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第5章
三池財閥のパーティー①
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三池財閥主催のパーティー当日。
彗くんの執事の見上さんが運転する車で、パーティー会場のホテルへとやって来た私。
今は、ホテルの部屋でスタイリストさんに、身なりをキレイに整えてもらっている。
「はい。できましたよ」
スタイリストさんの言葉に、ゆっくりと鏡を見る。
「うわあ……」
そこに映っていたのは、まるで魔法をかけられたかのような、自分とは思えないほど華やかな姿だった。
彗くんが用意してくれたという、繊細なレースがあしらわれたピンク色のドレス。ウエストのリボンの可愛らしさに、思わず頬が緩む。
いつもは下ろしたままの髪はハーフアップに整えられ、軽く施されたメイクで、まぶたのブラウンアイシャドウがキラキラと輝いている。
プロの魔法にかけられ、私は「シンデレラ」になった気分だった。
やっぱりプロの人はすごいなあと、改めて感心していると。
──コンコン。
「菜乃花。俺だけど……準備できた?」
部屋の扉の向こうから、彗くんの声がした。
「はい。今行きます!」
私が慌ててドアを開けると、目の前にはネイビーのスーツを着た彗くんが立っていた。
「えっ。菜乃花……」
彗くんは目を真ん丸にして、私を見たまま固まってしまった。
「あの……もしかして、変だった?」
こんなパーティードレスなんて、今まで一度も着たことがなかったし。やっぱり、似合ってないのかも。
「いや……いいと思う」
「えっ」
「今日の菜乃花、すごく可愛い」
そう言うと、彗くんは私の腰にそっと手をまわしてくる。
「それじゃあ、行こうか」
ニコッと爽やかに微笑んでくれる彗くんは、スーツ姿だからかいつもよりも随分と大人っぽくて。
いつにも増して素敵な彼に、私は目が離せなかった。
* *
彗くんにエスコートされ、ホテルの1階にあるパーティー会場へとやって来た。
私は彗くんと並んで、煌びやかな会場に足を踏み入れる。
「すごい……どこを見てもキラキラしてる」
天井からは巨大なシャンデリアが吊り下がり、招待された人たちの中には、テレビや雑誌で見たことのある有名人もたくさん。
「……っ」
私は、思わず足がすくみそうになってしまった。
今さらだけど、もしかして私はとんでもないところに来てしまったんじゃ……。
「大丈夫?」
隣に立つ彗くんが、緊張で今にも倒れそうな私の顔を覗き込んでくる。
「ご、ごめん。私、緊張しちゃって……」
「こういうパーティーに出るのが初めてなら、無理もないよ。悪いな。菜乃花を、こんなことに巻き込んでしまって」
彗くんの声が、申し訳なさそうに落ちる。
「でも、今日で最後だから。菜乃花はただ、俺の隣に立っていてくれれば良い」
彗くんが、私の肩にそっと手を置いた。
「だから……もう少しだけ、俺に付き合ってくれないか?」
そうだ。彗くんのボディーガードも、彼女役も……今日で最後なんだ。
彗くんと一緒に過ごすのも、今日でおしまい。
そう思うと寂しいけど……私は、自分に与えられたことを精一杯やるしかない。
彗くんの家のお茶会に招待されたあの日。
川で溺れた私を助けてくれた葵くんが、彗くんのお兄さんだって初めて知ったとき。
彗くんのボディーガード兼カノジョとしての役目をちゃんと果たして……大好きな彗くんの笑顔を守りたいって、思ったんだもの。
だから……
私は、真っ直ぐ彗くんを見つめる。
「分かった。私、頑張るよ」
「ありがとう、菜乃花」
それから私は、会場で挨拶まわりをする彗くんにくっついて歩いた。
「ご無沙汰しています。鈴木さん」
「おお、彗くん。見ないうちに、随分と大きくなったね……おや、そちらのお嬢さんは?」
三池財閥と古くからお付き合いがあるという年配の男性が、私に目を向けた。
「この子は、僕の恋人です」
彗くんの紹介に合わせて私はニコッと微笑み、男性に軽く頭を下げた。
「そうなのかい!? いやー、驚いたよ。うちの孫娘を彗くんの将来の伴侶に……と、密かに思っていたんだが。いつの間にか彗くんにも、そういう相手がいたなんて」
「はい。彼女とは、結婚を前提にお付き合いしています」
微笑を浮かべる彗くんが腕をさりげなく私の腰に回してきて、胸が跳ねた。
「彼女は……僕が初めて、一生大切にしたいなって思えた人なんです」
彗くんの言葉に、私の心臓がドクンと大きく跳ねた。
……演技、だよね。頭ではわかっている。一昨日に「彼女役は最後」と告げられたばかりだ。
これは、パーティーを乗り切るための彗くんの「役作り」。でも、彼の真剣な眼差しと、腰に回された手の温かさが、私の心を揺さぶる。
そんなこと、言われたら……勘違いしちゃうじゃない。
「そうか、そうか。君がそこまで思える相手と出会えたのなら、良かったよ。それじゃあ、このあとの例のアレもそちらのお嬢さんと?」
「もちろんです」
……ん? 例のアレ? 一体、何のことだろう?
「ねえ、彗くん。さっきの男の人が話してたのって……」
男性が離れたあと、私がすぐさま彗くんに尋ねたそのとき。
「彗」
低く落ち着いた声が、辺りに響いた。
声がしたほうに目をやると。
そこには、グレーのスーツをかっこよく着こなした、背の高いダンディーな男の人が立っていた。
彗くんの執事の見上さんが運転する車で、パーティー会場のホテルへとやって来た私。
今は、ホテルの部屋でスタイリストさんに、身なりをキレイに整えてもらっている。
「はい。できましたよ」
スタイリストさんの言葉に、ゆっくりと鏡を見る。
「うわあ……」
そこに映っていたのは、まるで魔法をかけられたかのような、自分とは思えないほど華やかな姿だった。
彗くんが用意してくれたという、繊細なレースがあしらわれたピンク色のドレス。ウエストのリボンの可愛らしさに、思わず頬が緩む。
いつもは下ろしたままの髪はハーフアップに整えられ、軽く施されたメイクで、まぶたのブラウンアイシャドウがキラキラと輝いている。
プロの魔法にかけられ、私は「シンデレラ」になった気分だった。
やっぱりプロの人はすごいなあと、改めて感心していると。
──コンコン。
「菜乃花。俺だけど……準備できた?」
部屋の扉の向こうから、彗くんの声がした。
「はい。今行きます!」
私が慌ててドアを開けると、目の前にはネイビーのスーツを着た彗くんが立っていた。
「えっ。菜乃花……」
彗くんは目を真ん丸にして、私を見たまま固まってしまった。
「あの……もしかして、変だった?」
こんなパーティードレスなんて、今まで一度も着たことがなかったし。やっぱり、似合ってないのかも。
「いや……いいと思う」
「えっ」
「今日の菜乃花、すごく可愛い」
そう言うと、彗くんは私の腰にそっと手をまわしてくる。
「それじゃあ、行こうか」
ニコッと爽やかに微笑んでくれる彗くんは、スーツ姿だからかいつもよりも随分と大人っぽくて。
いつにも増して素敵な彼に、私は目が離せなかった。
* *
彗くんにエスコートされ、ホテルの1階にあるパーティー会場へとやって来た。
私は彗くんと並んで、煌びやかな会場に足を踏み入れる。
「すごい……どこを見てもキラキラしてる」
天井からは巨大なシャンデリアが吊り下がり、招待された人たちの中には、テレビや雑誌で見たことのある有名人もたくさん。
「……っ」
私は、思わず足がすくみそうになってしまった。
今さらだけど、もしかして私はとんでもないところに来てしまったんじゃ……。
「大丈夫?」
隣に立つ彗くんが、緊張で今にも倒れそうな私の顔を覗き込んでくる。
「ご、ごめん。私、緊張しちゃって……」
「こういうパーティーに出るのが初めてなら、無理もないよ。悪いな。菜乃花を、こんなことに巻き込んでしまって」
彗くんの声が、申し訳なさそうに落ちる。
「でも、今日で最後だから。菜乃花はただ、俺の隣に立っていてくれれば良い」
彗くんが、私の肩にそっと手を置いた。
「だから……もう少しだけ、俺に付き合ってくれないか?」
そうだ。彗くんのボディーガードも、彼女役も……今日で最後なんだ。
彗くんと一緒に過ごすのも、今日でおしまい。
そう思うと寂しいけど……私は、自分に与えられたことを精一杯やるしかない。
彗くんの家のお茶会に招待されたあの日。
川で溺れた私を助けてくれた葵くんが、彗くんのお兄さんだって初めて知ったとき。
彗くんのボディーガード兼カノジョとしての役目をちゃんと果たして……大好きな彗くんの笑顔を守りたいって、思ったんだもの。
だから……
私は、真っ直ぐ彗くんを見つめる。
「分かった。私、頑張るよ」
「ありがとう、菜乃花」
それから私は、会場で挨拶まわりをする彗くんにくっついて歩いた。
「ご無沙汰しています。鈴木さん」
「おお、彗くん。見ないうちに、随分と大きくなったね……おや、そちらのお嬢さんは?」
三池財閥と古くからお付き合いがあるという年配の男性が、私に目を向けた。
「この子は、僕の恋人です」
彗くんの紹介に合わせて私はニコッと微笑み、男性に軽く頭を下げた。
「そうなのかい!? いやー、驚いたよ。うちの孫娘を彗くんの将来の伴侶に……と、密かに思っていたんだが。いつの間にか彗くんにも、そういう相手がいたなんて」
「はい。彼女とは、結婚を前提にお付き合いしています」
微笑を浮かべる彗くんが腕をさりげなく私の腰に回してきて、胸が跳ねた。
「彼女は……僕が初めて、一生大切にしたいなって思えた人なんです」
彗くんの言葉に、私の心臓がドクンと大きく跳ねた。
……演技、だよね。頭ではわかっている。一昨日に「彼女役は最後」と告げられたばかりだ。
これは、パーティーを乗り切るための彗くんの「役作り」。でも、彼の真剣な眼差しと、腰に回された手の温かさが、私の心を揺さぶる。
そんなこと、言われたら……勘違いしちゃうじゃない。
「そうか、そうか。君がそこまで思える相手と出会えたのなら、良かったよ。それじゃあ、このあとの例のアレもそちらのお嬢さんと?」
「もちろんです」
……ん? 例のアレ? 一体、何のことだろう?
「ねえ、彗くん。さっきの男の人が話してたのって……」
男性が離れたあと、私がすぐさま彗くんに尋ねたそのとき。
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