62 / 78
こそ練
しおりを挟む
白百合の花が上へ上へと咲き広がるみたいに、巨大なシャンデリアが闇の中に姿を現した。
降り注ぐ満々の光の中、ダンスウェアを着た八木がゆっくりと舞台中央へ歩いて来る。
会場のスピーカーからエレクトロニック・ダンス・ミュージックが流れ出し、八木は腕を組んでベースポーズを取る。そして膝でリズムを取り出し、流れでラウンジに入って次第に動きにグルーヴが生まれる。
無人の二階席が闇に沈む中、けれども彼女の瞳には熱狂する観客の姿が映っていた。
踊りの中で自然と笑顔になって行く八木、内股と外股をリズミカルに繰り返す、チャールストンを見せながら、JBステップを織り交ぜつつ、最後はコンビネーションで滑らかに舞台を移動する。
誰もいない会場にみどりの非常灯の明かりが点々と見えた。
調子が出て来た八木は、次に床の上を転げ回るウィンドミルに入り、そこから助走なしの空中技、くるくると体にひねりを入れるコークスクリューを決める。会場の盛り上がりにもっともっとと両手を上げて、さらに高難易度のエアートラックスやクリケットを連発する八木。
しばらく踊った後、八木は携帯電話を操作して音楽を止め、ひざに手をつきはあはあと肩で息をしている。
パチパチパチと突然会場に拍手の音が響いた。
「!」
誰もいないと思っていた所、突然の人の気配に驚き、急いで暗い会場に目を凝らす八木。
「……片桐、先生?」
闇の中を歩いて来る片桐の顔がだんだん明らかになる。
「いやー、黙って見ていてごめんねー。声を掛けようかとも思ったんだけどね、あまりに真剣に踊っているものだから、声を掛けそびれてしまった」
会場作りの途中の、物が散乱した状態の会場に、片桐の軽やかな声が響く。
「それに、観る者を圧倒するとても美しいダンスだったから、ついつい見惚れてしまって」
「そ、そんな」と八木が恥ずかしそうにうつむく。
「僕って ほら、書道が専門でしょう? だからダンスの事なんてぜんぜん分からなくて、僕にとってのダンスなんて、せいぜい子供の頃の盆踊りくらい」と片桐はボリボリと後ろ頭を掻いて、
「そんな僕でもさ、五年前、倉木さんと早見くんがすごい事をやっているっていうのは分かったんだ。いま目の前で奇跡が起こっているって、これはそうそう見られるものではないって。まさに会場は割れんばかりの歓声に包まれて、あの時の観客は異様に熱狂していた。次世代のスーパースターがプライドをかけてぶつかり合う白熱のダンスバトル」
「そ、そこまでは」
汗を飛ばしながら八木が指で頬を掻く。
「だからね、見てみたいんだ。あの興奮の続きを。
倉木さんと九条くんの、ダンスバトルを」
八木の瞳が大きくなる。
「僕はずっと楽しみにしていたんだ。あれから五年後のシャンデリア・ナイトの舞台で、あの時以上にヒートアップしたダンスバトルを」
片桐は遊ぶように会場を歩きながら、
「以前にも、今みたいに、ここで早見くんが一人 ダンスを踊っているのを目撃した事があったんだ。僕はほら、ここの施錠を任されているからさ」
そう言って片桐は顔の前で鍵を揺らして見せる。
「早見くんは本当に踊りが上手な子でね。動きがダイナミックで、ジャンプも高くて、どんな姿勢からでもピタッと体を止める事が出来て。あ、ごめんね、語彙力なくて。
それでね、今のように拍手をしながら、いやー 早見くんはダンスの天才だねって、心底感心していたら、彼はこう言ったんだ。
『先生、俺なんかよりもっとダンスが上手いやつがいますよ』
僕はビックリしてね、海外の有名なダンサーかねって聞いたら、なんの迷いもなく『俺の弟です』って言うんだ。へえー、そんなにすごいのかい、見てみたいものだねって言うと、
『見れますよ、先生。あいつ、五年後にはこの舞台に立って、史上最高のシャンデリア・ナイトを成功させます』って断言したんだよ。
当時の僕はただ笑って済ましていたけど、それって、まさにその通りになるんだよね」
スッと八木の視線は下がり、なんとも言えない口もとを見せる。
「そんな事、言ってたんだ」
「普通言えないよね、自分より弟の方がすごいって。その後で彼、トップアイドルグループに加入して、芸能界で成功を収め、日本メディア大賞で最優秀賞まで取って。兄としてのプライドってのもあるし、威厳ってのもあったろうに。それなのに、簡単に弟の方がダンスが上手いだなんて言ってさ。僕にも弟はいるけど、うん、僕だったらそんな事は言えないね。弟に得意な顔をされるの、嫌だもん。
だからね、早見くんにそこまで言わせた九条修二郎くんって、どれだけダンスが上手なんだろうって、僕はとても興味があるんだ。それがあと数日で見る事が叶う」
八木は腕の裏を触るような姿勢を見せて、
「でも、九条くんはイベントには参加しないって、だから、シャンデリア・ナイトは開催されないって」
片桐は腰の所で腕を組み、しみじみと天井を見上げて、
「あー そのこと。大丈夫だよ。彼はちゃんとシャンデリア・ナイトに参加するよ。準備も万全だ。彼はそのためにこの学校に入学して来たのだから」
「……え?」
「ま、先生の中には、彼を退学にした方がいいと言っている人もいるみたいだけど、大丈夫だよ。九条くんはね、最初から全部分かっている。ぜーんぶ分かった上で、何ていうのかな、自分が言った事に対して、引っ込みがつかなくなっていると言うか、金田くんというあまりに大きな存在に、簡単には屈したくないって言うか、うん、彼らしいよね。きっと子供のように駄々をこねているんだ。シャンデリア・ナイト開催のギリギリまで、彼は駄々をこねるつもりだ」
八木は次第に明るい表情になって行く。
「じゃあ、九条くんは」
「金田くん、よくがんばったよね、彼、本当にすごいと思うよ。
金田くんがいなかったら、僕はこんなに落ち着いてなんかいられなかっただろうね。もしかしたら本当にシャンデリア・ナイトは開催できなかったかもしれない、彼が必死になって仲間を説得してくれなかったら。
九条くんは、金田くんと出会ってから、明らかに変わったよ。口ではああ言っているけど、しっかりと彼の事を認めている。特に新木さんをまた走らせる事が出来た事については、きっとライバルに出し抜かれた気分だったと思うよ。あれは九条くんにはできなかったこと」
「…………………」
「金田くんがこの一年間、学校中を飛んで回って、一人一人イベントに反対しているクラスメートを説得して行った。そんな金田くんの姿を遠い所から九条くんは見ていた。そんな九条くんの背中を、僕は陰ながら見ていたんだ。九条くんだって馬鹿じゃない、むしろ頭のいい子だ。金田くんがどれだけ苦労して、どれだけすごい事をやってのけたのか、それが分からない子じゃないよ。彼はね、しっかりと金田くんの事をリスペクトしている。
そしてね、これはまあ僕の想像なんだけど、もしも今のC組に、早見くんが委員長として在学していたら、やっぱり金田くんと同じように学校中を飛び回っていたんじゃないかな。仲間思いで、正義感が強くて、困っている仲間がいれば絶対に見過ごせない。金田くんって、まるで早見くんだよ」
『どんな事があっても、どんな裏切りにあっても、どんな大きな嘘をつかれても、俺は最後まで仲間を見捨てない』
八木は照れたような上目遣いを見せ、
「そんなに、似ています? 彼に」
「おっと、それを僕に聞くのかい? 早見くんとずっと一緒にいた倉木さんが、その事を一番よく分かっていると思うけど。九条くんにしてもそうだ、早見くんに近ければ近い人ほど、二人に多くの共通点がある事に気が付く。それだから、九条くんはあんなに反発しているのかも知れないね。似ているから、金田くんが、自分を捨てた兄の存在に。
後はまあ、そうだね、あとは彼にきっかけというものが必要なんだろうね」
「………きっかけ」
頭上にあるシャンデリアの明かりが増して、八木の頬にまつ毛の陰ができる。
「そう、九条くんが素直になれる、きっかけだ。それは金田くんでも僕でも校長先生でもない。それは誰にでもできる事ではない。
それは倉木さん、あなたにしか出来ない」
そこで片桐は姿勢を正し、深々と頭を下げる。
「この通りです、倉木さん。彼を、九条くんを、兄の死から立ち直らせてあげて下さい。お願いです」
あわてて八木は両手を前に出す。
「や、やめて下さい、先生」
「それはあなたにしか出来ないこと。彼の閉ざされた心を開くのは、あなたの真実の告白です」
「…………………」
「酷だと思う、そんなの。とても残酷な事を僕はあなたにお願いしている。校長先生だって、直接は倉木さんに頼めなかった。
でも、倉木さんにしか、九条くんを立ち直らせてあげる事ができない」
『しっかりとスクープされているんですよ! 週刊誌の記事では、そこで意に沿わない行為があったと』
サングラスの横顔が遠ざかり、逃げるように早見は車に乗り込む。
『何もおっしゃらないのは、記事の内容をお認めになったという事ですか!』
『被害に遭われた女性たちに対して、謝罪の気持ちは一つもないんですか!』
片桐はもう一度深く頭を下げ、
「この通りです、倉木さん。彼に、九条くんに、早見くんの死の真相を伝えてあげて下さい。それは、あなたにしか出来ないこと」
八木は、震える指先をしっかりと握り締める。
「これ以上、早見くんを悪者にしてはいけないよ。そうだろう?」
夜の森の中を、あやしく駆け抜ける男たちの影。
その手の中には、金属バットや木刀など、危険な凶器が握られていた。
茂みにしゃがんだ男が黒いフェイスマスクを着ける。
「本当に、やるんスね。冗談じゃなかったんスね」
タバコの火がゆっくりと動き、白い煙が月夜の晩に立ち昇る。
「ああ、最後はこうするしかねーんだよ。遠慮はするな、とにかく思いっきりやれ。責任はすべてこの俺が持つ」
五人の人影が茂みから飛び出し、明かりの消えた大きな建物へと走って行く。
遅れてバットを肩に乗せた男が現れ、煙草を地面に投げジリジリとそれを踏み潰す。
「これでシャンデリア・ナイトは終わりだ。天海さんよ、これが俺たちの答えだ」
降り注ぐ満々の光の中、ダンスウェアを着た八木がゆっくりと舞台中央へ歩いて来る。
会場のスピーカーからエレクトロニック・ダンス・ミュージックが流れ出し、八木は腕を組んでベースポーズを取る。そして膝でリズムを取り出し、流れでラウンジに入って次第に動きにグルーヴが生まれる。
無人の二階席が闇に沈む中、けれども彼女の瞳には熱狂する観客の姿が映っていた。
踊りの中で自然と笑顔になって行く八木、内股と外股をリズミカルに繰り返す、チャールストンを見せながら、JBステップを織り交ぜつつ、最後はコンビネーションで滑らかに舞台を移動する。
誰もいない会場にみどりの非常灯の明かりが点々と見えた。
調子が出て来た八木は、次に床の上を転げ回るウィンドミルに入り、そこから助走なしの空中技、くるくると体にひねりを入れるコークスクリューを決める。会場の盛り上がりにもっともっとと両手を上げて、さらに高難易度のエアートラックスやクリケットを連発する八木。
しばらく踊った後、八木は携帯電話を操作して音楽を止め、ひざに手をつきはあはあと肩で息をしている。
パチパチパチと突然会場に拍手の音が響いた。
「!」
誰もいないと思っていた所、突然の人の気配に驚き、急いで暗い会場に目を凝らす八木。
「……片桐、先生?」
闇の中を歩いて来る片桐の顔がだんだん明らかになる。
「いやー、黙って見ていてごめんねー。声を掛けようかとも思ったんだけどね、あまりに真剣に踊っているものだから、声を掛けそびれてしまった」
会場作りの途中の、物が散乱した状態の会場に、片桐の軽やかな声が響く。
「それに、観る者を圧倒するとても美しいダンスだったから、ついつい見惚れてしまって」
「そ、そんな」と八木が恥ずかしそうにうつむく。
「僕って ほら、書道が専門でしょう? だからダンスの事なんてぜんぜん分からなくて、僕にとってのダンスなんて、せいぜい子供の頃の盆踊りくらい」と片桐はボリボリと後ろ頭を掻いて、
「そんな僕でもさ、五年前、倉木さんと早見くんがすごい事をやっているっていうのは分かったんだ。いま目の前で奇跡が起こっているって、これはそうそう見られるものではないって。まさに会場は割れんばかりの歓声に包まれて、あの時の観客は異様に熱狂していた。次世代のスーパースターがプライドをかけてぶつかり合う白熱のダンスバトル」
「そ、そこまでは」
汗を飛ばしながら八木が指で頬を掻く。
「だからね、見てみたいんだ。あの興奮の続きを。
倉木さんと九条くんの、ダンスバトルを」
八木の瞳が大きくなる。
「僕はずっと楽しみにしていたんだ。あれから五年後のシャンデリア・ナイトの舞台で、あの時以上にヒートアップしたダンスバトルを」
片桐は遊ぶように会場を歩きながら、
「以前にも、今みたいに、ここで早見くんが一人 ダンスを踊っているのを目撃した事があったんだ。僕はほら、ここの施錠を任されているからさ」
そう言って片桐は顔の前で鍵を揺らして見せる。
「早見くんは本当に踊りが上手な子でね。動きがダイナミックで、ジャンプも高くて、どんな姿勢からでもピタッと体を止める事が出来て。あ、ごめんね、語彙力なくて。
それでね、今のように拍手をしながら、いやー 早見くんはダンスの天才だねって、心底感心していたら、彼はこう言ったんだ。
『先生、俺なんかよりもっとダンスが上手いやつがいますよ』
僕はビックリしてね、海外の有名なダンサーかねって聞いたら、なんの迷いもなく『俺の弟です』って言うんだ。へえー、そんなにすごいのかい、見てみたいものだねって言うと、
『見れますよ、先生。あいつ、五年後にはこの舞台に立って、史上最高のシャンデリア・ナイトを成功させます』って断言したんだよ。
当時の僕はただ笑って済ましていたけど、それって、まさにその通りになるんだよね」
スッと八木の視線は下がり、なんとも言えない口もとを見せる。
「そんな事、言ってたんだ」
「普通言えないよね、自分より弟の方がすごいって。その後で彼、トップアイドルグループに加入して、芸能界で成功を収め、日本メディア大賞で最優秀賞まで取って。兄としてのプライドってのもあるし、威厳ってのもあったろうに。それなのに、簡単に弟の方がダンスが上手いだなんて言ってさ。僕にも弟はいるけど、うん、僕だったらそんな事は言えないね。弟に得意な顔をされるの、嫌だもん。
だからね、早見くんにそこまで言わせた九条修二郎くんって、どれだけダンスが上手なんだろうって、僕はとても興味があるんだ。それがあと数日で見る事が叶う」
八木は腕の裏を触るような姿勢を見せて、
「でも、九条くんはイベントには参加しないって、だから、シャンデリア・ナイトは開催されないって」
片桐は腰の所で腕を組み、しみじみと天井を見上げて、
「あー そのこと。大丈夫だよ。彼はちゃんとシャンデリア・ナイトに参加するよ。準備も万全だ。彼はそのためにこの学校に入学して来たのだから」
「……え?」
「ま、先生の中には、彼を退学にした方がいいと言っている人もいるみたいだけど、大丈夫だよ。九条くんはね、最初から全部分かっている。ぜーんぶ分かった上で、何ていうのかな、自分が言った事に対して、引っ込みがつかなくなっていると言うか、金田くんというあまりに大きな存在に、簡単には屈したくないって言うか、うん、彼らしいよね。きっと子供のように駄々をこねているんだ。シャンデリア・ナイト開催のギリギリまで、彼は駄々をこねるつもりだ」
八木は次第に明るい表情になって行く。
「じゃあ、九条くんは」
「金田くん、よくがんばったよね、彼、本当にすごいと思うよ。
金田くんがいなかったら、僕はこんなに落ち着いてなんかいられなかっただろうね。もしかしたら本当にシャンデリア・ナイトは開催できなかったかもしれない、彼が必死になって仲間を説得してくれなかったら。
九条くんは、金田くんと出会ってから、明らかに変わったよ。口ではああ言っているけど、しっかりと彼の事を認めている。特に新木さんをまた走らせる事が出来た事については、きっとライバルに出し抜かれた気分だったと思うよ。あれは九条くんにはできなかったこと」
「…………………」
「金田くんがこの一年間、学校中を飛んで回って、一人一人イベントに反対しているクラスメートを説得して行った。そんな金田くんの姿を遠い所から九条くんは見ていた。そんな九条くんの背中を、僕は陰ながら見ていたんだ。九条くんだって馬鹿じゃない、むしろ頭のいい子だ。金田くんがどれだけ苦労して、どれだけすごい事をやってのけたのか、それが分からない子じゃないよ。彼はね、しっかりと金田くんの事をリスペクトしている。
そしてね、これはまあ僕の想像なんだけど、もしも今のC組に、早見くんが委員長として在学していたら、やっぱり金田くんと同じように学校中を飛び回っていたんじゃないかな。仲間思いで、正義感が強くて、困っている仲間がいれば絶対に見過ごせない。金田くんって、まるで早見くんだよ」
『どんな事があっても、どんな裏切りにあっても、どんな大きな嘘をつかれても、俺は最後まで仲間を見捨てない』
八木は照れたような上目遣いを見せ、
「そんなに、似ています? 彼に」
「おっと、それを僕に聞くのかい? 早見くんとずっと一緒にいた倉木さんが、その事を一番よく分かっていると思うけど。九条くんにしてもそうだ、早見くんに近ければ近い人ほど、二人に多くの共通点がある事に気が付く。それだから、九条くんはあんなに反発しているのかも知れないね。似ているから、金田くんが、自分を捨てた兄の存在に。
後はまあ、そうだね、あとは彼にきっかけというものが必要なんだろうね」
「………きっかけ」
頭上にあるシャンデリアの明かりが増して、八木の頬にまつ毛の陰ができる。
「そう、九条くんが素直になれる、きっかけだ。それは金田くんでも僕でも校長先生でもない。それは誰にでもできる事ではない。
それは倉木さん、あなたにしか出来ない」
そこで片桐は姿勢を正し、深々と頭を下げる。
「この通りです、倉木さん。彼を、九条くんを、兄の死から立ち直らせてあげて下さい。お願いです」
あわてて八木は両手を前に出す。
「や、やめて下さい、先生」
「それはあなたにしか出来ないこと。彼の閉ざされた心を開くのは、あなたの真実の告白です」
「…………………」
「酷だと思う、そんなの。とても残酷な事を僕はあなたにお願いしている。校長先生だって、直接は倉木さんに頼めなかった。
でも、倉木さんにしか、九条くんを立ち直らせてあげる事ができない」
『しっかりとスクープされているんですよ! 週刊誌の記事では、そこで意に沿わない行為があったと』
サングラスの横顔が遠ざかり、逃げるように早見は車に乗り込む。
『何もおっしゃらないのは、記事の内容をお認めになったという事ですか!』
『被害に遭われた女性たちに対して、謝罪の気持ちは一つもないんですか!』
片桐はもう一度深く頭を下げ、
「この通りです、倉木さん。彼に、九条くんに、早見くんの死の真相を伝えてあげて下さい。それは、あなたにしか出来ないこと」
八木は、震える指先をしっかりと握り締める。
「これ以上、早見くんを悪者にしてはいけないよ。そうだろう?」
夜の森の中を、あやしく駆け抜ける男たちの影。
その手の中には、金属バットや木刀など、危険な凶器が握られていた。
茂みにしゃがんだ男が黒いフェイスマスクを着ける。
「本当に、やるんスね。冗談じゃなかったんスね」
タバコの火がゆっくりと動き、白い煙が月夜の晩に立ち昇る。
「ああ、最後はこうするしかねーんだよ。遠慮はするな、とにかく思いっきりやれ。責任はすべてこの俺が持つ」
五人の人影が茂みから飛び出し、明かりの消えた大きな建物へと走って行く。
遅れてバットを肩に乗せた男が現れ、煙草を地面に投げジリジリとそれを踏み潰す。
「これでシャンデリア・ナイトは終わりだ。天海さんよ、これが俺たちの答えだ」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される
けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」
「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」
「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」
県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。
頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。
その名も『古羊姉妹』
本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。
――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。
そして『その日』は突然やってきた。
ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。
助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。
何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった!
――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。
そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ!
意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。
士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。
こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。
が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。
彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。
※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる