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第4章
◆パーティーのあとで〜慧side〜
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実家でのホームパーティーが終わり、寺内が運転するリムジンで依茉を家まで送ったあと、俺は再び実家へと戻ってきた。
『パーティーのあとで話がある』と、親に言われたからだ。まあ、何の話かなんてだいたい見当はついているけれど。
俺は、実家のリビングのふかふかのソファに腰をおろす。
それにしても依茉、俺の両親と話してから明らかに元気がなくなってた。
そりゃあ、そうだよな。親は依茉にキツく当たり、家のことや勉強がどうとかそういうことだけ聞かれて……良い気はしない。ご飯もほとんど食べていなかったし、依茉のことが心配だな。
「慧さん、お待たせ」
俺が薄暗くなった窓の外を見つめていると、リビングへとやって来た母が、俺の向かいのソファに座った。
「……父さんは?」
「仕事があるからって、会社に戻ったわ」
日曜日の日暮れ時だというのに、社長ってのも大変なんだな。
「それで? 母さん、話というのは?」
「ああ、そうね。単刀直入に言うけど……慧さん、さっきの依茉さんっていう彼女とは別れなさい」
やっぱり、そういうことか。依茉と会っても会わなくても、結局は俺たちの交際を反対するんじゃないか。
「どうしてだよ」
「どうしてって、慧さんも分かってるでしょう? 依茉さんが、あなたにふさわしくないからよ」
ふさわしくないって、またそんな理由で……。
「慧さん。あなたは、一堂グループの跡取りなのよ。一堂家に見合う家柄の人とお付き合いをして、結婚して。将来もっと会社を大きくしてもらわないと」
何だよ、それ……。
「依茉さんの家は、一般の母子家庭でしょう? 地位も財力もないし、彼女自身が優秀ってわけでもないのに。そんな人と一緒にいたって、我が家の何のメリットにもならないじゃないの」
会社のため、家のためって……母さんの頭にはそれしかないのかよ。母子家庭とか一般庶民とか、そんなのは関係ないだろ。
俺はふつふつと、怒りが込み上げてくる。
「あのさ。俺の好きな人のことを、『そんな人』とか言わないでくれよ」
「慧さん?」
「依茉のこと何も知らないくせに……っ! 俺は依茉が好きで、一緒にいるんだよ。依茉が隣にいてくれるだけで、どんなことも頑張ろうって気持ちになれるんだよ」
俺はつい感情任せに、テーブルを両手で思いきり叩いてしまった。
依茉の存在は、俺にとってはメリットでしかないんだよ……!
「何なのよ、その態度は。ねぇ、慧さん。曾お祖父さまから受け継いで、代々懸命に守ってきたこの会社を、まさか……あなたの代で潰す気?」
「そんなつもりはないけど……」
小さな頃からずっと、一堂の家と会社を継ぐように言われてきたから。
将来的にはもちろんそのつもりでいるし、俺なりに頑張って今よりもグループを大きくしたいとも思っている。
「あのね、恋愛と結婚は違うの。だから、彼女から離れられなくなる前に、さっさと別れなさい」
「……嫌です」
「慧さん、またそんなことを言って。もう子どもじゃないんだから。母さんを困らせないで」
俺は、ソファから立ち上がる。
「とにかく。俺は、絶対に依茉とは別れないから」
「ちょっと、慧さん!」
母の呼びかけも無視し、俺はリビングのドアを勢いよく開けると、早足でそのまま玄関を出て行った。
俺は星ひとつ見えない夜空の下を、黙々と歩く。
交際を反対されてカッとなってしまう俺は、まだまだ子どもなのかもしれない。
だけど、依茉のことを悪く言われて。別れろと言われて、腹を立てずにはいられなかった。
俺は、何があっても彼女を手放したりはしたくない。
怜央にも、せっかく依茉とのことを許してもらって、応援までしてもらえたんだ。
俺は道端で立ち止まり、怜央とグータッチした拳をじっと見つめる。
これからは、何があっても絶対に頑張るって、怜央に宣言したあの日決めたから。
親がなんて言おうと、俺はこれからも依茉と一緒にいる。
やっと依茉と付き合えたんだ。だから、彼女と離れたりなんか絶対にしない──。
『パーティーのあとで話がある』と、親に言われたからだ。まあ、何の話かなんてだいたい見当はついているけれど。
俺は、実家のリビングのふかふかのソファに腰をおろす。
それにしても依茉、俺の両親と話してから明らかに元気がなくなってた。
そりゃあ、そうだよな。親は依茉にキツく当たり、家のことや勉強がどうとかそういうことだけ聞かれて……良い気はしない。ご飯もほとんど食べていなかったし、依茉のことが心配だな。
「慧さん、お待たせ」
俺が薄暗くなった窓の外を見つめていると、リビングへとやって来た母が、俺の向かいのソファに座った。
「……父さんは?」
「仕事があるからって、会社に戻ったわ」
日曜日の日暮れ時だというのに、社長ってのも大変なんだな。
「それで? 母さん、話というのは?」
「ああ、そうね。単刀直入に言うけど……慧さん、さっきの依茉さんっていう彼女とは別れなさい」
やっぱり、そういうことか。依茉と会っても会わなくても、結局は俺たちの交際を反対するんじゃないか。
「どうしてだよ」
「どうしてって、慧さんも分かってるでしょう? 依茉さんが、あなたにふさわしくないからよ」
ふさわしくないって、またそんな理由で……。
「慧さん。あなたは、一堂グループの跡取りなのよ。一堂家に見合う家柄の人とお付き合いをして、結婚して。将来もっと会社を大きくしてもらわないと」
何だよ、それ……。
「依茉さんの家は、一般の母子家庭でしょう? 地位も財力もないし、彼女自身が優秀ってわけでもないのに。そんな人と一緒にいたって、我が家の何のメリットにもならないじゃないの」
会社のため、家のためって……母さんの頭にはそれしかないのかよ。母子家庭とか一般庶民とか、そんなのは関係ないだろ。
俺はふつふつと、怒りが込み上げてくる。
「あのさ。俺の好きな人のことを、『そんな人』とか言わないでくれよ」
「慧さん?」
「依茉のこと何も知らないくせに……っ! 俺は依茉が好きで、一緒にいるんだよ。依茉が隣にいてくれるだけで、どんなことも頑張ろうって気持ちになれるんだよ」
俺はつい感情任せに、テーブルを両手で思いきり叩いてしまった。
依茉の存在は、俺にとってはメリットでしかないんだよ……!
「何なのよ、その態度は。ねぇ、慧さん。曾お祖父さまから受け継いで、代々懸命に守ってきたこの会社を、まさか……あなたの代で潰す気?」
「そんなつもりはないけど……」
小さな頃からずっと、一堂の家と会社を継ぐように言われてきたから。
将来的にはもちろんそのつもりでいるし、俺なりに頑張って今よりもグループを大きくしたいとも思っている。
「あのね、恋愛と結婚は違うの。だから、彼女から離れられなくなる前に、さっさと別れなさい」
「……嫌です」
「慧さん、またそんなことを言って。もう子どもじゃないんだから。母さんを困らせないで」
俺は、ソファから立ち上がる。
「とにかく。俺は、絶対に依茉とは別れないから」
「ちょっと、慧さん!」
母の呼びかけも無視し、俺はリビングのドアを勢いよく開けると、早足でそのまま玄関を出て行った。
俺は星ひとつ見えない夜空の下を、黙々と歩く。
交際を反対されてカッとなってしまう俺は、まだまだ子どもなのかもしれない。
だけど、依茉のことを悪く言われて。別れろと言われて、腹を立てずにはいられなかった。
俺は、何があっても彼女を手放したりはしたくない。
怜央にも、せっかく依茉とのことを許してもらって、応援までしてもらえたんだ。
俺は道端で立ち止まり、怜央とグータッチした拳をじっと見つめる。
これからは、何があっても絶対に頑張るって、怜央に宣言したあの日決めたから。
親がなんて言おうと、俺はこれからも依茉と一緒にいる。
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