俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第一章 「ヒンデンブルクオーメン」

第4話 「ベルドの森」

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~憲章暦996年12月22日(火の日)~ 

 木々が鬱蒼うっそうと生い茂る森の入口で、俺は足を止めた。

 ベルドの森。

 地図上では、リアディスへ向かう最短経路となっているが、魔素濃度の高さと魔獣の多さから旅人には敬遠されがちな場所だ。けれど、今の俺にとっては一刻の猶予も惜しい。フェルディナ平原に抜けるには、街道を通れば三日はかかる。だが、この森を抜ければ一日で辿り着ける。それに、魔獣を倒すことである程度のディムも確保しておきたい。

 森に一歩足を踏み入れた途端、空気が変わった。ひんやりと湿った風。枝の擦れる音が耳元でささやき、どこからともなく獣の唸り声が混じる。

 しばらく歩いていると、何かの気配を感じた。足を止めて耳を澄ますと、茂みの奥からうなり声が聞こえてきた。

「……魔獣か」

 アクアレイジに手をかけ、俺は身構えた。俺は一歩踏み出し、茂みに近づいた。
 
 茂みの中から現れたのは、小型の魔獣――二つの尾を持つスプリントフォックスだった。背丈は中型犬ほどだが、その動きは俊敏で、赤く光る双眸《そうぼう》がこちらを正確に捉えている。

 俺は即座にアクアレイジを構え、狙いを定める。

 だが、地面を蹴って左右に素早く動き、こちらの射線を外そうとしてきた。

「なかなかやるな」

 俺は深呼吸し、わずかな予備動作の癖を見抜く。次の瞬間、奴が再び跳んだ――その軌道上に銃口を合わせて引き金を絞る。

「これで……終わりだ」

 水の銃弾が空を裂き、スプリントフォックスの胸を正確に貫いた。鳴き声をあげる暇すらなく、魔獣はその場で崩れ落ちる。やがて、その体が霧のように解け、紫と蒼が混ざる魔力の粒子となって空間に舞っていく。

 アルカナプレートをかざすとその一部が吸い込まれ、盤面が淡く輝く。

 カチッ。

 小さな音と共に、数値が浮かび上がる。
 
 +43ディム。

「……よし、正常に吸収されたな」

 魔力の塊である魔獣は、倒すことで直接的にお金にできる存在だ。弱い魔獣を倒すことは、この世界の住民にとって貴重な収入源となっている。魔力の吸収を終え、振り向くと、草がわずかに揺れた。

 ――まだいる……か?

 警戒を強めて一歩後ずさる。しかし、そこに現れたのは小さなリスのような生物だった。どうやら、スプリントフォックスの縄張りに迷い込んだだけの野生動物らしい。

「紛らわしい」

 胸を撫で下ろし歩みを進める。その後も、数体の魔獣と遭遇し魔力をお金に変えてゆく。空中を滑空する鳥型の魔獣や、複数の群れで襲いかかってきた小型の魔獣は、アクアレイジの性能と、クロエに叩き込まれた狩猟の経験で問題なく倒すことができた。

 だが、――油断していた。

「もう少しで、森を抜けられるはずだ」

 そう思った矢先、地面が揺れた。

 低い唸り声。空気が、圧迫されるような感覚に変わった。

 木々の間から、ひときわ大きな影が現れる。全身を棘のような鱗で覆い、背丈は三メートル近い。牙は丸太ほどもある。

 その異形はスパインリザードだ。

 アクアレイジを構えた俺の手に、冷たい汗が伝った。

 こいつは、今までのとは違う。

 クロエの話にも出てきた中型クラスの魔獣だ。

「……やるしかねぇ」

 引き金を引く。

 だが、鱗の装甲に水弾は弾かれた。

「ちっ!」

 スパインリザードが突進してくる。俺は地面を蹴り、転がるようにして回避した。体勢を立て直しながら、懐から小さな金属筒を取り出す。クロエがくれた補助装填式の魔力弾だ。

「頼むぞ……アクアレイジ」

 装填し、魔力回路が共鳴して淡く輝いた瞬間、再び銃口を構える。魔力が収束し、鋭い螺旋を描いて撃ち出される。

 命中だ。

 スパインリザードの腹部の一部にひびが入り、光が漏れ始める。

「もう一発っ!」

 俺はもう一度、引き金を引いた。命中した瞬間、その巨体が、鈍い音とともに崩れ落ちた。

 しばしの静寂の後、スパインリザードの身体も粒子となって空に還っていく。

 アルカナプレートをかざすとが淡く光り、数字が跳ね上がった。

+976ディム。

「ふう……っ」

 額の汗をぬぐい、俺は改めて空を仰いだ。木々の隙間から差し込む光が、森の出口が近いことを告げているように思えた。

「リーリア、待ってろよ……」

 そう呟いて、俺は再び歩き出した。
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