クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか

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第3章

ブラックコーヒー②

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それから、数十分後。

「でっ、できたー!」

陽向に教えてもらいながら、私はなんとか数学の宿題を終えることができた。

「星奈もやればできるじゃん」

陽向が、私の頭をくしゃくしゃっと撫でてくれる。

「陽向が、教えてくれたおかげだよ。ありがとう」
「俺は、別に大したことはしてないし……」

少し頬を赤らめた陽向が、ふいっと私から顔をそらす。

「さてと。宿題も終わったし、ちょっと休憩するか」

そう言って、陽向が立ち上がる。

「俺、コーヒー飲むけど。星奈も飲む?」
「飲みたい」
「それじゃあ、いつもみたいにミルクと砂糖たっぷりで良い?」
「えっと……」

陽向はいつも、コーヒーは砂糖も何も入れずにブラックで飲んでるんだよね。

「ううん。今日は、陽向と一緒で良い」

私が言うと、陽向の目がわずかに見開かれたけれど。

「分かった。すぐに用意するから待ってて」

彼はキッチンへと向かって行った。

ブラックコーヒーは、どちらかというと苦手だけど。

ほんの少しでも、陽向に近づきたくて。

好きな人の好きなものは、やっぱり私も好きになりたくて。

たまには私も……陽向と同じものを飲んでみたいと思った。


「はい、どうぞ」

しばらくして、目の前のテーブルに置かれたカップからは、コーヒーの良い香りが漂う。

いつも私が飲んでるミルクたっぷりのものとは違って、真っ黒だ。

「うん、美味い」

隣に座る陽向が、涼しい顔でブラックコーヒーを飲む。

「い、いただきます」

私はゴクリと唾を飲み込むと、ブラックコーヒーを口にした。

うっ。に、苦い……!

「ケホケホッ」

あまりの苦さに耐えられなくて、私はむせてしまった。

「おい星奈、大丈夫か!?」

陽向が、慌てて私の背中をさすってくれる。

「ごっ、ごめん。やっぱり今の私には、ブラックコーヒーはまだ早かったみたい」
「だったら、そんな無理して飲まなくて良いのに」

陽向が、涙目になる私にティッシュを渡してくれる。

「だって、陽向と同じものを飲みたくなったんだもん」
「俺と?」
「うん。なんか、陽向ばっかり大人で。私だけいつまでも子どもみたいだなって、ふと思ってしまって」
「別に、無理しなくて良いんじゃないの? 好みは人それぞれだし。星奈は星奈で、ゆっくりと大人になっていけば良いよ」

陽向に、頭を優しくぽんぽんとされる。

「星奈のコーヒー、ミルクと砂糖足すな」
「ありがとう」

少しして、陽向がミルク入りのコーヒーを私へと渡してくれる。

「美味しい」

いつもの飲み慣れた優しい味に、ホッとする。

「やっぱり、陽向が淹れてくれたからかな?」
「……そんなの、誰が淹れても一緒だろ」

ううん、違うよ。好きな人が自分のために用意してくれたのだと思うと、それだけで何倍も美味しくなるんだよ。

「ありがとうね、陽向」
「おー」

それから私と陽向はソファに並んで座り、静かにコーヒーを飲む。

「つーか、さっき星奈は俺のことを大人だって言ってくれたけど。俺だって、まだまだ子どもだよ」
「え?」
「星奈と違って俺は料理が苦手で、壊滅的に下手だし。いつもなかなか素直になれないし……特に、好きな女子の前では」

『素直になれないし』のあとが、よく聞こえなかったけど。今、なんて言ったんだろう?

「想良や虹輝みたいに、俺も自分の気持ちにもっと正直になれたら良いんだけど」

すると、ソファで隣に座っていた陽向が私の肩に頭をのせてきた。

「えっ。ひ、陽向?!」


突然のことに、私はパニックになる。

「なんか眠いから……星奈の肩貸して」
「へ?」

ね、眠い!?

「たまには、俺もちょっとだけ素直になろうと思って。なあ、少しだけ……こうしていても良い?」

陽向に、上目遣いで見られてドキリとする。

「うっ、うん。良い、よ」

そんなふうに見られたら、たとえ嫌だとしても断れないよ。

肩に頭をのせられて、陽向のサラサラした髪先が首元に触れてくすぐったい……。

それに、さっきからずっと心臓がバクバクと音を立てて落ち着かない。  

だけど、陽向に珍しく甘えられて。ドキドキする以上に、嬉しい気持ちのほうが大きかった。

──ねぇ、陽向。こうして私の肩に、頭を預けてくるってことは……。
私、陽向に嫌われていないって思っても良いんだよね……?
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