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22話 『溶けゆく朝と、寄り添う温度』
しおりを挟むーー朝。
「ん……寝てしまった……」
鳥の声が微かに聞こえ、ふと、小屋の窓に目を向ける。窓からは明るい光が差し込み、昨日の雨が嘘のように空が澄んでいた。
「なんか暑いな……」
胸元が暑い。めちゃくちゃ暑いし、なんだか苦しい。窓から胸元へ目を向ける。ぎゅう。胸元が締め付けられている。無防備な寝顔で眠る水都が、毛布にくるまりながら、僕にしっかりとしがみついていた。
「可愛い……じゃなくて! ちょっ…なんで抱きついて……」
記憶を辿る。夜になると、全身濡れていたせいか、水都が熱を出した。寝付くまで側にいてあげようと思って、添い寝をしていたら、そう! いつのまにか眠ってしまって、こうなっている!!!
「水都、起きて」
とんとん、と肩を叩く。う~~ん、起きない。細くて小さな体が、自分の身体と重なって、下腹同士がちょうど、当たる。はぁ。どうしよう、少しでも動くと擦れる。
「ん~~っ……水都~~」
何度も肩を叩くが起きない。布越しでも伝わる体温と寝息が、僕の下腹をちょっとだけ熱くさせる。
すり…。
「……うっ……」
どうしよう。立っ……。とりあえず、まだ水都は寝ているわけだし、このまま起こさないで、収まるのを静かに待とう。一旦、起きて、外の空気でも吸ーー。
「……ん……あや…め…さぁん……」
寝ぼけた声が耳をくすぐるように、胸元から聞こえた。まじか。どうしよう。ぎゅう。胸元を締め付ける力が更に強くなる。やめて。更に大きくなるから。
「……ふぁ……ん~~……ねむ……」
「…………(まだ寝ぼけてる)」
意外と寝起きは悪いんだな。いや、そんなことより、早く離れないと!! また破廉恥御令息だと思われる!!!
身体を起こそうとすると、水都の腰が微かに動いた。
ごり…。
「…………(あぁ……)」
「ん……あさ……?」
水都の柔らかな吐息が、胸元にかかる。薄目を開けて、僕を見つめるその顔は、ほんのり赤い。胸元に抱きついていた腕が緩み、ゆっくり離れた。
「朝だよ、水都。もう起きて」
「……ん……ぁ…ふぁぁ~……」
下腹は既に限界突破している!!! このままでは、ただの破廉恥御令息である!!! 水都も起きたし、僕も起きよう!!! この下腹がバレる前に!!!
身体を起こそうとした瞬間、腰に腕が回された。
「はぁあぁあ!!! 水都!!! もう起きて!!! お願いします!!! お願いだから!! 僕の白い絵具が爆発する前に!!!」
「ふぁあ……朝から何言ってるの? 綾…明さ……ん…」
目擦りながら眠たげだった水都が、突然身体をびくりと震えさせ、大きな瞳を見開いて、僕を見つめた。
「お、おはよう……水…都……」
「お、おはようござ……じゃなくて……あ、あの……その……当たって…ます……あれ…が……」
「……まだ…大丈夫だよ……?」
「……大丈夫って…なんですか? あの……だいぶ……その……大きくなられて……あれが……」
顔を真っ赤に染めて、僕の下腹を見つめる水都を見て、固まる。えっと……。下着は穿いているけど……分かるよね……僕の立っているあれが…水都のあれに……当たっ…………。
くらぁ。
血の気が引いて、しがみついている水都ごと、仰向けになる。僕の上に乗る水都が、頬を叩いてきた。しかし、仰向けになったことで、余計に突き上げて水都に当たる。
心を無にして、腹の上にいる水都の背中に腕を回した。
「綾明さん!! 大丈夫ですか!!! 目が死んだ魚の目になっています!!!」
「理性というキャンバスに本能という絵具で全てを塗り潰していくことの残酷さ」
「綾明さん!! 何を言っているのか全く分かりません!!!」
「……とりあえず、僕から離れてみない? またここに挟んじゃうよ?」
背中に回していた手をゆっくり下ろして、尻と脚に触れる。水都が頬を赤らめ、即座に身体を起こした。離れたら、離れたで、少し寂しい。
「はぁあぁあ……お、俺っ……綾明さんと……っ」
「うん?」
水都が毛布を手繰り寄せ、毛布の中に顔を埋めた。挿れてはいないとはいえ、僕とえっちなことをシたことを、おそらく、ぐるぐる悩んでいるに違いない。
身体を起こし、寝癖のついた水都の髪に触れた。
「……どうしたの?」
「……やっぱりだめじゃない……?」
「僕に水都の全てをくれるんじゃなかったの?」
「……そうだけど」
「それに、僕たち恋人でしょ?」
「ぁあぁあぁあ~~っ!!! そうだった!!!」
耳まで真っ赤に染めて、頭を両手で押さえる水都に、思わずクスッと笑ってしまう。口唇を舌先で濡らし、水都の首筋に思いっきり吸い付いた。
「あっ……ちょっ…なっ…何してっ!!」
「ん~~……番予約~~」
「なっ、なにそれ!!! 番にはならないってば!!! もぉっ!! ねえっ!! 今首筋に何したの?! 綾明さん!!」
「なんにもしてないよ~~」
何をされたのかも分からず、ぽこぽこと拳で叩いてくる水都が可愛くて、笑みが溢れる。紅く咲いた口付けの痕を指先で撫でた。
「ぜったい嘘だもん!!!」
「はいはい」
水都のことが、昨日までとは、また違って見えて。少しずつだけど、でも確実に距離が縮まっている気がして、嬉しく思えた。
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