クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか

文字の大きさ
10 / 30
第2章

陽向とひとつ屋根の下②

しおりを挟む
それから1時間半後。

「よし、できた」

私はキッチンのテーブルに炊きたてのご飯と味噌汁、それから今夜のメインであるハンバーグとポテトサラダがのったお皿を並べる。

「あっ、陽向!」

キッチンの開いた扉のそばを、陽向がちょうど横切るのが見えた。

「夕飯できたよ」
「夕飯……えっ、もしかして星奈が作ったのか?」

食卓を見て、目を丸くする陽向。

「陽向、小さい頃からハンバーグ好きでしょ?」
「べっ、別に好きじゃねえよ」

私から、顔をふいっとそらす陽向。

あれ、違ったっけ? 朝陽おじさんの好物がハンバーグで、昔はよく陽向ママの作るハンバーグを、親子で競うように食べているのを何回か見たんだけど。

「ったく。俺は、夕飯は作らなくて良いって言ったのに」
「ごっ、ごめんね。人の家のキッチンを勝手に……」
「それは良いよ。ただ、よその家での料理って大変だろ? だから俺は、初日の今日くらい作らなくて良いって言ったんだ」

えっ。それじゃあ陽向は、私のためを思って言ってくれてたの?

「でも、星奈がせっかく作ってくれたのなら、食う」

そう言うと、陽向は食卓につく。

「陽向、食べてくれるの?」
「食べないと、もったいないし……いただきます」

胸の前で手を合わせると、陽向は箸でハンバーグを切り分ける。

真っ先にハンバーグを食べようとするなんて。やっぱり陽向、ハンバーグ好きなんじゃない。

私はハンバーグを口に運ぶ陽向を、ドキドキしながら見つめる。

ハンバーグ、陽向の口に合うかな? 美味しいって、言ってくれるかな?

「……あのさ。そんなにじっと見られると、食べにくいんだけど」
「ご、ごめん」

私は慌ててエプロンを外して陽向の向かいの席に着くと、自分のご飯を食べ始める。

「……美味い」
「え?」
「星奈が作ってくれたハンバーグ、美味いよ」
「ほんと!? 良かったあ」

にこやかな陽向を見て安堵した私は、ようやく箸が進む。

「つーか、星奈」
「ん?」

それからしばらく黙ってご飯を食べていた私たちだけど。なぜか、陽向がじっとこちらを見てくる。

「ちょっとそのまま、じっとしてろよ」
「え……」

すると陽向の手が私の顔に伸びてきて、ドキリとする。
な、なに!?

脈は速まり、動けないでいると。

「……っ」

口の端に、陽向の指がそっと触れた。

「ご飯粒、ついてたぞ」
「え!」

ご飯粒って! はっ、恥ずかしすぎる……!

そして陽向は今とったご飯粒を、なんでもないようにパクッと食べた。

「ひ、陽向……」

彼のまさかの行動に、私はびっくり仰天。

「なんかこういうの、許嫁っぽくね?」
「っ……けほっけほっ」

陽向の爆弾発言に驚いて、私は思いきりむせてしまう。

「い、許嫁っぽいって……」

まさか、陽向がそんなことを言うなんて。

「べつに、本当のことだろ? 許嫁って、将来結婚して夫婦になるんだから。恋人以上ってことだぞ?」
「……っ」

そ、それはそうだけど。
陽向の言葉に、私は頬がかっと熱くなるのを感じた。


それから再び黙々と、ご飯を食べる陽向。

でも、陽向がそんなふうに言ったってことは……陽向は私と許嫁だってことを、嫌だとは思っていないってことなのかな?


夕食後。私は今、キッチンで洗い物をしている。

あのあと陽向は、ご飯をおかわりしてくれて。夕飯は、残さずきれいに食べてくれた。
自分が頑張って作ったご飯を、好きな人に完食してもらえるのって、こんなにも嬉しいものなんだな。

陽向がハンバーグを『美味しい』って言ってくれたときのことを思い出し、ひとりにやけていると。
バタバタバタ……と、窓の外で音がしてくる。

なに? 気になって、そっとカーテンを開けて見ると。

「えっ、雨?」

いつの間にか空からは、滝のように雨が降り注いでいた。

そして遠くの空にはピカッと稲妻が走るのが見え、私は慌ててカーテンを閉めた。

ゴロゴロゴロッ!

「きゃっ!」

大きな音をたてて鳴り響く雷に、私は肩がビクッと跳ねる。

やだやだ。雷、怖いよ……。
私は小さい頃から雷が大の苦手で、思わず涙目になる。

苦手な雷に不安でいっぱいで、つい陽向のところへ行きたくなるけれど。陽向は今、入浴中だから無理だ。

ゴロゴロゴロッ!!

「きゃあっ」

私はその場にしゃがみこみ、両耳を手で塞ぐ。
ほんと嫌だ。雷、早くおさまって……。

ゴロゴロゴロゴロ、ズドーーンッ!!

だけど、私の気持ちとは裏腹に雷の音はどんどん大きくなるばかり。

「うう……」

声が無意識に口から漏れ、身体がカタカタと震える。
怖い、怖いよ……。更に、窓の外がピカッと光ったと思ったら。

──バリバリバリッ!!

より一層大きな雷が鳴り響き、同時に部屋の電気が消えてしまった。

「えっ、うそ。停電!?」

家中が真っ暗で、何も見えない。

ヤダヤダ、どうしよう──!

停電なんて初めてで。こんなとき、どうしたら良いのか分からない。しかもここは、我が家ではなく陽向の家。

ドーーン!!

「ううっ……」

雷も一向に鳴り止まず、真っ暗な部屋にひとりで、ますます不安になったそのとき──。

「星奈っ!!」

スマホのライトで辺りを照らしながら、陽向が慌ててキッチンに入ってきた。

「星奈、さっき悲鳴が聞こえたけど大丈夫か!?」
「陽向……っ!」

不安のあまり、こちらにやって来た陽向に伸ばしかけた手を私は引っ込める。
いくら雷が怖かったからって、陽向に迷惑をかけちゃダメだ。

「だっ、大丈夫だよ……」
「大丈夫ってお前、子どもの頃から雷苦手だっただろ!? こんなに震えて、全然大丈夫じゃないだろ」

そう言うと陽向は私を優しく引き寄せ、ギュッと力強く抱きしめてきた。
陽向のぬくもりを感じてドキドキするのと同時に、ものすごくホッとする。

「陽向……私、本当はさっきからずっと怖かったの」

私はようやく陽向に本音を言い、彼の背中にそっと手をまわす。

「そうか。俺がいるから、大丈夫だ」
「うん……っ」

そして陽向は安心させるように、私の背中をトントンと優しく何度も叩いてくれる。
そばに陽向がいてくれると思うと、心強くて。不安な気持ちが、少しずつ薄れていく。

もし今頃我が家にひとりだったら、停電と雷の鳴るなかでもっと心細かったに違いない。そう思うと、陽向がいてくれて本当に良かった。

それから私と陽向は、電気がつくまでお互い抱きしめ合っていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

不幸でしあわせな子どもたち 「しあわせのふうせん」

山口かずなり
絵本
小説 不幸でしあわせな子どもたち スピンオフ作品 ・ ウルが友だちのメロウからもらったのは、 緑色のふうせん だけどウルにとっては、いらないもの いらないものは、誰かにとっては、 ほしいもの。 だけど、気づいて ふうせんの正体に‥。

【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】

猫都299
児童書・童話
沼田海里(17)は幼馴染でクラスメイトの一井柚佳に恋心を抱いていた。しかしある時、彼女は同じクラスの桜場篤の事が好きなのだと知る。桜場篤は学年一モテる文武両道で性格もいいイケメンだ。告白する予定だと言う柚佳に焦り、失言を重ねる海里。納得できないながらも彼女を応援しようと決めた。しかし自信のなさそうな柚佳に色々と間違ったアドバイスをしてしまう。己の経験のなさも棚に上げて。 「キス、練習すりゃいいだろ? 篤をイチコロにするやつ」 秘密や嘘で隠されたそれぞれの思惑。ずっと好きだった幼馴染に翻弄されながらも、その本心に近付いていく。 ※現在完結しています。ほかの小説が落ち着いた時等に何か書き足す事もあるかもしれません。(2024.12.2追記) ※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。(2024.12.2追記) ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+、Nolaノベル、ツギクルに投稿しています。 ※【応募版】を2025年11月4日からNolaノベルに投稿しています。現在修正中です。元の小説は各話の文字数がバラバラだったので、【応募版】は各話3500~4500文字程になるよう調節しました。67話(番外編を含む)→23話(番外編を含まない)になりました。

処理中です...