クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか

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第2章

ドキドキの球技大会①

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陽向との初めての週末の同居から、数日後。

「わぁ。澄野さんすごい!」

球技大会を翌日に控えた体育の時間。
バスケットボールをゴールに向かって投げたらシュートが決まって、同じチームの女の子たちにびっくりされた。

「へへ。ちょっと練習したんだ。みんなに迷惑かけたくないから」

この2週間の陽向との練習が、こうしてちゃんと実を結んで嬉しいな。

「お~、星奈ちゃんナイッシュー! いぇーい」

近くで見ていたのか、水上くんが笑顔で私のもとに走ってきて、パチンと手にタッチしてくれる。

「これならオレたちのクラス、球技大会で優勝出来るんじゃね?」
「ええ、優勝!?」

水上くんの言葉に、私はびっくりする。

「それだけ星奈ちゃんが、見違えるほど上手くなったってことだよ」

バスケ部のエースである水上くんに、そんなふうに言ってもらえるなんて。これも、陽向が練習に付き合ってくれたおかげだよ。

ちらっと男子がバスケを練習しているほうを見ると、陽向と目が合い頷いてくれた。

あ……。

それはまるで『良かったな』と言ってくれているようで、嬉しくなる。

教えてくれた陽向のためにも、明日の球技大会……頑張りたいな。


翌日。ついに球技大会の日がやって来た。
この日の天気は、快晴。
私は少しだけ早起きして、いつもはおろしたままの肩下までのストレートヘアをポニーテールにして登校した。

「おはよう、星奈ちゃん」

昇降口のところで上履きに履き替えていると、水上くんとバッタリ会い声をかけられた。

「おはよう」
「あれ? 星奈ちゃん、今日は髪の毛ひとつに結んでるんだ?」
「うん。そうなの」

水上くん、気づいてくれたんだ。

「へぇー。可愛いね」
「あっ、ありがとう」

可愛いって言ってもらえるのは嬉しいけど、直球だとなんか照れるな。

「ねぇ、星奈ちゃん。オレ、今日の球技大会頑張るからさ」
「うん?」
「オレのこと、星奈ちゃんにちゃんと見てて欲しいな」
「えっ?」
「それじゃあ!」

私が返事するよりも早く、水上くんは走って行ってしまった。

私に見てて欲しいって水上くん……それってどういうこと?


朝礼のあと体操服に着替えて、天音ちゃんと体育館に向かう。全校生徒が集まる体育館は、ガヤガヤとして賑やかだ。

「ねえ、星奈。あそこの掲示板に、対戦表が貼られてるよ」

開会式のあと、天音ちゃんに言われて私は体育館の後ろの掲示板を見に行く。

花城学園中等部の球技大会は、学年関係なくクラスごとに戦う「1度負けたら終わり」のトーナメント戦。
ランダムで選ばれる対戦相手は球技大会の当日に発表されるため、掲示板の前はたくさんの人で溢れ返っていた。

「うわ。あたしたち、初戦は3年生とだよ」

私と出場種目が同じバスケで、掲示板を見た天音ちゃんが肩を落とす。

「ほんとだ。いきなり3年生とだなんて」

どうしよう。もし試合でミスして、私のせいでチームが負けちゃったりしたら……。今日の球技大会は、頑張りたいって思ってるのに。
対戦相手が上級生だと知った途端に緊張して、胃がキリキリと痛くなってくる。

「……どうした?」

うつむき、私が痛む胃にそっと手を当てていると、突然誰かに声をかけられた。顔を上げると、いつの間にか私の目の前に陽向が立っていた。

「星奈、なんか顔色が悪いぞ?」
「あっ……えっと、ちょっと緊張しちゃって」
「そっか。緊張するよな。俺もバスケの試合のときはそうだから、分かるわ」
「え?」

まさか、緊張とは無縁そうな陽向が緊張するなんて。陽向の意外な言葉に、私は目を丸くする。

「でも、ここにいる大抵の人は星奈と同じようにみんな緊張してると思うから。そんな身構えずに、楽しんだら良い」

陽向が、私の肩にポンと手を置く。

「それに、あれだけ毎日練習頑張ったんだから。星奈なら、絶対に大丈夫だ」
「陽向……」

陽向に大丈夫って言われたら、不思議と大丈夫な気がしてきた。

「ありがとう。やる前から、つい弱気になっちゃってた。私、頑張るよ」

私は、陽向に向かって微笑む。

「やっと笑ったな。やっぱり星奈は、笑った顔が一番だ」

ふっと笑うと、陽向の大きな手がぽんと私の頭にのせられる。

「今日は、お互い頑張ろうな」

そう言って陽向は、水上くんたちの元へと走って行った。
私はそんな彼の背中を、しばらくじっと見つめる。

「ふふ。試合の直前だっていうのに。わざわざ、星奈のところまで走ってきてくれたなんて。優しいね~、星奈の幼なじみクンは」

耳元で話しかけられハッとすると、私の隣にはニヤニヤ顔の天音ちゃんが立っていた。

「え、試合の直前!?」
「うん。ウチのクラスのバスケの男子チームは、もう初戦が始まるみたい」
「そうなの!?」

──ピッ!

するとホイッスルが鳴り、陽向や水上くんたちがコートに整列するのが見えた。
まさか、そんなときにわざわざこっちに来てくれたなんて。

「ねぇ。あたしたちは、試合開始までもう少し時間があるけど……どうする? 一之瀬くんたちの試合見る?」

それは、もちろん……。

「見たい……です」
「よし。そうと決まれば行くよ」

天音ちゃんに手を引かれ、陽向たちのいるコートの近くまで移動する。

──ピッ!

そして、ホイッスルの音を合図に試合が始まった。

「一之瀬くーん」
「こうちゃん、頑張ってー!」

陽向と水上くん、私たちの学年のモテ男子二人組が揃っているからか、コート付近にはギャラリーができていて。キャーキャーと、女子たちの声援がすごい。

私と天音ちゃんは人垣をかき分けて前までいき、ようやく陽向の姿を捉えた。

「ヒナくんっ!」

陽向は同じチームの水上くんからパスを受け、相手チームのディフェンスをかわしながらドリブルでゴールへと向かって駆けていく。

──シュッ。

陽向が放ったボールは、きれいな弧を描いてゴールに吸い込まれていった。

「きゃあああ」

体育館は、女子の大歓声に包まれる。
すごいよ、陽向!

「ヒナくん、ナイッシュー!」

水上くんとハイタッチする陽向の顔は、キラキラと輝いている。そんな陽向の顔に思わず見入っていると、偶然彼がこちらを向いた。

ここは学校だし、いつかのカフェのときみたいに、また陽向に顔をそらされちゃうのかな?と思っていたら。
陽向は、私に向かって拳を突き出して微笑んだ。

陽向の嬉しそうな顔を見たら、私まで嬉しくなっちゃうよ。

私も陽向に応えるように、拳を前に突き出す。
ふふ。陽向と、エアグータッチだ。


そのあとも陽向と水上くんを中心に、シュートを続々と決めて。対戦相手は上級生のチームだったにも関わらず、陽向と水上くんの活躍でうちのクラスの圧勝だった。

今朝、水上くんに『オレのこと、星奈ちゃんにちゃんと見てて欲しい』って言われたけど。この試合中、私は陽向のことばかり目で追ってしまっていた。
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