強肉弱食の世界より愛を込めて

Damボール

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1.5章

観察報告書・ギル

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――観察報告書―ギル――        作成者・ブリード=スティンネル

あー…初の報告書だ。俺たちの首領は唐突にこんなよく分かんねぇことをおっぱじめる気まぐれ屋さんってことはよくわかったな。ひでぇ上司を持ったものだ。まぁいいけどな。今回は俺の相棒、ギルについての報告を行う。俺の観察や前情報、『本棚』の情報をかき集めただけの適当な報告書だが…。まぁいいだろ。最初だからって言い訳すりゃあな。じゃあ書いていくぜ。

ギル。本名は無し。年齢17。21XXの時点での身長は164.28㎝、体重は服や装飾品を含めてぴったり59㎏。男としては結構小柄なほうだな。性格は少々荒めで、考えるよりも先に行動して道を切り開いていくタイプだ。所属は14期第2隊特殊捜索科五光担当。仕事をする上でのパートナーとして、俺もとい、ブリードと共に行動している。主な活動内容は詳細レポート2を参考に…って書いてあるな。

ギルの服装…全身を黒色の服や装飾品で飾っている。特に目立つのは黒いローブと肩についている一部純金が使われている肩あて、そして帽子。髪色は茶色。驚いたことに地毛なんだとさ。黒のローブの背中には、何か装飾がされていたようだが、ギル自身がそれを消したような跡があるため、内容はよく分かんねえ。ただそのことをギルに聞こうとすると殴りかかられるんで俺は聞かないことにしてるな。ズボンは見たことのないような生地でできており、ポケットからチェーンが垂れている。靴は革靴。出所は不明。

ギル自身の詳細について…ギルは13期終了間際に唐突にやってきた。一部の記憶がごっそり抜けており、最初に目撃情報があった時から五光『妖』を手に持っていたらしい。その後、採用試験抜きで組織に入隊。短い期間で功績を上げ続け、上層部に意見を出せるほどの地位を手に入れている。ただ、教養が極めてなく、入隊してから俺が平仮名、片仮名、それと簡単な漢字だけ教えた。ただし、戦闘におけるセンスは高く、ひとまず俺以外の人間に負けてるところは見たことがない。先日試しに「俺の剣に思いっきり拳入れて見ろ」よ挑発した結果、俺の剣にひびが入り、俺は壊れた壁代までも払う結果になった。一応壁から10メートルは距離取ってたんだけどな。五光『妖』は俺も使ってみたが、能力は発動しなかった。ギル自身も能力の発動条件は分からないらしい。困った奴だ。
ギルには恩師がいるらしい。名前は「ドクター」。おそらく通り名か相性なのだろうが、頭の悪いあいつには本名に聞こえたんだろうな。そして、なぜかウィルフレイ島に隔離されている「ロキ」という男の存在も認識していた模様。記憶が飛ぶ以前に何かあったのかもしれないな。
ギルに『本棚』を使わせた結果、驚くべきことに本棚が機能した。これは俺の後継ぎとしての役目を果たしてくれるかもしれないため、こいつは大事にしねぇとな。












「何書いてるんだ?」

後ろから声がかかる。ギルが起きてきたらしい。

「おぉ、ギルさんか。ちょっと調べもんだよ。上からの指示でな…」

さりげなく報告書を別の書類で隠す。ギルさんに見られたらたまったもんじゃない。

「ほーん、てか今日の食糧班、俺らと交代になったみたいだ。行くぞ。」

「ぅん?今日は9班の担当だろ?なぁんで俺達がやんなきゃならんのさ?」

「…そういえば聞いてねぇな。まぁいいだろ。オラ、ぼさっとすんな。」

「かーーっ、嫌な上司を持ったねぇ…。」

2人は部屋を出て外に出る。目標はキャベツ2体らしい。面倒くさい。







「それにしても大胆なことをしましたね。ブリードにカメラを仕掛けるなんて。」

幹部室。組織のトップが集まる部屋。そこで3人の影が会話をしている。

「あぁ…。ブリードにはもう勘付かれているかもしれないがな…。ただ、報告書だけでは嘘も書ける…。私の目でも見てやらないと…。」

「相変わらずの教育熱心ね。ま、そこに惹かれてやってきた人も少なくないと思うけど。」

「ギルは逸材だからな…貴重な人間には死んでもらいたくないものだ。」

「全く…。五光が扱えるだけでこんなに注目されているなんて、ギルも苦労が絶えなさそうですね…。」





サクッとキャベツ2体を処理し、一方通行の転送札を張り、施設に飛ばす。今の時間帯は、食物達が最も活発に動き回る時間帯。そんな状況で仕事が出来ているのは、2人の実力と力のおかげだろう。

「ギルさんもういいだろォ?帰ろうぜェ?」

「………」

ギルは黙ったままだ。ブリードは知っている。ギルがわめかないときは大抵面倒くさいことが起きるのだ。

「あーー、ギルさん?なんかあったか?」

「―――――――――地下ッ!!!」

気付いていたか。ギルも腕を上げたな。
2人がその場から飛びのいた直後、地面から巨大な生物が出てきた。

ブギィィィィィィィィィィィッッ!!!

「ほほほぅ!!豚じゃねえか!!しかもこいつ、地中のキノコ食べてるタイプの奴か!!!」

地中にもまた沢山の食物が生きている。この豚は、見た目的に長生きしているだろう。もしかするとトリュフとかも食べていて、熟成された肉が詰まっているのかもしれない。
ただ、豚や牛といった肉系の食物は非常に危険。このサイズの豚なら、市街付近だと軍隊が出動するレベルだろう。本来なら、五光使いがいるとはいえ、2人で狩るのは無謀だが………

「ギルさんっ!!」

「ってらぁ!!!」

「「こいつ持って帰るぞ!!!」」

ギルが豚に向かって猛ダッシュする。ギルを目視にて確認した豚は、その巨大な体で押しつぶそうと足に力を込める。

「ちょっと失礼、悪いねぇー」

その隙にワイヤーを使ってブリードが豚の背中に登る。豚がブリードの存在に気づき、一瞬ギルから目を離す。

「なぁぁぁぁに相手から目ぇ逸らしてんだぁぁぁぁぁぁ!!!」

ギルが『妖』の力を開放し、さらに加速する。そのまま豚の前足に一発拳を入れる。ゴギッっという嫌な音と共に、豚のバランスが崩れ、豚の姿勢が前のめりになる。

「なぁんで1発で骨まで持っていけるのかねェ…相変わらずギルさんヤベェぜ…」

背中が頭に向かって傾斜上になったところでブリードがその背中を滑り降りながら剣を豚の体に突き立てる。豚の背中に一文字の大きな切り傷が付いた。豚は痛みと怒りで大きく鳴く。

その口に『装置』を使って強化した蹴りを叩きこむ。前歯が1本キレイに飛んで行った。そのままギルが攻撃していないほうの足に着地し、着地と同時に剣を振り、足を切断する。

「よろしく頼んますぜぇー!」

ブリードの仕事はここまで。あとは「相棒」に任せる。

ズズゥン・・・
と豚の頭が地面に着く。豚の弱点は鼻。それはギルも承知済みだ。

「寝てんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」

全体重を乗せた渾身のパンチを豚の鼻にぶつける。果実が潰れるような音がして、豚はそれ以上動かなくなった。







「ギルは…1人ではまだ未熟だが…、彼と組むとすさまじい連携力を見せてくれる。うむ、報告書通りで間違いはないね。」

「へぇ、すごいや。豚って普通は数時間かけて倒すものなんですけどねぇ…」

「シビれるわね…」

カメラの向こうで、ギルとブリードはどっちがより活躍したのか言い争い(と言ってもギルの怒鳴りをブリードが受け流しているだけだが)を見ていた。




夜になった。今日は2人が取ってきた豚肉を調理することになったようだ。

「うまっ…。おいブリード、今日取った豚肉だが、結構上物らしいぞ。いい部位分けてもらったからお前も食えよ。」

焼き豚肉をかじりながらギルがブリードに言う。

「あー、そこ置いといてくれ、あとで食うよ。」

「あ?んなこと言ってたら他の奴が食ってくぞ。」

「俺の取り置きを食う奴なんてお前以外にいるかよ。」

「……それもそうだな。」

ブリードは市で発行されている新聞を読んでいる。何かを忘れているような気が………。

「あ、そういやお前調べものとかは終わったのか?」

あ、そうだ報告書。すっかり忘れていたぜ。

「ナイスだギルさん。じゃあちょっくら書いてくるわ。」

部屋に戻ると、自分の書いた報告書が一番上に置いている。嫌な予感を感じながらもそれを見ると赤文字で【20(点)/100(満点)評定・雑。私情を交えないでほしい。最低限の情報でいいんだ。】と書いてあった。

「ハハ、やっちまった…。そういやここの鍵持ってたな首領さんは…。」

過ぎたことは忘れよう。ブリードは新聞をゴミ箱に投げ捨て、来た道を戻っていった。

きっと相棒ギルさんが、自分の分も食わずに俺を待っているだろうからな。
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