クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか

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第4章

陽向のリクエスト①

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土曜日の夕方。

「陽向。今日の夕飯、何が良い?」

私は陽向の家で、リビングのソファに座って読書する陽向に尋ねる。

6月中旬の今。土曜日限定の陽向とのふたり暮らしも、3ヶ月目に突入した。

これまで私が『夕飯何が良い?』と聞いても、いつも『何でも良い』と言われてきたから。

おそらく今日も同じ答えなんだろうなと、思っていたら。

「……久しぶりに餃子が食べたい」

陽向が文庫本から顔を上げ、答えてくれた。

「餃子かあ。いいね!」
「俺、いま読書中だから。あんまり大声出さないでくれない?」
「あっ、ごめん」

陽向に初めて夕飯のリクエストをしてもらえたことが嬉しくて。
いつもよりも、声のボリュームが無意識に大きくなっちゃったみたい。

よーし。せっかく陽向にリクエストしてもらったから。餃子、今から頑張って作ろう。

着ていた長袖のカーディガンを腕まくりして、私がキッチンの冷蔵庫の中を覗くと。

……あれ。肝心の餃子の皮がない。ひき肉とキャベツに、ニラ。それに、ニンニクも。

よし! こうなったらまずは、買い物からだ。

「陽向。餃子の皮とか、材料がいくつか足りないから。私、今から近所のスーパーまで買いに行ってくるよ」

財布を手に、私がキッチンを出ようとすると。

「待てよ」

私は、陽向に腕をつかまれた。

「もう18時だし。わざわざ今から買い物に行くのなら、別に無理して餃子を作ってくれなくても……」
「気にしないで。私も久しぶりに、餃子が食べたい気分だし。それに、私が作りたいの」

何より一番は、私が陽向のために作りたいんだ。少しでも、陽向の喜ぶ顔が見たいから。

「……だったら、俺も行く」
「え?」
「これから行ったら、帰る頃には日が暮れるだろ? 星奈ひとりじゃ、危ないっつうか。その……俺が心配だから」

照れくさそうに、陽向が前髪に手で触れる。

うそ。陽向、私のことを心配してくれてるの?

女の子扱いしてくれる陽向に、嬉しさがじわじわと胸に広がっていく。

「ほら。行くなら、早く家を出ないと。帰りがもっと遅くなっちまう。さっさと行くぞ」
「うん!」

先にリビングを出た陽向を、私は追いかけた。


陽向の家から10分ほど歩いて、近所のスーパーに到着。

「カゴ、俺が持つから」

当然とばかりに、陽向が買い物カゴを持ってくれる。

「それで? 餃子の皮と、他に何を買うの?」
「えっと、キャベツと……」

私は陽向に、買う物を伝える。

「だったら、俺は野菜を見てくるから。星奈は、餃子の皮とひき肉を見てきてよ。そのほうが、早いだろ?」
「そうだね。分かった」

また後で落ち合うことにし、私は陽向と別れて精肉コーナーへと向かう。

そういえば、小学生の頃にもおつかいで何度か陽向と一緒にこのスーパーに来たことがあったなあ。
そのときも今日みたいに『カゴは俺が持つ』って、陽向が言ってくれて……ふふ、懐かしい。


それからお目当ての餃子の皮とひき肉を手にした私が、陽向がいるであろう野菜コーナーへと足を運ぶと。

「あれー? 一之瀬くんだ!」

キャベツを選んでいる陽向に、同世代くらいの女の子が声をかけているのが見えた。

うそ。あの子……同じクラスの田中さんだ。

学校では陽向との週末の同居を秘密にしているため、私は慌てて物陰に隠れる。

もし、田中さんに私の姿を見られて、この前のそーちゃんのときみたいに、人気者の陽向と付き合っているとか、またそういう噂が流れたりしたら大変だ……!

私はヒヤヒヤしながら、物陰で息をひそめる。
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