俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第十二章 「レラティブバリュー」

第121話 「みちしるべ」

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 残留組と分かれて、森へと続く小道を進む。

 潮の匂いは消え、代わりに湿った土と苔の匂いが強くなる。

 外を見回っていたエルヴィナが合流し、ダンジョンへ向かうのは、俺、クロエ、レイラ、フィリア、エルヴィナ、キアヌ、ニナそしてヒカリの八人となった。

 小道を進むと村のざわめきは、すぐに木々に遮られた。

「この辺りは昔から立ち入りを避けられてきた。ダンジョンの影響で強力な魔獣も多いゆえ」

 そんなことを言いながらキアヌが前を歩く。だが、足取りに迷いはない。

「祠はこの先だ。森が少し開ける」

 そのときだった。

 茂みが、がさりと揺れる。

「止まれ」

 キアヌが短く言う。

 次の瞬間、小型の魔獣が飛び出した。

 犬ほどの大きさ。だが体表は鱗に覆われ、口からは鋭い牙が覗く。目は血走り、理性の色はない。

「来るよ!」

 レイラが前へ出るより早く――

 キアヌが踏み込んだ。

 踏み込みは静かだ。だが速い。

 槍が一直線に伸びる。

 無駄のない突き。

 穂先が魔獣の喉を正確に貫いた。

 血が飛び、魔獣はそのまま地面に崩れ落ちる。

 息をする間もなかった。

「……見事だ」

 思わず口に出る。

 キアヌは槍を引き抜き、布で穂先を拭った。

「この程度、島の子どもでも対処できねば生きていけぬ」

 淡々とした声。だが、あれは熟練の動きだ。

 ロピ族の長。伊達じゃない。

 魔獣の身体が、びくりと痙攣して動きを止める。

 俺はゆっくりと近づき、キアヌから借りたルミナプレートを取り出した。

「……何をする?」

 レイラが眉をひそめる。

「少し試す」

 俺はしゃがみ込み、魔獣の死体にルミナプレートを近づけた。

 もしアルカナプレートなら、魔力の回収が走る。トークンコアとの接続が開き、魔力の報酬としてディムが加算される。あの独特の感覚が、指先に伝わるはずだ。

 だが――何も起きない。

「……やっぱりか」

 反応はない。半ばわかっていた結果だ。

「時間がない。行こう」

 そう言った直後背後から声がかかる。

「待って」

 小さな声。

 振り返ると、ニナが一歩前に出ていた。

 両手を胸元で組み、目を閉じる。

 空気が、わずかに震えた。

 次の瞬間、魔獣の死骸の周囲に淡い蒼い光が走る。

 光は一瞬だけ地面をなぞり、そしてふっと消えた。

「……いまのは」

 俺が問うと、ニナは少し息を弾ませながら答えた。

「魔力の残滓を……散らしました。放っておくと、他の魔獣を呼ぶかもしれないので」

 ニナの答えにクロエが目を細める。

「普通の魔法士はそんな芸当しないよ」

 ニナは戸惑いながらも、うなずく。

「……そうなんですか。でも、昔からやってることなので」

 森の空気が、わずかに澄んだように感じる。

「なるほど……頼もしいね」

 レイラが軽く笑う。

「い、いえ! 私はまだ……」

 ニナは慌てて首を振る。

「まだ、ね」

 クロエの呟きに恥ずかしそうにするニナから視線を動かし、俺は前を見る。

「進もう。もう少しだ」

 進むにつれて森は、徐々に深くなっていく。木々の間隔が狭まり、光が届きにくくなる。だが、足元には古い石畳の痕跡が現れ始めた。

「昔はここまで道が整えられていた」

 キアヌが言う。

「だが今は、誰も近づかぬ」

 やがて、森が不自然に途切れた。

 ぽっかりと開けた空間。

 中央に、苔むした石造りの祠が立っている。

 崩れかけた柱。割れた屋根。だが奥へと続く階段は、闇をたたえて口を開けていた。

「……ここが」

「ああ。ダンジョンだ」

 キアヌの声が低くなる。

 空気が重い。リアディス周辺のダンジョンとはわけが違うことが分かる。

 風はあるのに、音がないように感じた。まるで森そのものが、ここから先を拒んでいるようだった。

 そのとき――淡い光が、ふわりと揺れた。

 視線を動かす。

 ニナの胸元――青いペンダントが、静かに光っている。

「……あ」

 ニナが息を呑む。

 光は、祠の奥の闇へと向かって伸びるように揺らめいていた。

「道しるべだね」

 クロエが低く言う。

――龍脈が、呼んでる。

 俺は銃の重みを確かめる。

 隣ではキアヌが槍を握り直し、レイラが無言で周囲を警戒している。

 ニナの瞳には、恐れと、それ以上の覚悟が見える。

 各々がそれぞれのギアを一段上げたのがわかる。

「行こう」

 俺たちは一歩、石段へ足をかけた。
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