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第5章
◇慧くんと保健室①
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一堂家のパーティーから数日後の昼休み。
6月になって梅雨入りしてからというもの、雨でぐずついたお天気が続いている。
そのため、わたしと慧くんは中庭ではなく空き教室で昼食を食べるようになった。
机を挟んで、向かい合って座るわたしたち。
「つーか、中庭よりもここのほうが誰にも邪魔されずに、依茉を独り占めできるからいいかもな」
先に昼食を食べ終えた慧くんが、真正面からじっとわたしの食べる姿を見てくる。
「もう! そんなにまじまじと顔を見られたら、恥ずかしくてご飯食べれないよ」
わたしは俯きがちに、お弁当のご飯を口へと運ぶ。
「可愛い依茉のこと、片時も目を離したくないんだよ」
慧くんに、ほっぺをつんっとつつかれる。
「ここなら、人目も気にせずにこんなこともできるし」
すると慧くんの顔が近づき、わたしの唇の端をペロッと舐める。
「ひゃ……なっ、なに!?」
「依茉の口に、ご飯粒がついてたから」
ご、ご飯粒。はっ、恥ずかしい……!
彼の言葉に、赤面するわたし。
「ははっ。すぐ顔が赤くなっちゃって。依茉ってば、ほんとに可愛いよなぁ」
互いの鼻先が触れそうなくらい、慧くんの整った顔が間近にある。
「もう。慧くん、近すぎる。少し離れて」
「えー? やーだ」
そう言うと慧くんの唇がわたしの唇にチュッと触れ、啄むようなキスをされる。
「依茉、足りない。もっと……」
慧くんと繰り返し唇が合わさり、キスは次第に深くなっていく。
ちょっと照れくさいときもあるけれど。慧くんとのこの時間は、何だかんだいってすごく幸せで。ずっと続いて欲しいって思う。
「そういえば、慧くん。担任の先生に呼ばれてなかった?」
「やべっ。そうだ。俺、昼飯食ったら職員室に来いって担任に言われてたの忘れてたわ」
お弁当を食べ終えたわたしが慧くんに尋ねると、彼は慌てたように席から立ち上がる。
「これからは、学校のこともちゃんとしようと思ってたところなのに。こんなんじゃダメだな、俺」
慧くんが、自分の頭を手でコツンと軽く叩く。
「ごめん、依茉。俺、職員室行くから教室戻ってて」
「うん。分かった」
「またあとでな」
慧くんがわたしに軽くハグすると、彼は早足に教室から出て行く。
わたしも教室に戻ろうかな。お弁当箱を片づけると、わたしは空き教室を出た。
自分の教室へと向かって、わたしが一人で人気のない廊下を歩いていると。
「……ねぇ。あなたが、西森さんだよね?」
廊下の角から出てきた派手な見た目の女子が、突然わたしの目の前に立ちはだかった。
目の前の女子は、制服を派手に着崩していて。緑色のリボンをつけてるから……2年生の先輩だ。
「なっ、何ですか?」
突然知らない先輩に話しかけられたわたしは、訝しげな目で彼女を見てしまう。
あれ? でも、この人前にどこかで見たことがある気がする……そうだ、思い出した。先月わたしが、慧くんと両想いになったあの日。
昼休みに中庭で、慧くんに告白して彼女が振られているところを、偶然わたしが見てしまった……。
確か、ファッション雑誌のモデルをやっているとかいう、あのときの先輩だ。
「ちょっとあなたに話があるんだけど。一緒に来てくれる?」
「話……ですか?」
何となく嫌な予感がして、わたしは後ずさる。
「話といっても、すぐに終わるから。そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」
ニコリと、わたしに微笑みかける先輩。だけど、先輩の目はちっとも笑っていない。
それが怖くて。とても断れそうにない雰囲気に、わたしはおとなしく彼女についていくしかなかった。
6月になって梅雨入りしてからというもの、雨でぐずついたお天気が続いている。
そのため、わたしと慧くんは中庭ではなく空き教室で昼食を食べるようになった。
机を挟んで、向かい合って座るわたしたち。
「つーか、中庭よりもここのほうが誰にも邪魔されずに、依茉を独り占めできるからいいかもな」
先に昼食を食べ終えた慧くんが、真正面からじっとわたしの食べる姿を見てくる。
「もう! そんなにまじまじと顔を見られたら、恥ずかしくてご飯食べれないよ」
わたしは俯きがちに、お弁当のご飯を口へと運ぶ。
「可愛い依茉のこと、片時も目を離したくないんだよ」
慧くんに、ほっぺをつんっとつつかれる。
「ここなら、人目も気にせずにこんなこともできるし」
すると慧くんの顔が近づき、わたしの唇の端をペロッと舐める。
「ひゃ……なっ、なに!?」
「依茉の口に、ご飯粒がついてたから」
ご、ご飯粒。はっ、恥ずかしい……!
彼の言葉に、赤面するわたし。
「ははっ。すぐ顔が赤くなっちゃって。依茉ってば、ほんとに可愛いよなぁ」
互いの鼻先が触れそうなくらい、慧くんの整った顔が間近にある。
「もう。慧くん、近すぎる。少し離れて」
「えー? やーだ」
そう言うと慧くんの唇がわたしの唇にチュッと触れ、啄むようなキスをされる。
「依茉、足りない。もっと……」
慧くんと繰り返し唇が合わさり、キスは次第に深くなっていく。
ちょっと照れくさいときもあるけれど。慧くんとのこの時間は、何だかんだいってすごく幸せで。ずっと続いて欲しいって思う。
「そういえば、慧くん。担任の先生に呼ばれてなかった?」
「やべっ。そうだ。俺、昼飯食ったら職員室に来いって担任に言われてたの忘れてたわ」
お弁当を食べ終えたわたしが慧くんに尋ねると、彼は慌てたように席から立ち上がる。
「これからは、学校のこともちゃんとしようと思ってたところなのに。こんなんじゃダメだな、俺」
慧くんが、自分の頭を手でコツンと軽く叩く。
「ごめん、依茉。俺、職員室行くから教室戻ってて」
「うん。分かった」
「またあとでな」
慧くんがわたしに軽くハグすると、彼は早足に教室から出て行く。
わたしも教室に戻ろうかな。お弁当箱を片づけると、わたしは空き教室を出た。
自分の教室へと向かって、わたしが一人で人気のない廊下を歩いていると。
「……ねぇ。あなたが、西森さんだよね?」
廊下の角から出てきた派手な見た目の女子が、突然わたしの目の前に立ちはだかった。
目の前の女子は、制服を派手に着崩していて。緑色のリボンをつけてるから……2年生の先輩だ。
「なっ、何ですか?」
突然知らない先輩に話しかけられたわたしは、訝しげな目で彼女を見てしまう。
あれ? でも、この人前にどこかで見たことがある気がする……そうだ、思い出した。先月わたしが、慧くんと両想いになったあの日。
昼休みに中庭で、慧くんに告白して彼女が振られているところを、偶然わたしが見てしまった……。
確か、ファッション雑誌のモデルをやっているとかいう、あのときの先輩だ。
「ちょっとあなたに話があるんだけど。一緒に来てくれる?」
「話……ですか?」
何となく嫌な予感がして、わたしは後ずさる。
「話といっても、すぐに終わるから。そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」
ニコリと、わたしに微笑みかける先輩。だけど、先輩の目はちっとも笑っていない。
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