俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第十章 「フラクチュエーション」

第93話 「スパイス相場研究Ⅱ」

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 戻ってきたイオナは、大きな地図を持ってきた。

 広げてテーブルに置くと、指先でさっき挙げた九つのスパイスを順に示す。

「コリンダは……ここ。ルドラペッパーはこの島。ミントシードはここで……」

 イオナの指が、ぽつぽつと島々をなぞる。

「……これは?」

 俺は思わず声を漏らした。

 イオナは笑った。

「ね、気づいた?」

「いや……何がだ?」

「ここだよ、ここ」

 イオナは指で島を一つずつトントンと叩きながら、九つのスパイスの産地を並べる。

 そして――最後の一点を指した瞬間。

「全部、香料諸島の……西側なんだ」

「……!」

 確かに。

 バラバラに見えた産地が、地図上ではにぴたりと収まっている。

「ちょっと待て。偶然ってには、あまりにも出来過ぎてないか?」

「偶然じゃないと思うよ」とイオナ。

「だって気象条件なら、香料諸島全域で影響あるはずでしょ? それに――」

「ここ数年、この辺りは気候がすごく安定してるんだ。干ばつも、嵐も、冷害も特に起きてない。収量も、一部で上下はあっても――なんてこと、起きるはずがないんだよ」

「……そうか。植物の生育条件はそれぞれ違うしな」

「うん。コリンダは湿気が多いと豊作になるけど、ミントシードは逆に乾燥した年に育ちやすい。気象で九つ全部が豊作になるなんて──まず無理だね」

 イオナの声は淡々としているが、その分説得力があった。

 ティタニアも腕を組んで頷く。

「確かに……自然要因では説明がつかないわね」

「ということは……」

 フィリアがゆっくりと、地図の西側を指差す。

「あの地域だけ、値段が下がっている理由がある……ということですわね?」

「そういうことだな」

 俺は地図に視線を落としながら、思考を巡らせる。

 その瞬間──ある記憶が脳裏をよぎった。

 白い空間での、トークンコアの言葉。

があるんだよ』

『アイラちゃんは、そこで魔法が使えない』

「……まさか」

「アルヴィオ?」

 ティタニアが目を向ける。

 俺はゆっくりと地図の西側をなぞった。

「この辺り……使と重なってないか?」

「…………っ」

 エルヴィナが息を呑む。

「……ありえます」

 エルヴィナは静かに、だが確信を持って言った。

「たしか、アルカナプレートが使えない地域では、昔から独自通貨が使われているということでしたよね」

「独自通貨……」

 フィリアの表情が鋭くなる。

「まさか通貨の動きが……スパイス相場に?」

「それだけじゃないかもしれないな」

 俺は地図を見つめながら、背筋に冷たいものを感じていた。

 値下がりしているスパイスの産地が、偶然にも──いや、偶然ではありえないほど明確に。

 トークンコアの言うと重なっている。

「アルヴィオ……これはただの値崩れじゃないわね」

 ティタニアの言葉は、まさに俺が感じていたことそのものだった。

「……ああ。相場の歪みがある。その裏に、何かある」

 イオナが地図を見つめたまま、小さくつぶやく。

「どうするの?」

「調べるしかないな」

 俺は静かに答えた。

 ロピカルハへの慰安旅行──その裏で、どうやらが動き始めている気がする。

「スパイス相場……この歪み。ロピカルハに行く前に、もう少し掘っておく必要がある」

 気づけばフィリアも、ティタニアも、エルヴィナも同じ表情になっていた。

 ただの旅行では終わらない――そんな予感がした。

「イオナ、地図を借りるぞ。ここから先は――本格的な調査だ」

「うん、面白くなってきたね!」

 イオナは明るく返事をしたが、目の奥は真剣だった。

 香料諸島西部、トークンコアの

 独自通貨。

 スパイス相場の不自然な崩れ。

――すべては一本の線でつながっているように見えた。
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