俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第十一章 「デッドクロス」

第96話 「楽園の顔」

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 リーリアは、港を離れてからというもの、ずっと落ち着きがなかった。

「すごい! 見てアル兄! あの海の色! あとあの木、なんか実がなってる!」

「おい、よそ見するなよ。人多いんだから」

「だいじょーぶだって!」

 跳ねるように歩きながら、視界に入るものすべてを指差しては歓声を上げている。

 一方、その隣を歩くニナは――

「……」

 背筋を伸ばし、常に周囲を気にしている。人の多さか、それとも一緒にいる顔ぶれの問題か。どちらにせよ、緊張しているのは一目でわかった。

「ニナ、大丈夫?」

 リーリアが顔を覗き込む。

「は、はい……! だ、大丈夫です」

「……でも、いつもより……ずっと」

 言葉を選びながら、街を見回す。

 色鮮やかな布飾り、屋台の呼び声。

 香辛料と甘い果実の匂いが混ざった、むせるような南国の空気。

 確かに、景気は良さそうだ。

「ニナ、緊張しすぎだよ」

 リーリアが振り返って言う。

「ほら、深呼吸!」

「……すぅ……はぁ……」

 言われるままに息を整えるニナを見て、リーリアは満足そうにうなずいた。

「よし!」

 その様子を、フィリアが微笑ましそうに眺めている。

「賑やかなのも悪くありませんわね。こういう空気は、国が元気な証拠ですもの」

 フィリアの言葉に、ティタニアが静かに頷いた。

「王女の結婚式を控えているもの。人も金も、自然と集まるわ」

「うんうん! お祭りみたいだね!」

 リーリアは相変わらずだ。

 その横で、ニナは少し戸惑ったように視線を落とした。

「……でも……」

「でも?」

 俺が促すと、ニナは小さく首を振る。

「いえ……島の外の人が、こんなに……その……」

「多い、か?」

「はい……」

 言葉を選びながら答える様子に、育った環境の違いが滲む。

 香料諸島の西部――アルカナプレートも、ディムも、使えない場所。

 この賑わいは、ニナにとっては非日常なのだろう。

 そんな会話をしながら歩いていると、視界が一気に開けた。

 白い砂浜。

 海沿いに建つ、白壁と木材を基調にした大きな建物。

 ヤシの木が並び、海風に葉を揺らしている。

「……ここ?」

 リーリアが目を丸くする。

「すご……おっき……」

「セレスティア商会が運営しているホテルですわ」

 フィリアがさらりと言った。

 入口には、商会の紋章。

 南国仕様の建物でも、見慣れたデザインに少し安心する。

 中へ足を踏み入れた瞬間──

「お、来た来た」

 聞き覚えのある声がした。

 振り向くと、ロビーの奥で手を振っている人物がいる。

「……レイラ?」

「少年、久しぶりだね」

 相変わらずの調子だ。

 その隣には、ミラとティナ、さらに見覚えのあるヴァース商会の従業員が数人。

「なんで、ここに……?」

「私は普通に、王女殿下の結婚式に招かれてる」

 レイラは、さらっと言った。

「……普通に?」

 思わず聞き返す。

「ま、古い縁ってやつさ」

 曖昧な言い方だが、この人が言うと妙に納得してしまうのが腹立たしい。

 その横で、ミラが軽く手を振った。

「で、私たちはレイラの付き添い」

「よろしくね!」

 ティナが元気よく手を振る。

 ヴァース商会の従業員たちも、軽く会釈してきた。

「……でも、どうしてこの宿に?」

 俺が疑問を口にすると、レイラが肩をすくめた。

「信頼できる資本の宿が、ここしかなかったというのが適切な表現だな」

「それに王女の結婚式前で、どこも人で溢れてる」

 ミラが補足する。

「だから、そこの嬢ちゃんに無理を言って泊めてもらうことにした」

 レイラの視線が、フィリアに向く。

「そういうことですわ」

 フィリアが優雅にうなずいて締める。

 なるほど。

 信頼できる宿、王女の結婚式前で満室――条件を並べると、確かにここ一択だ。

「……で?」

 俺は視線をずらした。

 ロビーの窓際、ソファに腰掛けている人物がいる。

 相変わらず、周囲と微妙に距離を取った位置取り、涼しい顔で飲み物を飲んでいる。

「……クロエ?」

「やっほー」

 クロエは相変わらず気の抜けた声で手を振った。
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