蜜色キャンバス〜御曹司とオメガの禁断主従〜

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

文字の大きさ
22 / 122

22話 『溶けゆく朝と、寄り添う温度』

しおりを挟む


 ーー朝。


「ん……寝てしまった……」


 鳥の声が微かに聞こえ、ふと、小屋の窓に目を向ける。窓からは明るい光が差し込み、昨日の雨が嘘のように空が澄んでいた。


「なんか暑いな……」


 胸元が暑い。めちゃくちゃ暑いし、なんだか苦しい。窓から胸元へ目を向ける。ぎゅう。胸元が締め付けられている。無防備な寝顔で眠る水都が、毛布にくるまりながら、僕にしっかりとしがみついていた。


「可愛い……じゃなくて! ちょっ…なんで抱きついて……」


 記憶を辿る。夜になると、全身濡れていたせいか、水都が熱を出した。寝付くまで側にいてあげようと思って、添い寝をしていたら、そう! いつのまにか眠ってしまって、こうなっている!!!


「水都、起きて」


 とんとん、と肩を叩く。う~~ん、起きない。細くて小さな体が、自分の身体と重なって、下腹同士がちょうど、当たる。はぁ。どうしよう、少しでも動くと擦れる。


「ん~~っ……水都~~」


 何度も肩を叩くが起きない。布越しでも伝わる体温と寝息が、僕の下腹をちょっとだけ熱くさせる。


 すり…。


「……うっ……」


 どうしよう。立っ……。とりあえず、まだ水都は寝ているわけだし、このまま起こさないで、収まるのを静かに待とう。一旦、起きて、外の空気でも吸ーー。


「……ん……あや…め…さぁん……」


 寝ぼけた声が耳をくすぐるように、胸元から聞こえた。まじか。どうしよう。ぎゅう。胸元を締め付ける力が更に強くなる。やめて。更に大きくなるから。


「……ふぁ……ん~~……ねむ……」
「…………(まだ寝ぼけてる)」


 意外と寝起きは悪いんだな。いや、そんなことより、早く離れないと!! また破廉恥御令息だと思われる!!!


 身体を起こそうとすると、水都の腰が微かに動いた。


 ごり…。


「…………(あぁ……)」
「ん……あさ……?」


 水都の柔らかな吐息が、胸元にかかる。薄目を開けて、僕を見つめるその顔は、ほんのり赤い。胸元に抱きついていた腕が緩み、ゆっくり離れた。


「朝だよ、水都。もう起きて」
「……ん……ぁ…ふぁぁ~……」


 下腹は既に限界突破している!!! このままでは、ただの破廉恥御令息である!!! 水都も起きたし、僕も起きよう!!! この下腹がバレる前に!!!


 身体を起こそうとした瞬間、腰に腕が回された。


「はぁあぁあ!!! 水都!!! もう起きて!!! お願いします!!! お願いだから!! 僕の白い絵具が爆発する前に!!!」
「ふぁあ……朝から何言ってるの? 綾…明さ……ん…」


 目擦りながら眠たげだった水都が、突然身体をびくりと震えさせ、大きな瞳を見開いて、僕を見つめた。


「お、おはよう……水…都……」
「お、おはようござ……じゃなくて……あ、あの……その……当たって…ます……あれ…が……」
「……まだ…大丈夫だよ……?」
「……大丈夫って…なんですか? あの……だいぶ……その……大きくなられて……あれが……」


 顔を真っ赤に染めて、僕の下腹を見つめる水都を見て、固まる。えっと……。下着は穿いているけど……分かるよね……僕の立っているあれが…水都のあれに……当たっ…………。


 くらぁ。


 血の気が引いて、しがみついている水都ごと、仰向けになる。僕の上に乗る水都が、頬を叩いてきた。しかし、仰向けになったことで、余計に突き上げて水都に当たる。


 心を無にして、腹の上にいる水都の背中に腕を回した。


「綾明さん!! 大丈夫ですか!!! 目が死んだ魚の目になっています!!!」
「理性というキャンバスに本能という絵具で全てを塗り潰していくことの残酷さ」
「綾明さん!! 何を言っているのか全く分かりません!!!」
「……とりあえず、僕から離れてみない? またここに挟んじゃうよ?」


 背中に回していた手をゆっくり下ろして、尻と脚に触れる。水都が頬を赤らめ、即座に身体を起こした。離れたら、離れたで、少し寂しい。


「はぁあぁあ……お、俺っ……綾明さんと……っ」
「うん?」


 水都が毛布を手繰り寄せ、毛布の中に顔を埋めた。挿れてはいないとはいえ、僕とえっちなことをシたことを、おそらく、ぐるぐる悩んでいるに違いない。


 身体を起こし、寝癖のついた水都の髪に触れた。


「……どうしたの?」
「……やっぱりだめじゃない……?」
「僕に水都の全てをくれるんじゃなかったの?」
「……そうだけど」
「それに、僕たち恋人でしょ?」
「ぁあぁあぁあ~~っ!!! そうだった!!!」


 耳まで真っ赤に染めて、頭を両手で押さえる水都に、思わずクスッと笑ってしまう。口唇を舌先で濡らし、水都の首筋に思いっきり吸い付いた。


「あっ……ちょっ…なっ…何してっ!!」
「ん~~……番予約~~」
「なっ、なにそれ!!! 番にはならないってば!!! もぉっ!! ねえっ!! 今首筋に何したの?! 綾明さん!!」
「なんにもしてないよ~~」


 何をされたのかも分からず、ぽこぽこと拳で叩いてくる水都が可愛くて、笑みが溢れる。紅く咲いた口付けの痕を指先で撫でた。


「ぜったい嘘だもん!!!」
「はいはい」


 水都のことが、昨日までとは、また違って見えて。少しずつだけど、でも確実に距離が縮まっている気がして、嬉しく思えた。


 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

オメガバース 悲しい運命なら僕はいらない

潮 雨花
BL
魂の番に捨てられたオメガの氷見華月は、魂の番と死別した幼馴染でアルファの如月帝一と共に暮らしている。 いずれはこの人の番になるのだろう……華月はそう思っていた。 そんなある日、帝一の弟であり華月を捨てたアルファ・如月皇司の婚約が知らされる。 一度は想い合っていた皇司の婚約に、華月は――。 たとえ想い合っていても、魂の番であったとしても、それは悲しい運命の始まりかもしれない。 アルファで茶道の家元の次期当主と、オメガで華道の家元で蔑まれてきた青年の、切ないブルジョア・ラブ・ストーリー

処理中です...