俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第十一章 「デッドクロス」

第113話 「勇者」

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 部屋に入った俺たちはニナを探し回った。

「ニナ!」

 返事はない。

――人の気配が、ない。

「……いない」

 喉がひりつく。

 フィリアがゆっくりと室内を見回した。

「争った形跡は……ありませんわね」

 エルヴィナは即座に窓辺へ移動し、外を確認する。

「侵入の痕跡もなし。ですが……」

 クロエが低く呟いた。

「やられたね」

 その一言で、胸が冷たくなる。

 間に合わなかった。

「……くそ」

 拳を握る。

「アルヴィオ」

 フィリアの声が静かに刺さる。

「冷静になりなさいませ。連れ去られたのだとしても、まだ時間はそう立っていませんわ」

「今から追えば――」

 そのときだった。

「アル兄?」

 間の抜けた声が、背後から聞こえた。

 振り返ると、リーリアが立っていた。

 サイドテールを揺らし、きょとんとした顔。

「どうしたの? みんな顔こわいよ?」

「リーリア……」

 俺は一瞬言葉に詰まる。

「ニナがいない」

「え?」

「部屋にいないんだ。連れ去られた可能性が――」

 フィリアが低く告げる。

「ええっ!?」

 リーリアは本気で驚いた顔をした。

 だが、次の瞬間。

「でも、ニナなら私の部屋にいるよ?」

「……は?」

 全員が、固まった。

「さっきから一緒におしゃべりしてたの。今もいるよ?」

「……本当か?」

「うん?」

 俺は、何も考えずに走り出していた。

 リーリアの部屋の扉を叩きもせずに開ける。

「ニナ!」

「ひゃっ……!?」

 そこにいた。

 ベッドに腰掛けていたニナが、驚いた顔でこちらを見ている。

「ど、どうしたんですか……?」

 無事だ。ちゃんと、ここにいる。

 フィリアが静かに息を吐いた。

「……ご無事で何よりですわ」

 エルヴィナも、わずかに肩の力を抜く。

 その時、廊下から複数の足音が聞こえた。

 アイラ、レイラ、そしてヒカリ。

 ヒカリは、しっかりと自分の足で立っている。

「ヒカリ……」

「ごめんなさい、皆さん……ご心配をおかけしました」

 ヒカリは深く頭を下げた。

 意識ははっきりしているようだ。目にも、さっきまでの焦点の曖昧さはない。

 その後ろから、ティタニアとラウラ、イオナも駆け込んでくる。

「……ずいぶん騒がしいわね」

「僕も気になるな、何があったの?」

 ニナは、部屋の中央に集まった面々を見回し、困惑した顔をしていた。

「えっと……私、何かしましたか……?」

 俺は、力が抜けるのを感じながら、その場にへたり込みそうになるのを堪えた。

「……いや。何もしてない」

 本当に、何も。

 ただ、そこにいてくれただけで十分だった。

 フィリアが小さく咳払いをする。

「アルヴィオ、これは皆さまに説明が必要ですわね」

「ああ……」

 視線が、自然とクロエに向く。

 クロエは、露骨に顔をしかめた。

「……めんどくさ」

「逃げるな」

 即座に言うと、クロエは肩をすくめた。

「別に逃げやしないよ。ただ、説明ってのは体力使うの」

「クロエ」

 低く呼ぶと、レイラが横から軽く笑った。

「観念しなよ、クロエ。ここまで来たら、黙ってるほうがよっぽど面倒だ」

「……あーあ。味方がいない」

 そう言いながらも、クロエはゆっくりと部屋の中央に立った。

 全員の視線が集まる。

「あーもう!仕方ないな! そしたら――」

 クロエは、ヒカリを見る。

「まずは、ヒカリちゃんの話からだね」

 赤い瞳が、まっすぐヒカリを射抜く。

 ヒカリは小さく肩を震わせた。

「ヒカリちゃんは――間違いなく、勇者としてこの世界に招かれた存在だよ」

 部屋の空気が、一瞬で変わった。

 リーリアがぱちぱちと瞬きをした。

「え? ゆ、勇者って……あの勇者?」

「そう。その勇者」

 クロエはあっさりと言う。

 ヒカリの喉が小さく鳴った。

「わ、私が……?」

 ヒカリの声は、かすれていた。

 クロエはうなずく。

「そう。ヒカリちゃんは転移者だ。偶然流れ着いたんじゃない。なにか目的があってこの世界にんだよ」

 リーリアがぽかんと口を開ける。

「て、転移者!? ヒカリちゃんって、マンタイム出身じゃなかったの?」

 その場の何人かが、こくこくと頷く。

 俺は腕を組んだまま、口を開かない。

 クロエはちらりと俺を見る。

「アルは知ってたんでしょ?」

「……まあな」

 それ以上は言わない。それにちょっと視線が痛い……

 クロエは視線を戻す。

「ヒカリちゃんの力は、勇者に与えられた能力。覚醒したばかりで暴走しかけたけど、慣れれば制御できる」

 ヒカリが、不安げに自分の手を見る。

「……あの力、私……怖かったです。勝手に身体が動いて……今回だけじゃなくて……こんなことが何回かあって」

 クロエは淡々と続けた。

「勇者の力の本質はね――だと考えれている」

「……武器?」

 ヒカリが顔を上げる。

「そう。剣でも槍でも弓でも、理論上は全部。身体強化も含まれる。白兵戦で戦うために最適化された力」

 レイラが腕を組んでうなずく。

 確かにあの時のヒカリは、まるで何年も鍛えた戦士……いやそれ以上だった。

「でも……私、訓練なんて……」

「してなくても使える。それが勇者」

 クロエは肩をすくめた。

「ただし、制御は自分で覚えなきゃいけない。慣れれば暴走はしない」

 ヒカリは唇を噛み、やがて小さくうなずいた。

「……わかりました。怖いですけど……逃げません」

 その言葉に、少しだけ空気が柔らぐ。

 俺は腕を組んだまま、口を開いた。

「勇者がいるってことは……魔王もいるのか?」

 部屋の視線が一斉にクロエへ向く。
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