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第九章【セントラル】
9-42 帰宅
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―――陣の世界。
ウィッチは魔剣士の身体へ戻り、リヒトは後ろをついて縮地による高速移動を繰り返す。
魔剣士「着いてきているか!」
リヒト「えぇ、問題はありません!」
魔剣士「時間は!」
リヒト「内部に入ってまだ1分も経っていない、このペースだと現実世界で3時間もかからないはずです!」
魔剣士「速度を上げる、ついてこれるか!」
リヒト「やってみます!」
グンと前のめりになり、更に速度を上げ、一気に出口へと向かう。
氷山帝国を出発し、体感時間は1分ほど。既に出口の光を向こう側に感じ、魔剣士とリヒトは一気に光の中へと飛び込む。
魔剣士「ぐっ、うぅっ!!」
リヒト「吸い込まれる感覚が、少し、きついですけど…ッ!!」
この時、現実世界ではわずか2時間程度。
魔剣士たちは本来の旅路において、最短で1週間以上かかる道のりを、わずか2時間で移動したのだった。
………
…
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―――猛竜騎士の自宅、屋根。
昼間ということもあり、二人が現れた場所も良く、眩い輝きを放ち大きな音を立てても周りで気にする者はいなかった。
魔剣士とリヒトは無事に着地ともいかずに、斜めの屋根に足を滑らせるが、寸でのところで踏ん張り、何とか落下せずに済んだ。
魔剣士「あっぶな、屋根かよ!」
リヒト「だ、大丈夫ですか魔剣士さん!」
魔剣士「何とかな……」
リヒト「ここはどこですかね?」
魔剣士「……あぁそうか、お前はココに来た記憶がないのか」
リヒト「はい、申し訳ありません……」
魔剣士「謝るなっつーの。ここは猛竜騎士の家の屋根…だな。魔梟の奴も、良い場所を選んでくれるぜ全く」
首を伸ばし、下の様子を伺う。
周辺に騎士や兵士たちの姿は見当たらない。
魔剣士「おっしゃ、ブリレイめ俺らが戻ってくるとは思ってなかったな……」
リヒト「どうしますか?」
魔剣士「取り敢えず、家の中に入るか。オッサンには悪いが、一旦の拠点にさせてもらうぜ」
リヒト「オッサン…猛竜騎士さんのことですね」
魔剣士「あぁ、さすがに分かってたか。ところで、こっから地面まで着地出来るか?」
リヒト「もちろんです」
魔剣士「はは、そうか。あの時は屋上から落下して大声あげてたからちょっと心配したぜ」
リヒト「わ、忘れてください……」
魔剣士は改めて周囲を伺い、敵がいないことを確認すると屋根から飛び降りた。途中で猫のようにクルリと周り、着地する。
リヒト「今、行きます」
続いてリヒトもジャンプし、そのまま問題なく着地する。
魔剣士「おっ、本当に余裕そうだな」
リヒト「元々がブレイダーの肉体で、身体能力も高いようですし。自分の肉体であっても、これくらいは」
魔剣士「そうか。…だけど、よくブレイダーの肉体で生きていくことを選んでくれた。ありがとう」
リヒト「お礼なんか言われることは…。魔剣士さんに説得され、改めて生きていく意味を見出しました」
魔剣士「生きていく意味?」
リヒト「はい。この身体でタオフェイ家ではなくブレイダーとして、今までの罪を償うために。この力も、そのためにあるんじゃないかって…そう思って……」
魔剣士「……生まれ変わったブレイダーの誕生ってか。期待してるぜ」
リヒト「は、はいっ!」
二人は笑い合い、互いに信頼していることを確認する。
そして、玄関に向かうとゆっくりドアノブに手をかけた。
魔剣士「……ん?」
てっきり、鍵がかかり開いていないものと思っていたのだが。
リヒト「どうしました?」
魔剣士「……鍵が開いている。オッサンが掛けないまま外出してから放置されてたのか…?」
既に騎士団が中を捜索したのだろうか。
すると、リヒトが気付く。
リヒト「足元に泥…。乾いてますが、今日は雨が降っている様子もありませんね」
魔剣士「俺がこの家を拠点にしてた頃も、雨は降ってなかった。ってぇと、俺らが消えていた10日前後の間に雨が降って誰かが入ったってことか」
リヒト「もしかしたら、猛竜騎士さんたちが逃げて家に避難していたのかもしれません」
魔剣士「その可能性であってほしいが……」
リヒト「用心にこしたことはありませんね」
二人は剣を構え、気配を悟られないよう魔力を落とす。
先に魔剣士がドアを静かに開き、中の様子を伺うが、誰がいる様子はない。
魔剣士「……人はいないな」
リヒト「大丈夫そうですか?」
魔剣士「取り敢えず入っても大丈夫そうか……」
"キィ"とドアを開き、室内へ足を踏み入れる。
魔剣士(オッサンらだと良いんだが……)
内心、淡い期待をもちながら家の中を散策する。
すると、心の声で彼女が魔剣士へと呼びかけた。
ウィッチ(魔剣士、聞こえ…る……?)
魔剣士(うおっ!?)
急に聞こえてきた声に、驚き、びくりと身体を震わす。
魔剣士(そ、そういやいたんだったな!さっきから声が聞こえなくて、すっかり忘れてたぜ!)
ウィッチ(あのね……。まぁそれはいいんだ…けど…。それ…よ…り……、私、あま…り…、現実世界への干渉が…、長い時間できない…みた…い……)
魔剣士(どういうことだ?)
ウィッチ(セージの前では気丈に振る舞ってたけど、猛烈な…眠気があって…。あまり、長い時間行動が出来ない…みたいなの……)
魔剣士(眠いって、魔力の意識が眠くなるのか?)
ウィッチ(私を維持している魔力が、外にいるほど気化して消えて…行く……。身体を保つ魔力は無限大でも、私自身の意識を保つ生命力が徐々に薄れていくんだと思う……)
魔剣士(じゃあ、こうすればいいのか)
心の中でイメージし、彼女を"幼女化"した。
ウィッチ(…うっ!?な、何をする!?お、お前の意識でちっちゃくなってしまったではないか!!)
幼女化した途端、彼女の声が明るくなる。どうやら、精神世界でも子供フォルムにおいては体力を保ちやすいらしい。
魔剣士(ハハハッ、やっぱりイメージ通りになるのか。元気になってるようで何より)
ウィッチ(……フン、どのみち休息時間が伸びただけじゃ。それより、話を聞け)
魔剣士(ん、何だ?)
ウィッチ(これを伝えるつもりだったんじゃ。…私の感知で気付いた。二階に四人の人間がいるぞ)
魔剣士(……四人!?まさかオッサンたち…!)
ウィッチ(ではない。そもそも人数が合わないだろう)
猛竜騎士、白姫、バンシィ、それでも三人。
と、すれば……。
ウィッチ(感じ得る中に猛竜騎士の気配はない。知らぬ人間が二人に、ドス黒い気配じゃ。それと……もう二人は……)
魔剣士(もう…二人は……?)
ウィッチ(これは…、白姫とバンシィの気配じゃ……!)
魔剣士「……ンだとッ!?」
それを聞いた瞬間、魔剣士は剣に魔力を込めて一気に階段を駆け上がった。
突然の行動に、リヒトも慌てて後ろを着いていく。
リヒト「魔剣士さん!?ど、どうしたんですか!?」
魔剣士「説明不要、武器を構えろ、入るぞォ!!」
リヒト「は、はいぃっ!?」
そして、階段を駆け上がるとウィッチの助言。
ウィッチ(……左の部屋じゃ!)
魔剣士(分かった!!)
左側にあった扉を蹴飛ばし、中へ入る。
最初は視界が揺れ、中で何が起きているのか分からなかったが、まず一人、騎士団と思われる男をドア越しに吹き飛ばした。
魔剣士「あ!?」
そして、注目。奥のベッドに、半裸になっている騎士団の男が一人と、押し倒され必至に抵抗するバンシィ。隣には止めさせようと鈍器のようなものを持った白姫。
また、白姫とバンシィは服を破かれた状態であった。
リヒト「こ、これ……!」
魔剣士「……ッ!!」
ウィッチ(魔剣士、これは…!)
"分かっている。"
それを見た瞬間、怒りが込み上げた。
騎士団の男はこちらを睨み、「何だテメェは!」とバンシィから手を離して傍にあった剣を握り締める。
魔剣士「死ね、カスが」
魔剣士は、剣を握りしめた男がこちら側に構える前に、雷撃魔法を顔面に放ち一撃で気絶させた。
一方、ドアに弾き飛ばされたもう一人の男もリヒトのカバーで既に気絶していた。
リヒト「魔剣士さん、大丈夫です!」
魔剣士「良い援護だリヒト、助かるぜ」
互いにコンタクト、頷き合う。魔剣士は二人を倒したことを確認すると、白姫とバンシィに声をかけた。
魔剣士「し、白姫…!バンシィ……!」
こんなかたちでの再会を誰が予想したのか、言葉が詰まる。
生きていたのか。生きてくれていたのか。無事だったのか。どんな言葉を発するか、どういえばいいのか分からなかった。
魔剣士「白姫、バンシィ……!そ、その……!」
言葉が詰まる魔剣士。白姫とバンシィは、突然現れた魔剣士とブレイダーに"何が起きたのか"が分からず立ち尽くす。
白姫「魔剣士…なの……?」
バンシィ「お兄ちゃん…、それに…ブ、ブレイダーおに…い……?」
二人は魔剣士を見つめ、様子を伺う。
その問いに、魔剣士は少し考えたあと、思い切りの笑顔でこう言った。
魔剣士「すまん待たせた。今、戻った!」と。
白姫「ま…けん…し……!」
バンシィ「お兄ちゃん…!」
魔剣士「お、おうっ!!」
二人は魔剣士であることを確認、状況を飲み込む。
この瞬間、彼が助けに来てくれたと、彼は死んでいなかったのだと、喜びと嬉しさに涙を流しながら魔剣士に抱き着いた。
魔剣士「お、うぉい!?」
白姫「やっぱり、やっぱり魔剣士っ…!大丈夫、怪我してない?元気なの!?本当に、本当に本当に魔剣士なんだよね…!!」
バンシィ「お兄ちゃん、どうやって、どうして……!大丈夫なの…?元気なんだよね、お兄ちゃん……!」
魔剣士「お、俺は大丈夫だって!!」
大人気の魔剣士に、リヒトはくすりと笑う。
ウィッチ(やれやれじゃな。抱き着かれて興奮するんじゃない、色々と分かるぞ…魔剣士)
魔剣士(う、うっせっ!!んなわけねーだろ!?)
慌ててそれを否定しつつ、抱き着き、興奮冷めやらぬ二人をなだめた。
魔剣士「わ、分かった分かった!ええいっ、落ち着けお前ら!それより、騎士団の奴らに何もされてないだろうな!?」
白姫「う、うんっ!大丈夫、あ…危ないところだったけど……っ!ま、魔剣士はどうやってここに来たの?飲み込まれてからどうしたの!?」
バンシィ「私も平気だよ、お兄ちゃん…。あと、後ろにいるのはブレイダー…だよね……?雰囲気が違う気が…する……」
魔剣士「お、おうそうかそうか!えーとな、俺は鏡の世界に入って…。それにブレイダーはー……!あー、えーっと!!」
リヒト「パニックです!?」
ウィッチ(やれやれじゃのぅ……)
個人の主張が入り乱れ、上手く話しが出来ず。
白姫「魔剣士…!」
バンシィ「お兄ちゃん…!」
リヒト「魔剣士さん…」
ウィッチ「魔剣士ぃーっ…フフフ……」
魔剣士「……い、いい加減しろぉぉーーーっ!!」
嬉しい怒号が、部屋の中に響き渡った。
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――20分後。
大声をあげた魔剣士は、まずは騎士団の二人を適当なもので縛り上げたあと、白姫たちを座らせ、自分たちの話を聞かせていた。
出し惜しみをする理由もなく、自分たちの身に起きた全てのことを話したのだった。
白姫「そっか、ウィッチさんが……」
魔剣士「今は表に出るほどの回復をしてないようだから、あとで具現化して見せてやるよ」
白姫「うんっ。でも、魔剣士が無事で本当に良かった……、良かった…、本当に良かった……!」
魔剣士「ったりめーだろ。つか、迷惑をかけちまってすまなかったな」
白姫「ぜ、全然そんなこと!みんな必死に戦ってるのに、何も出来ない私が悔しくて……」
魔剣士「あぁ?お前だって立派に戦ってるだろ。そんな悲観すんじゃねーよ」
白姫「う、うん…。ありがとう、魔剣士……」
優しく微笑みを見せる白姫。
彼女の笑顔が見れて良かったと、魔剣士は深く安堵した。
バンシィ「それで、お兄ちゃん……」
魔剣士「ん?」
バンシィ「そこの…、ブレイダーの身体を…持った人は……」
魔剣士「あぁ、さっき説明した通りだ。勝手にやっちまって本当にすまないと思ってる。魔法世界で、ブレイダーはもう……」
バンシィ「あっ、違う…!」
魔剣士「む?」
てっきり、勝手に倒してしまったことを突っ込まれたのかと思ったのだが。
バンシィ「そうじゃない…。本当に、中の人は違うの……?」
魔剣士「そうだな、俺らと一緒に戦い、ウィッチも認めた。紛れもなく、中身は違う」
バンシィ「リヒトって人…なの……?」
不思議そうに見つめるバンシィに、リヒトは笑顔で応える。
リヒト「お兄様の身体を器として利用してしまい本当にごめんなさい。僕はリヒト、改めてよろしくお願いします」
バンシィ「……ううん、いいの。それに、やっぱり…、ブレお兄ちゃんじゃないんだね…」
リヒト「え?」
バンシィ「ブレお兄ちゃんは、そんな笑い方じゃなかった。そんな風に、どこか、優しい風じゃなかった……」
リヒト「だ、だめですかね?じゃ、じゃあこうでしょうか?」
ムっと顔を変えて、ぎこちない"悪い笑み"をしてみせる。
突然の変顔に、バンシィは吹き出し、顔を向こう側に向けた。
バンシィ「ブ、ブレお兄ちゃんの身体だったんだから…そんな顔……!」
リヒト「あ…あはは、ごめんなさいっ」
バンシィ「卑怯だよ…、そんなの……。笑っちゃう……」
リヒト「ごめんなさい、バンシィさん」
バンシィ「う、ううん……」
笑いを堪えるバンシィ。どうやら、過ぎた心配だったらしい。彼女自身、既に決着をつけていたということだ。
魔剣士「やれやれ、どうも女ってのは強いもんだ……」
壁にもたれ、ずるずると腰を落とした。
自分の話を終え、次に白姫たちがどう過ごしてきたのか聞こうとしたのだが、どうにも気になっていたことを問いかけた。
魔剣士「そういや、オッサンはどうした?」
白姫「ッ!」
バンシィ「あ…ぅ……」
その言葉に、二人は閉口する。
魔剣士「……どうした?」
魔剣士は、たまたま猛竜騎士が席を外し、このようなことが起きてしまったものと安易に考えていた。
魔剣士「おい、どうした?」
だが、その問いに顔色が悪くなる白姫とバンシィ。ここでようやく、魔剣士は何かを察する。
魔剣士「……何か、あったのか?」
神妙な面持ちで、改めて二人に問いかける。
すると、最初に口を開いたのは白姫で、少し泣きそうに、鼻声でそれを説明し始めた。
白姫「ま、魔剣士…本当に…ごめんなさい……。わ、私のせいなんだ……」
魔剣士「何だって?」
白姫「猛竜騎士さんは、私のせいで連れて行かれて…、これから私たちのことを…説明しないとと思ってて、それで…闇魔法に、幻惑魔法に……」
魔剣士「ま、待て。話が見えてこないぞ、いちから説明してくれ」
……何かを伝えようとしているのは分かる。
悲しいことが起きたのも分かる。
信じられないことが、これから説明されるのだとも分かる。
魔剣士「……全部分かってる。だから、落ち着いて話をしてくれるか」
きっと、白姫が何か自分のせいだと思っているのだろう。長い付き合いだからこそ、彼女の考えが分かる。それを見ていたバンシィも、魔剣士に対して「違うよ、お姉ちゃんのせいじゃない」と言いたそうに、小さく首を横に振り、魔剣士はそれに「分かってる」と優しく頷く。
魔剣士「大丈夫だ。一つ一つゆっくりと話をしてくれ」
白姫「う、うんっ…」
"大丈夫だ"と笑い、安堵を与える魔剣士。
白姫はそれを見ると、わずかばり落ち着き、話を始める。
白姫「わ、私ね、バンシィと…捕まってたんだ……。あの時、猛竜騎士さんとバンシィちゃんは一生懸命に戦って、なのに、負けちゃって――……」
落ち着いたとはいえ、まだ興奮気味の彼女の話は順序がバラバラで、パズルのように繋げねばならなかったが、合間合間にフォローしたバンシィのおかげもあって大まかな話は理解することが出来た。
魔剣士「…」
内容は至ってシンプルなもので、猛竜騎士たちはブリレイの前に敗北したことは真実であったこと。
南方大地が制圧されたこともあって、既に分かっていたことだったが、改めて言われると凄く悔しくなる。
白姫「そ、それで……」
猛竜騎士が弱みを見せて、ブリレイに操られてしまい、そこに白姫は責任を感じていた。
また、彼女たちが逃げたあとで、裏をかいてセントラル王都内で逃げていたこと、数日は外で過ごしていたということも説明された。
バンシィ「それから、私たちは……」
白姫「セージさんに…会いに…行こうとして……」
逃亡して10日目となる今日まで、猛竜騎士の自宅周辺の見張りが急に解かれたことをチャンスと思い、セージに助けを求めるべく準備を整えようとした。しかし、その最中に二人は捕まり、先ほどの状況に陥っていたというわけらしかった。
魔剣士「……そういうことだったのか」
白姫「うん…、魔剣士…私は猛竜騎士さんを……」
魔剣士「もう良い、お前だって立派に戦ってるんだ。これ以上に謝ることはねぇよ」
白姫「…っ」
魔剣士「それに謝って何か解決するか?今は、前を見て進むしかないだろがよ!」
白姫「うん…」
ガッツポーズし、元気に笑う。
だが、内心は尋常ではないくらいに焦っていた。
魔剣士(オ、オッサンが敵陣営についただと…?本当に裏切りに落ちたんだったら、敵になった時…どうすれば……!)
一番に信頼を置いていた人物を失い、自分たちはどう動けばいいのか。
リーダーである彼が敵になったとしたら、これからどうすればいいのか皆目見当もつかない。
魔剣士(……っ)
とはいえ、この状況でリーダーとして立ち回れるのは自分しかいないだろう。
魔剣士はそれを念頭し、どうするべきかと考えたところ――…。
ウィッチ(やれ魔剣士、私を忘れていないかのう?)
魔剣士(ウ、ウィッチ…!)
彼女が呼びかけた。
ウィッチ(これでも全ての記憶を知っているんじゃからな、助言くらいは出来るぞ?)
魔剣士(助言ね…。ブリレイを倒すのは分かってるが……)
ウィッチ(お前まさか、面倒だからすぐにでも王城に行ってブリレイを倒そうなどと考えはおるまいな)
魔剣士(は、はは!?いや、まさか…!)
図星。…というか、心などとっくに読み取られているが。
ウィッチ(お前は本当に単純じゃのう。だが、その考えはあながち間違えではないと言える)
魔剣士(あ?)
ウィッチ(少しは頭を働かせぬか。…ええい、説明するのにお前だけでは納得してもらえんじゃろう、私を表に出せ!)
魔剣士(いや、お前があまり表に出れないと)
ウィッチ(幼女フォルムなら少しは動ける。じゃが、服はきちんとイメージするんじゃぞ。大人フォルムではそのまま寝てしまうかもしれん)
魔剣士(……へいへい、分かりましたよ)
彼女に従い、イメージし、具現化する。
部屋に広がる突然の眩い光に、白姫とバンシィは「きゃあ!」驚き目を隠すが、次に目を開いた時に目の前に居る"彼女"の存在に益々声をあげて驚いた。
白姫「……ウィッチさん!?」
バンシィ「わっ、ちっちゃくて可愛い……」
ウィッチ「……久しぶりじゃの!」
白姫はウィッチに駆け寄り、手に触れようとしたが、彼女の手は虚しく空を切った。
それをされたウィッチは一瞬、寂しそうな表情を浮かべるも、すぐに自信満々な様子で笑みを浮かべた。
ウィッチ「私は魔力の存在じゃ。触れるのは主である魔剣士、魔力化した状態でだけじゃ!」
白姫「ふ、ふぇぇ…、そうなんですか……」
ウィッチ「フフン、まぁ良い。それと、バンシィは初めてじゃったな?」
バンシィ「うん、薄っすらと話は聞いてたけど……」
ウィッチ「ま、気にするな。私は魔剣士の心の中で共に住んでいるウィッチ、以後、よろしく頼むぞ」
バンシィ「うん…。心の中ってことは、何でも知ってるんだよね……」
ウィッチ「む?」
その質問に、魔剣士がギクリとする。
バンシィ「教えてほしいな、お兄ちゃんは私が迫った時…、反応が……」
魔剣士「えええい、そんな話はいらんだろ!!ウィッチ、早くお前が出てきた説明をしろォ!!」
ウィッチ「な、なんじゃ……」
恐らく、このウィッチは子供らしく全てをぶちまける。
別にバンシィに興奮をしていたということは無い、無いだろうが、多分無いだろうが、魔剣士はこれ以上に質問されることを嫌って慌てて遮る。
バンシィ「ちぇ……、でも……」
白姫(そ、そういうことも分かっちゃうってことなんだ……)
慌てふためく魔剣士に、何かを察する二人。
魔剣士はウィッチを前面に押し出し「さっさと説明してくれ!」と声を上げた。
魔剣士「いいから、これからの行動について話し合うんだろ!」
ウィッチ「分かった分かった、そう急かすな」
魔剣士「うっせ!お前だって起きてられる時間が限られてるんだから、早くしろ!」
ウィッチ「分かったというのに!というか、まずはお前が説明せんか!」
魔剣士「あァ!?」
ウィッチ「お前が思っていた作戦で大体は間違いがない!だから、私はそれに補足をするために現れただけじゃ!」
魔剣士「な、何……!」
そのやり取りを見る三人は、くすりと笑う。
特に白姫は、長い修行期間で彼女と魔剣士のやり取りを随分と見ており、亡くなった際に二度と見られなくなる光景だと思っていたため、わずかに涙も流した。
魔剣士「分かったよ!えぇとそれじゃ、リヒト、白姫、バンシィ!」
リヒト「はい!」
白姫「う、うん!」
バンシィ「うん……」
魔剣士「あくまで俺の考えなんだが、今後の行動についてちっとばかし考えたから聞いてほしい」
ごほんと咳き込み、単純な作戦を口にする。
魔剣士「オッサンがいない今、こうして四人…五人が集まれたのは本当に幸いだと思ってる。リヒトとバンシィは充分な戦力になるし、白姫だってお…、俺の支えにもなってくれる」
白姫「う、うんっ…!」
リヒト「はい」
バンシィ「お兄ちゃんに、信頼されてて嬉しい……」
魔剣士「それで、作戦について。俺は、早いところ王城に突撃するのも悪くないかなって思ってるんだ」
リヒト「お、王城にですか?」
白姫「大丈夫…なのかな?」
バンシィ「お兄ちゃんがそういうなら、僕は従うだけ…だけど……」
何故か反応が薄い。魔剣士がそれを突っ込もうとした時、ウィッチが「まぁ待て」と止める。
ウィッチ「魔剣士、まぁ待て。ここで私が出てきた理由に繋がるわけなんじゃ」
ここで、彼女が出てきた理由を述べると言ってフォローに入った。
魔剣士「な、何だよ?」
ウィッチ「……お前も馬鹿じゃのう」
魔剣士「は!?」
ウィッチ「それに、白姫…バンシィ…リヒト……お前たちもな。魔剣士が強いとはいえ、心に根付いたものはそう簡単に取り払えぬと正直に言わぬか?」
白姫「えっ…」
バンシィ「根付いた…もの……」
リヒト「取り払えない、ですか?」
何だそれはという言葉に、ウィッチは核心を突く。それを言わなければ、埒が明かないからである。
ウィッチ「一度とはいえ、王城で敗北をしたことが強く根付き、士気に影響しているんじゃろう?」
魔剣士「…ッ!」
白姫「あっ…」
バンシィ「う……」
リヒト「そ、それは……」
トラウマ、フラッシュバック、経験した傷が心の傷として強く根付く。このまま攻めた所で、一歩上にいる戦術を持つブリレイに勝つことは出来ないだろう。また、リヒトは間接的にそれを知っているからこそ、奥底で"また負けるのではないか"という同じ感情を抱いていた。
ウィッチ「そこを知ってこそ、明日に繋がるんじゃ。まずは認めることだ、負けたという事実を。それでも勝たねばいけないということを」
魔剣士「そ、そうか……」
白姫「…っ」
バンシィ「う、うん……」
リヒト「ウィッチさん…」
事実を認め、今いちど敗北を見つめ直す。
ブリレイを倒せばいいという簡単かつ難しいことが、どれほどのことなのかを理解しなければならない。
ウィッチ「それで、魔剣士」
魔剣士「な、何だ?」
ウィッチ「お前の言った"攻め込む作戦"についてだが、あらかた間違ってはいない」
魔剣士「あ、あぁ……」
ウィッチ「さっきも言ったが、どうして間違いではないか…そこをきちんと把握しているか?」
魔剣士「いや…」
ウィッチ「戦術、作戦とは兵法の一つじゃ。お前が幾ら成長したとはいえ、猪突猛進なところは良さでもあり悪いところでもある」
魔剣士「ん、うむ……」
ウィッチ「まず、理由を見る。一つ、不思議な点があることを気付いたか?」
魔剣士「不思議な点?」
ウィッチ「私がこの作戦を推す理由として、白姫たちから聞いた話のうち一つ、不思議な点がある。そこを結び付けた」
魔剣士「ど、どこだ?」
ウィッチ「……この家から一度、見張りを退いたことじゃ」
魔剣士「む…」
猛竜騎士の自宅は、充分に逃げた白姫とバンシィを追うには格好の場所であるというのに、わざわざ騎士団を引いた理由。
魔剣士「そ、そういえば……」
ウィッチ「恐らく、騎士団が動かざるを得ない理由が出来た。兵士の配置もしないということは、王城に何かが起きている」
魔剣士「何…?」
ウィッチ「確か、既に南方大地は陥落していたはずじゃな。次は"西方大地"か"東方大地"に攻め入る予定ではなかったか?」
魔剣士「あ…、そういえば……」
ウィッチ「つまり、西方と東方いずれに攻め込むとしても、兵士と騎士団の総力戦になることは必須。だから……」
これから攻めるため、兵を退かせたという可能性が高い。
魔剣士「そ、そういうことか!」
ウィッチ「戦いは時間と共に士気が薄れる。戦争は主に末端兵士が大勢利用されるが、そこまでブリレイの幻惑は使っていられん。伴って、南方大地を陥落したあとすぐに他の大地へ攻めなければならない」
魔剣士「お、おぉ!それで!」
ウィッチ「ちょっとは考えぬか。騎士団に選抜されるのは強き冒険者たちであって、リッターや猛竜騎士クラスも少なくない。それを操るには、ブリレイ本人が赴く必要があるじゃろ?」
魔剣士「っつーことは…!」
王城には、ブリレイがいないのではないかということだ。
魔剣士「い、いないってことは俺らが攻めても意味ないってことか?」
ウィッチ「違う!王城を堕とすのは容易ということじゃ。末端兵士くらい、お前たちが相手ならワケないだろう?」
魔剣士「不在の間に、王城を堕とすのか?」
ウィッチ「仮説じゃが、私の推測が正しければ既にブリレイはいないはずじゃ。他の大地を陥落するためには騎士団の力が必須な以上、一定の期間"猛竜騎士の自宅"を見張らせ、あとは白姫たちを後回しに大地の陥落を優先させた…ということではないかと読む」
魔剣士「お、おいおい…!白姫の話と、俺の作戦にそんな深い読みをしてたのかよ……」
ウィッチ「あのな、これでも私は世界踏破をしたし、それなりの経験もある。特に世界平和なぞ遠かった時代もあって、そこから繋がるのがブリレイは実力さながら"戦術に長けた"動きをする人物を欲しかったわけじゃ」
魔剣士「だからリッターやオッサンみてぇな、同じ時代を生きた冒険者を欲しがったってことか……」
知れば知るほど、聞けば聞くほどに"裏"が分かる。
無言ではあったが、この話を聞いていた白姫たちも沸々と士気が沸いてきたのは言うまででもない。
ウィッチ「だから、お前の言った作戦にフォロー…助言を言わせてもらうとすれば」
魔剣士「すれば…?」
ウィッチ「王城を落とし、ブリレイを迎え撃つチャンスだということじゃ。王がいない玉座など、奪うことは容易いじゃろ?」
魔剣士「……いたらどうする?」
ウィッチ「それも含め、調べてもらうのに適切な男がいるじゃろう」
魔剣士「んむ…」
ちらりとリヒト…もとい"ブレイダー"を見る。
リヒト「……そうか、ブレイダーである僕なら王城に入ることも!」
ウィッチ「うむ、そういうことじゃな」
これ以上の適任はいない。
魔剣士「か、完璧に近い作戦じゃねーのこれ……」
白姫「凄い……!」
バンシィ「ただの幼女じゃないんだね、ウィッチ……」
ウィッチ「このくらいはな。ただ、真実に近い助言は取ったほうが良い」
魔剣士「真実?」
ウィッチ「そこに寝てるじゃろ。お前らが気絶させた二人組のうちの一人を起こし、これからの行動について聞いておけ」
魔剣士「……あ、忘れてた」
白姫とバンシィを襲った二人組が、部屋の隅っこでノビていた。
魔剣士「つか、元々コイツらから情報を聞けば良くなかったか!?別にリヒトに忍び込ませなくても、城の情報くらいは引き出して……!」
ウィッチ「作戦を聞かれて、万が一逃げられたら困るからな。他人に聞かれないようにするのも作戦のうちじゃ」
魔剣士「そ、そうなのね……」
ウィッチ「こいつらの話はあくまでも助言で聞く。そのうえでリヒトに真実を確かめさせ、今晩には行動に移ればよい」
魔剣士「……なるほどな、じゃあ起こすわ」
立ち上がった魔剣士は、ノビる一人に近づき、半裸男の顔をグリグリと踏んだ。
魔剣士「おい、起きろボケ」
何度が踏むうち、半裸は目を覚ます。
半裸「んぁ……」
魔剣士「うっす、目が覚めたか?」
半裸「な…に……」
魔剣士「眠ってんのかお前。おーい、聞こえてますかー」
半裸「ん…、あ…、あっ?……あっ!?」
ようやく、ハッキリと意識を取り戻した半裸は怒り声をあげた。
半裸「て、てめぇっ!!」
魔剣士「うし、目覚めたみたいだな。お前、騎士団だろ?」
半裸「さっきはよくも殴りやがって!」
魔剣士「話を聞けや」
半裸「むぎゅっ!?」
もう一度、足で顔面を踏みつける。
魔剣士「お前は俺らの話だけ聞け」
半裸「な、何むぐっ…!」
魔剣士「……おーい、ウィッチの出番だぜ」
ウィッチ「やれやれ……」
重い腰をあげるように、ゆっくりと立ち上がって半裸へと近づく。
ウィッチ「どれ、お主」
半裸「な、何だ…!」
ウィッチ「今日、騎士団はこの家の撤退命令でも出ていたのか?」
半裸「……何の話だ?」
ウィッチ「この家を数日見張っていたのに、急に撤退したのは何故じゃ?」
半裸「何故って……」
ウィッチ「…」
半裸「そりゃ……」
ウィッチ「…」
半裸「…」
ウィッチ「…」
半裸「……ははーん…」
周りの様子を見て、何かに気付く半裸。踏み続ける顔をブンブンと振ってそれを弾き、魔剣士を見上げて笑いながら言った。
半裸「そうか、思い出したぞ…。お前、魔剣士だな…!」
魔剣士「俺の名前を知ってるのか?」
半裸「誰が知らない奴がいるか。仮面を着用してて分からなかったが、10日前にお前の正体が賞金首であるってことはブリレイから聞いてたぜ」
魔剣士「…ちっ、ブリレイの野郎……!」
半裸「へっへっへっ、残念だぜ。もうすぐ、お姫様を抱けたってのによぉ……」
魔剣士「……ボケがぁっ!!」
"ズンッ!!"
再び足で彼の顔面を踏みつけるが、今度は怒り混じりで勢いよく踏み抜かれ、半裸は血を吹いた。
半裸「がっふ……!」
だが、それを見る白姫たちは動じない。
傷をつけられそうになったことや、彼の言動から敵であること、敵は容赦しないことを決めていたからである。
ウィッチ「……のう、お主」
半裸「な、何だ…!」
ウィッチ「今いちど問うが、どうして今日に見張りを止めたんじゃ?」
半裸「……べ、別にそういう命令があったからだよ!」
ウィッチ「ブリレイの指示か?」
半裸「だったら何だよ」
ウィッチ「ふむ、どうして撤退をしたのじゃ?」
半裸「……どうして気になるんだよ」
ウィッチ「気になるからじゃ。答えてくれるか?」
半裸「嫌だと言ったら」
"ズンッ!"
三度目の踏み抜きは、先ほどよりも優しかったが、舌を噛んでしまい血を吐き痛みに悶えた。
半裸「あがっ、がああぁっ!!」
ウィッチ「……答えてくれるか?」
半裸「いっ、いがっ…!わ、わがっががら痛ひほ!」
ウィッチ「何を言っている?」
半裸「わがっががら痛みをほっへくれぇっ!!!」
ウィッチ「やれやれ……」
魔法の存在であるウィッチにも、魔法は扱うことが出来る。魔剣士の魔力を借りて、ヒールを唱え、彼の傷と痛みを癒した。
半裸「はー、はー……!」
ウィッチ「早くしゃべらねば、もっとひどい事になるんじゃが…良いのか?」
半裸「た、例えば……!」
魔剣士「……例えば、この指先から氷の針を出して…一本一本をお前の肉体に刺していくとかどうだ…?」
人差し指を突き出し、氷の針を具現化する。所詮は指先から伸びた細い針程度だが、全身に刺されてはショック死してしまうかもしれない。しかも、まず即死ではなく痛みに悶え続けることだろう。
半裸「く、くそ……!」
ウィッチ「どうせ、お主だって雇われた程度で騎士団への仁義はないはずじゃ。話すことも、問題ないのではないか」
半裸「……お、俺だって冒険者だ!こんな状況で話をしたら、冒険者としてのプライドがだなぁ!」
魔剣士「面倒くせぇ」
半裸「は…」
"プスッ…!"
魔剣士は有無も言わず肩、腕の付け根部分に細い針を刺した。
半裸「あっ…、あいぃぃいいっ!!?」
魔剣士「早く話せ。話さないのなら、もう一発。もう一発、もう一発、いくらでも突き刺す。終わりはねーぞ」
半裸「……は、話しますうぅぅっ!!わ、わかりましたぁぁあっ!!」
ウィッチ「冒険者の…プライドとは……」
………
…
―――陣の世界。
ウィッチは魔剣士の身体へ戻り、リヒトは後ろをついて縮地による高速移動を繰り返す。
魔剣士「着いてきているか!」
リヒト「えぇ、問題はありません!」
魔剣士「時間は!」
リヒト「内部に入ってまだ1分も経っていない、このペースだと現実世界で3時間もかからないはずです!」
魔剣士「速度を上げる、ついてこれるか!」
リヒト「やってみます!」
グンと前のめりになり、更に速度を上げ、一気に出口へと向かう。
氷山帝国を出発し、体感時間は1分ほど。既に出口の光を向こう側に感じ、魔剣士とリヒトは一気に光の中へと飛び込む。
魔剣士「ぐっ、うぅっ!!」
リヒト「吸い込まれる感覚が、少し、きついですけど…ッ!!」
この時、現実世界ではわずか2時間程度。
魔剣士たちは本来の旅路において、最短で1週間以上かかる道のりを、わずか2時間で移動したのだった。
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――猛竜騎士の自宅、屋根。
昼間ということもあり、二人が現れた場所も良く、眩い輝きを放ち大きな音を立てても周りで気にする者はいなかった。
魔剣士とリヒトは無事に着地ともいかずに、斜めの屋根に足を滑らせるが、寸でのところで踏ん張り、何とか落下せずに済んだ。
魔剣士「あっぶな、屋根かよ!」
リヒト「だ、大丈夫ですか魔剣士さん!」
魔剣士「何とかな……」
リヒト「ここはどこですかね?」
魔剣士「……あぁそうか、お前はココに来た記憶がないのか」
リヒト「はい、申し訳ありません……」
魔剣士「謝るなっつーの。ここは猛竜騎士の家の屋根…だな。魔梟の奴も、良い場所を選んでくれるぜ全く」
首を伸ばし、下の様子を伺う。
周辺に騎士や兵士たちの姿は見当たらない。
魔剣士「おっしゃ、ブリレイめ俺らが戻ってくるとは思ってなかったな……」
リヒト「どうしますか?」
魔剣士「取り敢えず、家の中に入るか。オッサンには悪いが、一旦の拠点にさせてもらうぜ」
リヒト「オッサン…猛竜騎士さんのことですね」
魔剣士「あぁ、さすがに分かってたか。ところで、こっから地面まで着地出来るか?」
リヒト「もちろんです」
魔剣士「はは、そうか。あの時は屋上から落下して大声あげてたからちょっと心配したぜ」
リヒト「わ、忘れてください……」
魔剣士は改めて周囲を伺い、敵がいないことを確認すると屋根から飛び降りた。途中で猫のようにクルリと周り、着地する。
リヒト「今、行きます」
続いてリヒトもジャンプし、そのまま問題なく着地する。
魔剣士「おっ、本当に余裕そうだな」
リヒト「元々がブレイダーの肉体で、身体能力も高いようですし。自分の肉体であっても、これくらいは」
魔剣士「そうか。…だけど、よくブレイダーの肉体で生きていくことを選んでくれた。ありがとう」
リヒト「お礼なんか言われることは…。魔剣士さんに説得され、改めて生きていく意味を見出しました」
魔剣士「生きていく意味?」
リヒト「はい。この身体でタオフェイ家ではなくブレイダーとして、今までの罪を償うために。この力も、そのためにあるんじゃないかって…そう思って……」
魔剣士「……生まれ変わったブレイダーの誕生ってか。期待してるぜ」
リヒト「は、はいっ!」
二人は笑い合い、互いに信頼していることを確認する。
そして、玄関に向かうとゆっくりドアノブに手をかけた。
魔剣士「……ん?」
てっきり、鍵がかかり開いていないものと思っていたのだが。
リヒト「どうしました?」
魔剣士「……鍵が開いている。オッサンが掛けないまま外出してから放置されてたのか…?」
既に騎士団が中を捜索したのだろうか。
すると、リヒトが気付く。
リヒト「足元に泥…。乾いてますが、今日は雨が降っている様子もありませんね」
魔剣士「俺がこの家を拠点にしてた頃も、雨は降ってなかった。ってぇと、俺らが消えていた10日前後の間に雨が降って誰かが入ったってことか」
リヒト「もしかしたら、猛竜騎士さんたちが逃げて家に避難していたのかもしれません」
魔剣士「その可能性であってほしいが……」
リヒト「用心にこしたことはありませんね」
二人は剣を構え、気配を悟られないよう魔力を落とす。
先に魔剣士がドアを静かに開き、中の様子を伺うが、誰がいる様子はない。
魔剣士「……人はいないな」
リヒト「大丈夫そうですか?」
魔剣士「取り敢えず入っても大丈夫そうか……」
"キィ"とドアを開き、室内へ足を踏み入れる。
魔剣士(オッサンらだと良いんだが……)
内心、淡い期待をもちながら家の中を散策する。
すると、心の声で彼女が魔剣士へと呼びかけた。
ウィッチ(魔剣士、聞こえ…る……?)
魔剣士(うおっ!?)
急に聞こえてきた声に、驚き、びくりと身体を震わす。
魔剣士(そ、そういやいたんだったな!さっきから声が聞こえなくて、すっかり忘れてたぜ!)
ウィッチ(あのね……。まぁそれはいいんだ…けど…。それ…よ…り……、私、あま…り…、現実世界への干渉が…、長い時間できない…みた…い……)
魔剣士(どういうことだ?)
ウィッチ(セージの前では気丈に振る舞ってたけど、猛烈な…眠気があって…。あまり、長い時間行動が出来ない…みたいなの……)
魔剣士(眠いって、魔力の意識が眠くなるのか?)
ウィッチ(私を維持している魔力が、外にいるほど気化して消えて…行く……。身体を保つ魔力は無限大でも、私自身の意識を保つ生命力が徐々に薄れていくんだと思う……)
魔剣士(じゃあ、こうすればいいのか)
心の中でイメージし、彼女を"幼女化"した。
ウィッチ(…うっ!?な、何をする!?お、お前の意識でちっちゃくなってしまったではないか!!)
幼女化した途端、彼女の声が明るくなる。どうやら、精神世界でも子供フォルムにおいては体力を保ちやすいらしい。
魔剣士(ハハハッ、やっぱりイメージ通りになるのか。元気になってるようで何より)
ウィッチ(……フン、どのみち休息時間が伸びただけじゃ。それより、話を聞け)
魔剣士(ん、何だ?)
ウィッチ(これを伝えるつもりだったんじゃ。…私の感知で気付いた。二階に四人の人間がいるぞ)
魔剣士(……四人!?まさかオッサンたち…!)
ウィッチ(ではない。そもそも人数が合わないだろう)
猛竜騎士、白姫、バンシィ、それでも三人。
と、すれば……。
ウィッチ(感じ得る中に猛竜騎士の気配はない。知らぬ人間が二人に、ドス黒い気配じゃ。それと……もう二人は……)
魔剣士(もう…二人は……?)
ウィッチ(これは…、白姫とバンシィの気配じゃ……!)
魔剣士「……ンだとッ!?」
それを聞いた瞬間、魔剣士は剣に魔力を込めて一気に階段を駆け上がった。
突然の行動に、リヒトも慌てて後ろを着いていく。
リヒト「魔剣士さん!?ど、どうしたんですか!?」
魔剣士「説明不要、武器を構えろ、入るぞォ!!」
リヒト「は、はいぃっ!?」
そして、階段を駆け上がるとウィッチの助言。
ウィッチ(……左の部屋じゃ!)
魔剣士(分かった!!)
左側にあった扉を蹴飛ばし、中へ入る。
最初は視界が揺れ、中で何が起きているのか分からなかったが、まず一人、騎士団と思われる男をドア越しに吹き飛ばした。
魔剣士「あ!?」
そして、注目。奥のベッドに、半裸になっている騎士団の男が一人と、押し倒され必至に抵抗するバンシィ。隣には止めさせようと鈍器のようなものを持った白姫。
また、白姫とバンシィは服を破かれた状態であった。
リヒト「こ、これ……!」
魔剣士「……ッ!!」
ウィッチ(魔剣士、これは…!)
"分かっている。"
それを見た瞬間、怒りが込み上げた。
騎士団の男はこちらを睨み、「何だテメェは!」とバンシィから手を離して傍にあった剣を握り締める。
魔剣士「死ね、カスが」
魔剣士は、剣を握りしめた男がこちら側に構える前に、雷撃魔法を顔面に放ち一撃で気絶させた。
一方、ドアに弾き飛ばされたもう一人の男もリヒトのカバーで既に気絶していた。
リヒト「魔剣士さん、大丈夫です!」
魔剣士「良い援護だリヒト、助かるぜ」
互いにコンタクト、頷き合う。魔剣士は二人を倒したことを確認すると、白姫とバンシィに声をかけた。
魔剣士「し、白姫…!バンシィ……!」
こんなかたちでの再会を誰が予想したのか、言葉が詰まる。
生きていたのか。生きてくれていたのか。無事だったのか。どんな言葉を発するか、どういえばいいのか分からなかった。
魔剣士「白姫、バンシィ……!そ、その……!」
言葉が詰まる魔剣士。白姫とバンシィは、突然現れた魔剣士とブレイダーに"何が起きたのか"が分からず立ち尽くす。
白姫「魔剣士…なの……?」
バンシィ「お兄ちゃん…、それに…ブ、ブレイダーおに…い……?」
二人は魔剣士を見つめ、様子を伺う。
その問いに、魔剣士は少し考えたあと、思い切りの笑顔でこう言った。
魔剣士「すまん待たせた。今、戻った!」と。
白姫「ま…けん…し……!」
バンシィ「お兄ちゃん…!」
魔剣士「お、おうっ!!」
二人は魔剣士であることを確認、状況を飲み込む。
この瞬間、彼が助けに来てくれたと、彼は死んでいなかったのだと、喜びと嬉しさに涙を流しながら魔剣士に抱き着いた。
魔剣士「お、うぉい!?」
白姫「やっぱり、やっぱり魔剣士っ…!大丈夫、怪我してない?元気なの!?本当に、本当に本当に魔剣士なんだよね…!!」
バンシィ「お兄ちゃん、どうやって、どうして……!大丈夫なの…?元気なんだよね、お兄ちゃん……!」
魔剣士「お、俺は大丈夫だって!!」
大人気の魔剣士に、リヒトはくすりと笑う。
ウィッチ(やれやれじゃな。抱き着かれて興奮するんじゃない、色々と分かるぞ…魔剣士)
魔剣士(う、うっせっ!!んなわけねーだろ!?)
慌ててそれを否定しつつ、抱き着き、興奮冷めやらぬ二人をなだめた。
魔剣士「わ、分かった分かった!ええいっ、落ち着けお前ら!それより、騎士団の奴らに何もされてないだろうな!?」
白姫「う、うんっ!大丈夫、あ…危ないところだったけど……っ!ま、魔剣士はどうやってここに来たの?飲み込まれてからどうしたの!?」
バンシィ「私も平気だよ、お兄ちゃん…。あと、後ろにいるのはブレイダー…だよね……?雰囲気が違う気が…する……」
魔剣士「お、おうそうかそうか!えーとな、俺は鏡の世界に入って…。それにブレイダーはー……!あー、えーっと!!」
リヒト「パニックです!?」
ウィッチ(やれやれじゃのぅ……)
個人の主張が入り乱れ、上手く話しが出来ず。
白姫「魔剣士…!」
バンシィ「お兄ちゃん…!」
リヒト「魔剣士さん…」
ウィッチ「魔剣士ぃーっ…フフフ……」
魔剣士「……い、いい加減しろぉぉーーーっ!!」
嬉しい怒号が、部屋の中に響き渡った。
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――20分後。
大声をあげた魔剣士は、まずは騎士団の二人を適当なもので縛り上げたあと、白姫たちを座らせ、自分たちの話を聞かせていた。
出し惜しみをする理由もなく、自分たちの身に起きた全てのことを話したのだった。
白姫「そっか、ウィッチさんが……」
魔剣士「今は表に出るほどの回復をしてないようだから、あとで具現化して見せてやるよ」
白姫「うんっ。でも、魔剣士が無事で本当に良かった……、良かった…、本当に良かった……!」
魔剣士「ったりめーだろ。つか、迷惑をかけちまってすまなかったな」
白姫「ぜ、全然そんなこと!みんな必死に戦ってるのに、何も出来ない私が悔しくて……」
魔剣士「あぁ?お前だって立派に戦ってるだろ。そんな悲観すんじゃねーよ」
白姫「う、うん…。ありがとう、魔剣士……」
優しく微笑みを見せる白姫。
彼女の笑顔が見れて良かったと、魔剣士は深く安堵した。
バンシィ「それで、お兄ちゃん……」
魔剣士「ん?」
バンシィ「そこの…、ブレイダーの身体を…持った人は……」
魔剣士「あぁ、さっき説明した通りだ。勝手にやっちまって本当にすまないと思ってる。魔法世界で、ブレイダーはもう……」
バンシィ「あっ、違う…!」
魔剣士「む?」
てっきり、勝手に倒してしまったことを突っ込まれたのかと思ったのだが。
バンシィ「そうじゃない…。本当に、中の人は違うの……?」
魔剣士「そうだな、俺らと一緒に戦い、ウィッチも認めた。紛れもなく、中身は違う」
バンシィ「リヒトって人…なの……?」
不思議そうに見つめるバンシィに、リヒトは笑顔で応える。
リヒト「お兄様の身体を器として利用してしまい本当にごめんなさい。僕はリヒト、改めてよろしくお願いします」
バンシィ「……ううん、いいの。それに、やっぱり…、ブレお兄ちゃんじゃないんだね…」
リヒト「え?」
バンシィ「ブレお兄ちゃんは、そんな笑い方じゃなかった。そんな風に、どこか、優しい風じゃなかった……」
リヒト「だ、だめですかね?じゃ、じゃあこうでしょうか?」
ムっと顔を変えて、ぎこちない"悪い笑み"をしてみせる。
突然の変顔に、バンシィは吹き出し、顔を向こう側に向けた。
バンシィ「ブ、ブレお兄ちゃんの身体だったんだから…そんな顔……!」
リヒト「あ…あはは、ごめんなさいっ」
バンシィ「卑怯だよ…、そんなの……。笑っちゃう……」
リヒト「ごめんなさい、バンシィさん」
バンシィ「う、ううん……」
笑いを堪えるバンシィ。どうやら、過ぎた心配だったらしい。彼女自身、既に決着をつけていたということだ。
魔剣士「やれやれ、どうも女ってのは強いもんだ……」
壁にもたれ、ずるずると腰を落とした。
自分の話を終え、次に白姫たちがどう過ごしてきたのか聞こうとしたのだが、どうにも気になっていたことを問いかけた。
魔剣士「そういや、オッサンはどうした?」
白姫「ッ!」
バンシィ「あ…ぅ……」
その言葉に、二人は閉口する。
魔剣士「……どうした?」
魔剣士は、たまたま猛竜騎士が席を外し、このようなことが起きてしまったものと安易に考えていた。
魔剣士「おい、どうした?」
だが、その問いに顔色が悪くなる白姫とバンシィ。ここでようやく、魔剣士は何かを察する。
魔剣士「……何か、あったのか?」
神妙な面持ちで、改めて二人に問いかける。
すると、最初に口を開いたのは白姫で、少し泣きそうに、鼻声でそれを説明し始めた。
白姫「ま、魔剣士…本当に…ごめんなさい……。わ、私のせいなんだ……」
魔剣士「何だって?」
白姫「猛竜騎士さんは、私のせいで連れて行かれて…、これから私たちのことを…説明しないとと思ってて、それで…闇魔法に、幻惑魔法に……」
魔剣士「ま、待て。話が見えてこないぞ、いちから説明してくれ」
……何かを伝えようとしているのは分かる。
悲しいことが起きたのも分かる。
信じられないことが、これから説明されるのだとも分かる。
魔剣士「……全部分かってる。だから、落ち着いて話をしてくれるか」
きっと、白姫が何か自分のせいだと思っているのだろう。長い付き合いだからこそ、彼女の考えが分かる。それを見ていたバンシィも、魔剣士に対して「違うよ、お姉ちゃんのせいじゃない」と言いたそうに、小さく首を横に振り、魔剣士はそれに「分かってる」と優しく頷く。
魔剣士「大丈夫だ。一つ一つゆっくりと話をしてくれ」
白姫「う、うんっ…」
"大丈夫だ"と笑い、安堵を与える魔剣士。
白姫はそれを見ると、わずかばり落ち着き、話を始める。
白姫「わ、私ね、バンシィと…捕まってたんだ……。あの時、猛竜騎士さんとバンシィちゃんは一生懸命に戦って、なのに、負けちゃって――……」
落ち着いたとはいえ、まだ興奮気味の彼女の話は順序がバラバラで、パズルのように繋げねばならなかったが、合間合間にフォローしたバンシィのおかげもあって大まかな話は理解することが出来た。
魔剣士「…」
内容は至ってシンプルなもので、猛竜騎士たちはブリレイの前に敗北したことは真実であったこと。
南方大地が制圧されたこともあって、既に分かっていたことだったが、改めて言われると凄く悔しくなる。
白姫「そ、それで……」
猛竜騎士が弱みを見せて、ブリレイに操られてしまい、そこに白姫は責任を感じていた。
また、彼女たちが逃げたあとで、裏をかいてセントラル王都内で逃げていたこと、数日は外で過ごしていたということも説明された。
バンシィ「それから、私たちは……」
白姫「セージさんに…会いに…行こうとして……」
逃亡して10日目となる今日まで、猛竜騎士の自宅周辺の見張りが急に解かれたことをチャンスと思い、セージに助けを求めるべく準備を整えようとした。しかし、その最中に二人は捕まり、先ほどの状況に陥っていたというわけらしかった。
魔剣士「……そういうことだったのか」
白姫「うん…、魔剣士…私は猛竜騎士さんを……」
魔剣士「もう良い、お前だって立派に戦ってるんだ。これ以上に謝ることはねぇよ」
白姫「…っ」
魔剣士「それに謝って何か解決するか?今は、前を見て進むしかないだろがよ!」
白姫「うん…」
ガッツポーズし、元気に笑う。
だが、内心は尋常ではないくらいに焦っていた。
魔剣士(オ、オッサンが敵陣営についただと…?本当に裏切りに落ちたんだったら、敵になった時…どうすれば……!)
一番に信頼を置いていた人物を失い、自分たちはどう動けばいいのか。
リーダーである彼が敵になったとしたら、これからどうすればいいのか皆目見当もつかない。
魔剣士(……っ)
とはいえ、この状況でリーダーとして立ち回れるのは自分しかいないだろう。
魔剣士はそれを念頭し、どうするべきかと考えたところ――…。
ウィッチ(やれ魔剣士、私を忘れていないかのう?)
魔剣士(ウ、ウィッチ…!)
彼女が呼びかけた。
ウィッチ(これでも全ての記憶を知っているんじゃからな、助言くらいは出来るぞ?)
魔剣士(助言ね…。ブリレイを倒すのは分かってるが……)
ウィッチ(お前まさか、面倒だからすぐにでも王城に行ってブリレイを倒そうなどと考えはおるまいな)
魔剣士(は、はは!?いや、まさか…!)
図星。…というか、心などとっくに読み取られているが。
ウィッチ(お前は本当に単純じゃのう。だが、その考えはあながち間違えではないと言える)
魔剣士(あ?)
ウィッチ(少しは頭を働かせぬか。…ええい、説明するのにお前だけでは納得してもらえんじゃろう、私を表に出せ!)
魔剣士(いや、お前があまり表に出れないと)
ウィッチ(幼女フォルムなら少しは動ける。じゃが、服はきちんとイメージするんじゃぞ。大人フォルムではそのまま寝てしまうかもしれん)
魔剣士(……へいへい、分かりましたよ)
彼女に従い、イメージし、具現化する。
部屋に広がる突然の眩い光に、白姫とバンシィは「きゃあ!」驚き目を隠すが、次に目を開いた時に目の前に居る"彼女"の存在に益々声をあげて驚いた。
白姫「……ウィッチさん!?」
バンシィ「わっ、ちっちゃくて可愛い……」
ウィッチ「……久しぶりじゃの!」
白姫はウィッチに駆け寄り、手に触れようとしたが、彼女の手は虚しく空を切った。
それをされたウィッチは一瞬、寂しそうな表情を浮かべるも、すぐに自信満々な様子で笑みを浮かべた。
ウィッチ「私は魔力の存在じゃ。触れるのは主である魔剣士、魔力化した状態でだけじゃ!」
白姫「ふ、ふぇぇ…、そうなんですか……」
ウィッチ「フフン、まぁ良い。それと、バンシィは初めてじゃったな?」
バンシィ「うん、薄っすらと話は聞いてたけど……」
ウィッチ「ま、気にするな。私は魔剣士の心の中で共に住んでいるウィッチ、以後、よろしく頼むぞ」
バンシィ「うん…。心の中ってことは、何でも知ってるんだよね……」
ウィッチ「む?」
その質問に、魔剣士がギクリとする。
バンシィ「教えてほしいな、お兄ちゃんは私が迫った時…、反応が……」
魔剣士「えええい、そんな話はいらんだろ!!ウィッチ、早くお前が出てきた説明をしろォ!!」
ウィッチ「な、なんじゃ……」
恐らく、このウィッチは子供らしく全てをぶちまける。
別にバンシィに興奮をしていたということは無い、無いだろうが、多分無いだろうが、魔剣士はこれ以上に質問されることを嫌って慌てて遮る。
バンシィ「ちぇ……、でも……」
白姫(そ、そういうことも分かっちゃうってことなんだ……)
慌てふためく魔剣士に、何かを察する二人。
魔剣士はウィッチを前面に押し出し「さっさと説明してくれ!」と声を上げた。
魔剣士「いいから、これからの行動について話し合うんだろ!」
ウィッチ「分かった分かった、そう急かすな」
魔剣士「うっせ!お前だって起きてられる時間が限られてるんだから、早くしろ!」
ウィッチ「分かったというのに!というか、まずはお前が説明せんか!」
魔剣士「あァ!?」
ウィッチ「お前が思っていた作戦で大体は間違いがない!だから、私はそれに補足をするために現れただけじゃ!」
魔剣士「な、何……!」
そのやり取りを見る三人は、くすりと笑う。
特に白姫は、長い修行期間で彼女と魔剣士のやり取りを随分と見ており、亡くなった際に二度と見られなくなる光景だと思っていたため、わずかに涙も流した。
魔剣士「分かったよ!えぇとそれじゃ、リヒト、白姫、バンシィ!」
リヒト「はい!」
白姫「う、うん!」
バンシィ「うん……」
魔剣士「あくまで俺の考えなんだが、今後の行動についてちっとばかし考えたから聞いてほしい」
ごほんと咳き込み、単純な作戦を口にする。
魔剣士「オッサンがいない今、こうして四人…五人が集まれたのは本当に幸いだと思ってる。リヒトとバンシィは充分な戦力になるし、白姫だってお…、俺の支えにもなってくれる」
白姫「う、うんっ…!」
リヒト「はい」
バンシィ「お兄ちゃんに、信頼されてて嬉しい……」
魔剣士「それで、作戦について。俺は、早いところ王城に突撃するのも悪くないかなって思ってるんだ」
リヒト「お、王城にですか?」
白姫「大丈夫…なのかな?」
バンシィ「お兄ちゃんがそういうなら、僕は従うだけ…だけど……」
何故か反応が薄い。魔剣士がそれを突っ込もうとした時、ウィッチが「まぁ待て」と止める。
ウィッチ「魔剣士、まぁ待て。ここで私が出てきた理由に繋がるわけなんじゃ」
ここで、彼女が出てきた理由を述べると言ってフォローに入った。
魔剣士「な、何だよ?」
ウィッチ「……お前も馬鹿じゃのう」
魔剣士「は!?」
ウィッチ「それに、白姫…バンシィ…リヒト……お前たちもな。魔剣士が強いとはいえ、心に根付いたものはそう簡単に取り払えぬと正直に言わぬか?」
白姫「えっ…」
バンシィ「根付いた…もの……」
リヒト「取り払えない、ですか?」
何だそれはという言葉に、ウィッチは核心を突く。それを言わなければ、埒が明かないからである。
ウィッチ「一度とはいえ、王城で敗北をしたことが強く根付き、士気に影響しているんじゃろう?」
魔剣士「…ッ!」
白姫「あっ…」
バンシィ「う……」
リヒト「そ、それは……」
トラウマ、フラッシュバック、経験した傷が心の傷として強く根付く。このまま攻めた所で、一歩上にいる戦術を持つブリレイに勝つことは出来ないだろう。また、リヒトは間接的にそれを知っているからこそ、奥底で"また負けるのではないか"という同じ感情を抱いていた。
ウィッチ「そこを知ってこそ、明日に繋がるんじゃ。まずは認めることだ、負けたという事実を。それでも勝たねばいけないということを」
魔剣士「そ、そうか……」
白姫「…っ」
バンシィ「う、うん……」
リヒト「ウィッチさん…」
事実を認め、今いちど敗北を見つめ直す。
ブリレイを倒せばいいという簡単かつ難しいことが、どれほどのことなのかを理解しなければならない。
ウィッチ「それで、魔剣士」
魔剣士「な、何だ?」
ウィッチ「お前の言った"攻め込む作戦"についてだが、あらかた間違ってはいない」
魔剣士「あ、あぁ……」
ウィッチ「さっきも言ったが、どうして間違いではないか…そこをきちんと把握しているか?」
魔剣士「いや…」
ウィッチ「戦術、作戦とは兵法の一つじゃ。お前が幾ら成長したとはいえ、猪突猛進なところは良さでもあり悪いところでもある」
魔剣士「ん、うむ……」
ウィッチ「まず、理由を見る。一つ、不思議な点があることを気付いたか?」
魔剣士「不思議な点?」
ウィッチ「私がこの作戦を推す理由として、白姫たちから聞いた話のうち一つ、不思議な点がある。そこを結び付けた」
魔剣士「ど、どこだ?」
ウィッチ「……この家から一度、見張りを退いたことじゃ」
魔剣士「む…」
猛竜騎士の自宅は、充分に逃げた白姫とバンシィを追うには格好の場所であるというのに、わざわざ騎士団を引いた理由。
魔剣士「そ、そういえば……」
ウィッチ「恐らく、騎士団が動かざるを得ない理由が出来た。兵士の配置もしないということは、王城に何かが起きている」
魔剣士「何…?」
ウィッチ「確か、既に南方大地は陥落していたはずじゃな。次は"西方大地"か"東方大地"に攻め入る予定ではなかったか?」
魔剣士「あ…、そういえば……」
ウィッチ「つまり、西方と東方いずれに攻め込むとしても、兵士と騎士団の総力戦になることは必須。だから……」
これから攻めるため、兵を退かせたという可能性が高い。
魔剣士「そ、そういうことか!」
ウィッチ「戦いは時間と共に士気が薄れる。戦争は主に末端兵士が大勢利用されるが、そこまでブリレイの幻惑は使っていられん。伴って、南方大地を陥落したあとすぐに他の大地へ攻めなければならない」
魔剣士「お、おぉ!それで!」
ウィッチ「ちょっとは考えぬか。騎士団に選抜されるのは強き冒険者たちであって、リッターや猛竜騎士クラスも少なくない。それを操るには、ブリレイ本人が赴く必要があるじゃろ?」
魔剣士「っつーことは…!」
王城には、ブリレイがいないのではないかということだ。
魔剣士「い、いないってことは俺らが攻めても意味ないってことか?」
ウィッチ「違う!王城を堕とすのは容易ということじゃ。末端兵士くらい、お前たちが相手ならワケないだろう?」
魔剣士「不在の間に、王城を堕とすのか?」
ウィッチ「仮説じゃが、私の推測が正しければ既にブリレイはいないはずじゃ。他の大地を陥落するためには騎士団の力が必須な以上、一定の期間"猛竜騎士の自宅"を見張らせ、あとは白姫たちを後回しに大地の陥落を優先させた…ということではないかと読む」
魔剣士「お、おいおい…!白姫の話と、俺の作戦にそんな深い読みをしてたのかよ……」
ウィッチ「あのな、これでも私は世界踏破をしたし、それなりの経験もある。特に世界平和なぞ遠かった時代もあって、そこから繋がるのがブリレイは実力さながら"戦術に長けた"動きをする人物を欲しかったわけじゃ」
魔剣士「だからリッターやオッサンみてぇな、同じ時代を生きた冒険者を欲しがったってことか……」
知れば知るほど、聞けば聞くほどに"裏"が分かる。
無言ではあったが、この話を聞いていた白姫たちも沸々と士気が沸いてきたのは言うまででもない。
ウィッチ「だから、お前の言った作戦にフォロー…助言を言わせてもらうとすれば」
魔剣士「すれば…?」
ウィッチ「王城を落とし、ブリレイを迎え撃つチャンスだということじゃ。王がいない玉座など、奪うことは容易いじゃろ?」
魔剣士「……いたらどうする?」
ウィッチ「それも含め、調べてもらうのに適切な男がいるじゃろう」
魔剣士「んむ…」
ちらりとリヒト…もとい"ブレイダー"を見る。
リヒト「……そうか、ブレイダーである僕なら王城に入ることも!」
ウィッチ「うむ、そういうことじゃな」
これ以上の適任はいない。
魔剣士「か、完璧に近い作戦じゃねーのこれ……」
白姫「凄い……!」
バンシィ「ただの幼女じゃないんだね、ウィッチ……」
ウィッチ「このくらいはな。ただ、真実に近い助言は取ったほうが良い」
魔剣士「真実?」
ウィッチ「そこに寝てるじゃろ。お前らが気絶させた二人組のうちの一人を起こし、これからの行動について聞いておけ」
魔剣士「……あ、忘れてた」
白姫とバンシィを襲った二人組が、部屋の隅っこでノビていた。
魔剣士「つか、元々コイツらから情報を聞けば良くなかったか!?別にリヒトに忍び込ませなくても、城の情報くらいは引き出して……!」
ウィッチ「作戦を聞かれて、万が一逃げられたら困るからな。他人に聞かれないようにするのも作戦のうちじゃ」
魔剣士「そ、そうなのね……」
ウィッチ「こいつらの話はあくまでも助言で聞く。そのうえでリヒトに真実を確かめさせ、今晩には行動に移ればよい」
魔剣士「……なるほどな、じゃあ起こすわ」
立ち上がった魔剣士は、ノビる一人に近づき、半裸男の顔をグリグリと踏んだ。
魔剣士「おい、起きろボケ」
何度が踏むうち、半裸は目を覚ます。
半裸「んぁ……」
魔剣士「うっす、目が覚めたか?」
半裸「な…に……」
魔剣士「眠ってんのかお前。おーい、聞こえてますかー」
半裸「ん…、あ…、あっ?……あっ!?」
ようやく、ハッキリと意識を取り戻した半裸は怒り声をあげた。
半裸「て、てめぇっ!!」
魔剣士「うし、目覚めたみたいだな。お前、騎士団だろ?」
半裸「さっきはよくも殴りやがって!」
魔剣士「話を聞けや」
半裸「むぎゅっ!?」
もう一度、足で顔面を踏みつける。
魔剣士「お前は俺らの話だけ聞け」
半裸「な、何むぐっ…!」
魔剣士「……おーい、ウィッチの出番だぜ」
ウィッチ「やれやれ……」
重い腰をあげるように、ゆっくりと立ち上がって半裸へと近づく。
ウィッチ「どれ、お主」
半裸「な、何だ…!」
ウィッチ「今日、騎士団はこの家の撤退命令でも出ていたのか?」
半裸「……何の話だ?」
ウィッチ「この家を数日見張っていたのに、急に撤退したのは何故じゃ?」
半裸「何故って……」
ウィッチ「…」
半裸「そりゃ……」
ウィッチ「…」
半裸「…」
ウィッチ「…」
半裸「……ははーん…」
周りの様子を見て、何かに気付く半裸。踏み続ける顔をブンブンと振ってそれを弾き、魔剣士を見上げて笑いながら言った。
半裸「そうか、思い出したぞ…。お前、魔剣士だな…!」
魔剣士「俺の名前を知ってるのか?」
半裸「誰が知らない奴がいるか。仮面を着用してて分からなかったが、10日前にお前の正体が賞金首であるってことはブリレイから聞いてたぜ」
魔剣士「…ちっ、ブリレイの野郎……!」
半裸「へっへっへっ、残念だぜ。もうすぐ、お姫様を抱けたってのによぉ……」
魔剣士「……ボケがぁっ!!」
"ズンッ!!"
再び足で彼の顔面を踏みつけるが、今度は怒り混じりで勢いよく踏み抜かれ、半裸は血を吹いた。
半裸「がっふ……!」
だが、それを見る白姫たちは動じない。
傷をつけられそうになったことや、彼の言動から敵であること、敵は容赦しないことを決めていたからである。
ウィッチ「……のう、お主」
半裸「な、何だ…!」
ウィッチ「今いちど問うが、どうして今日に見張りを止めたんじゃ?」
半裸「……べ、別にそういう命令があったからだよ!」
ウィッチ「ブリレイの指示か?」
半裸「だったら何だよ」
ウィッチ「ふむ、どうして撤退をしたのじゃ?」
半裸「……どうして気になるんだよ」
ウィッチ「気になるからじゃ。答えてくれるか?」
半裸「嫌だと言ったら」
"ズンッ!"
三度目の踏み抜きは、先ほどよりも優しかったが、舌を噛んでしまい血を吐き痛みに悶えた。
半裸「あがっ、がああぁっ!!」
ウィッチ「……答えてくれるか?」
半裸「いっ、いがっ…!わ、わがっががら痛ひほ!」
ウィッチ「何を言っている?」
半裸「わがっががら痛みをほっへくれぇっ!!!」
ウィッチ「やれやれ……」
魔法の存在であるウィッチにも、魔法は扱うことが出来る。魔剣士の魔力を借りて、ヒールを唱え、彼の傷と痛みを癒した。
半裸「はー、はー……!」
ウィッチ「早くしゃべらねば、もっとひどい事になるんじゃが…良いのか?」
半裸「た、例えば……!」
魔剣士「……例えば、この指先から氷の針を出して…一本一本をお前の肉体に刺していくとかどうだ…?」
人差し指を突き出し、氷の針を具現化する。所詮は指先から伸びた細い針程度だが、全身に刺されてはショック死してしまうかもしれない。しかも、まず即死ではなく痛みに悶え続けることだろう。
半裸「く、くそ……!」
ウィッチ「どうせ、お主だって雇われた程度で騎士団への仁義はないはずじゃ。話すことも、問題ないのではないか」
半裸「……お、俺だって冒険者だ!こんな状況で話をしたら、冒険者としてのプライドがだなぁ!」
魔剣士「面倒くせぇ」
半裸「は…」
"プスッ…!"
魔剣士は有無も言わず肩、腕の付け根部分に細い針を刺した。
半裸「あっ…、あいぃぃいいっ!!?」
魔剣士「早く話せ。話さないのなら、もう一発。もう一発、もう一発、いくらでも突き刺す。終わりはねーぞ」
半裸「……は、話しますうぅぅっ!!わ、わかりましたぁぁあっ!!」
ウィッチ「冒険者の…プライドとは……」
………
…
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