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第二章 セレスティアの伝承
第五十四話 #『触れるたび、君に堕ちてゆく』
しおりを挟む微かに香油の香りを含んだ髪を後ろでエリオットが整えていた。鏡の前で、火照った頬にそっと手を添える。エリオットの指が動きを止めた。鏡越しに目が合い、その目元がやわらかく細められる。
「……お綺麗です、ルイス様」
「……ありがとう。エリオットのおかげだよ」
そう答えながらも、胸にはほんの少しだけ、緊張が残っていた。
「このあとのこと……大丈夫ですか?」
静かに問われたその声に、恥ずかしさと、静かな覚悟が混ざり合う。ゆっくりと目を伏せて、小さく頷いた。
「……はい。怖くはないです。……ちゃんと、好きで……ちゃんと、触れてほしいと思っているから」
「……それなら、安心しました」
エリオットの指が、バスローブの胸元を整える。仕上げのような仕草に、背筋がすっと伸びた。
扉の向こうから、足音が近づいてくる気配がして。呼吸を整え、ほんの少しだけ瞼を伏せ、扉を開けた。
そこには、湯上がりの衣に身を包んだリアム殿下の姿があった。栗色の髪がわずかに湿り、肌にはほのかな紅が差している。
いつもより、少しだけ柔らかく、けれど、確かに『欲しい』と告げるような眼差しに、鼓動が早くなった。
「……ルイス。待たせたね」
「……ううん。そんなことないです」
視線が重なり、胸が高鳴る。でも、不思議と怖くはなかった。そっと差し出された手に、迷わず自分の指を絡める。それだけで、心があたたかくなった。
「では、僕はこれで失礼します」
エリオットが一礼し、寝室の扉が静かに閉まる。ふたりきりになった部屋には、月の光が射し込んでいた。
風もなく、音もない。けれど、空気が甘く揺れていて。ベッドのシーツが、ほんの少しだけ震えた。
この静けさごと、今夜の記憶に刻まれていくのだと思った。
*
ルイスの手を引き、ベッドの端に腰を下ろす。肩にかかったバスローブの隙間から、濡れた鎖骨が月光を帯びて覗く。それだけで胸が熱くなる。
「……そんなに見ないでください……っ」
眉尻を少し下げ、視線を泳がせるルイスが、どうしようもなく愛しい。頬に触れただけで、湯上がりの体温がじんわりと伝わってくる。
「見惚れるなっていう方が、難しい」
両手で頬を包み、ゆっくりと唇を重ねる。優しく、甘く、触れ合うように、口唇を啄む。ちゅ、と音を立てるたび、ルイスの呼吸がほどけていく。
薄く開いた口唇に舌を差し入れると、とろりと舌先が絡み、胸がきゅうと締めつけられた。
「……っ、ん……ふ、ぁ……んん……っ」
口唇の隙間から漏れる甘い鳴き声に、理性を堪える。唇を離すと、ルイスの瞳は潤んでいた。バスローブの隙間に指を滑らせ、鎖骨をなぞる。ルイスの肩が小さく震えた。
「……っ、あっ……」
「まだ、キスしかしていないのにそんな声を出すんだ?」
耳を甘く噛むと、ルイスの息が跳ねた。くすぐったさと甘さの混ざった震えが、腰まで伝わる。
バスローブの肩をそっと落とすと、柔らかな肩と胸元が露わになった。その白さに、理性が軋む。
「……んっ……」
手をゆっくりと、胸元に這わせ、指先で胸の突起を押し潰す。ルイスが頬を染め、びくりと身体を震わせた。その反応が可愛くて、指先できゅっと突起をつまむ。
「……んっ……あっ、だ、め……それ……っ」
「これ好き?」
「~~~っ……」
「ふふ、可愛いね」
耳元で囁きながら、バスローブの帯をするするとほどく。緩んだ布の隙間から覗いた腰を指先でなぞる。頬を赤らめ、小さく肩を震わせるルイスがいじらしくて、下腹に熱がこもった。
「やっ、……ん、ぁっ……あはっ……くすぐっ……あっ、ぁあっ……」
胸の先端に口づければ、ルイスは小さく身を縮めて、手でシーツを握った。その反応がいちいち愛しくて、可愛くて、余計に焦らしたくなる。
「くすぐったいの? 気持ちいいの? どっちかな?」
「そ、そんな言い方……っ、殿下いじわる……っ」
小さな拳で私の胸元にぽこぽこ当ててくる手を掴み、そのままベッドへ押し倒す。緩んだバスローブから覗く肌を、指先でやわらかく撫でると、ルイスの腰がくいっと逃げた。
「君が……自分から、『触れてほしい』って私にお願いしたら、触ろうかな」
「……っ、なんで……そんな、いじわるばっか……っ」
「君が、可愛いから」
「……っ……っ」
縫いとめられたように動けなくなるルイスの瞳が、必死に私を追う。腰に触れ、素肌の上をゆっくりと指をすべらせる。熱く蠢いている中心には触れず、周りばかりを撫で、焦らす。
「……っ、ん、だめ……そんなの、ずるっ……がまん、できな……っ」
涙声が混じった瞬間、バスローブの裾がぎゅっと掴まれた。
「なに?」
「……で、でんかぁ……さわって……?」
甘い言葉と私を見上げる潤んだ瞳に、胸の中で、何かが切れた。指先に潤滑剤を垂らし、脚を左右に割り開く。
ひくひくと収縮する小さな窄まりに指先を押し込んだ。肉壁をたどり、感じるところを探す。
「んぁっ……、はぁっ、あっ、あっ……やだっ、ああっ……!」
「やだじゃなくて、気持ちいいって言ってごらん」
「~~~っっ」
指を押し込むたびに、くちゅくちゅといやらしい水音が上がる。感じる部分を突くと、ルイスの身体がびくんと跳ねた。
「はぁっ、んっ、あっ……でんかぁっ……あっ、」
「気持ちいい?」
「っ、きもちいいっ……」
「じゃあ、どんなふうに気持ちいいか説明して?」
「えっ、そんな、の……んっ、ぁっあっ、むりっ……!」
とろりと垂れ下がった瞳が恥ずかしそうに涙を溢す姿が可愛くて、つい、いじわるしたくなる。ひくりと頭を揺する、幹の先端を指先で撫でた。
「もう、こんなに濡れちゃって。可愛いね」
「ぁあっ、もぉ、むりっ……ん、はあっ、やあっ……」
「可愛い。もっと焦らして鳴かせたい。けれど、もう、限界だ」
「それって……」
ルイスが大きく瞳を見開き、私をまっすぐ見つめる。何か言いたげな、真剣な瞳に、思わず、指先を抜く。抱き寄せようとした私の手を、ルイスがふいに押し返した。
「どうした……? やめておくか……?」
「お、俺は……今日……伝家の宝刀をつかう……っ」
「へ?」
どん、と胸元を押され、視界が一瞬揺れる。気づけば、ルイスが私の腰に跨がっていた。薄いバスローブの裾がふわりと開き、月明かりが彼の太腿を淡く照らす。
「ちょっ……ルイス……?」
「……あっ……えっと、そうだっ……『きもちいいって声出さないと、止めるから』……っ!」
「……どこで覚えた……その台詞……」
照れた顔で私の上に跨るルイスが、あまりにも可愛くて、笑いが溢れた。
「ふーん……? じゃあ、やってごらん。私に声を出させてみてよ、ルイス」
そっと、ルイスの腰に手を添える。触れた瞬間、ルイスがかあっと顔を赤く染めた。可愛すぎて、どうにかなりそうなくらい、下腹が熱くなった。
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