イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない

藤永ゆいか

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第3章

◇遠足

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 ゴールデンウィークが明け、いよいよ学校の遠足の日がやって来た。

「1年5組の人は、集合してくださーい」

 遠足の実行委員のわたしと三原くんはクラスの点呼を取り、バスに乗り込む。

 車内では友達とお喋りしたり、お菓子の交換をしたりしながら、バスに揺られること1時間。目的地に到着した。

 今日の遠足は、登山。まず山に登って、山頂でお昼ご飯を食べる。昼食後に自由時間があって、そのあと下山してバスまで戻る……というこの日の流れを、実行委員であるわたしがクラスの皆の前で伝える。

 わたしが人前で話すのが苦手だと話したら、三原くんが『説明は僕がするよ』と言ってくれたけど。
 もう高校生だし。苦手なことから逃げてばかりいたらダメだと思ったわたしは、やらせて欲しいと三原くんに言った。

「……説明は以上です」

 ふぅ……。緊張して、少し噛んじゃったけど。なんとか最後まで言えて良かった。

「お疲れ、依茉」

 説明のあと、遠足の自分の班のところへと戻ったわたしに、近くにいた一堂くんが声をかけてくれた。

「依茉のこと、見てたよ。ちゃんと仕事こなして、えらいな。さっすが俺の彼女」
「もっ、もう! 一堂くんったら、皆の前で遠足の流れの説明を少ししたくらいで大袈裟だよ」

 照れくさくて、わたしはついそんな言い方をしてしまったけど。一堂くんに褒められるとやっぱり嬉しくて、口元が緩みそうになるのを必死に堪えた。


 それからは事前にくじ引きで決めていた班ごとに分かれて、登山がスタートする。
 わたしは、たまたま同じ班になった杏奈と真織のあとをついて歩く。

「ねぇ。高校生にもなって、遠足が登山とか微妙じゃない?」
「確かに。私、遊園地とかそういうところが良かったなぁ」

 真織と杏奈の話に、わたしはうんうんと頷く。
 先生の話によると、心身ともにキツい登山を通して、クラスの親睦を深めるというのがこの遠足の目的らしいけど。

「はぁ……ていうかここ、初心者向けの山って言ってたわりには、キツくない?」
「ほんと。やばい……」

 歩き始めた当初は、舗装された広い道が続いていたけれど。途中から道が細くなったり、険しい斜面やゴツゴツとした岩場があったりして、ただ歩くだけでやっとだ。
 わたしや杏奈だけでなく、バレー部で運動には自信があるという真織でさえ、はぁはぁ言っている。

 最初は楽しくお喋りしながら歩いていたわたしたちだったけど、だんだんと口数が減っていく。何だか、空気がどんよりとして重いな。

「ねっ、ねぇ、みんな。しんどいけど、普段こんな山登りをすることもあまりないし。せっかくだから、ここは楽しもうよ!」

 遠足の実行委員として少しでもこの場の空気を明るくしたいと思ったわたしは大きな声を出し、杏奈や真織よりも前に出て率先して歩き出す。

「ほら、二人とも見て。この辺りすごく良い景色だよ」

 空気は少しひんやりとしているけど、辺りは自然豊かで緑がいっぱい。

「空気も美味しいし……」

 友達のほうへと振り返りながら、ちゃんと前を見ずに後ろ向きで歩いていたからだろうか。
 ───ガッ。わたしは、大きめの石につまずいてしまった。

「きゃあっ」
「危ない!」

 ───ガシッ。

「大丈夫? 西森さん」

 転びそうになったわたしの腕を掴み、咄嗟に助けてくれたのは、三原くんだった。
 三原くんが瞬時に強い力で引っ張ってくれたおかげで、転倒は免れることができた。

「あっ、ありがとう……」
「西森さんが転ばなくて良かったよ。もうすぐで山頂だから、あと少しお互い頑張ろう」

 三原くんは、わたしにニコッと爽やかに微笑む。

「ごめんね、みんな。このまま山頂までいけそう? 山田さんと瀬古さんは大丈夫? 尾上は?」

 同じ班のメンバーに声をかけながら、彼は前を進んでいった。

 三原くんは班の人に一人ずつちゃんと声をかけて、同じ班じゃないわたしのことまで助けてくれて。すごいなと、少しずつ小さくなっていく三原くんの背中を見つめていると。

「依茉ちゃん!」
「大丈夫!?」

 杏奈と真織が、心配そうな顔でわたしに駆け寄ってきてくれた。

「三原くんが助けてくれたお陰で、何ともなかったよ」

 二人に返事をしながら、そういえば今何時頃だろうと思ったわたしは、体操着のズボンポケットからスマホを取り出す。
 昼食のこともあるから、12時を目安に山頂に着くようにと、先生から言われていたから。

 12時までは、あと15分。頂上まではもう少しだから、余裕だと思っていたら。
 ……あれ? わたしは、スマホにある違和感を覚える。

 ない。スマホにつけていたはずの、一堂くんとお揃いのネコのキーホルダーが、いつの間にかなくなっていた。
 正確には、スマホにはキーホルダーの紐しかついておらず、そこにあるはずの白ネコの姿だけがない。

 スマホを入れていたズボンのポケットの中に、ネコが落ちてるってこともないし。もしかして、登山の途中でどこかに落とした? バスに乗ってるときは、確かにあったから。

 わたしは、頭が真っ白になる。

 どうしよう。あれは一堂くんがわたしのために、わざわざUFOキャッチャーで取ってくれたものなのに。
 一堂くんと初めて出かけた日の、大切な思い出のものだから……探しに行かなくちゃ。

「杏奈、真織、ごめん。わたし、途中で落とし物をしたみたいだから。戻るよ」
「依茉ちゃん、落とし物って。私とまおりんも一緒に探しに行こうか?」
「ありがとう。でも、大丈夫だから。みんなは先に山頂まで行ってて!」

 わたしは杏奈たちにそれだけ言うと、来た道をひとり戻ることにした。


「ない、ない……」

 わたしはキョロキョロしながら、登ってきた道を下る。
 辺りは誰一人おらず、わたしが地面を踏む音しか聞こえないほどシンと静まり返っている。

「ああ、やっぱり見つからない」

 探せど探せど、目的のものは一向に見つからない。

「うわ。12時20分……」

 スマホで現時刻を確認すると、山頂に着いていないといけない時間をとっくに過ぎていた。

 キーホルダーのネコを見つけたい一心で、つい勢いであの場を飛び出してきちゃったけれど。
 大事なものを探しもせずに簡単に諦めるなんてことは、できなかったから。

「……でも、さすがに戻らないとまずいよね。みんなにも迷惑かけちゃう」

 下山するときに、もう一度探してみたら良いかな。
 そう思ったわたしは、下ってきた道をようやく引き返そうとしたが。

 ───ズルッ!

「きゃっ!」

 足を滑らせてしまい、わたしは地面に尻もちをついてしまった。

「痛たたた。ああ、ドロドロだ……」

 転んだせいで手が少し擦りむいて、ズボンも土で汚れるし。大事なキーホルダーはなくすし……ほんとついてない。
 少し涙目になりながら、わたしが立ち上がろうとしたとき。遠くから、誰かの足音がした気がした。

 え……?

 ザッ、ザッ。

 足音は、少しずつ大きくなってきて。

 うそ、誰かがこっちに近づいてくる……?
他の登山客? それとも……クマ!?

 こんな辺り一面、木が生い茂っている険しい山道なら、クマとかの動物がいてもおかしくないだろうし。
 わたしは最近テレビで、登山客がクマに襲われて大ケガをしたというニュースを立て続けに見たことを思い出した。

「ひぃっ」

 それを思い出した途端、サッと血の気が引いて、だんだんと怖くなってきた。

 ザッ、ザッ……。

 はっ、早く起き上がって、ここから逃げなくちゃ……!

「……依茉?」
「ぎゃあああ……っ」

 恐怖でこの場から逃げ出そうと立ち上がる際に、わたしはまたもや地面に足を滑らせてしまう。

「ちょっと、依茉! 俺だよ、俺!」
「へ?」

 こっ、この声は……。

「一堂くん……?」
「ああ、そうだよ。依茉、大丈夫か!?」

 転倒寸前のところでわたしを後ろから抱きとめてくれたのは、一堂くんだった。

「どっ、どうして一堂くんがここに?」
「東野さんと北島さんは山頂にいるのに。なぜか同じ班の依茉だけが見当たらなかったからさ。二人に聞いたら、依茉が一人で落とし物を探しに行ったって言うから。12時を過ぎても山頂まで来ないし、心配になって……」

 それで一堂くん、わたしのことをわざわざ探しに来てくれたの?

「ああ、依茉が見つかって本当に良かった」

 一堂くんが正面から、ギュッとわたしを抱きしめてくれる。
 一堂くんは温かくて。彼がいつもつけているシトラスの香水の香りも、すごく安心できて。わたしも、彼の腰へと腕をまわした。

「依茉、手ケガしてるじゃない。体操服も土で汚れてるし」
「ごっ、ごめん……!」

 一堂くんの体操服まで汚れてはいけないと思ったわたしは、彼から離れようとしたが。更に、力強く抱きしめられてしまった。

「依茉、手痛くない?」
「かすり傷程度だから、大丈夫だよ」
「ちょっと手、見せて」

 一堂くんに言われてわたしが怪我をした左手を差し出すと、一堂くんが患部に絆創膏を貼ってくれた。

「念の為に、先生から絆創膏をもらって持ってきてて良かったよ。とりあえず、簡単な処置だけ」
「一堂くん、ありがとう」
「ううん」

 一堂くんが、わたしに優しく微笑む。

「あの……ごめんね、一堂くん。この前もらったキーホルダーのネコの部分を、どこかに落としちゃって」
「もしかして、そのために怪我して危ない目に遭ったの? あんなの、またいくらでも取ってあげるのに」
「“ あんなの ” じゃないよ。あのとき初めて一堂くんが取ってくれたあの白ネコは、この世にたったひとつしかない大切なものだから」
「ありがとう。依茉がそんなふうに思ってくれてたなんて、嬉しいよ。でも、もう一人で無理だけはしないで。もし依茉に何かあったら、俺の心臓いくつあっても足りないから」

 一堂くんがおでこを、コツンとわたしのものに当ててくる。心配かけてしまったんだな。

「分かったよ。本当にごめんね」
「みんな心配してるから。そろそろ山頂まで行こうか」

 くっつけていたおでこを離すと、一堂くんがわたしに手を差し出してくる。

「一堂くん?」
「依茉がまた転んで怪我をするといけないから、手繋ご?」
「ありがとう」

 そっと彼の手を取ると、大きくて温かい感触がわたしの手をきゅうっと握り返してくる。

 一堂くんと手を繋いで、しばらく山道を登っていると。

「ねぇ、依茉。これ……」

 わたしの一歩前を歩いていた一堂くんが地面から何かを拾い、わたしに見せてくる。

「あっ!」

 それは、懸命に探していてもなかなか見つからなかったキーホルダーの白ネコだった。

「良かった、見つかった……!」

 幸いネコは土で少し汚れていただけで、ほぼ一堂くんに貰ったときのままの状態だった。

「もう落としたりしないように、今まで以上に大切にするね」
「見つかって良かったな、依茉」

 一堂くんはクスッと笑うと、自分のスマホをズボンのポケットから取り出す。
 そして、彼のキーホルダーの黒ネコを、わたしの白ネコにコツンとくっつけた。

「ネコたちの、再会のキス」
「ふふ」

 一堂くんったら、可愛いこと言うなぁ。

「なぁ、依茉。俺たちは?」

 一堂くんが、自分の唇を人差し指でさす。

「俺も、依茉とキスしたいんだけど」
「え。ちょっと一堂くん、キスって何を言ってるの? そんなのダメに決まってるでしょ」
「そうだよな……」
「当たり前だよ。だって、いくら周りに誰もいないと言っても今は学校の遠足中だよ?」
「依茉のそういうところ、ほんと真面目だよな」

 しょぼんと、肩を落とす一堂くん。
 キスがダメって言ったくらいで、そんなに落ち込むもの? 

「ああ。1回で良いから、依茉からキスして欲しかったな」

 ついダメって言ったけど。一堂くんは心配して、わたしを探しにここまで来てくれたんだよね。

「ねぇ、一堂くん。少し屈んで?」
「……ん?」

 わたしが言うと一堂くんはすぐに屈んでくれ、わたしと目線の高さが同じになる。
 一堂くん、本当にきれいな目をしているな。

「あの、一堂くん。今日は……本当にありがとうね」

 ──チュッ。

 わたしは一堂くんの頬に、そっと触れるだけのキスをした。

「え、依茉!?」

 一堂くんは目を大きく見開き、わたしがキスしたほうの頬を手でおさえている。

「えっと。これはお礼のキスというか、何というか……。きょっ、今日だけの特別だから」

『お礼のキス』って。なに一堂くんみたいなことを言ってるの? って感じだけど。

「ちょっと、依茉。こんな不意打ちって……やばいんだけど! ねぇ、おかわりは?」
「そんなものは、ありません」

 頬がかあっと熱くなるのを感じたわたしは、早足で山登りを再開する。

 頬だけど。まさか、自分から一堂くんにキスをする日が来るなんて……。つい、衝動的になってしまった。ああ、自分で自分がちょっと怖い。

「ちょっと、依茉。早足で歩くと危ないよ。もっとゆっくり……!」

 一堂くんの声は全く耳に入らず、しばらくわたしの頬の熱が冷めることはなかった。

 そのあとは一堂くんとふたりで無事に山頂に到着して、班のみんなとも合流して。
 当然わたしは、先生に注意されてしまったけど。高校最初の遠足は、色々な意味で忘れられないものとなった。
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