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第4章
髪飾りの行方②
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それから彗くんと残りの昼休みを利用して、髪飾りを探した。だけど、そう簡単に見つかることなく放課後になった。
この日の授業が全て終わると、私は彗くんと手分けして、髪飾りを探すため再び校内を駆け回った。
教室はもちろんのこと、昇降口や中庭など、自分が普段よく利用する場所を重点的に探したけど、やっぱり見つからない。
時間の経過とともに、どんどん焦りが募っていく。
ほんと、どこ行っちゃったんだろう。
私が、首を左右に動かしながら廊下を歩いていると。
「羽生さん。何か探してるの?」
廊下の向こうから歩いてきた、同じクラスの堀田さんが声をかけてくれた。
「えっと、実は髪飾りを探してて。黄色いお花の……」
「それって、羽生さんが最近カバンにつけてたやつ?」
「うん」
「それなら私、さっき見たよ」
「え!?」
──『プールの建物の近くで、伊集院さんが黄色い花のバレッタを誰かに渡していた』
水泳部の堀田さんからその話を聞いた私は、屋外プールのある建物へ向かって走り出す。
やっぱり……あのとき伊集院さんが、私の髪飾りを盗ったんだ。
それにしても、伊集院さんは髪飾りを誰に渡していたんだろう?
堀田さんは、相手の顔はよく見えなかったって言ってたけど……。
靴を履き替えて昇降口から外に出ると、雨のにおいがした。
今はまだ梅雨の真っ只中だから、もしかしたらまたひと雨あるかもしれない。
「急がなきゃ」
私がプールのある建物の階段をのぼって中に入ると、水泳部はすでに練習が終わったのか無人だった。
もしかしたら、伊集院さんたちがまだこの辺りにいるかも? と思って来てみたけど。
さすがにもう、ここにはいないか。
そう思い歩き出そうとしたとき、25メートルプールの真ん中辺りに、何かがぷかぷかと浮いているのが見えた。
「あれって……」
目を凝らしてみて、私はハッとする。
それは、この1週間ずっと探し続けていた、黄色い花の髪飾りだった。
「うそ。どうしてあんなところに!?」
水が溜まったプールにぷかぷかと浮いている髪飾りを見て、私は呆然とする。
取りに行かなきゃ。
私は、そろそろとプールの淵へと近づく。だけど、水を前にすると川で溺れたあの日のことが鮮明に蘇って、足がすくんでしまった。
やっぱり、ダメだ。怖い……。
私は、その場にへなへなと座り込む。
プールに入るなんて、私には無理なのかな?
──『これは、いつも俺と一緒にいてくれるお礼だよ』
うつむいたそのとき、保健室で彗くんから髪飾りをもらったときのことが頭を過ぎった。
『ショップでこれを見かけたとき、真っ先に菜乃花の顔が浮かんだんだよね』
『菜乃花の名前って漢字で書くと、『なのはな』って読めるだろ? 春に咲く菜の花と、同じだなって思って』
あのときの彗くんの言葉。そして……
『うん。やっぱり似合ってる』
私の髪に、髪飾りをつけてくれたときの彗くんの優しい笑顔。
「……っ、彗くん……」
やっぱり私は、髪飾りを取り戻したい。だってあれは……彗くんから初めてもらった、私の大切な宝物だから。
ローファーと靴下を脱ぎ、私はプールの縁に立つ。
怖い……。足元の水面が、まるで底なし沼のように見えた。
「でも……行くしかない」
私は、自分に言い聞かせるように呟く。
そして、意を決してプールに飛び込んだ。
──バッシャーン!!
水飛沫が上がり、6年前の冷たい記憶が蘇る。体の芯まで冷え込むような水の冷たさと、トラウマからくる恐怖で、足がすくんでしまいそうになる。
それでも、私は髪飾りを取り戻したい一心で、震える足を前に進めた。
バシャッ、バシャッ。
大丈夫。ここは川じゃなくて、学校のプールだ。
小学生のときみたいに流される心配はないし、足もちゃんとプールの床についてるから。落ち着いて、いつも通りにただ歩けば良い。
自分で自分に言い聞かせながら、私は焦らずゆっくりと歩を進める。
制服のままプールに入っちゃったから、服が水を吸ってしまって。重くて動きづらいけど……あと少し。
もう少しで、髪飾りのところに辿り着く。
「……あっ」
歩いていると、頬に冷たい滴が落ちてきた。
雨はやがて勢いを増し、私の髪の毛を濡らしていく。
髪だけでなく、顔も制服もみんなびしょ濡れだけど、そんなの構わない。
早く。早く、髪飾りの元へ……。
「っ、やった!」
そうして私は、ついに髪飾りがある場所に辿り着いた。
すぐに手を伸ばして持ち上げると、それは間違いなく、彗くんからもらった黄色い花の髪飾りだった。
「ああ、良かった」
私は、髪飾りを胸元でギュッと抱きしめる。
ずっとトラウマだった水の中に自ら入って、歩けた。たったそれだけのことだけど、私にとっては大きな進歩だ。
そして何より……
「髪飾りが見つかって、本当に良かった」
ようやく髪飾りを手にした私は、プールサイドへ戻ろうとプールの中を再び歩き出したそのとき。
「っ!」
突然、足がつってしまった。
ま、まずい。足に激痛が走り、私はその場に立っていられなくなる。
──バシャバシャッ!
体がプールに沈みそうになるなか、手足をバタバタさせてどうにか泳ごうとするも、あまりの足の痛さに泳げない。
「だ、誰か……っぷ」
冷たい水が、どんどん口の中に入ってくる。
ああ、川で溺れたあのときと同じ……息が苦しい。
誰か、誰か助けて……!
手足をバタバタさせて、必死にもがき続ける私だけど。
心の中で助けを呼んだのを最後に、私の意識は途切れてしまった。
この日の授業が全て終わると、私は彗くんと手分けして、髪飾りを探すため再び校内を駆け回った。
教室はもちろんのこと、昇降口や中庭など、自分が普段よく利用する場所を重点的に探したけど、やっぱり見つからない。
時間の経過とともに、どんどん焦りが募っていく。
ほんと、どこ行っちゃったんだろう。
私が、首を左右に動かしながら廊下を歩いていると。
「羽生さん。何か探してるの?」
廊下の向こうから歩いてきた、同じクラスの堀田さんが声をかけてくれた。
「えっと、実は髪飾りを探してて。黄色いお花の……」
「それって、羽生さんが最近カバンにつけてたやつ?」
「うん」
「それなら私、さっき見たよ」
「え!?」
──『プールの建物の近くで、伊集院さんが黄色い花のバレッタを誰かに渡していた』
水泳部の堀田さんからその話を聞いた私は、屋外プールのある建物へ向かって走り出す。
やっぱり……あのとき伊集院さんが、私の髪飾りを盗ったんだ。
それにしても、伊集院さんは髪飾りを誰に渡していたんだろう?
堀田さんは、相手の顔はよく見えなかったって言ってたけど……。
靴を履き替えて昇降口から外に出ると、雨のにおいがした。
今はまだ梅雨の真っ只中だから、もしかしたらまたひと雨あるかもしれない。
「急がなきゃ」
私がプールのある建物の階段をのぼって中に入ると、水泳部はすでに練習が終わったのか無人だった。
もしかしたら、伊集院さんたちがまだこの辺りにいるかも? と思って来てみたけど。
さすがにもう、ここにはいないか。
そう思い歩き出そうとしたとき、25メートルプールの真ん中辺りに、何かがぷかぷかと浮いているのが見えた。
「あれって……」
目を凝らしてみて、私はハッとする。
それは、この1週間ずっと探し続けていた、黄色い花の髪飾りだった。
「うそ。どうしてあんなところに!?」
水が溜まったプールにぷかぷかと浮いている髪飾りを見て、私は呆然とする。
取りに行かなきゃ。
私は、そろそろとプールの淵へと近づく。だけど、水を前にすると川で溺れたあの日のことが鮮明に蘇って、足がすくんでしまった。
やっぱり、ダメだ。怖い……。
私は、その場にへなへなと座り込む。
プールに入るなんて、私には無理なのかな?
──『これは、いつも俺と一緒にいてくれるお礼だよ』
うつむいたそのとき、保健室で彗くんから髪飾りをもらったときのことが頭を過ぎった。
『ショップでこれを見かけたとき、真っ先に菜乃花の顔が浮かんだんだよね』
『菜乃花の名前って漢字で書くと、『なのはな』って読めるだろ? 春に咲く菜の花と、同じだなって思って』
あのときの彗くんの言葉。そして……
『うん。やっぱり似合ってる』
私の髪に、髪飾りをつけてくれたときの彗くんの優しい笑顔。
「……っ、彗くん……」
やっぱり私は、髪飾りを取り戻したい。だってあれは……彗くんから初めてもらった、私の大切な宝物だから。
ローファーと靴下を脱ぎ、私はプールの縁に立つ。
怖い……。足元の水面が、まるで底なし沼のように見えた。
「でも……行くしかない」
私は、自分に言い聞かせるように呟く。
そして、意を決してプールに飛び込んだ。
──バッシャーン!!
水飛沫が上がり、6年前の冷たい記憶が蘇る。体の芯まで冷え込むような水の冷たさと、トラウマからくる恐怖で、足がすくんでしまいそうになる。
それでも、私は髪飾りを取り戻したい一心で、震える足を前に進めた。
バシャッ、バシャッ。
大丈夫。ここは川じゃなくて、学校のプールだ。
小学生のときみたいに流される心配はないし、足もちゃんとプールの床についてるから。落ち着いて、いつも通りにただ歩けば良い。
自分で自分に言い聞かせながら、私は焦らずゆっくりと歩を進める。
制服のままプールに入っちゃったから、服が水を吸ってしまって。重くて動きづらいけど……あと少し。
もう少しで、髪飾りのところに辿り着く。
「……あっ」
歩いていると、頬に冷たい滴が落ちてきた。
雨はやがて勢いを増し、私の髪の毛を濡らしていく。
髪だけでなく、顔も制服もみんなびしょ濡れだけど、そんなの構わない。
早く。早く、髪飾りの元へ……。
「っ、やった!」
そうして私は、ついに髪飾りがある場所に辿り着いた。
すぐに手を伸ばして持ち上げると、それは間違いなく、彗くんからもらった黄色い花の髪飾りだった。
「ああ、良かった」
私は、髪飾りを胸元でギュッと抱きしめる。
ずっとトラウマだった水の中に自ら入って、歩けた。たったそれだけのことだけど、私にとっては大きな進歩だ。
そして何より……
「髪飾りが見つかって、本当に良かった」
ようやく髪飾りを手にした私は、プールサイドへ戻ろうとプールの中を再び歩き出したそのとき。
「っ!」
突然、足がつってしまった。
ま、まずい。足に激痛が走り、私はその場に立っていられなくなる。
──バシャバシャッ!
体がプールに沈みそうになるなか、手足をバタバタさせてどうにか泳ごうとするも、あまりの足の痛さに泳げない。
「だ、誰か……っぷ」
冷たい水が、どんどん口の中に入ってくる。
ああ、川で溺れたあのときと同じ……息が苦しい。
誰か、誰か助けて……!
手足をバタバタさせて、必死にもがき続ける私だけど。
心の中で助けを呼んだのを最後に、私の意識は途切れてしまった。
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