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第八章【東方大地】
8-4 二人
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【前述・冒険譚】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いよいよ始まった東方大地での旅だったが、到着早々、三人は災難へと見舞われた。
奴隷馬車から助け出した白姫と変わらぬ歳の女の子は"砂国"の姫様で、砂国が"アサシン盗賊団"に乗っ取られていたことを知る。
そこで三人はテイルとともに、砂国の奪還のために戦地へと赴く決意をしたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――そして。
魔剣士「だらぁぁぁっ!!」
盗賊の男を、魔剣士の鋭い剣撃が豪快な音をたてながら兜を粉砕し、吹き飛ばした。
魔剣士「つ、次から次へと……!」
港町を出発してから数時間。
魔剣士一行は馬車で砂国へと向かっていたのだが、その道中は聞いていた通り熾烈極まりないものだった。
白姫「やったぁ!」
テイル「魔剣士も中々やるじゃない……」
当然の如く襲ってくる盗賊、山賊たち。加えて魔剣士は、常に周囲から溢れんばかりの殺気を感じており、休む暇すら与えられなかった。
魔剣士「……ただいま」
そして今も、賊を吹き飛ばした魔剣士は白姫とテイルが座る荷台に戻ってきたところだった。
白姫「お帰り、魔剣士っ!」
魔剣士「おーう、馬車側は何もないみたいだな」
白姫「猛竜騎士さんが馬を運転してるし、前方から襲ってくる人たちは対処してくれてるみたいだよ」
魔剣士「……そうか」
白姫「うんっ」
魔剣士「ハハ…馬を扱いつつ戦ってよ、この中でよく動けると思うぜ…。正直、今ほどオッサンをすげぇと思ったこともねぇよ…」
白姫「そ、そんなに?」
魔剣士「魔族、人、変わらねぇ…。奪うために、戦う土地っていうのは…こういうことか……」
白姫「魔剣士……」
そこら中から感じる、"命を狙う命"の鼓動。闇魔法と多くの戦いから敏感になった身体は、大地に渦巻く本気の"殺戮"という感覚を全身で感じ、あの魔剣士が疲労を見せ始めていた。
魔剣士(オッサンは、これ以上に感じているハズなのによ……)
猛竜騎士は、魔剣士と違い休む暇もなく気配を張り巡らせている。
かのウィッチと同じ"察知"を常時発動しているはずで、魔剣士よりも遥かに"殺戮の気"を受け続けているというのに、まるで馬を動かすことに抵抗はなく、たまに笑ってワゴン側から声をかけてくる位に余裕らしい。
魔剣士(……オッサンは、どうしてこんな中で平然にしてられるんだよ)
これが、経験の差なのだろうと分かっているのだが。
テイル「……フンッ、魔剣士は戦う実力はあっても精神力はダメダメじゃない」
魔剣士「あ?」
テイル「ちょっとばかり実力があると、東方大地の気に飲まれて精神面で参っちゃう奴が多いのよねぇ」
魔剣士「俺を馬鹿にしてんのか」
テイル「いいえ?」
魔剣士「そ、その言い方がムカつくんだよ…!」
テイル「フンッ」
魔剣士「て、テメェだって泣き虫野郎だろうが……」
テイル「忘れたわ」
魔剣士「この…ヤロォ……!」
ピクピクと血管を浮かせ、今にも飛び掛かりそうな魔剣士を見て、白姫が慌てて魔剣士を落ち着かせる。
白姫「もう、魔剣士!」
魔剣士「んお?」
白姫「疲れてもケンカしちゃダメだよ!」
魔剣士「だ、だけどなコイツの言い方が……」
白姫「じゃあさ…私も戦うの手伝ったら魔剣士は少しは休めるかな?」
魔剣士「……は?ば、馬鹿野郎ッ!お前なんかに戦わせられるかよ!?」
白姫「むぅ…」
魔剣士「変なこと言うんじゃねぇよ」
白姫「でもさ、魔剣士が辛そうだから…役に立ちたいのに……」
魔剣士「……俺にとってはここにいるだけで充分だっつーの」
白姫「う?」
魔剣士「お前が生きてて傍にいるだけで、俺は充分だっつったの。分かったか」
白姫「そ、そっか……?」
「ハァ」とため息をつき、ズリズリと腰を降ろす魔剣士だったが、次に言われたテイルの言葉に思わず赤面した。
テイル「……アンタたち、男女の関係なの?付き合ってるの?」
魔剣士「は、ハァ!!?」
テイル「随分と仲が良いなって思ったんだけど……」
魔剣士「何でそうなる!?」
テイル「仲良くないの?」
魔剣士「そこじゃねえよ!何で付き合ってるとかの話になる!?」
テイル「往年の夫婦みたいな感じだったから」
魔剣士「どこがだよ!!」
テイル「やり取りがもう、そんな感じ。あとね、魔剣士は恥ずかしいことを惜しげもなく言うのね」
魔剣士「あァ!?」
テイル「き、気づいてないの?」
魔剣士「何がだよ!!」
テイル「……素でああいうこと言える人がいるって初めて見たわ。きもちわるっ」
魔剣士「ンだとコラァ!俺が何を言ったよ!?」
テイル「えぇとね……」
"ごほんっ!"
一度大きく咳き込み、テイルはその台詞を復唱した。
テイル「……お前が生きてて傍にいるだけで、俺は充分だ」
自信満々に、ニヤニヤと笑いながら、魔剣士に向かって。
魔剣士「…」
テイル「凄い台詞よね」
魔剣士「…」
テイル「ね?」
魔剣士「…」
テイル「聞いてる?」
魔剣士「…」
テイル「ねぇ、ちょっと」
魔剣士「…」
テイル「ねぇってば――…!」
魔剣士「…」
魔剣士「……うっ…!」
テイル「……う?」
魔剣士「うっ…!!」
テイル「う!?」
魔剣士「うるせぇぇぇええっ!!!」
テイル「うるさっ!?」
恥ずかしさの余り、馬車の外に響き渡るほどの怒号が飛ぶ。
魔剣士「ほっとけよ、クソ野郎がぁぁっ!!」
テイル「だってねぇ……」
魔剣士「あーうるせぇうるせぇ!うるせぇッ!!」
テイル「アンタのほうが煩いから!」
魔剣士「……つ、つーか何だテメェはよ!故郷のことで落ち込んでいたと思えば、そんな罵倒するような台詞言いやがって!」
テイル「フンッ」
魔剣士「もう心そこにあらずってか!?」
テイル「…」
その言葉に、
"ピクリ"とテイルが反応する。
テイル「……心がそこにあらず?」
そして、先ほどまでとは違う、出会った時のような冷たいトーンで彼女は一言口にした。
テイル「忘れるわけ…ないじゃない……」
手をギュっと握り締め、下を向く。サラリとした銀髪がなびき、彼女の顔を隠し、その間から悔しそうな表情がわずかに見えた。
魔剣士は我に戻り、テイルのもとへと近づいた。
魔剣士「テ、テイル……!」
またやっちまったと、魔剣士はテイルに頭を下げようとしたのだが、その瞬間、彼女は急に顔をあげて笑みを浮かべた。
テイル「なーんてね!」
魔剣士「……は?」
テイル「フンッ、泣いてると思って騙されたでしょ!」
魔剣士「な、何?」
テイル「少しアンタにバカにされて悔しくなっただけよ。今はね、国を取り戻すために気持ちを前に向かせているんだから!」
魔剣士「……お前」
テイル「だけど、私の心を痛めつけたバツは受けても貰うからね!」
魔剣士「あ…?」
「バツって何だよ」と反応する前に、テイルの一撃が顔面へと直撃した。魔力の剣撃に匹敵するような、鋭いビンタだった……。
魔剣士「あいがっ!?」
テイル「うんっ!特別にそれで許してあげる!」
魔剣士「でめぇ…!鼻血が……!」
テイル「あーら、私の裸を思い出しちゃったのかしら?エッチ!」
魔剣士「い、いつかぶっ殺してやる……」
テイル「ベーだ!」
魔剣士「くっ…!」
テイルは舌を出しながら、逃げるようにして白姫の隣に腰を降ろした。
テイル「……えっと、白姫ちゃん…だったわよね?」
白姫「う、うんっ」
テイル「こんな男、早く捨てたほうがいいと思うな」
白姫「えぇっ!?」
魔剣士「て、テメェ…な……!」
テイル「魔剣士は黙ってて。女子会してるんだから!それとも、馬鹿にされたらまた泣いちゃうかも~……」
ひと差し指と中指を頬につけて、泣き真似をしながら魔剣士を見つめた。
魔剣士「……か、勝手にしろ!もう良い、寝るッ!!」
魔剣士は捨て台詞を吐くと、横になり、悪路を進む跳ねる馬車の中でもあっという間に寝息を立て始めたのだった。
テイル「うっわ、寝ちゃった……」
白姫「魔剣士ってば、むんつけちゃった」
テイル「全く、どういう神経してるのかしら……」
白姫「アハハ…」
テイル「……こんな男と旅なんて、白姫ちゃんも変わってるのね~」
白姫「そ、そうかな?」
テイル「確か、家出したんだっけ?」
白姫「うん…」
テイル「ふーん…。貴方はそれで良かったと思ってる?」
白姫「え?」
テイル「だから、良かったと思ってるの?」
白姫「旅をして…ってこと?」
テイル「それ以外ないじゃない」
白姫「……う、うん。良かったと思ってるよ」
テイル「本当に?」
白姫「う、うんっ…」
テイル「本当の本当に?」
どこか意地になって詰め寄るテイル。
白姫「そ、そんなに…?」
テイル「そんなに」
ふと、その眼を見て真剣なことに気づき、白姫は改めてそれを言葉にする。
白姫「……うん、私は家出してよかった…って言い方も変だけど、私は良かったと思ってる」
テイル「…どうして?」
白姫「どうしてって……」
テイル「旅のこと、ちょっとだけ教えてよ。感想だけでもいいから!」
白姫「……ん、うーんとね。旅はドキドキして楽しくて、だけど嫌なこともあって、でも気が付けばずっとずっと遠い所まで来ててね……」
テイル「うん」
白姫「お父様が悪いことを考えてて、本当はみんなに愛されてないって分かった時は凄く悲しくなったけど……」
テイル「…」
白姫「今はそのおかげで…っていうのも変だけど、それで私が国を変えてやるんだって目標が持てたから…後悔はしてないよ」
テイル「…そっか。それで今は旅は楽しいんだ?」
白姫「うんっ。魔剣士も凄く優しくて頼りになって、猛竜騎士さんも私たちの師匠なんだ!」
テイル「へぇ~…。ま、魔剣士が優しくて頼りになる……ね」
横になる魔剣士をジトっとした目線を向ける。
白姫「く、口が悪いところもあるけど……」
テイル「確かにね。でも分かった。白姫ちゃんがどれだけ旅を楽しんできたか…魔剣士たちが真剣なのかってこと」
白姫「…良かった♪」
テイル「そっか、旅は楽しかった…か」
白姫「うん、凄く楽しかった…楽しいよ」
テイル「……そっか」
それを聞いたテイルは"ふぅ"と虚ろな目で一息ついた。
隣にいた白姫はその様子を見て、「楽しい」という言葉が今の彼女にとって傷をつけたのではないかと思い、慌てて謝罪を口にした。
白姫「……て、テイルさん!」
テイル「なに?」
白姫「ごめんなさい……!」
テイル「何が?」
白姫「あ、あの…!楽しいとか、その……」
テイル「…」
白姫「その……」
テイル「…もしかして、国のことで楽しいって言ったのが気に食わなかったとか思ってるの?」
白姫「…」
小さく頷く。
テイル「……もう。またその話をぶり返すのは、いい度胸ね」
白姫「えっ?」
テイルは白姫の両頬を指で挟み、グニグニとつねった。
白姫「はぅっ!?」
テイル「もう私は前しか見ていないの。終わったことより、先を見ないとダメよ!」
白姫「あうぅ!」
テイル「……分かった?」
白姫「は、はひぃ…!」
テイルは慌てる白姫を見つめた後、手を離した。
白姫「うぅ、ごめんなさい……」
テイル「気にしなくていいの。感傷に浸ることもあるかもしれないけど、貴方が楽しいと思ったことを口にしたくらいで何とも思わないから安心して」
白姫「う、うん……」
人一倍、何かを気にしてしまう白姫は、失敗が重なったことでショボンとした表情で下を向く。
それを見ていたテイルは、「はぁぁ」とため息を漏らし、白姫に語りかけた。
テイル「……仕方ないわねぇ、セントラルの姫様こそこんなに感傷的だったと思わなかった」
白姫「ふぇ…?」
テイル「そんなに気にされたら、私こそ気になるじゃないの」
白姫「そ、そんなつもりじゃ……」
テイル「あのね、そういうつもりじゃなくてもね、そうっちゃうの。私だって、貴方がそう落ち込まれると気になるでしょ」
白姫「…」
テイル「こっちを見て、返事をしっかりとしてっ!」
白姫「は、はいぃっ!」
姉貴分気質というか、終始強気なテイルは白姫を圧倒する。
テイル「気にはしてない。気にする必要はない。気にしない。分かった?」
白姫「はい……」
テイル「中途半端な敬語もやめて。多分おなじ歳くらいだろうし」
白姫「う、うんっ。分かった……」
テイル「それならよろしい」
白姫「テイルさん…」
テイル「…ん?」
白姫「……えへへっ」
テイル「どうしたの?」
白姫「ううんっ…。こうやって、女の子同士でお話しするのは初めてだったから……ちょっと嬉しくなっちゃった」
テイル「友達がいないの?」
白姫「あうっ!」
"ガーン"と聞こえた気がした。
白姫「だ、だって…お城の人たち以外とは余り知ってる人もいなくて…ごにょごにょ……」
テイル「フッフーン、私はいつも外に出て町のみんなと遊んでたけどね!」
白姫「…羨ましいな。私はずっとお城の中から…出たことがなかったから」
テイル「……それももう、みんな…いないかもしれないんだけどね……」
白姫「あっ…」
テイル「だけど、だから私が国を取り戻すのよ!また一緒に遊ぶんだから!」
白姫「う、うんっ!」
テイル「……貴方も私の友達になる?」
白姫「えっ…!い、いいの?」
テイル「魔剣士とか猛竜騎士は信用しきれないけど、白姫ちゃんならまぁ…特別に……」
白姫「特別なんだっ!」
テイル「そ、そうよ!友達になる?」
白姫「うんっ…!うん!なりたい!」
テイル「じゃあ、握手しよっか」
そっと片手を白姫の前に差し出す。
白姫「…♪」
白姫はその手をガッチリと握りしめて握手を交わした。
先ほどまで疑い続きだったテイルだったが、会話を通して白姫がどのような人間なのかを理解し始めていた。
また、白姫も少しずつ彼女が心を開いてくれていることを分かっており、思わず笑みを零す。
テイル「……そんなに嬉しい?凄く笑ってるけど」
白姫「すっごく嬉しい……」
テイル「何だか恥ずかしいんだけど…」
白姫「えへへ」
テイル「…何て顔してるのよ。ヘラヘラ笑って、それでも世界一の国のお姫様?」
白姫「あう…」
テイル「まっ!私としてもそんなお姫様と知り合えるのは悪い気がしないけどね」
白姫「ほ、褒めてくれてるのかなー…?」
テイル「……だから、それを踏まえて!!」
白姫「ひゃいっ!?」
テイル「…気にするなってことよ!分かった!?」
白姫「え……」
結局のところ、テイルも落ち込んだ白姫を見て「自分のせいで」と考え、自分なりに白姫を元気づけようとしていたのだった。
白姫「……そっか。ありがとう、テイルさん」
テイル「な、何がよ!」
白姫「えへへ、仲良くしようね…♪」
テイル「当たり前でしょ」
白姫「うんっ!」
また、これに"寝たふり"と"聞き耳"をたてていた男二人組もホっと一安心したようだった。
魔剣士(ふーん、いけすかねぇ奴だと思ってたが、思ったよりもこの女……)
猛竜騎士(不器用なりに、友達としては上手くやっていけそうだな)
いかなる時も、女性とは華やかなものだ。緊張の糸は解けることは無いが、二人の女性が微笑み会話をするだけで空気がどこか柔らかくなる。
彼女たちのやり取りに、この旅の行く末がほんのわずかばかり"良いものになるのかもしれない"と、そう思えた。
…………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いよいよ始まった東方大地での旅だったが、到着早々、三人は災難へと見舞われた。
奴隷馬車から助け出した白姫と変わらぬ歳の女の子は"砂国"の姫様で、砂国が"アサシン盗賊団"に乗っ取られていたことを知る。
そこで三人はテイルとともに、砂国の奪還のために戦地へと赴く決意をしたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――そして。
魔剣士「だらぁぁぁっ!!」
盗賊の男を、魔剣士の鋭い剣撃が豪快な音をたてながら兜を粉砕し、吹き飛ばした。
魔剣士「つ、次から次へと……!」
港町を出発してから数時間。
魔剣士一行は馬車で砂国へと向かっていたのだが、その道中は聞いていた通り熾烈極まりないものだった。
白姫「やったぁ!」
テイル「魔剣士も中々やるじゃない……」
当然の如く襲ってくる盗賊、山賊たち。加えて魔剣士は、常に周囲から溢れんばかりの殺気を感じており、休む暇すら与えられなかった。
魔剣士「……ただいま」
そして今も、賊を吹き飛ばした魔剣士は白姫とテイルが座る荷台に戻ってきたところだった。
白姫「お帰り、魔剣士っ!」
魔剣士「おーう、馬車側は何もないみたいだな」
白姫「猛竜騎士さんが馬を運転してるし、前方から襲ってくる人たちは対処してくれてるみたいだよ」
魔剣士「……そうか」
白姫「うんっ」
魔剣士「ハハ…馬を扱いつつ戦ってよ、この中でよく動けると思うぜ…。正直、今ほどオッサンをすげぇと思ったこともねぇよ…」
白姫「そ、そんなに?」
魔剣士「魔族、人、変わらねぇ…。奪うために、戦う土地っていうのは…こういうことか……」
白姫「魔剣士……」
そこら中から感じる、"命を狙う命"の鼓動。闇魔法と多くの戦いから敏感になった身体は、大地に渦巻く本気の"殺戮"という感覚を全身で感じ、あの魔剣士が疲労を見せ始めていた。
魔剣士(オッサンは、これ以上に感じているハズなのによ……)
猛竜騎士は、魔剣士と違い休む暇もなく気配を張り巡らせている。
かのウィッチと同じ"察知"を常時発動しているはずで、魔剣士よりも遥かに"殺戮の気"を受け続けているというのに、まるで馬を動かすことに抵抗はなく、たまに笑ってワゴン側から声をかけてくる位に余裕らしい。
魔剣士(……オッサンは、どうしてこんな中で平然にしてられるんだよ)
これが、経験の差なのだろうと分かっているのだが。
テイル「……フンッ、魔剣士は戦う実力はあっても精神力はダメダメじゃない」
魔剣士「あ?」
テイル「ちょっとばかり実力があると、東方大地の気に飲まれて精神面で参っちゃう奴が多いのよねぇ」
魔剣士「俺を馬鹿にしてんのか」
テイル「いいえ?」
魔剣士「そ、その言い方がムカつくんだよ…!」
テイル「フンッ」
魔剣士「て、テメェだって泣き虫野郎だろうが……」
テイル「忘れたわ」
魔剣士「この…ヤロォ……!」
ピクピクと血管を浮かせ、今にも飛び掛かりそうな魔剣士を見て、白姫が慌てて魔剣士を落ち着かせる。
白姫「もう、魔剣士!」
魔剣士「んお?」
白姫「疲れてもケンカしちゃダメだよ!」
魔剣士「だ、だけどなコイツの言い方が……」
白姫「じゃあさ…私も戦うの手伝ったら魔剣士は少しは休めるかな?」
魔剣士「……は?ば、馬鹿野郎ッ!お前なんかに戦わせられるかよ!?」
白姫「むぅ…」
魔剣士「変なこと言うんじゃねぇよ」
白姫「でもさ、魔剣士が辛そうだから…役に立ちたいのに……」
魔剣士「……俺にとってはここにいるだけで充分だっつーの」
白姫「う?」
魔剣士「お前が生きてて傍にいるだけで、俺は充分だっつったの。分かったか」
白姫「そ、そっか……?」
「ハァ」とため息をつき、ズリズリと腰を降ろす魔剣士だったが、次に言われたテイルの言葉に思わず赤面した。
テイル「……アンタたち、男女の関係なの?付き合ってるの?」
魔剣士「は、ハァ!!?」
テイル「随分と仲が良いなって思ったんだけど……」
魔剣士「何でそうなる!?」
テイル「仲良くないの?」
魔剣士「そこじゃねえよ!何で付き合ってるとかの話になる!?」
テイル「往年の夫婦みたいな感じだったから」
魔剣士「どこがだよ!!」
テイル「やり取りがもう、そんな感じ。あとね、魔剣士は恥ずかしいことを惜しげもなく言うのね」
魔剣士「あァ!?」
テイル「き、気づいてないの?」
魔剣士「何がだよ!!」
テイル「……素でああいうこと言える人がいるって初めて見たわ。きもちわるっ」
魔剣士「ンだとコラァ!俺が何を言ったよ!?」
テイル「えぇとね……」
"ごほんっ!"
一度大きく咳き込み、テイルはその台詞を復唱した。
テイル「……お前が生きてて傍にいるだけで、俺は充分だ」
自信満々に、ニヤニヤと笑いながら、魔剣士に向かって。
魔剣士「…」
テイル「凄い台詞よね」
魔剣士「…」
テイル「ね?」
魔剣士「…」
テイル「聞いてる?」
魔剣士「…」
テイル「ねぇ、ちょっと」
魔剣士「…」
テイル「ねぇってば――…!」
魔剣士「…」
魔剣士「……うっ…!」
テイル「……う?」
魔剣士「うっ…!!」
テイル「う!?」
魔剣士「うるせぇぇぇええっ!!!」
テイル「うるさっ!?」
恥ずかしさの余り、馬車の外に響き渡るほどの怒号が飛ぶ。
魔剣士「ほっとけよ、クソ野郎がぁぁっ!!」
テイル「だってねぇ……」
魔剣士「あーうるせぇうるせぇ!うるせぇッ!!」
テイル「アンタのほうが煩いから!」
魔剣士「……つ、つーか何だテメェはよ!故郷のことで落ち込んでいたと思えば、そんな罵倒するような台詞言いやがって!」
テイル「フンッ」
魔剣士「もう心そこにあらずってか!?」
テイル「…」
その言葉に、
"ピクリ"とテイルが反応する。
テイル「……心がそこにあらず?」
そして、先ほどまでとは違う、出会った時のような冷たいトーンで彼女は一言口にした。
テイル「忘れるわけ…ないじゃない……」
手をギュっと握り締め、下を向く。サラリとした銀髪がなびき、彼女の顔を隠し、その間から悔しそうな表情がわずかに見えた。
魔剣士は我に戻り、テイルのもとへと近づいた。
魔剣士「テ、テイル……!」
またやっちまったと、魔剣士はテイルに頭を下げようとしたのだが、その瞬間、彼女は急に顔をあげて笑みを浮かべた。
テイル「なーんてね!」
魔剣士「……は?」
テイル「フンッ、泣いてると思って騙されたでしょ!」
魔剣士「な、何?」
テイル「少しアンタにバカにされて悔しくなっただけよ。今はね、国を取り戻すために気持ちを前に向かせているんだから!」
魔剣士「……お前」
テイル「だけど、私の心を痛めつけたバツは受けても貰うからね!」
魔剣士「あ…?」
「バツって何だよ」と反応する前に、テイルの一撃が顔面へと直撃した。魔力の剣撃に匹敵するような、鋭いビンタだった……。
魔剣士「あいがっ!?」
テイル「うんっ!特別にそれで許してあげる!」
魔剣士「でめぇ…!鼻血が……!」
テイル「あーら、私の裸を思い出しちゃったのかしら?エッチ!」
魔剣士「い、いつかぶっ殺してやる……」
テイル「ベーだ!」
魔剣士「くっ…!」
テイルは舌を出しながら、逃げるようにして白姫の隣に腰を降ろした。
テイル「……えっと、白姫ちゃん…だったわよね?」
白姫「う、うんっ」
テイル「こんな男、早く捨てたほうがいいと思うな」
白姫「えぇっ!?」
魔剣士「て、テメェ…な……!」
テイル「魔剣士は黙ってて。女子会してるんだから!それとも、馬鹿にされたらまた泣いちゃうかも~……」
ひと差し指と中指を頬につけて、泣き真似をしながら魔剣士を見つめた。
魔剣士「……か、勝手にしろ!もう良い、寝るッ!!」
魔剣士は捨て台詞を吐くと、横になり、悪路を進む跳ねる馬車の中でもあっという間に寝息を立て始めたのだった。
テイル「うっわ、寝ちゃった……」
白姫「魔剣士ってば、むんつけちゃった」
テイル「全く、どういう神経してるのかしら……」
白姫「アハハ…」
テイル「……こんな男と旅なんて、白姫ちゃんも変わってるのね~」
白姫「そ、そうかな?」
テイル「確か、家出したんだっけ?」
白姫「うん…」
テイル「ふーん…。貴方はそれで良かったと思ってる?」
白姫「え?」
テイル「だから、良かったと思ってるの?」
白姫「旅をして…ってこと?」
テイル「それ以外ないじゃない」
白姫「……う、うん。良かったと思ってるよ」
テイル「本当に?」
白姫「う、うんっ…」
テイル「本当の本当に?」
どこか意地になって詰め寄るテイル。
白姫「そ、そんなに…?」
テイル「そんなに」
ふと、その眼を見て真剣なことに気づき、白姫は改めてそれを言葉にする。
白姫「……うん、私は家出してよかった…って言い方も変だけど、私は良かったと思ってる」
テイル「…どうして?」
白姫「どうしてって……」
テイル「旅のこと、ちょっとだけ教えてよ。感想だけでもいいから!」
白姫「……ん、うーんとね。旅はドキドキして楽しくて、だけど嫌なこともあって、でも気が付けばずっとずっと遠い所まで来ててね……」
テイル「うん」
白姫「お父様が悪いことを考えてて、本当はみんなに愛されてないって分かった時は凄く悲しくなったけど……」
テイル「…」
白姫「今はそのおかげで…っていうのも変だけど、それで私が国を変えてやるんだって目標が持てたから…後悔はしてないよ」
テイル「…そっか。それで今は旅は楽しいんだ?」
白姫「うんっ。魔剣士も凄く優しくて頼りになって、猛竜騎士さんも私たちの師匠なんだ!」
テイル「へぇ~…。ま、魔剣士が優しくて頼りになる……ね」
横になる魔剣士をジトっとした目線を向ける。
白姫「く、口が悪いところもあるけど……」
テイル「確かにね。でも分かった。白姫ちゃんがどれだけ旅を楽しんできたか…魔剣士たちが真剣なのかってこと」
白姫「…良かった♪」
テイル「そっか、旅は楽しかった…か」
白姫「うん、凄く楽しかった…楽しいよ」
テイル「……そっか」
それを聞いたテイルは"ふぅ"と虚ろな目で一息ついた。
隣にいた白姫はその様子を見て、「楽しい」という言葉が今の彼女にとって傷をつけたのではないかと思い、慌てて謝罪を口にした。
白姫「……て、テイルさん!」
テイル「なに?」
白姫「ごめんなさい……!」
テイル「何が?」
白姫「あ、あの…!楽しいとか、その……」
テイル「…」
白姫「その……」
テイル「…もしかして、国のことで楽しいって言ったのが気に食わなかったとか思ってるの?」
白姫「…」
小さく頷く。
テイル「……もう。またその話をぶり返すのは、いい度胸ね」
白姫「えっ?」
テイルは白姫の両頬を指で挟み、グニグニとつねった。
白姫「はぅっ!?」
テイル「もう私は前しか見ていないの。終わったことより、先を見ないとダメよ!」
白姫「あうぅ!」
テイル「……分かった?」
白姫「は、はひぃ…!」
テイルは慌てる白姫を見つめた後、手を離した。
白姫「うぅ、ごめんなさい……」
テイル「気にしなくていいの。感傷に浸ることもあるかもしれないけど、貴方が楽しいと思ったことを口にしたくらいで何とも思わないから安心して」
白姫「う、うん……」
人一倍、何かを気にしてしまう白姫は、失敗が重なったことでショボンとした表情で下を向く。
それを見ていたテイルは、「はぁぁ」とため息を漏らし、白姫に語りかけた。
テイル「……仕方ないわねぇ、セントラルの姫様こそこんなに感傷的だったと思わなかった」
白姫「ふぇ…?」
テイル「そんなに気にされたら、私こそ気になるじゃないの」
白姫「そ、そんなつもりじゃ……」
テイル「あのね、そういうつもりじゃなくてもね、そうっちゃうの。私だって、貴方がそう落ち込まれると気になるでしょ」
白姫「…」
テイル「こっちを見て、返事をしっかりとしてっ!」
白姫「は、はいぃっ!」
姉貴分気質というか、終始強気なテイルは白姫を圧倒する。
テイル「気にはしてない。気にする必要はない。気にしない。分かった?」
白姫「はい……」
テイル「中途半端な敬語もやめて。多分おなじ歳くらいだろうし」
白姫「う、うんっ。分かった……」
テイル「それならよろしい」
白姫「テイルさん…」
テイル「…ん?」
白姫「……えへへっ」
テイル「どうしたの?」
白姫「ううんっ…。こうやって、女の子同士でお話しするのは初めてだったから……ちょっと嬉しくなっちゃった」
テイル「友達がいないの?」
白姫「あうっ!」
"ガーン"と聞こえた気がした。
白姫「だ、だって…お城の人たち以外とは余り知ってる人もいなくて…ごにょごにょ……」
テイル「フッフーン、私はいつも外に出て町のみんなと遊んでたけどね!」
白姫「…羨ましいな。私はずっとお城の中から…出たことがなかったから」
テイル「……それももう、みんな…いないかもしれないんだけどね……」
白姫「あっ…」
テイル「だけど、だから私が国を取り戻すのよ!また一緒に遊ぶんだから!」
白姫「う、うんっ!」
テイル「……貴方も私の友達になる?」
白姫「えっ…!い、いいの?」
テイル「魔剣士とか猛竜騎士は信用しきれないけど、白姫ちゃんならまぁ…特別に……」
白姫「特別なんだっ!」
テイル「そ、そうよ!友達になる?」
白姫「うんっ…!うん!なりたい!」
テイル「じゃあ、握手しよっか」
そっと片手を白姫の前に差し出す。
白姫「…♪」
白姫はその手をガッチリと握りしめて握手を交わした。
先ほどまで疑い続きだったテイルだったが、会話を通して白姫がどのような人間なのかを理解し始めていた。
また、白姫も少しずつ彼女が心を開いてくれていることを分かっており、思わず笑みを零す。
テイル「……そんなに嬉しい?凄く笑ってるけど」
白姫「すっごく嬉しい……」
テイル「何だか恥ずかしいんだけど…」
白姫「えへへ」
テイル「…何て顔してるのよ。ヘラヘラ笑って、それでも世界一の国のお姫様?」
白姫「あう…」
テイル「まっ!私としてもそんなお姫様と知り合えるのは悪い気がしないけどね」
白姫「ほ、褒めてくれてるのかなー…?」
テイル「……だから、それを踏まえて!!」
白姫「ひゃいっ!?」
テイル「…気にするなってことよ!分かった!?」
白姫「え……」
結局のところ、テイルも落ち込んだ白姫を見て「自分のせいで」と考え、自分なりに白姫を元気づけようとしていたのだった。
白姫「……そっか。ありがとう、テイルさん」
テイル「な、何がよ!」
白姫「えへへ、仲良くしようね…♪」
テイル「当たり前でしょ」
白姫「うんっ!」
また、これに"寝たふり"と"聞き耳"をたてていた男二人組もホっと一安心したようだった。
魔剣士(ふーん、いけすかねぇ奴だと思ってたが、思ったよりもこの女……)
猛竜騎士(不器用なりに、友達としては上手くやっていけそうだな)
いかなる時も、女性とは華やかなものだ。緊張の糸は解けることは無いが、二人の女性が微笑み会話をするだけで空気がどこか柔らかくなる。
彼女たちのやり取りに、この旅の行く末がほんのわずかばかり"良いものになるのかもしれない"と、そう思えた。
…………
……
…
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