。

「まさかあの時の音はあれほどの高技術で生成された二つの防御結界を同時に破壊したというのか……」
「そんなことあるのか?!」

 ハルト達は崩れ行く核保管庫を見ながらその場に滞空し始める。

「もう夢の都は終わりですよぉ……」
「いいや、まだ諦めるには早い。核が奪われない限りこの世界は消えることはない」
「なら早く行きましょう!!」
「あぁ」
「うん」

 ハルト達は最後の希望を胸に核保管庫へと進みだした。
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