76 / 99
囚愛Ⅲ《テリーSS》《アルベルトside》
囚愛Ⅲ《アルベルトside》1
しおりを挟む「“こいつの顔、ゴーストみたいだ”」
「“気持ち悪い”」
「“こんなやつが執事になれないよ”」
執事学校に入学以来、そう言われてきた。
ずっと、この顔が嫌いで。
前髪で目を隠して過ごして。
こんな僕は、執事になんてなれないと自分でも思ってた。
「“そんなことを言うやつこそ、執事にはなれないんじゃないか?”」
「“エ、エリック―…”」
窓際で参考書を読んでいた10歳の少年。
SSクラスに飛び級してきた、エリック・ブラウンだった。
ブラウン家は執事一家としても有名で、その一族の中でもエリックは特に優秀で、みんなの憧れで誰も口答えしなかった。
「“アルベルト・クラウゼ、君の顔は火事で母上を守ったからなんだろう?”」
「“どうして知ってるの?”」
「“学長から聞いたんだ。その傷がどんな理由でさえ、君を傷つけていい理由にはならないけどな”」
優しく僕の髪の毛をかきあげて、汚い火傷の後を残した僕の顔を綺麗な目で覗き込むエリック。
「“顔を見せて、アルベルト。あぁ…やっぱり、君は強くて綺麗な顔をしているよ。何も隠すことはない。英雄の証じゃないか”」
こんなの、
「“君は優秀な執事になる。火の中に飛び込む勇気があるんだから。ここにいる誰よりも勇敢だ”」
好きになるなというほうが無理だ。
そのときからずっと、エリックが好きだった。
執事学校時代、エリックに恋人が切れることはなくて。
付き合っては別れてを繰り返していた。
「“どうして長く付き合わないんだい?”」
「“さぁ。make loveがないとダメなんだろうな。友達は楽でいいな。アル。お前とは絶対に恋人になりたくない。ずっとこのまま親友でいよう”」
「“―…うん”」
執事学校を卒業して落ち着いたら、エリックに告白しようと決めていたのに。
あの三科雅彦の執事に任命されて、休暇さえとれなかったエリックに告白なんて出来るはずもなく。
そして気付いた時にはどこかへ行ってしまった。
どの国にいるのかも分からない。
―…僕の恋は終わったんだ
エリックが執事学校を卒業して、22年が経った。
僕はアラブの富豪の執事を20年していたが、主が亡くなったのをキッカケに執事学校の講師として働き始めた。
すると、L.A.校の学長から呼び出しが入った。
「《アルベルト。君は確かエリック・ブラウンと同期だったね?》」
「《はい…エリックがどうかしましたか?》」
「《エリック・ブラウンが4月からこの執事学校で働くことになった。入学希望者が増えるだろう》」
これはもう、運命じゃないか。
エリックを好きになって30年が経とうとして、奇跡的な再会だなんて。
「“4月からよろしくね”」
「“こちらこそ”」
絶対にエリックを僕のものにしたい。
「“エリックってネックレス身に付けるんだね”」
「“…あぁ”」
特別な誰かから貰ったのだろうか?
恋人はいないと言っていた。
エリックに再会して3年、僕はエリックに自分の気持ちを伝えることにした。
「“―…エリック…僕じゃダメかな?君ともっと一緒にいたい。初めて会ったときからずっと好きだった…結婚して欲しい”」
「“冗談だろう?…お前のことは友人であり同僚としか思っていない”」
「“君が振り向いてくれるまでずっと待ってる。執事学校のときから何年も君を忘れられずにいた。もし奇跡が起きて再会出来た時はプロポーズしようと決めていたんだ”」
エリックは驚いていたが、言えた。
何年も何年も言えなかったことが言えた。
あとは時間をかけてエリックの気持ちを僕に向けるだけだ。
それなのに、僕は…
「“帰る!軽蔑した!もう私に二度と話しかけるな”」
酔いつぶれてエリックにあんなことを!
あああああ…記憶がある。
耐えられない。
エリックに嫌われるなんて耐えられない。
僕は二日酔いで頭がガンガンする中、エリックの家に向かった。
インターフォンを何度も鳴らし、許しを請う。
「“エリック!昨日はごめん…あんなことするつもりじゃなかったんだ!本当に酔った僕を呪いたい…”」
僕は泣いていた。
だってエリックに絶交されたらもう耐えられない。
生きている意味さえなくなる。
「“君に嫌われたくない。君に嫌われたら僕はもう生きていけない。お願いだから謝らせて。君の気が済むまで謝り続けるから”」
ようやくドアを開けて貰えた…と、思ったら開けてくれたのは背の高いガタイのいい男。
「“―…アルベルト?”」
「“え?”」
「“テリーだよ。テリー・ドイル”」
「“え!テリー!?”」
まさかの執事学校の同級生がいた。
なんでテリーが?
エリックと付き合ってたの?
いやでもテリーは女しか興味ないし。
ソフィア・フローレスの執事じゃなかったっけ?
「“ソフィア様のご子息が出場するダンス大会がこの近くで開催されるから、今日から1ヶ月だけ世話になるんだ”」
「“そうなんだ”」
懐かしいなぁテリー。
執事学校時代はよく、テリー、エリック、僕で一緒にいたんだよなぁ。
―…エリック?
「“エリックに謝らなきゃ!!!”」
僕はテリーとの久しぶりの再会よりも、エリックに謝罪するためにエリックの元へ向かった。
エリックは何とか許してくれた。
そしてそこで僕は雅に出会った。
0
あなたにおすすめの小説
人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい
白妙スイ@1/9新刊発売
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。
ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。
秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。
戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。
●八架 深都(はちか みと)
20歳、大学2年生
好奇心旺盛な性格
●秋木 晴士(あきぎ せいじ)
26歳、小説家
重度の不眠症らしいが……?
※性的描写が含まれます
完結いたしました!
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる