112 / 176
第九章【セントラル】
9-10 南方道中村にて(1)
しおりを挟む
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――魔剣士たち、ガンザン村から2日後。
冒険者の集う村で休息を得た四人は、それからほどなくして"南方道中村"へと到着していた。
南方道中村はセントラル王国の南方に位置する最も付近にある村である。
冒険者の足ならば3時間足らずでセントラルへ到着することもあって、いよいよ魔剣士たちも本格的に計画を練り直す必要があった。
白姫「わぁー、久しぶりー……!」
魔剣士「うぉー!懐かしいなオイ!!」
二人にとっては冒険を始めて"最初"の村ということもあって、成長した自分たちがそこへ訪れるのは感動ものだった。
猛竜騎士「懐かしむのは後だ。先に宿をとって明日の準備もしたほうがいいだろう」
ブリレイ「えぇ、もうセントラルは目前ですからね」
白姫「分かりました」
魔剣士「へいへい」
四人は宿のある村の中央へと足を運ぶ。
すると、全員が村に漂う雰囲気の異変に気が付く。
魔剣士「……なんか、冒険者というか妙に殺気立った奴が多くないか」
ブリレイ「気のせいではないようですが……」
白姫「みんなピリピリしてる……?」
猛竜騎士「これは……」
明らかに異質な気を放つ者の存在が多く伺える。冒険者の村で見た面子もチラホラと確認することができ、異様な事態に四人は宿へと急いだ。
魔剣士(何なんだ……?)
そして、ようやく宿へと到着した四人は隠れるようにして受付へ向かう。するとそこには、懐かしい顔が、あの時と同じままで、そこに立っていた。
宿屋の主人「うぃーっす、いらっしゃい……」
初めての夜、一夜を明かした宿屋の親父が変わりなく、そこへ立っていた。
魔剣士と白姫は思わず声を出しそうになったが、また懐かしいと感じる反応を主人はしたものだから思わず笑ってしまう。
宿屋の主人「って、アンタら…。そこの丸眼鏡以外…、フードローブを深く被ってなんだぁ…?顔を見せやがれ、強盗か何かじゃねえだろうな!!」
魔剣士(おいおい……!)
あの時も、顔を隠して背負った白姫に対して同じような言葉をぶつけた。本当に何も変わっていなくて、安心してしまう。
宿屋の主人「どうなんだ、えぇっ!?オイッ!!」
猛竜騎士「いや、俺たちは……」
宿屋の主人「とにかく脱いでもらおうか!ただでさえ今は物騒だってのに…、そんなんじゃ部屋は貸せないからな!」
猛竜騎士「込み入った事情もあるんだが……」
宿屋の主人「こっちにとったらアンタらの存在が込み入った事情なんだよ!」
一方に引き下がらない主人に、魔剣士はクククと笑いながら一歩前に出た。
宿屋の主人「な、なンだ!?やるか!?」
魔剣士「……宿屋の親父サンよぉ」
宿屋の主人「なンだ……!」
魔剣士「俺たちゃ込み入った事情があるんだ。ちっとばかし、これでかくまってくれねーか……?」
宿屋の主人「は?何を言ってやがる!」
魔剣士は腰の袋から、セントラルの金貨を数枚をカウンターに放り投げた。
宿屋の主人「……ン?」
魔剣士「これで俺らのことを秘密にして、泊めてもらえりゃ嬉しいぜ?」
宿屋の主人「こ、こりゃ……」
魔剣士「そうだな、出来たら…アンタの部屋あたりに一泊。ってのはどうだ……なぁ!」
魔剣士は周りを気にしつつも、フードを取って主人にだけ顔を見せた。
宿屋の主人「お前……!」
魔剣士「久しぶりだな、宿屋のオッサン!」
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――10分後、主人の部屋。
主人「ひっさしぶりじゃねえか、魔剣士!おぉ!!?」
魔剣士「相変わらずだなぁ、宿屋のオッサンよぉー……」
主人「お前なぁ、あれからうちのVIPルームに宿泊するとか豪語しといて、結局こんなナリじゃねーか」
魔剣士「うっせーなぁ、俺だって好きでこんな立場にいるんじゃねーっつーの!」
主人「はっはっは、姫様も本当に久しぶりだ!前にあった時より綺麗に可愛くなったんじゃないか!?」
白姫「そ、そんなこと……」
たった一日の出会いとはいえ、その時間は二人にとって嬉しい出来事で、感謝を仕切れないものだった。
しかし、次の猛竜騎士の一言に魔剣士は更なる優しさを知る。
猛竜騎士「その節は、魔剣士と白姫が世話になったそうで……」
主人「あぁ?気にするこたぁねーよ、俺だってたっぷりと謝礼金を受け取ったんだからな!」
猛竜騎士「……謝礼とはいえ、あの金貨は…」
主人「酒飲み代に使っちまったぜ!だぁーはっはっは、気にする必要はない!」
猛竜騎士「別に支払わせていただきたい。本当に使えるお金を」
主人「バッカ、お前それは…!」
魔剣士「……何?」
本当に使えるお金だって?
魔剣士「オッサン、そりゃどういう意味だ」
猛竜騎士「……お前はこの人に感謝はしきれないのだと、覚えておけ」
主人「いやいや、気にすることはねぇよ」
猛竜騎士「いえ、そうもいきません。彼らの"親の立場"として、教えなければいけない」
魔剣士「ちょっ、オッサン……」
白姫「も、猛竜騎士さん……!」
ブリレイ「フフ……」
主人「良いってのに…なぁ」
猛竜騎士「いえ、しっかり教えますよ」
主人を遮り、魔剣士にそれを伝えた。
猛竜騎士「いいか魔剣士。お前の渡した金貨は、セントラルの宝物庫から盗んだ金貨だったな?」
魔剣士「俺が盗んだんじゃねーけど、まぁ……」
猛竜騎士「あれはセントラル金貨だが、番号が刻まれていてな。セントラルとて、それを把握していないわけがないだろう?」
魔剣士「……何?」
猛竜騎士「使えば足がつく。つまり、お前はこの主人にただただ世話になったってことなんだよ」
魔剣士「…は?いやいや、この宿のオッサンはガメつくて、もっと寄越せとだな……」
猛竜騎士「……なるほどな。それは少し考えれば分かることだ」
魔剣士「はい?」
猛竜騎士「恐らく、お前らのことを想ってだよ。……そうでしょう、ご主人」
主人「……おいおい」
言う気はなかったのだろうが、ここまで言われちゃ話す以外はない。
魔剣士「宿のオッサン…?」
主人「全く、気にしなくていいってのに」
魔剣士「何がだ?アンタ、ガメつくとったんじゃなかったのか?」
主人「……あぁ、俺ぁガメついだけさ」
魔剣士「やっぱりそうじゃねえか!?」
主人「……と、言いたいが」
魔剣士「あ?」
主人「そこの親御さんに言われちゃ仕方ねぇ。本当は、その足がつくってのが理由でこの金貨は使えないんだよ」
魔剣士「な、何…!?」
主人は立ち上がると、部屋にあったタンスの奥からいつか渡したセントラルの金貨を取り出して机に並べた。
魔剣士「お、おい……」
主人「俺から言うのはこっぱずかしいからな。全部分かってるようだし、そこの親御さんに聞いてくれ」
魔剣士「は…」
猛竜騎士「……ハハ。魔剣士、お前の金貨を多く取ったのはお前に対する優しさだよ」
魔剣士「何だと…?」
猛竜騎士「もう一度言うぞ。その金貨を使えば足がつく。つまり、分からないか?」
魔剣士「だからよ!足がつくってのは充分に分かって…………あっ!?」
猛竜騎士「気付いたか」
つまりは、そういうことだ。
白姫「私たちがそれを使って、捕まらないようにしたって…こと……?」
猛竜騎士「正解だ」
魔剣士「そ、そんなこと……」
最も、次の日には猛竜騎士と出会ったことで金貨を使う機会はなくなっていたのだが。
今だから分かる、主人の優しさが痛く感じた。
魔剣士「や、宿のオッサン……」
主人「恥ずかしいことだ。ククッ、気にしないでくれよな」
魔剣士「でも、アンタ……!」
主人「確かに金貨を持ってるだけで危険だったがよ、俺ぁ言ったはずだぜ?」
魔剣士「何を…!」
主人「俺は夢見てたってな。お前が主人公で、姫様がヒロインだ。あーんな出来事あったのに、俺が活躍しなかったら物語が成り立たねーだろってな!」
魔剣士「ば、ばっかやろ……」
主人「どうだ、俺は主人公組みになれそうか!?」
魔剣士「本当に…有難うだよ…バカヤロ……」
主人「ハッハッハッハッ、そりゃ何よりだ!それだけで俺ぁ充分さ!!猛竜騎士とやら、アンタも代金なんかいらねーぜ!」
猛竜騎士「ご主人……」
白姫「主人さん…!」
ブリレイ「何と気持ちのいい方なんでしょうか…。こちらまで嬉しくなってきますよ」
主人を囲むようにして、四人は彼の心意気に思わず温かな気持ちに笑みを浮かべた。
主人「ま、気にするなよ。それより、話を聞かせてくれねーか?仲間も増えてるみたいだし、どんな旅をしてきたんだかってことをよ」
魔剣士「……ん、アンタ店番は?」
主人「あれからバイトも増えてな、今はそいつに任せてる。最近は物騒だから夜に二人で番をしてるけどな」
魔剣士「そういや、さっきも物騒だって言ってたな。この村の雰囲気も、あの時とだいぶ変わった気がしたんだが…それが原因なのか?」
主人「あぁ…。最近はセントラルのほうで面倒くさい動きがあってなぁ……」
魔剣士「面倒くさい動き?」
主人「なんか、クロイツ騎士団とかいう荒くれ者の集団を作ってるらしいんだわ。名前の発表はつい最近あったとか冒険者が言ってたなぁ」
魔剣士「……クロイツ騎士団!?」
主人「それの選考が短い間隔で行われていて、南方港に来てるメンバーがこの村で休憩を取って、セントラルに向かう中継所になってるんだよなぁ…。そのせいで、治安も最悪だぜ…全く……」
魔剣士「宿のオッサン、ちょっとその話…詳しく聞かせてくれないか……?」
主人「……金貨1枚、だぜ」
魔剣士「クク、ユーモアを忘れないアンタのこと…好きだぜ全く……」
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――20分後。
主人「……というわけだ。この情報は中々高くつくぜ?」
主人の話した内容は、王が名前を変えていたこと、騎士団の名前がクロイツと名をつけてあること、また、噂によると明日に騎士団の選考会が行われるらしいことの三点だった。
白姫「王が、名前を変えて……」
魔剣士「あのクソ王、何がハイルだ…!何がクロイツ騎士団だ!?十字架の騎士団…マジで昔の政策のまんまじゃねえか!!」
猛竜騎士「……ブリレイ、君はこのことを」
ブリレイ「僕がこちらに来る直前のことのようなので、名を変えていること、クロイツ騎士団ということも…選考会も、詳しいことは知りませんでした……」
彼の言い方から、それが本当に知らないことなのだったと分かった猛竜騎士は、それ以上に追うことはしない。
主人「その選考が明日に控えているせいで、余計に治安が悪ぃんだよ。ったく、税金も厳しくなる一方だってのに……」
猛竜騎士「税金もですか?」
主人「あぁそうだ。アンタらにゃ愚痴をこぼしたくないが、少し前から税率を倍にされたんだよ。こっちとら、厳しいってありゃしない……」
猛竜騎士「税金の名目は?」
主人「さぁーな。ただ、取り立てには王城の兵士が直接来るもんだから、抵抗もできたもんじゃないんだこれが」
猛竜騎士「とすると、騎士団に払う賃金を国民から巻き上げているということか……」
主人「…な、何?」
猛竜騎士「ハンターや冒険者は、その辺の民よりよっぽど儲かる職です。そいつらを集めるとなると、並大抵な金では雇いきれない。つまり……」
主人「おいおい…ちょっと待てよ!それじゃあ…俺らの金は今、この村の治安を悪くしてる冒険者どもに支払ってるってことなのか!?」
猛竜騎士「えぇ、選考試験に選ばれた人のみでしょうけど、事実、その開催にも金がいるわけで…彼らのために支払う金というのなら、そういう意味でも……」
主人「……っざけるな、何考えているんだよ王は!治安が悪くなったせいで、畳む店だって出てきてるんだぞ!!」
猛竜騎士「因みにですが、騎士団の詳細は聞いてますか?」
主人「セントラルをより確固にするためだとか、条約のためだとか難しい話をしているが、払わなければ反逆罪だからな…聞くに訊けたもんじゃあない!」
猛竜騎士「なるほど…ですね……」
どうやら、主人にとってこの話は癪に障る話題らしい。
彼の心を抉るのは気持ち最悪だったが、中々に良い情報を得ることが出来た。
主人「……そういや、魔剣士よ」
魔剣士「なんだ?」
主人「お前さんの話を聞くつもりだったが、一体どんな旅をしてきたんだ?」
魔剣士「んー…、それなんだがなぁ……」
主人「なンだ?」
魔剣士「あまり言えない事なんだけどよ、全部が終わったら、アンタにゃ是非…俺の旅を聞いてほしいと思うから…。それまで待っててくれねーか…?」
主人「おいおい!俺に言えないことってか?」
魔剣士「まだ、言えねぇ。だけど、俺ぁスゲー強くなったんだ。本気で、守りたいものを守れるくらいに……」
拳をギュっと握りしめ、今までの旅を思い出す。
ようやく、ここまで辿り着くことが出来たのだと。
主人「……ふむ、なるほどな。込み入った事情があるなら、訊くこともないって話だ」
魔剣士「いいのか…」
主人「アンタらはお客様、だ。これ以上、詮索するマネをしたらクレームが出ちまうだろ?」
魔剣士「宿のオッサン……」
主人(ガストフ)「あのな、思ってたんだが…俺の名前はガストフだ。宿屋って意味でまんまかもしれねーが、笑うなよ!」
魔剣士「……はいはい、ガストフのオッサン!」
ガストフ「お前、それは宿のオッサンってことじゃねーか!一緒の意味だよ、一緒の!」
魔剣士「はっはっは、悪ぃ悪ぃ!」
ガストフ「……ったく」
ばつの悪そうな表情を見せたガストフは、「しゃあねえなあ」と漏らして立ち上がり、「ゆっくりしていってくれよ」と受付けのある扉に向かった。
魔剣士「あらら、もう行っちまうのか」
ガストフ「受付に主人である俺が待ってないでどうする。それに、込み入る話もあるんだろ?」
魔剣士「ガストフのオッサン……」
猛竜騎士「ありがとう、助かります」
ガストフ「あぁ気にしないでくれ。それより、晩飯はあとで運ばせるからゆっくりしてくんな!」
白姫「ありがとうございます、ガストフさん!」
ガストフ「ふはは、やっぱり姫様みたいな可愛い娘ちゃんにそう言われるのは悪い気がしないぜ」
鼻の下を伸ばし、白姫に手を振るガストフ。
魔剣士「おい、変態ジジィ」
ガストフ「な…何だと!?誰が変態ジジィだ!」
魔剣士「年下に鼻の下伸ばすんじゃねーよ!」
ガストフ「……口の減らない奴だなお前は」
魔剣士「へんっ」
ガストフ「ったく…!まっ、嫌いじゃないけどな。青春を楽しめよ、冒険者クン」
魔剣士「ふんっ!早く行っちまえ!」
ガストフは魔剣士にも手を振りながら、扉の向こう側へと消えていった。
魔剣士「……どっちが口の減らない奴だっつーの!」
猛竜騎士「ハハ、しかし助かった。あの主人のおかげで、今日は安眠を得られそうだな」
ブリレイ「そうですね…、部屋も広いですので隣の部屋には2つベッドも別にありますし、僕たちは隣で休ませていただきますか」
白姫「じゃあ私は魔剣士と一緒にここに寝ますねっ」
魔剣士「まぁそうなるわな」
猛竜騎士(……はーん)
今までなら「何でそうなる!?」と突っ込んでいたところだったが、妙に落ち着きが出たものだ。
魔剣士「んで、オッサンよ」
猛竜騎士「なんだ?」
魔剣士「明日にはいよいよセントラルだが、どうするよ」
猛竜騎士「あぁ……」
魔剣士「ぶっちゃけた話、俺の力なら大軍相手でも燃やし尽くせるし、強行突破っていうのも有りなんじゃねーか?」
猛竜騎士「……バカ言うな。お前は罪のない国民を巻き込んで、王都を火の海にするつもりか」
魔剣士「あ…、そうね……」
猛竜騎士「それにそう簡単に王に近づけるものか。こんな状況において、王の周りの警護は昔と違うと考えていいだろう」
魔剣士「じゃあどうすんだよ……」
猛竜騎士「ふむ……」
先ず、戦争をさせないためには王を止めなければならない。魔剣士は白姫に対して、状況が状況となるなら王を殺さねばならないことは伝えている。
もちろん、魔剣士にとって王の存在は家族を殺されたこともあって容赦をすることはない。
白姫「…」
白姫自身もそれは分かっているし、自分の言葉が父に届かないことも理解している。
今はただ、周りの決断に従い、成功した暁に訪れるであろう"指導者のいなくなった未来"に立つ自分を想像するばかりである。
魔剣士「……王を止める。だが近づけない。国民も巻き込めない。どうすればいいんだよ」
猛竜騎士「それを今、考えているわけだろう……」
魔剣士「分かってるけどよ……」
猛竜騎士「例えば腕の立つハンターが、お前や白姫の顔を見て分からないはずがない。既に王に忠実な相手もいたら、その情報が漏らされては困るだろう?」
魔剣士「……そりゃな」
猛竜騎士「幸いなことに、お前が闇魔法の使い手であることは浸透していないようだから、そこに突く隙があるだろうとは思うが……」
魔剣士「やっぱり強行突破しかねえってことか?」
猛竜騎士「それでは国民が巻き込まれると言ってるだろう…。お前はそんなに王都を戦場にしたいのか?」
魔剣士「そ、そんなことはねぇけどよ!暗躍して忍び込めば何とかなるんじゃねーかって…そう思っただけだっつーの…」
猛竜騎士「以前に一度、忍び込まれているのに。それなのに同じ過ちはせんだろう」
魔剣士「うぐっ…!」
八方ふさがりもいいところだ。
魔剣士は猛竜騎士に、
「ああ言えばこう言う!」
そんな罵倒を強く浴びせたかったが、正論であって唾を飲み込むしかない。
ブリレイ「……割り込むようですが、問題はそれだけではありません」
ここで、丸メガネを光らせてブリレイが口を開く。
魔剣士「まだ何かあんのか?」
ブリレイ「闇魔術師の存在です。誕生している可能性はほぼ確実、その対策も必要でしょう」
魔剣士「……同じ相手なら俺は負けねぇ。まだ生まれたてなら、相手じゃない」
ブリレイ「ふむ、失礼ながらその自信の根拠は?」
魔剣士「闇魔法にはレベルがあってだな……」
猛竜騎士「魔剣士!」
魔剣士「……っと、お、おう!まぁそれは良い!とにかく相手じゃないってことだ!」
裏切りの可能性が僅かでもある限り、秘密を暴露する必要はない。
ブリレイ「……そうですか、魔剣士さんがそういうのなら安心です」
ブリレイは笑顔を見せる。
魔剣士「と、とにかく!今は王にどうやって近づくのか!どうやって国民を巻き込まないのか、そういうことだろ!」
ブリレイ「……魔剣士さん、もう一度お話しをよろしいですか?」
魔剣士「何だよ!」
ブリレイ「その闇魔法の使い手には勝利することが出来ること、国民に影響を与えずに王に近づけば殺しも問わず止められること、この二つは絶対ですか?」
魔剣士「当たり前だ!だから、そのためにこうして話し合いをしてんだろうが!」
ブリレイ「…なら、危険を伴いますが良い方法があります」
魔剣士「あァ!?」
ブリレイ「本当はあまりオススメできないのですが、闇魔法の使い手にも、王にも近づける方法が一つだけ、確実に一つだけあります」
魔剣士「ん…お……?」
自信があるのか、いつもより強気なように聞こえる。
猛竜騎士「バカな、そんな方法があると…?」
ブリレイ「えぇ、何度も言いますが危険ですのでオススメは出来ませんが……」
白姫「それって一体…?」
魔剣士「どんな方法なんだよ。言わないと分からねーだろ」
彼の"危険な考え"に食いつく三人。
ブリレイは首を横に振りながら「これは危険ですが」と再三に注意しながら、まさかのアイデアを口にした。
魔剣士「……はい!!?」
白姫「ま、魔剣士が……」
猛竜騎士「クロイツ騎士団の選考会に出場するだとッ!?」
ブリレイ「……はい」
まさかのまさか、有り得ないアイディアに、一同は驚きの声をあげた。
………
…
―――魔剣士たち、ガンザン村から2日後。
冒険者の集う村で休息を得た四人は、それからほどなくして"南方道中村"へと到着していた。
南方道中村はセントラル王国の南方に位置する最も付近にある村である。
冒険者の足ならば3時間足らずでセントラルへ到着することもあって、いよいよ魔剣士たちも本格的に計画を練り直す必要があった。
白姫「わぁー、久しぶりー……!」
魔剣士「うぉー!懐かしいなオイ!!」
二人にとっては冒険を始めて"最初"の村ということもあって、成長した自分たちがそこへ訪れるのは感動ものだった。
猛竜騎士「懐かしむのは後だ。先に宿をとって明日の準備もしたほうがいいだろう」
ブリレイ「えぇ、もうセントラルは目前ですからね」
白姫「分かりました」
魔剣士「へいへい」
四人は宿のある村の中央へと足を運ぶ。
すると、全員が村に漂う雰囲気の異変に気が付く。
魔剣士「……なんか、冒険者というか妙に殺気立った奴が多くないか」
ブリレイ「気のせいではないようですが……」
白姫「みんなピリピリしてる……?」
猛竜騎士「これは……」
明らかに異質な気を放つ者の存在が多く伺える。冒険者の村で見た面子もチラホラと確認することができ、異様な事態に四人は宿へと急いだ。
魔剣士(何なんだ……?)
そして、ようやく宿へと到着した四人は隠れるようにして受付へ向かう。するとそこには、懐かしい顔が、あの時と同じままで、そこに立っていた。
宿屋の主人「うぃーっす、いらっしゃい……」
初めての夜、一夜を明かした宿屋の親父が変わりなく、そこへ立っていた。
魔剣士と白姫は思わず声を出しそうになったが、また懐かしいと感じる反応を主人はしたものだから思わず笑ってしまう。
宿屋の主人「って、アンタら…。そこの丸眼鏡以外…、フードローブを深く被ってなんだぁ…?顔を見せやがれ、強盗か何かじゃねえだろうな!!」
魔剣士(おいおい……!)
あの時も、顔を隠して背負った白姫に対して同じような言葉をぶつけた。本当に何も変わっていなくて、安心してしまう。
宿屋の主人「どうなんだ、えぇっ!?オイッ!!」
猛竜騎士「いや、俺たちは……」
宿屋の主人「とにかく脱いでもらおうか!ただでさえ今は物騒だってのに…、そんなんじゃ部屋は貸せないからな!」
猛竜騎士「込み入った事情もあるんだが……」
宿屋の主人「こっちにとったらアンタらの存在が込み入った事情なんだよ!」
一方に引き下がらない主人に、魔剣士はクククと笑いながら一歩前に出た。
宿屋の主人「な、なンだ!?やるか!?」
魔剣士「……宿屋の親父サンよぉ」
宿屋の主人「なンだ……!」
魔剣士「俺たちゃ込み入った事情があるんだ。ちっとばかし、これでかくまってくれねーか……?」
宿屋の主人「は?何を言ってやがる!」
魔剣士は腰の袋から、セントラルの金貨を数枚をカウンターに放り投げた。
宿屋の主人「……ン?」
魔剣士「これで俺らのことを秘密にして、泊めてもらえりゃ嬉しいぜ?」
宿屋の主人「こ、こりゃ……」
魔剣士「そうだな、出来たら…アンタの部屋あたりに一泊。ってのはどうだ……なぁ!」
魔剣士は周りを気にしつつも、フードを取って主人にだけ顔を見せた。
宿屋の主人「お前……!」
魔剣士「久しぶりだな、宿屋のオッサン!」
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――10分後、主人の部屋。
主人「ひっさしぶりじゃねえか、魔剣士!おぉ!!?」
魔剣士「相変わらずだなぁ、宿屋のオッサンよぉー……」
主人「お前なぁ、あれからうちのVIPルームに宿泊するとか豪語しといて、結局こんなナリじゃねーか」
魔剣士「うっせーなぁ、俺だって好きでこんな立場にいるんじゃねーっつーの!」
主人「はっはっは、姫様も本当に久しぶりだ!前にあった時より綺麗に可愛くなったんじゃないか!?」
白姫「そ、そんなこと……」
たった一日の出会いとはいえ、その時間は二人にとって嬉しい出来事で、感謝を仕切れないものだった。
しかし、次の猛竜騎士の一言に魔剣士は更なる優しさを知る。
猛竜騎士「その節は、魔剣士と白姫が世話になったそうで……」
主人「あぁ?気にするこたぁねーよ、俺だってたっぷりと謝礼金を受け取ったんだからな!」
猛竜騎士「……謝礼とはいえ、あの金貨は…」
主人「酒飲み代に使っちまったぜ!だぁーはっはっは、気にする必要はない!」
猛竜騎士「別に支払わせていただきたい。本当に使えるお金を」
主人「バッカ、お前それは…!」
魔剣士「……何?」
本当に使えるお金だって?
魔剣士「オッサン、そりゃどういう意味だ」
猛竜騎士「……お前はこの人に感謝はしきれないのだと、覚えておけ」
主人「いやいや、気にすることはねぇよ」
猛竜騎士「いえ、そうもいきません。彼らの"親の立場"として、教えなければいけない」
魔剣士「ちょっ、オッサン……」
白姫「も、猛竜騎士さん……!」
ブリレイ「フフ……」
主人「良いってのに…なぁ」
猛竜騎士「いえ、しっかり教えますよ」
主人を遮り、魔剣士にそれを伝えた。
猛竜騎士「いいか魔剣士。お前の渡した金貨は、セントラルの宝物庫から盗んだ金貨だったな?」
魔剣士「俺が盗んだんじゃねーけど、まぁ……」
猛竜騎士「あれはセントラル金貨だが、番号が刻まれていてな。セントラルとて、それを把握していないわけがないだろう?」
魔剣士「……何?」
猛竜騎士「使えば足がつく。つまり、お前はこの主人にただただ世話になったってことなんだよ」
魔剣士「…は?いやいや、この宿のオッサンはガメつくて、もっと寄越せとだな……」
猛竜騎士「……なるほどな。それは少し考えれば分かることだ」
魔剣士「はい?」
猛竜騎士「恐らく、お前らのことを想ってだよ。……そうでしょう、ご主人」
主人「……おいおい」
言う気はなかったのだろうが、ここまで言われちゃ話す以外はない。
魔剣士「宿のオッサン…?」
主人「全く、気にしなくていいってのに」
魔剣士「何がだ?アンタ、ガメつくとったんじゃなかったのか?」
主人「……あぁ、俺ぁガメついだけさ」
魔剣士「やっぱりそうじゃねえか!?」
主人「……と、言いたいが」
魔剣士「あ?」
主人「そこの親御さんに言われちゃ仕方ねぇ。本当は、その足がつくってのが理由でこの金貨は使えないんだよ」
魔剣士「な、何…!?」
主人は立ち上がると、部屋にあったタンスの奥からいつか渡したセントラルの金貨を取り出して机に並べた。
魔剣士「お、おい……」
主人「俺から言うのはこっぱずかしいからな。全部分かってるようだし、そこの親御さんに聞いてくれ」
魔剣士「は…」
猛竜騎士「……ハハ。魔剣士、お前の金貨を多く取ったのはお前に対する優しさだよ」
魔剣士「何だと…?」
猛竜騎士「もう一度言うぞ。その金貨を使えば足がつく。つまり、分からないか?」
魔剣士「だからよ!足がつくってのは充分に分かって…………あっ!?」
猛竜騎士「気付いたか」
つまりは、そういうことだ。
白姫「私たちがそれを使って、捕まらないようにしたって…こと……?」
猛竜騎士「正解だ」
魔剣士「そ、そんなこと……」
最も、次の日には猛竜騎士と出会ったことで金貨を使う機会はなくなっていたのだが。
今だから分かる、主人の優しさが痛く感じた。
魔剣士「や、宿のオッサン……」
主人「恥ずかしいことだ。ククッ、気にしないでくれよな」
魔剣士「でも、アンタ……!」
主人「確かに金貨を持ってるだけで危険だったがよ、俺ぁ言ったはずだぜ?」
魔剣士「何を…!」
主人「俺は夢見てたってな。お前が主人公で、姫様がヒロインだ。あーんな出来事あったのに、俺が活躍しなかったら物語が成り立たねーだろってな!」
魔剣士「ば、ばっかやろ……」
主人「どうだ、俺は主人公組みになれそうか!?」
魔剣士「本当に…有難うだよ…バカヤロ……」
主人「ハッハッハッハッ、そりゃ何よりだ!それだけで俺ぁ充分さ!!猛竜騎士とやら、アンタも代金なんかいらねーぜ!」
猛竜騎士「ご主人……」
白姫「主人さん…!」
ブリレイ「何と気持ちのいい方なんでしょうか…。こちらまで嬉しくなってきますよ」
主人を囲むようにして、四人は彼の心意気に思わず温かな気持ちに笑みを浮かべた。
主人「ま、気にするなよ。それより、話を聞かせてくれねーか?仲間も増えてるみたいだし、どんな旅をしてきたんだかってことをよ」
魔剣士「……ん、アンタ店番は?」
主人「あれからバイトも増えてな、今はそいつに任せてる。最近は物騒だから夜に二人で番をしてるけどな」
魔剣士「そういや、さっきも物騒だって言ってたな。この村の雰囲気も、あの時とだいぶ変わった気がしたんだが…それが原因なのか?」
主人「あぁ…。最近はセントラルのほうで面倒くさい動きがあってなぁ……」
魔剣士「面倒くさい動き?」
主人「なんか、クロイツ騎士団とかいう荒くれ者の集団を作ってるらしいんだわ。名前の発表はつい最近あったとか冒険者が言ってたなぁ」
魔剣士「……クロイツ騎士団!?」
主人「それの選考が短い間隔で行われていて、南方港に来てるメンバーがこの村で休憩を取って、セントラルに向かう中継所になってるんだよなぁ…。そのせいで、治安も最悪だぜ…全く……」
魔剣士「宿のオッサン、ちょっとその話…詳しく聞かせてくれないか……?」
主人「……金貨1枚、だぜ」
魔剣士「クク、ユーモアを忘れないアンタのこと…好きだぜ全く……」
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――20分後。
主人「……というわけだ。この情報は中々高くつくぜ?」
主人の話した内容は、王が名前を変えていたこと、騎士団の名前がクロイツと名をつけてあること、また、噂によると明日に騎士団の選考会が行われるらしいことの三点だった。
白姫「王が、名前を変えて……」
魔剣士「あのクソ王、何がハイルだ…!何がクロイツ騎士団だ!?十字架の騎士団…マジで昔の政策のまんまじゃねえか!!」
猛竜騎士「……ブリレイ、君はこのことを」
ブリレイ「僕がこちらに来る直前のことのようなので、名を変えていること、クロイツ騎士団ということも…選考会も、詳しいことは知りませんでした……」
彼の言い方から、それが本当に知らないことなのだったと分かった猛竜騎士は、それ以上に追うことはしない。
主人「その選考が明日に控えているせいで、余計に治安が悪ぃんだよ。ったく、税金も厳しくなる一方だってのに……」
猛竜騎士「税金もですか?」
主人「あぁそうだ。アンタらにゃ愚痴をこぼしたくないが、少し前から税率を倍にされたんだよ。こっちとら、厳しいってありゃしない……」
猛竜騎士「税金の名目は?」
主人「さぁーな。ただ、取り立てには王城の兵士が直接来るもんだから、抵抗もできたもんじゃないんだこれが」
猛竜騎士「とすると、騎士団に払う賃金を国民から巻き上げているということか……」
主人「…な、何?」
猛竜騎士「ハンターや冒険者は、その辺の民よりよっぽど儲かる職です。そいつらを集めるとなると、並大抵な金では雇いきれない。つまり……」
主人「おいおい…ちょっと待てよ!それじゃあ…俺らの金は今、この村の治安を悪くしてる冒険者どもに支払ってるってことなのか!?」
猛竜騎士「えぇ、選考試験に選ばれた人のみでしょうけど、事実、その開催にも金がいるわけで…彼らのために支払う金というのなら、そういう意味でも……」
主人「……っざけるな、何考えているんだよ王は!治安が悪くなったせいで、畳む店だって出てきてるんだぞ!!」
猛竜騎士「因みにですが、騎士団の詳細は聞いてますか?」
主人「セントラルをより確固にするためだとか、条約のためだとか難しい話をしているが、払わなければ反逆罪だからな…聞くに訊けたもんじゃあない!」
猛竜騎士「なるほど…ですね……」
どうやら、主人にとってこの話は癪に障る話題らしい。
彼の心を抉るのは気持ち最悪だったが、中々に良い情報を得ることが出来た。
主人「……そういや、魔剣士よ」
魔剣士「なんだ?」
主人「お前さんの話を聞くつもりだったが、一体どんな旅をしてきたんだ?」
魔剣士「んー…、それなんだがなぁ……」
主人「なンだ?」
魔剣士「あまり言えない事なんだけどよ、全部が終わったら、アンタにゃ是非…俺の旅を聞いてほしいと思うから…。それまで待っててくれねーか…?」
主人「おいおい!俺に言えないことってか?」
魔剣士「まだ、言えねぇ。だけど、俺ぁスゲー強くなったんだ。本気で、守りたいものを守れるくらいに……」
拳をギュっと握りしめ、今までの旅を思い出す。
ようやく、ここまで辿り着くことが出来たのだと。
主人「……ふむ、なるほどな。込み入った事情があるなら、訊くこともないって話だ」
魔剣士「いいのか…」
主人「アンタらはお客様、だ。これ以上、詮索するマネをしたらクレームが出ちまうだろ?」
魔剣士「宿のオッサン……」
主人(ガストフ)「あのな、思ってたんだが…俺の名前はガストフだ。宿屋って意味でまんまかもしれねーが、笑うなよ!」
魔剣士「……はいはい、ガストフのオッサン!」
ガストフ「お前、それは宿のオッサンってことじゃねーか!一緒の意味だよ、一緒の!」
魔剣士「はっはっは、悪ぃ悪ぃ!」
ガストフ「……ったく」
ばつの悪そうな表情を見せたガストフは、「しゃあねえなあ」と漏らして立ち上がり、「ゆっくりしていってくれよ」と受付けのある扉に向かった。
魔剣士「あらら、もう行っちまうのか」
ガストフ「受付に主人である俺が待ってないでどうする。それに、込み入る話もあるんだろ?」
魔剣士「ガストフのオッサン……」
猛竜騎士「ありがとう、助かります」
ガストフ「あぁ気にしないでくれ。それより、晩飯はあとで運ばせるからゆっくりしてくんな!」
白姫「ありがとうございます、ガストフさん!」
ガストフ「ふはは、やっぱり姫様みたいな可愛い娘ちゃんにそう言われるのは悪い気がしないぜ」
鼻の下を伸ばし、白姫に手を振るガストフ。
魔剣士「おい、変態ジジィ」
ガストフ「な…何だと!?誰が変態ジジィだ!」
魔剣士「年下に鼻の下伸ばすんじゃねーよ!」
ガストフ「……口の減らない奴だなお前は」
魔剣士「へんっ」
ガストフ「ったく…!まっ、嫌いじゃないけどな。青春を楽しめよ、冒険者クン」
魔剣士「ふんっ!早く行っちまえ!」
ガストフは魔剣士にも手を振りながら、扉の向こう側へと消えていった。
魔剣士「……どっちが口の減らない奴だっつーの!」
猛竜騎士「ハハ、しかし助かった。あの主人のおかげで、今日は安眠を得られそうだな」
ブリレイ「そうですね…、部屋も広いですので隣の部屋には2つベッドも別にありますし、僕たちは隣で休ませていただきますか」
白姫「じゃあ私は魔剣士と一緒にここに寝ますねっ」
魔剣士「まぁそうなるわな」
猛竜騎士(……はーん)
今までなら「何でそうなる!?」と突っ込んでいたところだったが、妙に落ち着きが出たものだ。
魔剣士「んで、オッサンよ」
猛竜騎士「なんだ?」
魔剣士「明日にはいよいよセントラルだが、どうするよ」
猛竜騎士「あぁ……」
魔剣士「ぶっちゃけた話、俺の力なら大軍相手でも燃やし尽くせるし、強行突破っていうのも有りなんじゃねーか?」
猛竜騎士「……バカ言うな。お前は罪のない国民を巻き込んで、王都を火の海にするつもりか」
魔剣士「あ…、そうね……」
猛竜騎士「それにそう簡単に王に近づけるものか。こんな状況において、王の周りの警護は昔と違うと考えていいだろう」
魔剣士「じゃあどうすんだよ……」
猛竜騎士「ふむ……」
先ず、戦争をさせないためには王を止めなければならない。魔剣士は白姫に対して、状況が状況となるなら王を殺さねばならないことは伝えている。
もちろん、魔剣士にとって王の存在は家族を殺されたこともあって容赦をすることはない。
白姫「…」
白姫自身もそれは分かっているし、自分の言葉が父に届かないことも理解している。
今はただ、周りの決断に従い、成功した暁に訪れるであろう"指導者のいなくなった未来"に立つ自分を想像するばかりである。
魔剣士「……王を止める。だが近づけない。国民も巻き込めない。どうすればいいんだよ」
猛竜騎士「それを今、考えているわけだろう……」
魔剣士「分かってるけどよ……」
猛竜騎士「例えば腕の立つハンターが、お前や白姫の顔を見て分からないはずがない。既に王に忠実な相手もいたら、その情報が漏らされては困るだろう?」
魔剣士「……そりゃな」
猛竜騎士「幸いなことに、お前が闇魔法の使い手であることは浸透していないようだから、そこに突く隙があるだろうとは思うが……」
魔剣士「やっぱり強行突破しかねえってことか?」
猛竜騎士「それでは国民が巻き込まれると言ってるだろう…。お前はそんなに王都を戦場にしたいのか?」
魔剣士「そ、そんなことはねぇけどよ!暗躍して忍び込めば何とかなるんじゃねーかって…そう思っただけだっつーの…」
猛竜騎士「以前に一度、忍び込まれているのに。それなのに同じ過ちはせんだろう」
魔剣士「うぐっ…!」
八方ふさがりもいいところだ。
魔剣士は猛竜騎士に、
「ああ言えばこう言う!」
そんな罵倒を強く浴びせたかったが、正論であって唾を飲み込むしかない。
ブリレイ「……割り込むようですが、問題はそれだけではありません」
ここで、丸メガネを光らせてブリレイが口を開く。
魔剣士「まだ何かあんのか?」
ブリレイ「闇魔術師の存在です。誕生している可能性はほぼ確実、その対策も必要でしょう」
魔剣士「……同じ相手なら俺は負けねぇ。まだ生まれたてなら、相手じゃない」
ブリレイ「ふむ、失礼ながらその自信の根拠は?」
魔剣士「闇魔法にはレベルがあってだな……」
猛竜騎士「魔剣士!」
魔剣士「……っと、お、おう!まぁそれは良い!とにかく相手じゃないってことだ!」
裏切りの可能性が僅かでもある限り、秘密を暴露する必要はない。
ブリレイ「……そうですか、魔剣士さんがそういうのなら安心です」
ブリレイは笑顔を見せる。
魔剣士「と、とにかく!今は王にどうやって近づくのか!どうやって国民を巻き込まないのか、そういうことだろ!」
ブリレイ「……魔剣士さん、もう一度お話しをよろしいですか?」
魔剣士「何だよ!」
ブリレイ「その闇魔法の使い手には勝利することが出来ること、国民に影響を与えずに王に近づけば殺しも問わず止められること、この二つは絶対ですか?」
魔剣士「当たり前だ!だから、そのためにこうして話し合いをしてんだろうが!」
ブリレイ「…なら、危険を伴いますが良い方法があります」
魔剣士「あァ!?」
ブリレイ「本当はあまりオススメできないのですが、闇魔法の使い手にも、王にも近づける方法が一つだけ、確実に一つだけあります」
魔剣士「ん…お……?」
自信があるのか、いつもより強気なように聞こえる。
猛竜騎士「バカな、そんな方法があると…?」
ブリレイ「えぇ、何度も言いますが危険ですのでオススメは出来ませんが……」
白姫「それって一体…?」
魔剣士「どんな方法なんだよ。言わないと分からねーだろ」
彼の"危険な考え"に食いつく三人。
ブリレイは首を横に振りながら「これは危険ですが」と再三に注意しながら、まさかのアイデアを口にした。
魔剣士「……はい!!?」
白姫「ま、魔剣士が……」
猛竜騎士「クロイツ騎士団の選考会に出場するだとッ!?」
ブリレイ「……はい」
まさかのまさか、有り得ないアイディアに、一同は驚きの声をあげた。
………
…
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる