緋色の竜狩り

やまねん

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サルブ村救出戦

瘴気に覆われた村サルブ③

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瘴気に満ち溢れているサルブ村の中心地でルルは空に向け人差し指を高らかに立て詠唱を始める。

「燦めく炎と光と星の共演!魅せろ!空の宝石!トゥインクルスターマイン!!!」

ルルの指先から放たれた火の玉は勢いよく空に上がっていき大きな音と共に弾け瘴気で暗く淀む空を吹き飛ばすかの様に色鮮やかな光の大輪の花を咲かせた。

「綺麗…」

思わずルミナの口からも声が漏れる。
暗い空を明るく照らす光の花にルミナは心を奪われるようにその美しい光景に見惚れていた。

光の花を見つめ心が安堵したのもつかの間。
地面の下からなにか蠢くグチャグチャと嫌な音が聞こえてきた。

「ルル様!ルミナ!来ます!」

シオンはメイド服のスカートの下のホルスターガーターから2本のダガーナイフを取り出し臨戦態勢を取る。

不気味な呻き声と共に無数のアンデッドが地上へ這い出してきた。下級アンデッドのゾンビやスケルトンだけではなく中級アンデッドのグールやマミーもいる。

瘴気でパワーが上がっている影響かどれも目は血走り歯茎を剥き出しにして涎を垂らしながら一心不乱に3人に襲いかかってくる。

「なんて数なの…シオン!ルミナちゃんをお願い!」

「承知しました。ルル様!」

ルルは素早く魔法の詠唱に入る。

「洗礼されし光輝く剣よ!降り注ぎ悪しき者を払いたまえ!プリズマティックブレード!」

光の剣がアンデッドの脳天へ次々と降り注ぎ浄化させていく。

「アンデッドは火もよく効くはず!灼熱の火球よ!すべてを焼き尽くせ!フォーリング・ザ・サン!!」

巨大な火の玉をアンデッドの密集地帯に落とすと凄まじい轟音と火柱と共にアンデッド達を跡形もなく焼き尽くした。

「凄い…これがルル様の魔法…」

「ルミナ!!前!きます!」

ルミナが振り返ると、焼け残った一体のマミーが奇声を発しながら猛然と突進してきていた。

ルミナは素早く詠唱し光魔法、レイスティングを放ったがマミーに躱されその腐った爪がルミナの首元を狙い振り下ろされる。

「あっ!……!?」

だがその爪がルミナに届くことはなく、シオンのダガーナイフによって片腕を切り落とされた事により動きが止まった。その刹那、シオンはマミーの頭を素早く切り落とした。

「大丈夫ですか?ルミナ!気を抜いてはいけませんよ!」

「はい…ごめんなさい」

「気にしないで下さい。それより、目の前の敵を倒すことに集中しましょう!また来ます!」

怪力のアンデッド、グールがシオンとルミナ目掛けて突進してくる。その巨体からは想像もできないほどの速度だ。

「くっ、速い!」

シオンは瞬時に状況を判断し、「一撃で首を落とすのは無理」と冷静に結論づけた。代わりにルミナと連携して倒す作戦に出る。

「ルミナ!魔法で動きを鈍らせてことはできますか?」

「は、はい!」

ルミナは震える手で詠唱を始めた。

「光の縛鎖よ、彼の者を捕らえよ…ライトチェーン!」

淡い光の鎖が宙に浮かび上がり、猛烈な勢いで突進してくるグールの足首に絡みつく。一瞬だけ、その動きが鈍った。

シオンはその隙を見逃さず素早く魔法の詠唱に入る。

「今です!切り刻め!螺旋の旋風!スパイラルゲイル!!」

シオンの放った螺旋の旋風が唸りを上げてグールの右肩口を直撃。竜巻のごとき旋風は骨ごと肉を抉り取り、血と腐臭混じりの肉片が飛び散る。

「ギャアァッ!?」

痛みと衝撃でバランスを崩し膝をついたグールの巨体。その頭蓋目掛けてルミナが飛びかかり――震える両手で握り締めた銀のメイスを迷いなく振り下ろした。

「はぁあ!!!」

ドン!と鈍く重い衝撃音。硬い骨が砕ける感触が少女の掌を通じて伝わる。グールの眼窩から飛び出た黄色い眼球が地面に転がり、屍体は崩れ落ちた。

「やりました!ルミナ!」

「はぁ……はぁ……!」

青ざめた顔でメイスを支えながらも、ルミナは小さくうなずいた。震える足が必死に自立しようとしている。

「いつの間にか囲まれてる…」

グールを倒し安堵したシオンとルミナだがいつの間にかゾンビやスケルトン、マミーに囲まれていた。シオンはグールの様なパワー系がいないのを確認し2本のダガーナイフで踊る様にアンデッドの首を落としていく

シオンは鋭い視線で周囲を一瞥すると、両手のダガーナイフを構えた。まるで舞踏会でワルツを踊るかのように滑らかな動作で最初の一歩を踏み出した。

「失礼しますね」と小さな声を漏らしつつ、まずは正面のゾンビへ身を翻す。左腕で弧を描くようにナイフを振るうと、ゾンビの首筋から黒ずんだ血が噴き上がる。間髪入れず回転の勢いを利用して背後のスケルトンの頭蓋骨を右手のナイフで貫く。

「ギシャアッ!?」スケルトンが最後の叫びをあげて粉々に砕け散った。

その動きの終点を待たずしてシオンはさらに右へ跳躍。左右に分かれた三体のマミーに向かい、「星屑のような」と評される軽やかなステップで接近する。まず左のマミーの喉元を左手のナイフで切り裂き、その返す刃で中央のマミーの胸元を薙ぐ。右のマミーが振り下ろす腕を紙一重で避けながら、宙で一回転して背後に降り立ち──後ろから首筋へ素早い一閃を加えた。

「三体同時相手でも余裕ですね」冷静な声と共に血糊を拭うシオンの姿は、優雅でありながら鋭利な美しさを持っていた。

しかし包囲網は決して狭まらない。四方から新たなアンデッドが沸き起こり続けている。ゾンビの腐敗臭が鼻をつき、スケルトンの関節が擦れる乾いた音が耳障りに響く。そして何よりも厄介なのは──

「マミーたち……明らかに統率されて動いていますね」シオンが眉をひそめて呟く。「個々は下級レベルだけど、集団行動で戦略的に私たちを押し込めようとしている」

実際、マミーたちは単純に襲いかかるだけでなく、交互に前進・退避することで圧力をかけ続けていた。時折ゾンビを盾のように突き出す戦法まで用いている。確かに下級アンデッドとは思えない知性を感じさせる動きだった。


「なるほど…」

シオンは唇を引き結び、ナイフを構え直す。

「これでは私の動きも制限されますね。ルミナ!安全を確保するため一度距離を取りましょう!」

「わ、わかりました!」

ルミナは慌てて一歩下がろうとするが、マミーの一体が即座に足を絡ませてきた。強烈な腐臭と生温かい呼気が頬を撫でる。

「きゃっ!」恐怖で声が裏返る。

その刹那、シオンが飛ぶような速さで割って入った。右腕一本でマミーの顎を跳ね上げ、同時に左のナイフで心臓部の布を切り裂く。「ボォォォッ!!」マミーは喉を掻きむしるように悶絶し、白い霧のような瘴気を吐き出した。

「ルミナ!いまです!」シオンの鋭い指示に応え、ルミナは床を蹴って後方へ跳んだ。同時に銀のメイスを横薙ぎに振るい、光魔法のエネルギーを乗せて前方のゾンビ群へ叩き込む。炸裂音とともに眩しい閃光が迸り、五体ほどが一気に塵と化す。

「まだ足りない……!」ルミナは唇を噛んだ。焦りが胸の中で渦巻く。シオンが奮闘していても、押し寄せる波は止まらない。次第に二人の間隔が開き始めていた。

「シオンさん!」不安げな叫びを上げるルミナの背後で、突然鋭い炎が宙を切った。ルルの放った魔法が地面に輝き、包囲網の一角を灼熱の火炎が薙ぎ払う。

「これだけの数がいても我々にはルル様がついています!自分の身をしっかり守っていれば大丈夫です!」シオンの声が凛と響く。炎が作り出した僅かな空白地帯へルミナを誘導しながら、再びナイフを煌めかせた。

まるで流れ星のように動くその姿に、包囲するアンデッドたちが一瞬怯んだように見えた──

その隙を逃さずシオンは加速した。まさに風のような素早さで動き回り、触れるもの全ての首を刈り取っていく。それはもはや殺戮というより一種の芸術に近かった。飛び散る血飛沫さえも計算されているかのように彼女のメイド服を汚すことなく流れていく。
一つまた一つと倒れる屍の山が積み上がっていく中で、彼女の表情には一片の迷いも浮かんでいなかった。

「ふぅ……こんなところでしょうか」

最後のマミーが灰となり崩れ落ちると同時に彼女は静かに呼吸を整えた。

「ルミナ!怪我はありませんか?」

振り返った瞳には戦士としての鋭さと同時に深い慈愛が宿っていた。

「は……はい!なんとか……」

ルミナは乱れた息遣いと共に応える。

「これであらかたこちらのアンデッドは片付いたはずですが…」


アンデッドの包囲を突破したシオンとルミナはルルと合流する。そこにはシオンとルミナの数倍の数のアンデッドを倒したルルが待っていた

包囲網を突破したシオンとルミナは荒い息を吐きながら辺りを見渡した。周囲に蠢いていたアンデッドたちは全て地に伏しており、濃厚な瘴気の中にも束の間の静寂が訪れていた。

「ルル様は……」

言葉を交わす前に二人の視線は一点に釘付けになる。

そこには――文字通りの屍山血河が築かれていた。

数百、いや千を超えるアンデッドの遺骸が散乱し、地面はどす黒い血潮で濡れそぼっている。しかもそれらの多くは原形を留めぬほど破壊されていた。雷に貫かれ半ば溶けたゾンビ、土槍に串刺しにされたスケルトン。炎で焼き尽くされたマミーたち。破壊の痕跡は多種多様で、それがすべて一人の魔法使いによる仕業だと悟ったとき、ルミナは息を飲んだ。

「お疲れ様、二人とも」

硝煙と血臭に包まれながらも涼やかな声音。振り返ればそこには平然と立つルルの姿があった。ローブには血しぶきひとつなく、白磁のような肌には傷ひとつついていない。ただ額にうっすら汗が滲んでいるのが唯一の疲労の兆しだった。

「ふぅ…これで大方、アンデッドは片付いたかな…作戦通り神殿を堕天させた魔族が出てきてくれるといいんだけど…」

そう言いながら前髪を整え、ルルは微笑む。その仕草は普段と変わらず穏やかだが、その周囲に広がる凄惨な光景とのギャップが彼女の異常な実力を物語っていた。

「ルル様…これほどの数を…」

ルミナが呆然と呟く。彼女自身も数十体を葬ってきたが、規模が桁違いだった。ルルは肩をすくめる。

「威力範囲の大きい魔法を使えばまとめて処理できるからね。それよりシオン。ルミナのこと助けてくれてありがとう。ルミナちゃんも無事でよかった」

「いえ、これくらい雑作もありません。」

「は、はい……!ありがとうございます」

ルミナは感謝と尊敬の入り混じった声で答えた。その瞬間、遠くから怨嗟に満ちた邪悪な気配を感じ取る。三人は同時に振り向いた。

「どうやらかかったようですね…」

「中心街の方だね…行ってみようか」

3人は中心街の方へ駆け出していくのであった。
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