隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか

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第3章

おうちでお茶会①

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ある日の昼休み。よく晴れたこの日、私は彗くんと一緒に学校の中庭のベンチに座って、お昼ご飯を食べていた。

花城学園の中庭には大きな噴水があって、その周りを取り囲むように設置されている花壇には、色とりどりの季節の花が咲いている。

「菜乃花の玉子焼き、いい匂い」

私がお母さん手作りのお弁当を食べていると、横から彗くんが覗き込んできた。

「良かったら、ひとつ食べる?」
「いいの?」
「もちろん」
「それじゃあ、俺の唐揚げと交換ね」

彗くんが、自分のお弁当のおかずを私におすそ分けしてくれる。

こうやって、お弁当のおかずを交換するのも楽しいな。

「うん、美味い。菜乃花の家の玉子焼きは、甘いんだな」
「私、甘いものが好きなんだよね」
「へえ。それじゃあ、お菓子とかも好き? マドレーヌとか」
「うん。だーい好き!」

彗くんは面白そうに笑うと、少し思案するような表情になり、ふいに真剣な眼差しで私を見つめた。

「だったら……今度、うちに来る?」
「へっ!?」

私の手から、お箸が落ちそうになる。

「う、うちにって……彗くんのお家?」
「うん。俺の母親、お菓子作りが趣味でさ。お菓子を焼いては知り合いを呼んで、よくお茶会をやってるから……菜乃花もどうかな? って思って」

お、お茶会って! きれいなドレスを着た貴族の女性たちが、優雅に紅茶を飲んだりするあれのことかな?

庶民の私にはあまり耳慣れない言葉に、内心冷や汗が流れる。

「お茶会っていっても、家の庭で軽くお茶するだけだから。ケーキとかフィナンシェとか色々出てくるよ」
「えっ。ケーキにフィナンシェ!?」

彗くんの言葉に、思わず前のめりになってしまう。

「はははっ。菜乃花は、お菓子が本当に好きなんだな」

う。彗くんに笑われちゃった。もしかして、食い意地がはってるって思われちゃったかな?

私ったら、恥ずかしい……。

「それじゃあ、参加ってことで良いかな? 今度の日曜日、菜乃花の家まで迎えに行くから」

こうして私は、彗くんの家にお邪魔することになった。


そして、約束の日曜日。

この日は、朝から彗くんの執事である見上さんが、自宅まで車で迎えに来てくれた。

「おはようございます、羽生さん。どうぞお乗りください」

見上さんは私に向かって恭しくお辞儀をすると、黒塗りの高級車の後部座席のドアを開けてくれた。

こんなふうにされるのは、初めてのことで。まるで自分が、お嬢様にでもなったような気分。

「し、失礼します」

彗くんの家の車に乗るのは、最初に彼とボディーガード兼カノジョの契約を交わしたあの日以来だ。

広い車内に、座席はふかふかで。乗り心地は、相変わらず最高だ。

彗くんは今自宅にいるらしく、見上さんの運転で私は三池家に到着。

見上さんにエスコートされて車を降りると、私は目の前の光景に開いた口が塞がらなくなった。

だって彗くんのおうちは、まるでヨーロッパの宮殿のような大豪邸だったから。

す、すごい……。ケタ違いの豪邸に、私はごくりと唾を飲み込む。

「菜乃花!」

見上さんに案内されてお庭に行くと、彗くんが声をかけてくれた。

彗くんは、今日は変装用のメガネをかけておらず、素のままの姿だ。

かしこまりすぎていない、カジュアルなグレーのスーツも素敵。

広いお庭には色とりどりの花が咲き誇り、噴水やプールまである。さすが三池財閥。

「菜乃花、今日は来てくれてありがとう」
「こちらこそ。招待して頂いて、どうもありがとう」

緊張しながらも、何とかお礼を言う。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

ガチガチになっている私を見て、彗くんが爽やかに微笑む。

「それ、つけてきてくれたんだ?」

彗くんの目は、私のこめかみ辺りにある髪飾りに一直線。

今日は、この前保健室で彗くんからもらった、黄色い花の髪飾りをつけてきたんだ。

「可愛いな」

彗くんの手が、私の髪飾りへと触れる。

「菜乃花、今日はワンピースなんだ? 少しは女の子らしく見えるね?」

彗くんは意地悪にニヤリと口角を上げ、私の耳元に囁く。

す、少しは女の子らしく見えるって……! 彗くんったら、いきなり失礼じゃない?

「ねぇ、彗くん。それってどういう意味……」

彗くんに、私が聞き返したそのとき。

「あら、彗」

40代くらいの上品でキレイな女性が、彗くんに声をかけてきた。

えっと……この方は、どなただろう?

彗くんの隣に立った女性に、首を傾げていると。

「この人は、俺の母親だよ」
「えっ!」

こ、この方が!?

女性が彗くんのお母さんだと分かった途端、背筋がビシッと伸びた。

「彗、こちらの方は?」
「ああ……この子は、菜乃花。同じ学校のクラスメイトで、俺の彼女」

『彼女』と、迷いもなくハッキリと言い切った彗くんに胸がどくんと跳ねる。

「は、初めまして。羽生菜乃花です」

私は、お辞儀の仕方さえ忘れてしまいそうになりながら、ぎこちなく頭を下げた。

「菜乃花さん、あなたが彗の……」

彗くんのお母さんは、そうポツリと呟くと、吸い込まれそうなほど大きな瞳で私をじっと見つめてくる。
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