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第3章
ブラックコーヒー①
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水上くんの予期せぬ告白から、数日後。
「おはよー、星奈ちゃん」
「あっ。水上くん、おはよう」
「今日もお互い頑張ろうね!」
水上くんは学校で会うと、今まで通り変わらず笑顔で私に声をかけてくれる。
朝一番に水上くんの無邪気な笑顔を見ると、いつも元気をもらえるから不思議だな。
* * *
「ねえ、せーちゃん。明後日の日曜日って空いてる?」
学校の休み時間。私が自分の席で読書をしていると、そーちゃんがやって来た。
「えっと、日曜日は何も予定がなかったと思う」
「だったら、日曜日は部活が休みだから。急で悪いんだけど、僕と付き合ってくれない?」
「え?」
『付き合って』と言われて、ドキリと心臓が跳ねる。
「親戚の女の子に誕生日プレゼントを渡したいんだけど。何が良いのか分からないから、せーちゃんに一緒に買い物に付き合って欲しくて」
あっ、なんだ。付き合ってって、そういうことかあ。
「分かった。私で良ければ、付き合うよ」
私は、迷わず即答する。
「ありがとう! それじゃあ詳しいことは、またメッセージするね」
「はーい」
離れていくそーちゃんに、私が手をひらひらと振っていると。
「ちょっと、ちょっと。星奈~!」
そーちゃんと入れ替わるようにして、天音ちゃんが私の元に駆け寄って来た。
「今の想良くんとの話、聞こえちゃったんだけど……」
「あっ、ごめんね。天音ちゃん、そーちゃんのことが好きなのに」
「あたしの好きは、恋愛のほうの好きじゃないから良いの。それより、今のは絶対にデートのお誘いだよ!」
「へ!?」
デッ、デート!?
「いや~、想良くんもやるねぇ。ほんと、積極的でいいわ」
なぜだか天音ちゃんは、そーちゃんのことを褒めているけれど。そもそもデートは、お互い好きな人同士がするものじゃないのかな?
私はただ、そーちゃんのプレゼント選びに付き合うだけだから。きっとこれは、デートじゃないと思うのだけど。
翌日。土曜日の夕方。
「それじゃあ、星奈。陽向くんによろしくね」
「うん。行ってらっしゃい」
私は自宅前で夜勤に行くお母さんと別れると、近所の陽向の家へと向かう。
土曜日限定の陽向の家でのふたり暮らしも、早いものでそろそろ2ヶ月になる。
──ピンポーン。
最初の頃は、陽向の家のインターフォンをただ押すだけでもやけに緊張したけど。さすがに今はもう慣れた。
──ガチャッ。
家のドアが開き、陽向が顔を出す。
「……うっす」
「こんにちは」
私が挨拶すると、陽向が私の前までツカツカとやって来る。
「……」
ん? どうしたんだろう?
「星奈……おでこ」
すると、陽向が私の前髪を手でかきあげる。
「良かった。もうすっかり治ったみたいだな」
私のおでこを見た陽向が、微笑む。
「もし怪我の痕が残ったりしたら、どうしようかと思った」
……あ。
陽向は、この前私がおでこにバレーボールが直撃したときのことを、まだ気にしてくれてたんだ。
あれは、陽向がぶつけた訳じゃないのに。
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
おでこを親指で優しく撫でてくれる陽向に、私も微笑んだ。
* * *
「んーっ」
夕食後。リビングのテーブルに陽向と向かい合って座る私は、顔をしかめる。
私が作った夕飯を食べたあと、陽向と一緒に学校の宿題をするのが、ここ最近の流れになりつつある。
私は今、数学の宿題のプリントに取り組んでいるんだけど。分からない問題に直面してしまって、そこから一向に進まないんだよね。
私が、しばらく頭を悩ませていると。
「よし。できた」
「えっ、もう!?」
思わず声を出してしまったけど、目の前の陽向のプリントは、答えが全て埋まっている。
私はまだ、半分ほどしかできていないのに。
一緒に宿題をやり始めて、わずか15分ほどで終わっちゃうなんて。さすが、陽向。成績学年首位の人は、やっぱり違うなあ。
私も少しでも陽向に近づけるように、頑張らないと。
私が気合いを入れ直したそのとき。
「……それで? 星奈は、さっきから一体どこでつまずいてんの?」
気づいたら、向かいに座っていたはずの陽向が私の隣に腰をおろしていた。
「ひ、陽向!?」
いつの間に、私の隣に!?
「俺で良ければ、教えるけど」
「いっ、いいの?」
「おう。星奈、さっきから全然進んでないし。その調子じゃ、日付が変わって朝になりそうだしな」
「朝になりそうって……」
私は、ムッとする。
「陽向、いくら何でもひどいよ」
「ははっ。悪い悪い」
陽向が、白い綺麗な歯を見せて笑う。
最近、微笑む陽向は何度か見ていたけど。今みたいに、楽しそうに声を出して笑う陽向は、久しぶりに見たかもしれない。
「それで? どの問題?」
「こっ、これなんだけど」
「ああ、これは……」
隣から、私のプリントを覗き込んでくる陽向の距離が近くて。すぐそばから清潔感のある良い香りがして、ドキドキする……!
「おはよー、星奈ちゃん」
「あっ。水上くん、おはよう」
「今日もお互い頑張ろうね!」
水上くんは学校で会うと、今まで通り変わらず笑顔で私に声をかけてくれる。
朝一番に水上くんの無邪気な笑顔を見ると、いつも元気をもらえるから不思議だな。
* * *
「ねえ、せーちゃん。明後日の日曜日って空いてる?」
学校の休み時間。私が自分の席で読書をしていると、そーちゃんがやって来た。
「えっと、日曜日は何も予定がなかったと思う」
「だったら、日曜日は部活が休みだから。急で悪いんだけど、僕と付き合ってくれない?」
「え?」
『付き合って』と言われて、ドキリと心臓が跳ねる。
「親戚の女の子に誕生日プレゼントを渡したいんだけど。何が良いのか分からないから、せーちゃんに一緒に買い物に付き合って欲しくて」
あっ、なんだ。付き合ってって、そういうことかあ。
「分かった。私で良ければ、付き合うよ」
私は、迷わず即答する。
「ありがとう! それじゃあ詳しいことは、またメッセージするね」
「はーい」
離れていくそーちゃんに、私が手をひらひらと振っていると。
「ちょっと、ちょっと。星奈~!」
そーちゃんと入れ替わるようにして、天音ちゃんが私の元に駆け寄って来た。
「今の想良くんとの話、聞こえちゃったんだけど……」
「あっ、ごめんね。天音ちゃん、そーちゃんのことが好きなのに」
「あたしの好きは、恋愛のほうの好きじゃないから良いの。それより、今のは絶対にデートのお誘いだよ!」
「へ!?」
デッ、デート!?
「いや~、想良くんもやるねぇ。ほんと、積極的でいいわ」
なぜだか天音ちゃんは、そーちゃんのことを褒めているけれど。そもそもデートは、お互い好きな人同士がするものじゃないのかな?
私はただ、そーちゃんのプレゼント選びに付き合うだけだから。きっとこれは、デートじゃないと思うのだけど。
翌日。土曜日の夕方。
「それじゃあ、星奈。陽向くんによろしくね」
「うん。行ってらっしゃい」
私は自宅前で夜勤に行くお母さんと別れると、近所の陽向の家へと向かう。
土曜日限定の陽向の家でのふたり暮らしも、早いものでそろそろ2ヶ月になる。
──ピンポーン。
最初の頃は、陽向の家のインターフォンをただ押すだけでもやけに緊張したけど。さすがに今はもう慣れた。
──ガチャッ。
家のドアが開き、陽向が顔を出す。
「……うっす」
「こんにちは」
私が挨拶すると、陽向が私の前までツカツカとやって来る。
「……」
ん? どうしたんだろう?
「星奈……おでこ」
すると、陽向が私の前髪を手でかきあげる。
「良かった。もうすっかり治ったみたいだな」
私のおでこを見た陽向が、微笑む。
「もし怪我の痕が残ったりしたら、どうしようかと思った」
……あ。
陽向は、この前私がおでこにバレーボールが直撃したときのことを、まだ気にしてくれてたんだ。
あれは、陽向がぶつけた訳じゃないのに。
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
おでこを親指で優しく撫でてくれる陽向に、私も微笑んだ。
* * *
「んーっ」
夕食後。リビングのテーブルに陽向と向かい合って座る私は、顔をしかめる。
私が作った夕飯を食べたあと、陽向と一緒に学校の宿題をするのが、ここ最近の流れになりつつある。
私は今、数学の宿題のプリントに取り組んでいるんだけど。分からない問題に直面してしまって、そこから一向に進まないんだよね。
私が、しばらく頭を悩ませていると。
「よし。できた」
「えっ、もう!?」
思わず声を出してしまったけど、目の前の陽向のプリントは、答えが全て埋まっている。
私はまだ、半分ほどしかできていないのに。
一緒に宿題をやり始めて、わずか15分ほどで終わっちゃうなんて。さすが、陽向。成績学年首位の人は、やっぱり違うなあ。
私も少しでも陽向に近づけるように、頑張らないと。
私が気合いを入れ直したそのとき。
「……それで? 星奈は、さっきから一体どこでつまずいてんの?」
気づいたら、向かいに座っていたはずの陽向が私の隣に腰をおろしていた。
「ひ、陽向!?」
いつの間に、私の隣に!?
「俺で良ければ、教えるけど」
「いっ、いいの?」
「おう。星奈、さっきから全然進んでないし。その調子じゃ、日付が変わって朝になりそうだしな」
「朝になりそうって……」
私は、ムッとする。
「陽向、いくら何でもひどいよ」
「ははっ。悪い悪い」
陽向が、白い綺麗な歯を見せて笑う。
最近、微笑む陽向は何度か見ていたけど。今みたいに、楽しそうに声を出して笑う陽向は、久しぶりに見たかもしれない。
「それで? どの問題?」
「こっ、これなんだけど」
「ああ、これは……」
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