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第十章 「フラクチュエーション」
Intermission 30 「リーリア in 魔法学校Ⅱ」
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新入生たちが魔法学校に入学してしばらくたった頃、女子寮ルーチェ棟の215号室では、朝から元気な笑い声が響いていた。
「ニナ、これ見て! 昨日の魔法薬学の先生の顔まね! ――こうっ!」
リーリアが頬をふくらませ、眉をぐっと寄せ、妙に厳格な顔をつくる。
「こら、計量スプーンは山盛り一杯ではありません。平らに一杯です。平~ら~にぃ~!!」
あまりにも似ていたせいで、ニナは机に伏せて笑い転げた。
「ふ、ふふっ……! リーリア、ほんとに……似すぎです……!」
「でしょ!? やっぱり!? クラスの子にも大ウケだったんだよ!」
朝の光を浴びて笑い合う二人は、もうすっかり仲良しだった。
リーリアは周囲をぱっと明るくする太陽のようで、誰とでも分け隔てなく話す。
その姿に、初日からクラスメイトの輪が自然と広がり、ニナもその中に引き込まれていた。
◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆
午前の授業が終わり、二人は並んで中庭へ歩いていた。
大樹の下には、昼食を広げる一年生の姿があちこちに見える。
「ニナの島の話、もっと聞きたいな!」
リーリアが元気に話を振ると、ニナは少し恥ずかしそうにうつむきながら口を開いた。
「えっと……ロピカルハでも西の小さな島で……。村って呼べるほどの家も少なくて……でも、海がとても綺麗なんです」
「いいなぁ~! 海のそば! 魚いっぱい?」
「はい。父がよく獲ってきて……。あ、父はその……島の部族長で……」
「えっ、すごいじゃん!」
「す、すごくなんて……! ほんとうに小さな島で、お金もほとんどなくて……学費も、父が島の皆さんに頭を下げて集めてくれたんです……。だから、落第したり……迷惑をかけたりしたら……」
言葉が小さく震えた。
リーリアはしばし黙り、そっとニナの肩を叩いた。
「ニナはちゃんとがんばってるよ。私知ってる。先生の話、いっちばん真剣に聞いてるし!」
「り、リーリア……」
「それに、島の人たちが応援してくれるって素敵じゃん!」
真っすぐな笑顔に、ニナの不安が少しずつほぐれていく。
「……そうですね」
◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆
その日の夕方――。
二一五号室で、ニナが突然、小さな悲鳴をあげた。
「……ない……ないです……! ペンダントが……!」
リーリアが振り返る。
「えっ? ペンダント?」
「はい……」
ニナは胸の位置を押さえながら、焦りで手を震わせている。
「わたしの……青いペンダント……小さい頃から身につけてて……。一族に伝わる……とても大切なもので……!」
涙が浮かんでいた。
「あの青いペンダント?」
「はい……。母が竜の鱗でできていると言っていました。島と家族を守るお守り、だと……。なのに……なのに……!」
声がか細くなる。
リーリアは一拍も置かず、ニナの手をぎゅっと握った。
「ニナ、大丈夫。絶対見つける。いまから一緒に探そう!」
「で、でも……授業の準備とか……」
「そんなの後でいいよ! 大事なものなんでしょ!」
リーリアの迷いのなさに、ニナは胸が熱くなった。
「……リーリア……ありがとうございます……」
二人は寮の廊下へ飛び出し、玄関ホール、中庭、食堂――ニナが歩いた場所を次々に回った。
「昨日の予習のとき落とした? それとも昼の中庭?」
「ど、どこかで……気づかないうちに……」
「大丈夫、大丈夫っ! きっと見つかるよ!」
リーリアは息を切らしながらも、笑顔を絶やさない。
ニナも必死に涙をこらえ、リーリアの後を追う。
校舎を照らす夕暮れの光が、ふたりの影を長く伸ばした。
だが――ペンダントは、どこにも見つからなかった。
「……どこにあるんだろう……」
ニナが小さくつぶやく。
リーリアはふっと息を吸い、力強く言った。
「明日、もっと広く探そう。絶対見つけるから!」
ニナはその言葉に、わずかに笑みを浮かべた。
「……はい……!」
こうして、二人の捜索が始まった。
「ニナ、これ見て! 昨日の魔法薬学の先生の顔まね! ――こうっ!」
リーリアが頬をふくらませ、眉をぐっと寄せ、妙に厳格な顔をつくる。
「こら、計量スプーンは山盛り一杯ではありません。平らに一杯です。平~ら~にぃ~!!」
あまりにも似ていたせいで、ニナは机に伏せて笑い転げた。
「ふ、ふふっ……! リーリア、ほんとに……似すぎです……!」
「でしょ!? やっぱり!? クラスの子にも大ウケだったんだよ!」
朝の光を浴びて笑い合う二人は、もうすっかり仲良しだった。
リーリアは周囲をぱっと明るくする太陽のようで、誰とでも分け隔てなく話す。
その姿に、初日からクラスメイトの輪が自然と広がり、ニナもその中に引き込まれていた。
◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆
午前の授業が終わり、二人は並んで中庭へ歩いていた。
大樹の下には、昼食を広げる一年生の姿があちこちに見える。
「ニナの島の話、もっと聞きたいな!」
リーリアが元気に話を振ると、ニナは少し恥ずかしそうにうつむきながら口を開いた。
「えっと……ロピカルハでも西の小さな島で……。村って呼べるほどの家も少なくて……でも、海がとても綺麗なんです」
「いいなぁ~! 海のそば! 魚いっぱい?」
「はい。父がよく獲ってきて……。あ、父はその……島の部族長で……」
「えっ、すごいじゃん!」
「す、すごくなんて……! ほんとうに小さな島で、お金もほとんどなくて……学費も、父が島の皆さんに頭を下げて集めてくれたんです……。だから、落第したり……迷惑をかけたりしたら……」
言葉が小さく震えた。
リーリアはしばし黙り、そっとニナの肩を叩いた。
「ニナはちゃんとがんばってるよ。私知ってる。先生の話、いっちばん真剣に聞いてるし!」
「り、リーリア……」
「それに、島の人たちが応援してくれるって素敵じゃん!」
真っすぐな笑顔に、ニナの不安が少しずつほぐれていく。
「……そうですね」
◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆
その日の夕方――。
二一五号室で、ニナが突然、小さな悲鳴をあげた。
「……ない……ないです……! ペンダントが……!」
リーリアが振り返る。
「えっ? ペンダント?」
「はい……」
ニナは胸の位置を押さえながら、焦りで手を震わせている。
「わたしの……青いペンダント……小さい頃から身につけてて……。一族に伝わる……とても大切なもので……!」
涙が浮かんでいた。
「あの青いペンダント?」
「はい……。母が竜の鱗でできていると言っていました。島と家族を守るお守り、だと……。なのに……なのに……!」
声がか細くなる。
リーリアは一拍も置かず、ニナの手をぎゅっと握った。
「ニナ、大丈夫。絶対見つける。いまから一緒に探そう!」
「で、でも……授業の準備とか……」
「そんなの後でいいよ! 大事なものなんでしょ!」
リーリアの迷いのなさに、ニナは胸が熱くなった。
「……リーリア……ありがとうございます……」
二人は寮の廊下へ飛び出し、玄関ホール、中庭、食堂――ニナが歩いた場所を次々に回った。
「昨日の予習のとき落とした? それとも昼の中庭?」
「ど、どこかで……気づかないうちに……」
「大丈夫、大丈夫っ! きっと見つかるよ!」
リーリアは息を切らしながらも、笑顔を絶やさない。
ニナも必死に涙をこらえ、リーリアの後を追う。
校舎を照らす夕暮れの光が、ふたりの影を長く伸ばした。
だが――ペンダントは、どこにも見つからなかった。
「……どこにあるんだろう……」
ニナが小さくつぶやく。
リーリアはふっと息を吸い、力強く言った。
「明日、もっと広く探そう。絶対見つけるから!」
ニナはその言葉に、わずかに笑みを浮かべた。
「……はい……!」
こうして、二人の捜索が始まった。
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