如月さん、拾いましたっ!

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

文字の大きさ
233 / 371

36話(2)こたつのせいで佐野家が崩壊?!でもくさいので一緒にお風呂入ります?!

しおりを挟む


 ごくごくごく。


 またお酒飲んでるし。てっきり数日分を買ったのかと思ったけど、1日分だったのか。


 それにしても、口は動くが頭が働かない。全くもって勉強が捗らない。昨日小春さんといっぱい勉強したし、今日ぐらいは勉強しなくたって別にいいか。うんうん。そうだそうだ。


「それにしても眠いなぁ……ふあぁ……あれ如月寝てるし」


 すこーー。


 こたつに入ったまま寝転がり、気持ち良さそうに隣で寝ている。あったかいし、眠くなるよね。私も眠いもん。如月の髪に優しく触れる。


「髪さらさら……」


 指先で顔にかかった髪を退ける。髪の間から出てきた顔は鼻筋が通り、目鼻がはっきりしている。肌も綺麗。思わず、見惚れてしまう。お兄ちゃんはいつも如月とキスしているけど、どんな感じなんだろう?


 兄と如月が寝ている静かな部屋は、好奇心を煽る。ぬくぬくとしたあたたかいこたつが、私の思考回路を鈍らせた。


 閉じられた瞼は口付けを待っているように思える。淡く色付いた唇に誘われるまま、そっと顔を近づける。サイドの後れ毛がはらはらと落ち、如月の顔をくすぐった。


 如月の顔が近い。こんなに顔を近づけたことは今までない。近づけていくうちに鼻筋が触れ合い、ハッと我に返り顔を離した。


「お兄ちゃんの恋人に一体何を!!!」


 頭を横に振り、邪念を払う。みかんの皮とお菓子の袋で散乱した机の上に、頬を付ける。SNSや友達の入れ知恵で知識だけが増えていき、性的なことに興味は増すばかり。


 実際にキスしたら何を感じるのかな? 唇は柔らかいのかな? どんな味がするのかな?


 お兄ちゃんはいつもほっぺを真っ赤に染めて、愛おしそうに如月を見つめながらキスしてるけど、そんなに良いものなのかな……?


 ぬくぬくぬく。


 暖かいこたつに包まれながら、ぼんやりと未遂に終わったキスのことを考える。考えているうちに、何度も何度も落ちてくる瞼に抗えなくなり、そのまま瞳を閉じた。


 ぐぅ。


 卯月と如月はこたつの魔力に勝つことができず、勉強も執筆も捗らないまま、眠りへ落ちた。



 *



 ちょっと仮眠するつもりが1時間以上寝てしまった。なんだかやけにリビングが静かに感じる。寝てるのかな?


 布団から起き上がり、和室を出て、リビングへ向かう。目の前に広がった光景に、自分の目を疑った。


 俺が仮眠を取る前はゴミひとつ落ちていない、綺麗な部屋だったはず……。


「きったなぁあぁあぁあぁあ!!!!」


 辺りに飛ばされた紙飛行機。なぜ、こんなに紙飛行機が床に落ちているのか理解不能。飛ばしたなら回収してくれ。何個も作る必要はあったのか!!!! 


「しかもこれ、ノートじゃん」


 紙飛行機をひとつずつ拾い、ゴミ箱へ捨てていく。ぽいぽいぽいぽい。なんなんだよ。こんなに飛ばして。もぉ。誰が掃除すると思ってるの!


 ぐちゃ。


 何か不快なものを踏んだ。足の裏はじんわりと濡れ、冷たさが広がる。濡れた足の裏をティッシュで拭く。何を踏んだの? 俺。落ちているものをしゃがんで見つめる。


「なっ!!!! ジュース拭いたティッシュ!!! 床に置くなよ!!! 床がベトベトになる!!!!」


 ふきふきふきふき。何? みかんの皮も床に落ちてるし。なんで床に捨てるの? ゴミ箱に捨てろよ。もぉ。誰が掃除すると思ってるの!!


 カラン。


 足に缶が当たり倒れた。危な!!! 中身が入ってなくて良かった。惨事になるところだった。缶を拾い、こたつの上へ置く。飲み物を床に置くな!!!! もぉ。誰が片付けると思ってるの!!!


 こたつの上はダメ人間製造機を思わせる、破壊力を放っていた。


 食べたら食べっぱなし。シェアしやすいように皿の如く広げれた菓子の袋。個包装の菓子は、食べもしないのに中身が包みから全て出され、まとめて置かれている。


 いつでも食べれる状態だ。


 みかんの皮。チューハイの缶。手を拭いたようなティッシュ。それらと一緒に置かれたノートパソコンと積み上げられた勉強用具。


 こんな悪魔が誘っているような机の上で、こたつに打ち勝ち、まともに勉強や執筆が出来たとは思えない!!!! むしろ負け試合!!!!


 そしてこの机の上。もぉ!!!! 誰が片付けと思ってるの!!!!!! いい加減にしろぉおおぉおおお!!!!


 すこーーーー。


 イライラする気持ちを逆撫でするように、気持ち良さそうな寝息が聞こえ、床を見る。頬を赤く染めた如月が、涎を垂らして寝ていた。


 もぉ!!! 起こしてやる!!! 片付けろばか!!! 頬を軽く叩く。ぺしぺし。


「如月起きて~~~~」
「ん~~……むつきさぁん……おはよぉ……」


 直感的に思う。あ、こいつ、酔ってる。


「如月、部屋汚いから一緒に片付けよ」
「ぇえ? ちゅーしてくれるの?」
「もぉ! 寝るなら和室に行って」
「えっちしたいの?」


 話が噛み合わない!!!! しかもなんか全部性的に捉えられる!!! なんで!!!!


 背中に手を回し、如月の上半身を起こす。めっちゃ酒くさい。匂いでこっちまで酔いそう。でも目がとろとろしていて可愛い。


 ちょっと酒くさいけど、キスぐらいならしてもいっか。顔を傾けて、如月に近づける。湿った唇が触れ合った。


「うぷ」
「え?」


 げろげろげろげろ~~~~。


「ぎぁあぁあぁあぁあぁああ!!!!!!!(※げろまみれ)」
「あ~~~~(※吐いたら酔いが覚めた)」


 何清々しい顔で前髪掻き上げてるんだよ!!! こっちはTシャツ全部如月のげろで汚れたのに!!!!


「睦月さん、げろくさ」
「誰のせいでくさなってると!!!!!」


 泥々に汚れたTシャツを脱ぐ。くさいくさいくさい!!!! 人のTシャツに吐くとかなんなの!!!! もぉ。誰が洗濯すると思ってるの!!!! こんの!!!!


「やってられっかぁあぁあぁあぁあ!!!!!」
「待って!!! 睦月さんそれ飲んじゃだめ!!! それ梅酒!!!」


 こたつの上に置かれた飲みかけの梅酒を一気に飲み干す。イライラ。もぉもぉもぉ!!! 2人して俺が片付けるから汚してもいいと思ってるんでしょ!!!!


「むーかーつーくーー!!!!!」


 ぷしゅ。


 まだ空いてない缶チューハイを開け、更に飲む。ごくごくごく。


「っはぁ~~!!!!」


 ふわぁ。なんかアルコールつよ。でもなんか酸味が美味しかったぁ。2人ともひどい。俺にばっかり全部押し付けて。やりたい放題。うっ。うっ。ぐす。


「うっうっ……2人してひどいっ…ぐす…俺が片付けるからって…うっ…なんでも…うっうっ……ふぇぇ~~ん……ぐす…」
「酔うの早っ!!!! 安定の泣き上戸!!! 卯月さんちょっと起きて!!! 睦月さんが大変です!!!」


 ひどいひどいひどいっ!! うわぁあぁあん!!!! 如月のばかぁ!!!!


 *


「卯月さん起きないし!!!」


 背中を叩いても卯月さんが起きてくれない。辺りを見回す。紙飛行機と濡れティッシュは無くなっているが、散らかり放題の床と机。そして、げろまみれの脱ぎ捨てられたTシャツ。酔っ払った睦月さん。


 地獄絵図!!!!!!


 なにこれ!!! 今まで佐野家で生活してきて、こんなこと一度もなかったけど!!! これはこたつのせい?!?!


 こたつが閉ざされた漆黒の扉(布団)を解放し、私たちを熱き地獄の世界へといざない、引き摺り込んでいるというのかぁああぁあぁあ!!!


 なんて恐るべき、悪魔の兵器!!!


「とりあえず、睦月さんどうにかしなきゃ」


 いつの間にかこたつに入ってる!!! 何故?!?! 地獄へ吸い込まれたか!!! こたつへ入り、机の上に頭を乗せ、ぐすぐす泣いている睦月へ近づく。


「睦月さぁん、こたつから出てください。くさいです」
「やだぁ~~こたつが俺を離さない」
「こたつを離してないのは貴方ですよ」


 脇の下に手を入れ、睦月をこたつから引っ張る。ずりずり。


「やだぁやだぁ~~俺が出したこたつなの~~」
「げろくさいのでお風呂入りますよー(泣いてなくても酔うと面倒くさいタイプだな)」


 やっとこたつから出た。はぁ。睦月を抱き上げ、肩に乗せる。もうこのまま運んじゃお。


「わぁあぁあっ! 歩ける~~っ」
「はいはい、歩けませんって」


 睦月を抱えて脱衣所へ向かって歩く。脚をバタバタさせ、暴れる睦月をしっかり両手で押さえる。この脚のバタバタに少しきゅんと来る。はぁ可愛い。


「よいしょっと……」


 脱衣所で睦月を下ろし、扉を閉める。睦月さんが酔っ払った私を可愛いとか言っていたが、今なら分かる気がする。真っ赤な頬と涙で潤んだ瞳がすごく可愛い。襲ってしまいそう!!!!


「げろで滲んだ肌着も脱ぎますよ」
「うっ…うっ…どうせ俺にえっちなことするんでしょ……ぐすっ」
「し、しないですって……(多分)」


 また泣き始めた!!! 泣き顔が可愛いよ!!! どうしよう!!! どきどきしながら、肌着を脱がせる。桃色の胸の突起に、程よくついた筋肉。はぁ、えっち。抑えられるかな。


「下も脱ぐよ」
「ぐすっ…早く脱がせてっ……うっうっ…」


 脱がせてって……誘ってるの?!?! ズボンのボタンを外し、ゆっくり下げる。下着のゴムに指先を引っ掛け、下ろしていく。流石に立ってないか。むしろ私の方が立ちそう。


「うっうっ…ぐすっ…如月も脱いで一緒に入って~~」
「う、う~~ん」


 言われた通り、着ている服を脱ぐ。睦月が酔いが覚めた時、怒らないように、脱がせた服も脱いだ服も、洗濯機の中へ全て突っ込む。


「如月早く入ろう~~」


 涙を溢しながら笑う睦月に、身体の中が少しずつ熱を持ち始めた。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...