俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第十章 「フラクチュエーション」

第91話 「妨害工作」

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<……またですわ!>

 フィリアの声が怒りで震える。

 このわずかな先回りは、魔法の干渉ではなく、フィリアの魔力の動きに合わせて、意図的に先行注文を入れている。

<アルヴィオ……わたくしの魔力制御を読んでいますわよ>

<ああ。確信した。これは偶然ではない>

 そんな簡単に偶然は続かない。

 誰かが狙っている。

<フィリア、もしかすると周囲からの微弱な魔法があるかもしれない。わかるか?>

<……やってみますわ>

 フィリアは空中で静止し、目を閉じる。

 ゆっくりと呼吸を整え──魔力を巡らす。

<……ありましたわ>

<どこだ?>

<付近からの小さな魔力反応。わたくしの魔法発動に合わせて動いていますわ>

<位置を特定できるか?>

<できますわ!>

 フィリアの指先に淡い光が宿る。

 高度な術式。魔法の痕跡を即興で逆探知するタイプの魔法。

 普通は長期詠唱が必要だが──フィリアはそれを数秒で完成させた。

<……見えましたわ>

<誰だ?>

<エストラン商会の……魔法士ですわ!!>

 フィリアの怒りは、もはや限界に達していた。

<なんて失礼な!!>

<フィリア──落ち着け>

<抗議しに行きますわ!!>

 やっぱり言った。

 フィリアはそのまま軌道を変え、エストランの取引魔法士へ向かおうとしていた。

「フィリア、待て!!」

 俺は念話ではなく、思わず口で叫んでいた。

<やめろ。ここで揉めても意味がない。相手の思うつぼだ>

<ですけど──!!>

<エストラン商会には……恨みを買った覚えはない。でも、灰牙の蛇と繋がってるって話もある。小麦暴落の件で……俺たちに恨みを持つ商会は山ほどいる>

 フィリアが一瞬だけ息を呑む。

<……それは……確かに……考えられますわ>

<抗議したところで止まる相手じゃない。むしろこちらの行動が読まれて、余計に妨害される可能性がある>

 フィリアは唇を噛む。

 本当に悔しそうだ。

<なら……どうすればよろしいのですの……?>

<単純だ>

 俺は息を吸って言った。

<相手が読めないくらい速く発動すればいい>

 フィリアが、がばっと振り向く。

<つまり……わたくしの魔法を、もっと早く?>

<ああ。向こうが読めるのはフィリアの通常速度だ。なら、それより速ければ読めない>

 フィリアの目が光る。

<よろしいですわ! やってみせますわ!>

<アルヴィオ! 次の指示を!>

<よし……ロプニカ交易を買いで50000株だ。51.7ディム>

<了解! 全力でいきますわ!!>

 フィリアは片腕を突き出す。

 光が瞬く。

 速い。

 さっきより明らかに速い。

 その瞬間、また先回りの気配が来る──が。

<……っ! 抜いた!>

 フィリアの発動が、わずかに上回った。

 先回りのオーダーフォームが追いつけず、遅れて板に乗る。

<やりましたわ!>

<すげぇ……本当に速くなった……>

 フィリアは胸を張った。

<妨害なんて関係ありませんわね。追われるなら、追いつけない速度で走ればよろしいのですわ!>

<いや……普通はそう言われてもできることじゃないんだけどな……>

<でもわたくし、天才ですもの!>

 どや顔が浮かぶのが見える。

……まあ、実際フィリアは相当な天才だ。

<さて、もう一回いきますわよアルヴィオ!>

<ああ、頼む>

 フィリアは浮遊姿勢を整え、魔法陣を構えた。

 その顔には、妨害への怒りではなく──

 純粋に勝負を楽しんでいるように見えた。

 これなら、しばらくは大丈夫そうだ。

「……しかし、エストラン商会か。灰牙の蛇もあるし……」

 つぶやきながら、俺はトークンコアを見上げる。

 ロピカルハに向かう前に、調べることがまた一つ増えた。

 そう思いながら、俺は再びフィリアの魔法光に視線を向けた。
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