40 / 131
瓦解
しおりを挟む
「あれ? 美咲さん、まだお風呂に入ってなかったんですね」
あずさはわたくしの胸から顔を上げた。
「ええ、お楽しみの所をごめんなさい」
美咲は顔を背けるように、一番奥の洗い場へ歩いて行った。わたくしはあずさの両肩に手を置いて、力いっぱい押し返した。
「ちょっと、これは誤解だ。あずさが勝手に」
美咲は洗い場のシャワーを全開にした。
「ごめんなさい? ちょっと聞こえなかったんですけど」
あずさはお湯を割って進み、美咲に一番近い岩の上に両手を突いた。
「美咲さん、なんで水着なんて着ているんですか?」
美咲は黙々と体を洗っていた。
「ねえ、美咲さんってば」
ボディーソープを両手で泡立てながら、美咲は鏡の向こうで目を上げた。それはあずさを見たのではなく、彼女の背後にいるわたくしを見たのだった。わたくしはゆっくりと鏡の中からフェードアウトした。
「あなただって、水着を着ているでしょう?」
「あたしは、だって、こんな所をオーナーに見つかったら、きっと大目玉をくらうじゃないですか。だから、宗村さんとは混浴中という事で、アレンジをしたんです。美咲さんは、宗村さんとお付き合いをしているんですから、そんな水着なんて、必要ないんじゃないですか?」
あずさは、絵本で見た人魚のように、上半身を岩の上に乗せた。前のめりの姿勢が動く度に、水着のお尻がぷるんぷるんとよく揺れた。わたくしは謹慎顔を作りながら、横目でそれを見ていた。
「わたしが温泉に入るのに水着を着ていようがいまいが、それはあなたには関係がないでしょう?」
美咲は左腕を前に出して、ソープの泡を肌に伸ばした。
「それは、そうですけど。でも、お二人を見ていると、何だか付き合っているようには思えないんです」
あずさは岩の上に頬杖を突いた。
「他人の恋愛にケチをつけるな」
「だあって、見ていて余所余所しいんですよ。二年前、美咲さんと太古さんが付き合っていた時は、美咲さん、今よりもっとイチャイチャしていましたよね? 彼を見つめる目も、今とは全然違いましたし、とにかくとっても幸せそうでした」
美咲は長い髪をほどいて、紫色の髪留めを手首に嵌めた。
「あずさちゃん、あなたはまだ若いから分からないでしょうけど、大人になると、恋愛もそう簡単な話ではなくなるのよ?」
遠くから見ても分かるくらい、あずさは頬を膨らませた。
「それ、どういう意味ですか? あたしにはさっぱり分かりません。宗村さんの事が好きなら好きで、それでいいじゃないですか? その他に何があるんですか?」
美咲は髪を洗い流す手を止めた。
「彼の遺体、まだ見つかっていないの。この意味があなたに分かる?」
あずさは多弁なその口を閉ざした。そして「よいしょ」と更に高い岩の上に腰を下して、爪先でお湯を蹴った。わたくしはあずさの未成年と変わらない早熟な水着姿から顔を背けた。
あずさを黙らせた美咲の言葉が、仕事上の設定に則ったものなのか、それとも、あずさにちょっかいを出されて、心の奥底から発せられたものなのか、第三者のわたくしには測りかねた。太古の遺体が未だ見つかっていない、その逃れようのない事実が、美咲の心を拘束する足枷になっているという事なのだろうか。つまり彼女は、太古の遺体が発見されるまで、婚約者の死をいつまでも受け入れられない、そういう事になるのだろうか。
美咲は洗い場を離れて、わたくしから最も遠い湯に爪先を入れた。痛む腰をいたわりながら、ゆっくりと体を湯に沈めた。
「やっぱり、おかしいですよお二人は。どう見てもお付き合いしているようには見えません。何ていうのかな、何かの目的の為にそうやって恋人の役を演じているだけのように思えます」
江口の携帯電話の件と言い、今回の件と言い、この娘は勘が鋭い所がある。わたくしは美咲の次の言葉を待った。
「お互いが付き合っていると認めている所を、なぜそうあなたが否定してくるのか、その方がわたしにはおかしいと思うけど」
綺麗な二重を上げて、あずさを見据えた。
「じゃあ、証拠を見せて下さい。あたしの見ている目の前で、宗村さんとキスをして下さい。お付き合いをしているんでしたら、きっと簡単な事ですよね?」
あずさは鼻先を高くして、挑発的な態度を見せた。
「なんて事を言い出すんだ!」
「おかしな事でしょうか? それでお二人の疑いが晴れるんですから、簡単な事ではないでしょうか?」
美咲は冷静な態度を崩さず、肩で一つ息をした。
「あずさちゃん、ちょっとは頭を冷やしたらどう? この人は太古秀勝ではないの。顔は似ているけれど、東京でフリーライターをしている宗村賢治さんよ? 全くの別人じゃない。どうしてそこまで突っかかってくるの」
あずさは「よっ」と言って、岩の上から湯の中へ飛び込んだ。わたくしは水しぶきに顔を背けた。
「あたし、宗村さんの事が好きになっちゃったんです。初めは、宗村さんと太古さんがそっくりだったんで、あたしの胸がキュンと高鳴りましたけど、でも、二人きりで話をしている内に、宗村さんは太古さんよりもっとずっと素敵な男性だという事に気が付いたんです。宗村さんは、あたしの話をちゃんと聞いてくれますし、太古さんとは違って、あたしと真剣に向き合ってくれます」
「向き合ってないぞ」
「あずさちゃん。それだったら宗村さんに限らず、いくらでもあなたの話を聞いてくれる男性はいるんじゃないの? あなたゲレンデでも結構目立っていたし、よく若い男にナンパされていたじゃない」
美咲はタオルで額汗を拭った。
「いません。あたしの胸がこんなに高鳴る男性は、地元にはいません。太古さんにしたって、本当はあたし、あの人に意地になって付きまとっていたんです。今だから言いますけど、当時あの人にあんまりにひどい事を言われたんで、頭にきてそうしていたんです。でも、宗村さんは、なんていうか、とにかく一緒に居て心が落ち着くんです。ずっと一緒に居たい。だから、もしも美咲さんが何らかの事情があって宗村さんと付き合っている振りをしているんでしたら、あたしの恋路の邪魔をしないで欲しいんです」
あずさはぱしゃんとお湯を叩いた。わたくしはまた水しぶきに顔を背けた。
「邪魔? わたしが邪魔?」
美咲はあきれて天井を見上げた。
「とにかく、あたしのこの恋を諦めさせたいのでしたら、今すぐここで宗村さんとキスをして下さい」
わたくしは湯船に顔だけ出して、あずさと美咲を交互に見た。あずさは真っ直ぐに美咲を見つめ、美咲は静かに目を閉じた。
「できないんですか? 好きな人とキスが」
美咲は目を開けなかった。額に溜まった汗の一すじが頬を伝った。わたくしが何か言おうと口を開けると、
「できないわ。わたしはあなたの目の前で、宗村さんとキスはできない。これがわたしの答えよ」
あずさは得意そうな顔を作って、大きく腕を組んだ。
「なあんだ。じゃあ、お二人はお付き合いをしていないんですね? だったら、美咲さんはあたしと宗村さんの恋路を邪魔する権利はなんいですね?」
「初めから邪魔なんかしていないわ」
二人のやり取りをそばで聞いていて、この図太い神経の持ち主であるあずさを黙らせるには、熱烈なキスの一つや二つ、盛大に見せつけてやった方が良いのではないかと、わたくしは思った。それ位な事をしなければ、この先わたくしは、この破天荒な娘からとんでもない迷惑をこうむる事は、ほとんど間違いのない事実だった。
「美咲」
静かに湯を揺らして、わたくしは美咲の所まで移動した。
「?」
美咲はぱちぱちと瞬きをして、わたくしの行動を見守った。少々強引ではあったが、わたくしは彼女の小さな肩に両手を置いて、顔を近付けて行った。
「ちょっ、ちょっと、宗村さん」
美咲はびくっと肩をすくめた。あずさの強い視線を背中に感じた。
「こうなったら、仕方がないじゃないか」
予想外の展開に戸惑う美咲の表情は、正直可愛いとしか言いようがなかった。その顔がどんどん間近に迫って、あと一歩という所で、
「宗村さん!」
ぱん、と風呂場に大きな音が響いた。目の前の美咲の顔が左に消えた。脳天を突き抜ける頬の痛み。美咲は左手で胸を隠すような恰好で、右手を天井へ向けていた。つまりわたくしは、強引なキスの寸でで、美咲の強烈な平手打ちを浴びたのだった。
「調子に乗らないで下さい宗村さん! こんなの最低です!」
ぷいと顔を背けたかと思うと、美咲は一人水しぶきを上げて湯から上がって行った。
事の顛末を見守っていたあずさが、そっと背後から寄って来て、わたくしを下から覗き込んだ。
「宗村さん、痛かったですか?」
「痛いよ!」
美咲がぴしゃんと戸を閉めると、山と積まれた手桶が一斉に崩れ、がらんごろんと床一面に広がった。
あずさはわたくしの胸から顔を上げた。
「ええ、お楽しみの所をごめんなさい」
美咲は顔を背けるように、一番奥の洗い場へ歩いて行った。わたくしはあずさの両肩に手を置いて、力いっぱい押し返した。
「ちょっと、これは誤解だ。あずさが勝手に」
美咲は洗い場のシャワーを全開にした。
「ごめんなさい? ちょっと聞こえなかったんですけど」
あずさはお湯を割って進み、美咲に一番近い岩の上に両手を突いた。
「美咲さん、なんで水着なんて着ているんですか?」
美咲は黙々と体を洗っていた。
「ねえ、美咲さんってば」
ボディーソープを両手で泡立てながら、美咲は鏡の向こうで目を上げた。それはあずさを見たのではなく、彼女の背後にいるわたくしを見たのだった。わたくしはゆっくりと鏡の中からフェードアウトした。
「あなただって、水着を着ているでしょう?」
「あたしは、だって、こんな所をオーナーに見つかったら、きっと大目玉をくらうじゃないですか。だから、宗村さんとは混浴中という事で、アレンジをしたんです。美咲さんは、宗村さんとお付き合いをしているんですから、そんな水着なんて、必要ないんじゃないですか?」
あずさは、絵本で見た人魚のように、上半身を岩の上に乗せた。前のめりの姿勢が動く度に、水着のお尻がぷるんぷるんとよく揺れた。わたくしは謹慎顔を作りながら、横目でそれを見ていた。
「わたしが温泉に入るのに水着を着ていようがいまいが、それはあなたには関係がないでしょう?」
美咲は左腕を前に出して、ソープの泡を肌に伸ばした。
「それは、そうですけど。でも、お二人を見ていると、何だか付き合っているようには思えないんです」
あずさは岩の上に頬杖を突いた。
「他人の恋愛にケチをつけるな」
「だあって、見ていて余所余所しいんですよ。二年前、美咲さんと太古さんが付き合っていた時は、美咲さん、今よりもっとイチャイチャしていましたよね? 彼を見つめる目も、今とは全然違いましたし、とにかくとっても幸せそうでした」
美咲は長い髪をほどいて、紫色の髪留めを手首に嵌めた。
「あずさちゃん、あなたはまだ若いから分からないでしょうけど、大人になると、恋愛もそう簡単な話ではなくなるのよ?」
遠くから見ても分かるくらい、あずさは頬を膨らませた。
「それ、どういう意味ですか? あたしにはさっぱり分かりません。宗村さんの事が好きなら好きで、それでいいじゃないですか? その他に何があるんですか?」
美咲は髪を洗い流す手を止めた。
「彼の遺体、まだ見つかっていないの。この意味があなたに分かる?」
あずさは多弁なその口を閉ざした。そして「よいしょ」と更に高い岩の上に腰を下して、爪先でお湯を蹴った。わたくしはあずさの未成年と変わらない早熟な水着姿から顔を背けた。
あずさを黙らせた美咲の言葉が、仕事上の設定に則ったものなのか、それとも、あずさにちょっかいを出されて、心の奥底から発せられたものなのか、第三者のわたくしには測りかねた。太古の遺体が未だ見つかっていない、その逃れようのない事実が、美咲の心を拘束する足枷になっているという事なのだろうか。つまり彼女は、太古の遺体が発見されるまで、婚約者の死をいつまでも受け入れられない、そういう事になるのだろうか。
美咲は洗い場を離れて、わたくしから最も遠い湯に爪先を入れた。痛む腰をいたわりながら、ゆっくりと体を湯に沈めた。
「やっぱり、おかしいですよお二人は。どう見てもお付き合いしているようには見えません。何ていうのかな、何かの目的の為にそうやって恋人の役を演じているだけのように思えます」
江口の携帯電話の件と言い、今回の件と言い、この娘は勘が鋭い所がある。わたくしは美咲の次の言葉を待った。
「お互いが付き合っていると認めている所を、なぜそうあなたが否定してくるのか、その方がわたしにはおかしいと思うけど」
綺麗な二重を上げて、あずさを見据えた。
「じゃあ、証拠を見せて下さい。あたしの見ている目の前で、宗村さんとキスをして下さい。お付き合いをしているんでしたら、きっと簡単な事ですよね?」
あずさは鼻先を高くして、挑発的な態度を見せた。
「なんて事を言い出すんだ!」
「おかしな事でしょうか? それでお二人の疑いが晴れるんですから、簡単な事ではないでしょうか?」
美咲は冷静な態度を崩さず、肩で一つ息をした。
「あずさちゃん、ちょっとは頭を冷やしたらどう? この人は太古秀勝ではないの。顔は似ているけれど、東京でフリーライターをしている宗村賢治さんよ? 全くの別人じゃない。どうしてそこまで突っかかってくるの」
あずさは「よっ」と言って、岩の上から湯の中へ飛び込んだ。わたくしは水しぶきに顔を背けた。
「あたし、宗村さんの事が好きになっちゃったんです。初めは、宗村さんと太古さんがそっくりだったんで、あたしの胸がキュンと高鳴りましたけど、でも、二人きりで話をしている内に、宗村さんは太古さんよりもっとずっと素敵な男性だという事に気が付いたんです。宗村さんは、あたしの話をちゃんと聞いてくれますし、太古さんとは違って、あたしと真剣に向き合ってくれます」
「向き合ってないぞ」
「あずさちゃん。それだったら宗村さんに限らず、いくらでもあなたの話を聞いてくれる男性はいるんじゃないの? あなたゲレンデでも結構目立っていたし、よく若い男にナンパされていたじゃない」
美咲はタオルで額汗を拭った。
「いません。あたしの胸がこんなに高鳴る男性は、地元にはいません。太古さんにしたって、本当はあたし、あの人に意地になって付きまとっていたんです。今だから言いますけど、当時あの人にあんまりにひどい事を言われたんで、頭にきてそうしていたんです。でも、宗村さんは、なんていうか、とにかく一緒に居て心が落ち着くんです。ずっと一緒に居たい。だから、もしも美咲さんが何らかの事情があって宗村さんと付き合っている振りをしているんでしたら、あたしの恋路の邪魔をしないで欲しいんです」
あずさはぱしゃんとお湯を叩いた。わたくしはまた水しぶきに顔を背けた。
「邪魔? わたしが邪魔?」
美咲はあきれて天井を見上げた。
「とにかく、あたしのこの恋を諦めさせたいのでしたら、今すぐここで宗村さんとキスをして下さい」
わたくしは湯船に顔だけ出して、あずさと美咲を交互に見た。あずさは真っ直ぐに美咲を見つめ、美咲は静かに目を閉じた。
「できないんですか? 好きな人とキスが」
美咲は目を開けなかった。額に溜まった汗の一すじが頬を伝った。わたくしが何か言おうと口を開けると、
「できないわ。わたしはあなたの目の前で、宗村さんとキスはできない。これがわたしの答えよ」
あずさは得意そうな顔を作って、大きく腕を組んだ。
「なあんだ。じゃあ、お二人はお付き合いをしていないんですね? だったら、美咲さんはあたしと宗村さんの恋路を邪魔する権利はなんいですね?」
「初めから邪魔なんかしていないわ」
二人のやり取りをそばで聞いていて、この図太い神経の持ち主であるあずさを黙らせるには、熱烈なキスの一つや二つ、盛大に見せつけてやった方が良いのではないかと、わたくしは思った。それ位な事をしなければ、この先わたくしは、この破天荒な娘からとんでもない迷惑をこうむる事は、ほとんど間違いのない事実だった。
「美咲」
静かに湯を揺らして、わたくしは美咲の所まで移動した。
「?」
美咲はぱちぱちと瞬きをして、わたくしの行動を見守った。少々強引ではあったが、わたくしは彼女の小さな肩に両手を置いて、顔を近付けて行った。
「ちょっ、ちょっと、宗村さん」
美咲はびくっと肩をすくめた。あずさの強い視線を背中に感じた。
「こうなったら、仕方がないじゃないか」
予想外の展開に戸惑う美咲の表情は、正直可愛いとしか言いようがなかった。その顔がどんどん間近に迫って、あと一歩という所で、
「宗村さん!」
ぱん、と風呂場に大きな音が響いた。目の前の美咲の顔が左に消えた。脳天を突き抜ける頬の痛み。美咲は左手で胸を隠すような恰好で、右手を天井へ向けていた。つまりわたくしは、強引なキスの寸でで、美咲の強烈な平手打ちを浴びたのだった。
「調子に乗らないで下さい宗村さん! こんなの最低です!」
ぷいと顔を背けたかと思うと、美咲は一人水しぶきを上げて湯から上がって行った。
事の顛末を見守っていたあずさが、そっと背後から寄って来て、わたくしを下から覗き込んだ。
「宗村さん、痛かったですか?」
「痛いよ!」
美咲がぴしゃんと戸を閉めると、山と積まれた手桶が一斉に崩れ、がらんごろんと床一面に広がった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる