3 / 99
序章《エリックside》
序章《エリックside》2
しおりを挟む「《―…っ!!》」
「《―…エリック?》」
タヒチでの撮影時、私は現地の猛毒の虫に噛まれて倒れてしまった。
「《エリック!医療班、早く!》」
「《私は大丈夫です。…雅彦様。撮影を―…》」
「とりあえず横になれる場所まで運ぼう。どこかあるかな?》」
「《はい!こちらに》」
いけません、マイペースなあなたがこんなことに時間を割いてはいけないのです。
スケジュールが詰まっているのに。
私が倒れるなどと―…
目を開けると、暖色のライトの傍で座って本を読んでいる雅彦様が見えた。
「《雅彦様…?》」
「《やぁエリック。目が覚めたかい?まだ微熱かな?解毒剤が早く投与できてよかった…》」
「《―…撮影は》」
「《撮影は終わったよ》」
日付を確認すると、タヒチに着いて2日しか経過していなかった。
あり得ない、終わったなどと。
「《終わったって…日付がまだ…あと5日間あるのに》」
「《あぁ体を起こさないでエリック。君が体調悪そうだったから、休憩を無しにして本気を出して2日で撮影を終わらせたんだよ》」
「《あり得ません…集中力の無い雅彦様が…すぐ休憩する雅彦様が…すぐに逃げ出す雅彦様が》」
「《おいおい、酷いなぁエリック。あー、久しぶりだこんなに本気を出したのは。もっとのびのび撮影したかったなぁ》」
撮影後に渡されたサンプルの写真をドヤ顔で私に見せつけ、「本当だろう?」と言わんばかりの表情をしてくる主様。
まさか、本当に終わったのか?
信じがたい―…
「《帰国まであと5日。それまでに体調を治せるかなエリック?》」
「《もう大丈夫です》」
「《体調管理も執事の仕事だよ。君は執事失格だ》」
主に体調を心配されるなど、本当に私は執事失格だ。
「《ご迷惑をおかけして申し訳ございません。雅彦様、もしかしたら菌が移るかもしれません。部屋を出てください》」
「あぁ、いいねぇ。俺が倒れたらモデルの仕事を休めるかな?移して欲しいなぁ」
―…日本語だ
こうして雅彦様から日本語と英語を日々繰り返して会話が飛んでくることにも慣れていた。
合間に日本語の勉強をしているが、意味だけはなんとなく分かってきていた。
「《ふざけないでください》」
「日本語、分かるようになってきた?」
「《話せませんが、意味は少しずつ》」
「《さすがは俺の執事だ。あと5日間はゆっくり休みなさい。主の命令だよ。そうじゃなきゃ俺が早く撮影を終わらせた意味がない》」
そう言って雅彦様は部屋を出て、ビーチではしゃいでいた。
この人には敵わない。
管理されているのは私のほうだ。
「エリックー!ウォーターガンで勝負だ!」
「《やりませんよ。やめてください。濡れます》」
「君の父は全力でやってくれたぞ?俺に負けるのが怖いのか?そっかー、怖いかー」
「《怖くなどありません!》」
執事と主の一線を引いても、その線を越えてやってきてしまう。
本当の兄弟のように私と接する雅彦様がいた。
明るく、ユーモアがあって
優しく、他人想いで
強く、誰からも愛される
なぜあなたなのか。
神はなぜあなたから百合亜様という一番大切なものを奪ったのか。
復讐のためだけに生きる人生になんてして欲しくない。
幸せになってほしい。必ず。
だから雅彦様を一生守る。
そう、誓った。
1
あなたにおすすめの小説
人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい
白妙スイ@1/9新刊発売
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。
ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。
秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。
戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。
●八架 深都(はちか みと)
20歳、大学2年生
好奇心旺盛な性格
●秋木 晴士(あきぎ せいじ)
26歳、小説家
重度の不眠症らしいが……?
※性的描写が含まれます
完結いたしました!
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる