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第三章 「アセンディング・トライアングル」
第19話 「魔力本位制」
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~憲章暦996年12月30日(水の日)~
年末年始で取引所が休場となる中、俺とアイラは取引に備えて情報の整理をすることにした。
俺たちは居間に集まり、まず奴隷オークションに関する情報を整理することにした。 集めた資料をまとめると、通常の奴隷の落札価格は30万~35万ディムほどらしい。
「つまり、資金を1か月で10倍程度にはする必要があるってことだな……」
俺は手元のメモを見ながら、現実の厳しさにため息をついた。アイラもその計画の無謀さに、少し顔を曇らせたように見える。
「……でも、やるしかないですよね」
「もちろんだ。やれることは全部やってみるさ」
内心は、かなり焦りを感じていたが、俺は笑みを浮かべてそう答えた。アイラ曰く、南区の奴隷オークション会場は、リアディスの住人なら知っている人も多いという。
オークション会場に入るには特別な資格はいらない。身分と資産を証明できるものと、秘密を外部に漏らさないという誓約書にサインをすれば基本的には入れるらしい。
その後、俺たちはトークンコアについても理解を深めることにした。
この舞台装置の理解なくして、この世界で生きていくのは不可能だ。何しろ、トークンコアはこの世界の経済の中心であり、全ての取引がその存在に依存していると言っても過言ではない。
「アイラ、リアナが言ってたトークンコアの三大機能は覚えているか?」
「えっと…たしか、決済、金融調節、市場…だったと思います」
「その通りだ」
俺は頷いて、アイラに向き直る。ここからが肝心だ。
「まず、決済についてだが…」
俺は手元の資料を指しながら説明を始めた。
「これは比較的わかりやすい。要するに、お金のやり取りを行う仕組みだ。俺たちがアルカナプレートを使って店で支払いをすると、そのお金は一度トークンコアを経由して店主に届く」
「つまり、トークンコアが中央で全ての取引を管理しているんですね」
「そういうことだ。トークンコアは全ての決済情報を管理していて、そのおかげでどこでも同じようにディムを使えるんだ。これがなければ、たとえば遠く離れた地域で支払いをするたびに別の通貨に換金しなければならなくなる。トークンコアがあることで、俺たちはその手間を省けているんだよ」
「当たり前のように使っていましたけど、改めて考えるとすごいですね…」
アイラは感心したように呟いた。
その驚きも無理はない。高度な機械文明が発達していた前世の世界もここまでの決済システムは完成していなかった。
「次に金融調節だが…これは少しややこしい。トークンコアは、世界中のアルカナプレートから魔力を集め、それに応じてお金を発行している。アルカナプレートに魔力を供給すると、対価としてお金が得られるというわけだ。その過程でトークンコアは魔力とお金の交換比率を定期的に調整して、通貨量をコントロールしているんだ」
アイラを一瞥《いちべつ》する。その瞳は真剣そのものだ。俺は、話を続ける。
「例えば、景気が悪いときに魔力1に対して得られるディムを増やすっていうのは、人々にもっとお金を使わせて経済を回すためなんだ。逆に、景気が過熱しているときにディムを減らすのは、物価が上がりすぎて人々の生活が苦しくならないようにするためだ。そういう意味では、トークンコアはこの世界の安定を保つ重要な存在なんだよ」
俺は一瞬、考えを巡らせた。トークンコアの金融調節機能は、まるで前世でいう中央銀行のような存在だ。通貨の供給量をコントロールして、物価と景気を安定させる――同じだ。
前世の知識がなければ、この仕組みを理解するのは難しかっただろう。
この世界の仕組みは、言うなれば魔力本位制だ。
「つまり、トークンコアが世界の通貨量を調整しているから、景気が過熱しすぎたり冷え込んだりするのを防いでいるんですね」
アイラは、理解が早くて助かる。
「そうだ。ただ、どうやってその比率を決めているのかは、明らかになっていないらしい。魔力の量とディムの価値——そのバランスを保つために、トークンコアが何らかの基準で調整しているんだろうが、それが何かは誰も知らない」
俺は少しだけ肩をすくめた。そのへんの情報の不透明さは、この世界でも変わらないらしい。
「本当に…謎めいていますね。まるで生きているみたいです」
「確かにそうだな。だけど、その謎を理解することが、俺たちが取引で成功する鍵でもあるんだ」
「そうなんですね…。トークンコアがなければ、この世界の経済は成り立たないということはよくわかりました」
「その通りだ。だからこそ、俺たちはこのシステムをよく理解しておく必要があるんだ」
アイラは真剣な表情で頷いた。
「最後の市場機能についてだが…簡単に言うとオークションみたいなものだ」
「はい」
「これは、実際に取引を行ったから感覚的には理解できているはずだ」
「そうですけど、あまりトークンコアの仕組みまでは意識していませんでした」
「最初はそれでいい。次第にわかってくると思う」
「アイラたち取引魔法士は、トークンコアに対して、何をどの価格で売りたいか、あるいは買いたいかを提示する。それによって市場価格が決まる」
アイラの理解が、追い付くように一拍の間をとる。
「たとえば、俺たちがある商品を買いたいとする。その場合、トークンコアを通じてその価格を提示して、売りたいと思っている相手がいれば、取引が成立する。逆の場合も同じだ」
「なるほど…」
「これは、トークンコアが取引の場を提供しているようなものだ。匿名の者同士で価格のすり合わせを行う。このシステムを利用して、取引所で株式や商品を売買するんだ」
「それって、結構難しそう感じてしまいます…」
「確かに、最初はややこしく感じるかもしれない。でも、慣れてしまえばそんなに難しいものでもないんだ。俺たちの取引がうまくいくかどうかは、どれだけ市場の動きを読めるかにかかっている」
アイラは真剣な表情で頷いた。
「もちろん、買いたい価格や売りたい価格の提示には魔法士が必要になる。だから、俺には、アイラの力が必要なんだ」
その言葉を聞くと、アイラは少し照れくさそうに微笑んだ。俺はアイラの表情を見て、アイラも少しずつ変わっていくのを感じた。
年末年始で取引所が休場となる中、俺とアイラは取引に備えて情報の整理をすることにした。
俺たちは居間に集まり、まず奴隷オークションに関する情報を整理することにした。 集めた資料をまとめると、通常の奴隷の落札価格は30万~35万ディムほどらしい。
「つまり、資金を1か月で10倍程度にはする必要があるってことだな……」
俺は手元のメモを見ながら、現実の厳しさにため息をついた。アイラもその計画の無謀さに、少し顔を曇らせたように見える。
「……でも、やるしかないですよね」
「もちろんだ。やれることは全部やってみるさ」
内心は、かなり焦りを感じていたが、俺は笑みを浮かべてそう答えた。アイラ曰く、南区の奴隷オークション会場は、リアディスの住人なら知っている人も多いという。
オークション会場に入るには特別な資格はいらない。身分と資産を証明できるものと、秘密を外部に漏らさないという誓約書にサインをすれば基本的には入れるらしい。
その後、俺たちはトークンコアについても理解を深めることにした。
この舞台装置の理解なくして、この世界で生きていくのは不可能だ。何しろ、トークンコアはこの世界の経済の中心であり、全ての取引がその存在に依存していると言っても過言ではない。
「アイラ、リアナが言ってたトークンコアの三大機能は覚えているか?」
「えっと…たしか、決済、金融調節、市場…だったと思います」
「その通りだ」
俺は頷いて、アイラに向き直る。ここからが肝心だ。
「まず、決済についてだが…」
俺は手元の資料を指しながら説明を始めた。
「これは比較的わかりやすい。要するに、お金のやり取りを行う仕組みだ。俺たちがアルカナプレートを使って店で支払いをすると、そのお金は一度トークンコアを経由して店主に届く」
「つまり、トークンコアが中央で全ての取引を管理しているんですね」
「そういうことだ。トークンコアは全ての決済情報を管理していて、そのおかげでどこでも同じようにディムを使えるんだ。これがなければ、たとえば遠く離れた地域で支払いをするたびに別の通貨に換金しなければならなくなる。トークンコアがあることで、俺たちはその手間を省けているんだよ」
「当たり前のように使っていましたけど、改めて考えるとすごいですね…」
アイラは感心したように呟いた。
その驚きも無理はない。高度な機械文明が発達していた前世の世界もここまでの決済システムは完成していなかった。
「次に金融調節だが…これは少しややこしい。トークンコアは、世界中のアルカナプレートから魔力を集め、それに応じてお金を発行している。アルカナプレートに魔力を供給すると、対価としてお金が得られるというわけだ。その過程でトークンコアは魔力とお金の交換比率を定期的に調整して、通貨量をコントロールしているんだ」
アイラを一瞥《いちべつ》する。その瞳は真剣そのものだ。俺は、話を続ける。
「例えば、景気が悪いときに魔力1に対して得られるディムを増やすっていうのは、人々にもっとお金を使わせて経済を回すためなんだ。逆に、景気が過熱しているときにディムを減らすのは、物価が上がりすぎて人々の生活が苦しくならないようにするためだ。そういう意味では、トークンコアはこの世界の安定を保つ重要な存在なんだよ」
俺は一瞬、考えを巡らせた。トークンコアの金融調節機能は、まるで前世でいう中央銀行のような存在だ。通貨の供給量をコントロールして、物価と景気を安定させる――同じだ。
前世の知識がなければ、この仕組みを理解するのは難しかっただろう。
この世界の仕組みは、言うなれば魔力本位制だ。
「つまり、トークンコアが世界の通貨量を調整しているから、景気が過熱しすぎたり冷え込んだりするのを防いでいるんですね」
アイラは、理解が早くて助かる。
「そうだ。ただ、どうやってその比率を決めているのかは、明らかになっていないらしい。魔力の量とディムの価値——そのバランスを保つために、トークンコアが何らかの基準で調整しているんだろうが、それが何かは誰も知らない」
俺は少しだけ肩をすくめた。そのへんの情報の不透明さは、この世界でも変わらないらしい。
「本当に…謎めいていますね。まるで生きているみたいです」
「確かにそうだな。だけど、その謎を理解することが、俺たちが取引で成功する鍵でもあるんだ」
「そうなんですね…。トークンコアがなければ、この世界の経済は成り立たないということはよくわかりました」
「その通りだ。だからこそ、俺たちはこのシステムをよく理解しておく必要があるんだ」
アイラは真剣な表情で頷いた。
「最後の市場機能についてだが…簡単に言うとオークションみたいなものだ」
「はい」
「これは、実際に取引を行ったから感覚的には理解できているはずだ」
「そうですけど、あまりトークンコアの仕組みまでは意識していませんでした」
「最初はそれでいい。次第にわかってくると思う」
「アイラたち取引魔法士は、トークンコアに対して、何をどの価格で売りたいか、あるいは買いたいかを提示する。それによって市場価格が決まる」
アイラの理解が、追い付くように一拍の間をとる。
「たとえば、俺たちがある商品を買いたいとする。その場合、トークンコアを通じてその価格を提示して、売りたいと思っている相手がいれば、取引が成立する。逆の場合も同じだ」
「なるほど…」
「これは、トークンコアが取引の場を提供しているようなものだ。匿名の者同士で価格のすり合わせを行う。このシステムを利用して、取引所で株式や商品を売買するんだ」
「それって、結構難しそう感じてしまいます…」
「確かに、最初はややこしく感じるかもしれない。でも、慣れてしまえばそんなに難しいものでもないんだ。俺たちの取引がうまくいくかどうかは、どれだけ市場の動きを読めるかにかかっている」
アイラは真剣な表情で頷いた。
「もちろん、買いたい価格や売りたい価格の提示には魔法士が必要になる。だから、俺には、アイラの力が必要なんだ」
その言葉を聞くと、アイラは少し照れくさそうに微笑んだ。俺はアイラの表情を見て、アイラも少しずつ変わっていくのを感じた。
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