走る方舟の憑依玩霊達(ファントムズ)

丸ーニィ

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第二章二部 高高度激闘! 天国教団編

八十四話「狂気」

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 彼の動揺は計り知れない様だ、亡霊は未練というモノに異常に執着する。
 それは存在意義すらも決定付ける重要なものだと、菊名はザジから聞いている。

「クソッ! 忘れればいいんだよ! ほっとけよ、あのババア! 」

 亡霊の男の様子がおかしい、ボディである二依子の作品のプラモデルも震えている。

「今だ! 」

 菊名はフィギュアの腕から、隠し武器であるアームカッターを展開すると、亡霊の男のボディであるプラモデルの手首を切り払った!

「ぐあああ! このガキ! 」

 反撃しようとライフルを構えようとする亡霊の男、だがライフルの持ち手が切られてライフルと共に足元に落ちる。

「アストラルソード! 」

 すかさず追撃の姿勢である菊名の霊力スキルが剣を纏う、そのまま亡霊の男のボディの突き立てようと攻撃を試みる。
 だが男の油断は一瞬のみのようで、突き立てた剣は亡霊のバリアに阻まれた。

「所詮お前は生き霊(プレイヤー)なんだよ! そんなスキルじゃ亡霊のバリアには太刀打ち出来ないんだ! 」

「クッ......!」

 亡霊の男の反応の俊敏さを目の当たりにした菊名は、沼島ナックルのブースターで飛び上がると、狭い空間での空中戦に打って出る。

「これならドウよ! 」

 菊名の真っ先に飛んでやることは、サーバーとしてぶら下がってる電子部品を攻撃すること。

「いけええ! 」

 サーベルに残った余剰霊力で再び物理強度透過スキルを刃に走らせると、ぶら下がってる携帯電話の基板を切り払った!

「やめろおお! 生け贄を解き放つな! 」

 男が憤慨する。
 切り払った携帯電話の基板から囚われていたプレイヤーや観客の霊体が幾人か解放され。
 元の体に戻っていくのが菊名に確認された。

「行ける......! すぐに愛華の魂を探さなきゃ! 」

 菊名は周囲に気を配る、だがすぐにもその追跡者はやって来た。

「グオオオオオオオオオオ! 」

 菊名の行動に、亡霊の男のフラストレーションが大きく揺らぎ、狂乱するかのように襲いかかる!

 慌てて逃げ回る菊名、狂乱した亡霊が追従する中。
 船内火災を誘発した通路に立ち戻り、煙で身を隠し逃げ回る。

「もう少し、もう少しでみんなを解放出来る! 絶対に諦めないんだから! 」

 船内での菊名の戦いは膠着状態を見せていた。

 ******

 一方、船の巨大霊体の前に開いた結界の綻びの前では。

 スズハ率いる天国教団の亡霊達が二依子の過去の作品のプラモデルをボディにして、ザジ達の前に立ちふさがっていた。

「揃いましたね、みんな......」

「 ! 」

 その数、七人。

 ザジの前にスズハ含め四人。

「なんやこいつら、二人係りとかズルいわ!」

 ねぱたの前に二人、結界の穴を抑える頭目に一人。

「ちょ! こっちに来るでない! 結界抑えるのに精一杯なんじゃああ! 」

 それぞれ船の巨大霊体からの霊力補助を受けて、空中機動に制限を無くした亡霊達である。

「ハイ・ファントム! オーヴァード・エッジ! 」

 スズハ率いる教団相手に、ザジはオーヴァードエッジによる霊力の過剰な刃を再び形成。

 大きく上段からスズハに向けて斬りかかる!

 以前のオーヴァードエッジの使用した霊力の、余剰部分をリサイクルしての再起動しての攻撃である。

 (一人でも早く撃墜しないと、ねぱた姉さんはともかく他の奴らが持たない! )

 残る霊力を更に込めて、ザジはスズハにオーヴァードエッジを振り下ろす!

 だが......

「 ! 」

 三人の教団メンバーが一丸になってバリアを形成!
 スズハを護るように展開する。
 巨大霊体の補助もあってか、結果的に三人がかりでオーヴァードエッジを食い止めた!

「ぐぐっ!」

 押されているが、ザジの全力攻撃は亡霊三人で何とか完全に止められる様子。
 そしてバリアを破ろうと剣を押して足掻くザジに、スズハは不敵な笑みを浮かべて槍の様な武器を掲げる。

「私達の方舟の"叫び"を喰らいなさい! 」

 スズハがそう言うと槍を振り下ろす!

 すると......

 背後に見えた船の巨大霊体の艦首部分が変形!
 まるで羽毛の無い鳥の頭の様な、歪な形を形成する!
 口を開けてザジの位置を確認すると......

 強烈な鳥の霊声が、ザジに向けて放たれた!

「「グエエエエエエエエ! 」」

 雄叫びにも聞こえる禍々しい鳥の鳴き声が、霊音波の奔流になって前方のザジを襲う。

「ぐああああ! 」

 その強烈な霊声がザジの霊体を直接攻撃し、霊体をズタズタにする。

「ああ......くそ......ヤバイ......体が......あああ! 」

 ザジのプラモデルのボディに浸透していた霊力が、大きく削れ内部の霊力が半分まで失う状態になっていた。
 更に霊体も直接攻撃により全身が赤黒い色に変色している。

「ザジ君! 」

 見ていたユナの声が悲壮感を漂う。
 力を失ったザジのプラモデルボディは、その場でガクリと倒れ込み。
 結界の足場に膝待つく様になっている。

「貴方でも動けないでしょうね、普通の亡霊でも霊体が吹き飛ぶほどですもの......」

 スズハは槍の先端をザジのプラモデルの胸部に押し付けて、不敵な笑みを浮かべる。

 槍の先端は半田ごての様な熱源の発生するパーツが付いており、霊力により徐々に熱を帯始めていた。

「私、気になりますの......亡霊のあなたがどのくらいボディを壊されたら、その状態を維持出来なくなるのか......」

 熱を持った槍の先端が、ザジのプラモデルボディの胸部を溶かし始める!

「 ! 」

「それはどの辺までが、所謂コックピット的な部分なのか......」

 ズブリ
 (ぐ! )

 押し当てる槍の先端は赤く光る。
 ザジのプラモデルボディの胸部装甲をゆっくり焼き、煙が立ち込めた。

「はたまた、メインフレームが壊れたら? 」

 ズブリ......ズブリ
 (ううう! ああああ! )

 もうザジのプラモデルの胸部装甲は、大きく穴が穿たれている。

「それとも、もっと大きく壊す必要がある? 」

 ズブリ!ズブリ!
 (まだ!動けない!......)

 槍は胸部装甲を壊して尚、掘り進み。
 内部の「破壊してはいけない」部分に到達しつつある。

 ジジジジ......!
 (ヤバイヤバイヤバイ! もう! 体が! )

「焼け焦げて装甲にこんな穴が空いてもまだ元気ね、じゃあ一気に押し込んで貫通させてあげましょう! 」

 満面の笑みのスズハは一気に槍を貫き通すべく、霊力を熱に変えて更に槍を押し込もうと身構えた!

「あああああ! 」

 皮膚を貫き、内臓に至ろうする刃を思わせる感覚がザジを襲う!

「アカン! やめろや! ザジ! はよ逃げるんや! 」

 二人に取り囲まれながらもザジを気遣うねぱただが、自信もそれどころじゃない。

 彼女もまた霊力切れ寸前である。

「さようなら、二依子の亡霊の騎士さん......」
「貴方の役目はここまでよ、私は二依子を連れて"天国"を目指すわ」

「だって、私は二依子の最愛の友人ですもの......」

 赤いプラモデルの背後に映るスズハの顔は、狂気にも歓喜にも満ちた表情で。
 今にも笑いだしそうな笑顔をしていた。

 ......

 だが!!

 今そこに有る運命に吸い込まれるが如く

 そこに飛び込むモノが来る!

 いいや!
 そこにやって来た!


「 ク マ だ! 」

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