隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか

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第5章

これから先もずっと①

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流れていた音楽が止まると、パーティー会場は拍手喝采に包まれた。

お、終わった……。

彗くんがリードしてくれたおかげで、大きなミスもなくダンスは無事に終了。

安堵するとともに、私は寂しい気持ちでいっぱいになる。

お姫さまみたいにキレイに着飾って、大好きな彗くんの彼女としてパーティーに出席する。

この夢みたいな時間も、これでもうおしまいなんだ。

ダンスを終えた人たちはみんな、フロアの中央からはけていく。

後ろ髪を引かれる思いで、私もそれに続こうとしたが……。

後ろから、ガシッと誰かに手首をつかまれてしまった。

「菜乃花」

名前を呼ばれて振り向くと、彗くんが真剣な面持ちで立っていた。

「君に、大事な話があるんだ」

大事な話って、何だろう?

「なっ、なに?」

ドキドキしながら聞き返すと、彗くんはひとつ息を吐いて、私を見つめ返してくる。

「本当は、今日で菜乃花との関係を終わらせようと思っていた」

──ドキッ。

「だけど、やっぱり俺は……このままで終わらせたくない」 

彗くんがスッと、私の前にひざまずく。

突然のことに驚くと、黒目がちの大きな瞳が私を見上げた。

「俺は、菜乃花のことが好きだ。だから……これからは偽じゃなく、俺の本当の彼女になってくれないか」

︎︎︎︎︎︎真っ直ぐに伝えられた、ストレートな言葉。

「う、うそ」

彗くんが、私を……?

すぐには信じられなくて、目をパチパチと瞬かせる。

「ダメ……かな?」

珍しく余裕のない彗くんの顔が、これはウソじゃないんだってことを伝えてくる。
そんな姿を見ていたら、もう胸がいっぱいになって。

「もし菜乃花も同じ気持ちなら、俺の手を取って」

そう言って、私の前に手を差し伸べる彗くん。

「……はいっ」

私は迷わず、彗くんの手を取った。

「私も……彗くんのことが、好きです」

自分の想いを正直に伝えると、身体ごと抱き寄せられた。

「ああ、良かった」

彗くんは回した腕に力を込めて、私をギュッと強く抱きしめてくる。

「もし菜乃花に断られたら、どうしようかと思った」
「断るなんて、ありえないよ」

私も、彗くんの背中に腕をまわす。

「私はずっと、彗くんのことが好きだったんだから」

こうして抱きしめ合っている今も、彗くんと両想いになれただなんてまだ信じられない。

元はと言えば、彗くんに弱みを握られたのをキッカケに、彼のボディーガード兼カノジョになったのが始まりだった。

そのうえ彗くんは、川で溺れた私を助けて亡くなった葵くんの弟。

そんな彼が、私を好きになるはずがないってずっと思っていたから。

フロアの真ん中で抱き合ったままの私たちを、周りがざわざわと注目し始めた。

会話は聞こえていないはずなのに、歓声と拍手が沸き起こる。

その音で、私はようやく我に返った。

し、しまった。途中からつい、彗くんと二人だけの世界に入ってしまっていたけど。
ここは、ホテルのパーティー会場だったんだ。

そのことに気づいた瞬間、頬が沸騰したように熱くなり、私は慌てて彗くんから離れた。

「彗、菜乃花さん」

ちょうどそのとき、私たちに声をかけてきた人が。

「父さん、母さん!」

それは、彗くんのご両親だった。

「先ほどのふたりのダンス、良かったよ」

彗くんのお父さんに褒めてもらい、私たちは二人そろって頭を下げる。

「それと、菜乃花さん。たった今、蓮から長男の……葵の話を聞いたよ」

お父さんの口から葵くんの名前が飛び出し、心臓がドキリと跳ねる。

彗くんのお父さんの隣には、いつの間にか蓮くんの姿もあった。
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