俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第十二章 「レラティブバリュー」

第119話 「父<長>として」

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 机の上のルミナプレート、その薄い板が、島一つの財産を奪った。

「……制度だな」

 俺は、ゆっくりと口を開いた。

 キアヌが顔を上げる。

「制度、ですか」

「武器じゃない。兵でもない。だが、もっと厄介だ」

 ルミナプレートを指で弾く。

「価値の定義を変えただけで、昨日までの蓄えを無にした」

 フィリアが静かに続ける。

「交換を止める。それだけで、既存の資産は紙切れ同然になりますわ」

 リーリアが、ぎゅっと拳を握る。

「ひどすぎるよ……」

 ニナは立ったまま、唇を噛んでいる。

「アキちゃん……怖がりなのに……」

 その声に、胸の奥が軋む。

 キアヌが、ゆっくりと俺を見る。

「アルヴィオ殿。あなた方は……これを止めに来たのか?」

 その問いに、部屋の空気が張り詰める。

 止める。

 簡単に言える言葉じゃない。

 俺は、少しだけ視線を落とし、それから上げた。

「少なくとも、黙って見てるつもりはない」

 静かに言う。

「これは通貨改革じゃない。単なる搾取だ」

 キアヌの目が、わずかに揺れた。

「……そう言ってくれる者が、外から来るとは思わなかった」

 父親は、しばらく黙って俺を見つめていた。

 そして、ゆっくりと息を吐く。

「青龍様の導き、かもしれぬな」

 その言葉に、ニナが顔を上げる。

「導き……?」

「この島には、古くから言い伝えがある」

 キアヌは、壁に掛けられた古い木彫りの飾りを見やった。

「龍脈が乱れ、島が試されるとき。外より来る者が道を示す、と」

 クロエが、わずかに眉を上げる。

 俺は苦笑した。

「俺たちは道を示すような大層な存在じゃない」

「だが」

 キアヌの声は、強かった。

「先ほどまで、我らはどうにもならぬと思っていた。虹貝は無価値とされ、村の娘は連れていかれ、長である私ですら何もできぬ」

 拳が、ぎゅっと握られる。

「そこへ、お前たちが来た」

 視線が、まっすぐ俺に刺さる。

「ニナが戻り、外の世界の事情を知る者が来た。偶然とは思えぬ」

 キアヌの声は、静かだが芯があった。

 迷信じみた言葉だ。だが、その瞳は本気だ。

 俺は短く息を吐く。

「導きかどうかは知らない」

 だが、と続ける。

「この島で何が起きているのかは分かった。根はもっと深い」

 フィリアがわずかに顎を引く。

「龍脈、ですわね」

「ああ」

 俺はキアヌを見る。

「この島の地下。ダンジョン化している場所があるはずだ」

 父親の表情が、わずかに変わった。

「……古い祠の奥か」

「そこに、止まったがある」

 詳しい説明は省く。

 だが、父親はすぐに察したらしい。

「それを動かせば、状況は変わるのか?」

「少なくとも、ロピカルハの連中が好き放題できる状況は崩せる」

 言い切る。

 キアヌは、しばらく黙っていた。

 そして、ゆっくりと立ち上がる。

「ならば、行くべきだな」

 ニナが顔を上げる。

「お父さん?」

「長として、村を守る責務がある」

 キアヌは壁際に立てかけられた槍を手に取った。

 年季の入った柄。穂先はよく研がれている。

「私も同行しよう」

 リーリアが目を丸くする。

「え、え!? 一緒に!?」

 フィリアが静かに制す。

「危険ですわ」

「承知の上だ」

 キアヌはきっぱりと言う。

「私はロピ族の長だ。村の問題を外から来た者だけに背負わせるわけにはいかぬ」

 その声音には迷いがない。

 クロエが小さく笑う。

「……なるほど。ちょっと強そうだと思ったら、やっぱり」

 キアヌは視線を向ける。

「年寄り扱いは無用だ、エルフ殿」

「失礼。頼もしいって意味さ」

 空気がわずかに和らぐ。

 ニナが、父親の袖を掴む。

「危ないです」

「ニナ」

 キアヌはニナの頭に手を置く。

「お前が外の世界を見てきたように、私もこの島のために一歩踏み出さねばならぬ」

 その言葉に、俺は小さく頷いた。

「なら、同行を頼む」

 俺ははっきりと言う。

「地理も、村の事情も、俺たちはまだ浅い。あなたの力は必要だ」

 キアヌは、うなずいた。その目には、決意があるように見えた。

「では、支度を」

 キアヌは槍を肩に担ぎ、扉の方へ向かう。俺たちはそのあとに続いた。
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