俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第一章 「ヒンデンブルクオーメン」

第3話 「旅立ち」

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 家に戻ると、俺は荷物の準備を始めた。

 幸い、魔獣狩りに行くための荷物をまとめていたので、準備にあまり時間は掛からなさそうだ。

 まずは武器を確認する。

 クロエから貰った魔法銃――アクアレイジ。

 こちらは、整備済みで問題ない。

 次に、重要なのはだ。

 アルカナプレートには、アルカナプレート同士のお金のやりとり――決済のほかに魔力を注ぐと報酬を得ることができるという機能がある。

 クロエによるとすべてのアルカナプレートは、トークンコアというアーティファクトに魔法的つながっているらしい。アルカナプレートに注がれた魔力は、魔力パスを通して即座にトークンコアに送られるそうだ。魔力を受け取ったトークンコアは、その証として受け取った魔力の量に比例した報酬《おかね》をアルカナプレートへ返す仕組みだ。

 この仕組みは一方通行だ。一度アルカナプレートに注いだ魔力は、取り出すことができないのがこの世界の常識だ。だが、どういうわけかクロエから貰ったアルカナプレートとアクアレイジは、逆――すなわち、ディムを払って、魔力が必要な水の弾を撃つことができる。 

 クロエの作った魔道具のことだから何か特別な仕掛けがあるのだろう。そう思うことにしている。なにせ、これに関してはなにを聞いても「なにもない」と言って詳細を教えてくれないのだ。

 謎多き相棒を取り出し盤面をタップする。

 2564ディム――。

 残高が表示されたことを確認し、アルカナプレートの繋がったネックストラップを首にかける。旅に必要な食料や水、防護用の布や薬草を鞄に詰めていく。

 陽が本格的に村に差し込む頃、俺はすでに準備を終えていた。

「よし」

 俺は腰のアクアレイジを確かめてから荷物を背負った。

 リアディスへの道は長い。高原地帯を抜けて、レオリア王国の心臓とも言える巨大都市に向かう長旅だ。この小さな村とは比べ物にならないほどの大きな世界が、待っている。

「さて……行くか」

 小さく呟きながら、玄関の扉に手をかけて一歩を踏み出す。

 村を出る前に、商店に立ち寄ることにした。

 旅に必要な物資――追加の保存食や水、それから魔獣との遭遇に備えた道具をいくつか手に入れておく必要があるからだ。

 商店の主人であるオルソン爺さんは、俺の姿を見ると驚いた表情を浮かべた。

「アルヴィオか。こんな朝早くからどうしたんだ? その大荷物はなんだ?」

「ちょっとリアディスに行く用事ができた。長旅になるかもしれないから、いろいろ揃えておきたいんだ」

 オルソン爺さんは俺の顔をじっと見て、そして小さく頷いた。

「そうか……まあ、何があっても無茶はするなよ。リアディスは、大きな街だ。俺たちみたいな田舎者には、危険が多い…気を付けることだ」

 そう言いながらも、オルソン爺さんは手際よく旅用品を揃えてくれた。保存食、浄水薬、虫除け香草、そして携帯用の火石などだ。確認を終えた俺は、アルカナプレートを取り出して決済を行う。

「いくらだ?」

「95ディムだ」

「……高いな。もう少し負けてくれ」

「ったく、生意気だな。80ディムでどうだ」

「わかった。それでいい」

 オルソン爺さんが店のアルカナプレートを操作する。そこに、俺のアルカナプレートをかざすと、瞬時に取引が完了する。音と光と共に、俺のプレートから店のプレートへとお金ディムが移動する。プレートの表面に残高が表示され、取引が完了したことがわかる。前世の感覚では、電子決済に近い。

「まいどあり、あんまり老人をいじめるもんじゃないぞ」

 そう言って笑うオルソン爺さんに、俺は頭を下げた。

「ありがとう、爺さん。これで何とかなるよ」

「まあ、気をつけろよ、アルヴィオ。何かあったらすぐ戻ってこい」

「ああ、痛みいるよ」

「あと、すこし待ってな」

 そう言って、再び店の奥に姿を消す。戻ってきたオルソン爺さんの手には、小さな箱があった。

餞別せんべつだ」

 そういって渡された箱を開けると、中には魔力石が入っていた。淡い青色に輝いており、見るだけで質のいいことがわかる魔力石だ。

「こんな高いもの…いいのか?」

「こんな爺さんがが持っていても仕方ないものだ。持ってけ」

「助かるよ。大事に使わせてもらう」

 俺は頷き、荷物を肩に担いで商店を後にした。昨日の祭りで賑わった村の景色は、すっかり日常に戻っていた。家々からは朝食の支度をする音、木々から小鳥のさえずりが聞こえてくる。その日常が、まるで俺を引き止めるかのように思えた。

 だが、俺は振り返らずに前に進んだ。

 何人かの村人たちが俺に手を振ってくれたが、俺は小さく微笑み返しながら歩を止めず、村の外れへ向かう。

 村の外れに着くと、そこには見慣れた風景が広がっていた。

 緑豊かな森と、遠くにそびえる山々。そして、その向こうに広がるリアディスへの道。高原地帯を抜け、様々な都市を繋ぐこの道は、これまで俺が見たことのない世界へと続いている。

 待ってろよ、リーリア。

 必ず迎えに行く――。

 俺はそう自分に言い聞かせて、一歩を踏み出した。ノーヴェ村の南門から、リアディスへと続く道を歩き出す。
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