魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

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第九章【セントラル】

9-31 決戦に向けて

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「……起きろ!」

目が覚めたのは、それから6時間もあとのことだった。
力を使い、すっかり眠ってしまっていたブリレイは、リッターの呼ぶ声で目を覚ます。

リッター「起きろ、ブリレイ!」
ブリレイ「ん、んむ……」
リッター「何をやっているんだ!もう象徴式も終わったぞ!」
ブリレイ「……あぁ、すっかり寝ていたのか」

起き上がり、落ちていた眼鏡を拾うと、汚れを落としてかけ直す。

ブリレイ「象徴式からどれくらい経ったんだ?」
リッター「ブレイダーの象徴式を終えてもう6時間だ。地下室に来てみればこのザマで驚いたぞ」
ブリレイ「……力を使い過ぎたんだ。さすがにハイル王でね。象徴式は上手くいったのか?」
リッター「多少の犠牲は払ったが、信じることは出来ている。それに、やはりそこに倒れている王はお前の仕業か……」

どうやらリッターは、ブリレイの"チカラ"を知っているらしい。

ブリレイ「少しばかり、眠ってもらっているだけだ。別に殺しちゃいないからな」
リッター「お前の幻術なのは分かる。それより、俺じゃなくブレイダーや他の面子に見られたらどうするつもりだったんだ」
ブリレイ「……見られちゃいない。結果論で充分だろう?」
リッター「お前は本当に…。昔から全然変わっていないな」
ブリレイ「ハハハ、これでも研究者として結果よりも過程を大事にしてる部分だってあるんだぜ」
リッター「何を言っているんだか…。それより王のことは頼んだぞ。俺はまだ騎士団としての仕事があるんだ」

振り返り、出口へと向かう。

ブリレイ「……待て、リッター」

それを呼び止める。

リッター「何だ?」
ブリレイ「俺が変わっていないというのなら、お前だって変わっちゃいないだろう。現役時代の俺が認めたお前を、この"計画"に誘った時、快く乗ったのは誰だったか?」
リッター「フン、お前は俺が現役として地位を持っているからして、騎士団の結成の際に王に認められる存在だと知って声をかけたんだろう?」
ブリレイ「それが悪いことか?」
リッター「……悪くない」
ブリレイ「つまらないか?」
リッター「……つまらなくない」
ブリレイ「ハハッ、俺にとっても悪くないし、楽しいさ」
リッター「それは何よりだ。結果も大事だが、本当に過程はきちんとしろよ。過程こそ大事であると、お前は結果を大事にしていてもしっているはずだ」
ブリレイ「あぁ…、過程は大事さ。だが、結果が良くなければそれは意味がない。必ず成功させるつもりだ」
リッター「……分かっている。俺は仕事に戻るぞ」

リッターは今度こそ、出口から出て行った。残されたブリレイは彼が消えたのを見て、ニヤリと笑う。

ブリレイ「すまないなリッター。お前も既に、俺の幻術のうちなんだ」

そして、隣に倒れる王を見て一言。

ブリレイ「……想定外の事態だ。"猛竜騎士くん"たちには悪いが、計画を早めにさせてもらう…」

………


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――その頃、猛竜騎士宅。
ブレイダーの象徴式を終えたのち、バンシィと共に帰宅した魔剣士は、知ったことを二人へ伝えた。
ブリレイが闇魔法の会得者かもしれないこと、幻術の存在について、今までの行動から読み取ることが出来た彼が自分たちに"幻惑"をかけていた可能性のこと。
ソファで疲労から眠りにつくバンシィの横で、どうするべきかと悩んでいた。

猛竜騎士「……お前の話に疑う余地はない。まず間違いないだろう」
魔剣士「あぁ、俺もそう思う」
白姫「ブリレイさんが、そんな……」

幻惑とは、精神を犯すものである。
人知れず操られていたり、突然目の前を歩いていた人にナイフで刺されるような事象も、簡易なものも、その種類は無限大に存在する。

猛竜騎士「だとすれば、一番にかけられていたのは……白姫だろう」
白姫「わ、私ですか?」
猛竜騎士「それに俺たちもだ。魔剣士と俺は、直接的なものと間接的にかけられていたに違いはない」
魔剣士「だろうな……」
白姫「それって……」
猛竜騎士「簡単に説明すれば、白姫はブリレイを信用できるように術をかけていた。だから、瞳を見ても全てを信用してしまっていたんだ」
白姫「…!」

そもそも幻惑魔法の類は、猛竜騎士や魔剣士といった、経験の持つ冒険者に対しては耐性が存在するため、強力な幻惑がなければそれは出来ない。
だが、白姫の信用があれば、俺と魔剣士は信用すると知っていた。
だからブリレイが俺らに対して"軽い幻惑"をかけ、白姫の信用を使い、ブリレイは自分を"味方である"と認識させていたんだ。

魔剣士「……間接的っていうのは、白姫を介して信用させる…これも幻惑魔法みたいなもんか」
猛竜騎士「まるで詐欺師だ。参ったな、やられたよ」
魔剣士「ちっ…」
猛竜騎士「しかし、ブリレイの誤算もあったらしく、それは助かったと思うぞ」
魔剣士「誤算だ?」
猛竜騎士「……お前の存在だ」
魔剣士「俺?」
猛竜騎士「……お前は、闇魔法の真の会得者。それの抵抗が大きかったんだろう。確かにブリレイを信用しつつもあったが、どこかしらで怪しむことが出来たのはお前だけだった」
魔剣士「ははぁ」
猛竜騎士「そのおかげで、選考前に幻惑魔法を見破ることが出来たし、今回の結果につながったんだ」

白姫と猛竜騎士は、魔剣士より深く幻惑にかかりつつあった。
魔剣士の存在が、ブリレイへの完全な信用を止めていた部分があり、それが大きいものだった。

魔剣士「ははぁ、そうなのか……」
猛竜騎士「……とはいえ、それが分かっても、まだ分からないことがある」
魔剣士「ん…」
猛竜騎士「ブリレイの目的だ」
魔剣士「……そうだな」

―――ブリレイ。
彼が味方なのか敵なのか、定かではない部分が多かった。

白姫「ここまで一緒に連れてきてくれたことは、私たちが必要な……何か目的があったということですよね」
猛竜騎士「それも分からない…。だが、それほど強力な幻惑を持ち合わせていたのなら、俺らはどうとでもなったはずだ。それをしなかったということは、何か理由はあるに違いないだろうが……」
魔剣士「つまり、俺らに何かやってほしいってことか?」
猛竜騎士「そういうことかもしれん。今のいままで敵らしい素振りもなし、つまり王を打ち倒すことを一つの目的に……しているということか?」
白姫「それじゃ、やっぱり世界平和が目的で……」
猛竜騎士「それは違う。だとすれば、王を幻惑したほうが早いはずだ」
白姫「そ、そうですよね……」
猛竜騎士「ただ、この状況は使わせてもらう他はない。今はまだブリレイを信用するといったかたちで、王とブレイダーを倒すまでは利用させてもらう」
魔剣士「……そうなっちゃうわな」

ブリレイに対して"貴方は闇魔法の使い手ですか。何が目的ですか?"と質問をするわけにはいかない。
ただ、自分たちにそれを隠していた以上、何か自分たちには伝えられない目的があるということには間違いなかった。

魔剣士「……それじゃあ、明日からの行動なんだが」
猛竜騎士「そうだな、そういえば詳しいことを聞いていなかったが…象徴式はどんな感じだったんだ?」
魔剣士「あー……」

バンシィと参加した、騎士団の象徴式。
最終選考に残った面子は制服の支給が遅れていたようで、私服での参加になった。

魔剣士「象徴式はどうとも言えなかったわ…。騎士団長リッターが大声で笑いながら、王城のテラスに象徴として現れたブレイダーを称えるみたいな、そんな感じだった……」
猛竜騎士「そ、それだけか?」
魔剣士「んー…。いや、一応は闇魔法っつーか、無造作に魔力を繰り出してた。ほら、俺が砂国で放った花火みたく…ボンボンといろんな属性を」
猛竜騎士「ふむ」
魔剣士「まぁ、それでも納得できなかった奴がいたんだが…そいつは……」
猛竜騎士「……見せしめか」
魔剣士「あぁ……」

……切り捨てられた、ということだ。

白姫「…っ」

それを聞いた白姫は下唇を強く噛んだ。

魔剣士「んで、実力もあるしまぁ納得されたってわけ。元々、団長で実力あるリッターっつー奴と剣劇みたいなことやって強さもアピールしてたけどな」
猛竜騎士「……なるほど、とにかく実力の高さを示したかったわけか」
魔剣士「結局はそれで終わり。だけど、まだまだ闇魔法っていうのが嘘だろっていう奴らばっかだったぜ」
猛竜騎士「そりゃ突然に"闇魔法の会得者です"といって理解も出来んだろうな。お前みたく、魔法化でもできれば話は別なのだろうが」
魔剣士「魔法化…か……」

傍で眠る、バンシィへと目を向けた。

白姫「バンシィちゃん……」
魔剣士「詳しいことは知らないが、話じゃブレイダー以外の家族はいなかったんだろ……?」
猛竜騎士「なのに、兄を敵に回しても……、回してまで……、回ってしまった……」
魔剣士「バンシィ……」

敵に回してもいいくらい、魔剣士を想ってしまった。
敵に回してまで、魔剣士を想ってしまった。
家族だったブレイダーが、敵に回ってしまった。

魔剣士「……これからこいつは、どうすればいいんだろうな」

一人残されて、また一人きりの冒険者に戻るのだろうか。
知ってしまったら戻れない。知ってしまったから、戻れるわけがない。

魔剣士「だけどバンシィ、気持ちに応えるのは難しい。お前の覚悟も決して無駄にはしねぇ……」

討つ他はない。彼女が覚悟したことに、自分が情けをかける理由はなくなった。

魔剣士「……そうだな、オッサン、白姫」
猛竜騎士「何だ?」
白姫「どうしたの?」

二人を見て、自分の考えをしっかりと伝える。

魔剣士「グダグダやってても仕方ねぇと思うんだ。ブリレイが敵かもしれないと分かった今だから、俺は俺の感覚を信じて、戦いたい」
猛竜騎士「つまり……」
魔剣士「チャンスを見つけたら討つ。ブリレイも、ブレイダーも、王も、全部だ」
猛竜騎士「……これはお前にしかできない仕事だ。お前がそう決めたのなら、俺に反対する理由はない」
白姫「王も、ブレイダーも……、魔剣士が思った時に、反対する理由なんかないよ」
魔剣士「ありがとうよ。二人には知らない場所で立ち回ることになるが、もしかしたらそれは……」
白姫「ううん、大丈夫だよ!明日のために…だもん!」
魔剣士「……あぁ。バンシィにも作戦は伝えて、俺たちで何とかやれるところまでやってみるさ。任せてくれ」
猛竜騎士「構わんさ。お前はもう、立派な冒険者の顔をしているからな」
魔剣士「おっ…?」

予想外な猛竜騎士の褒め言葉にちょっと嬉しそうにしながら、明日より始まる騎士団での生活の中で、チャンスを見つけるべく、戦いの意志を固めた。
まだ不透明な部分も多く残されているが、セントラルの戦いを止めるために、この身の全てを捨てる覚悟で。

…………
……


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