囚愛-shuai-

槊灼大地

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読み切り番外編

Blond Hair《エリックside》

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2月のとある日のこと。




「《おはようございます雅彦様。今朝は珍しく早起き…》」
「《エリックーーー!!》」



雅彦様の部屋を開けてもいなかったのでリビングへ向かうと、ドアを開けた瞬間慌てた彼が私の元へ駆け寄ってきた。



そして部屋を出て私の額を手で触り、慌てる。



「《エリック!熱があるじゃないか!》」


「《ありません》」


「《大変だ!休まないと!》」



そう言って無理やり私の部屋へと連れて行かれ、ベッドに寝かされた。



体温計を腕に差して熱を計る。



「《あぁ、やっぱり…》」


「《36.1℃ですね。平熱です》」


「《あぁ、寝てなさい!絶対に!》」


「《平熱です》」



起き上がろうとする私を抱き寄せて、耳元で囁く主様。




「《2時間…いや、1時間だけ寝てなさい。さもないと、俺はこのまま君を抱くよ?》」




普段ならば全力で却下をするが、耳元での圧力に負けてしまった。



「《―…1時間だけですよ。家から出ないでくださいね》」



私がしぶしぶそう言うと、雅彦様は笑顔で部屋を出ていった。



彼の執事になってもうすぐ1年。
 


自由な雅彦様にはこの1年でたくさん振り回されてきた。



いったい何を企んでいるのか。







―1時間後





そろそろいいかとリビングへ向かう。




「《雅彦様―…》」




すると、ドアを開けると同時にクラッカー音が鳴り響いた。




周りを見渡すと綺麗な飾り付け。
テーブルに置かれていた豪華な料理。
特大のケーキ。





「《17歳の誕生日おめでとうエリック!》」


「《―…》」




あぁそうか、今日は私の誕生日だ。




「《なぜ知っているのですか?》」


「《君が教えてくれないから、アレンに聞いたんだよ。なかなか返事が来なくてやっと一昨日返事がきて、そしたら今日だっていうから》」


「《父からですか…》」 



最近母の体調が思わしくないため、父も返事が出来なかったんだろう。



確かに雅彦様には何度か誕生日を聞かれたような気がする。



しかも撮影時間や搭乗時間が迫る忙しかった時に。



答えたかは覚えていなかった。




「《本当は高級ディナーを予約したかったのにスケジュール的に間に合わなくて…》」



通販サイトから届いた段ボールが散らばり、飾り付けもハウスキーパーと共にしてくださったことを即座に理解した。




「《これ、この前インドで買ったヘアタイだよ。君は綺麗なブロンドの髪をしているから似合うと思って。絶対に切れないんだそうだ。俺たちの縁みたいにね》」



そう言って、綺麗な刺繍のヘアタイを私に差し出す。



「《ありがとうございます》」


「《あ、料理が届いたようだ。主役は座ってて!今日は俺が君の執事だ》」




初めて主と過ごした誕生日。


初めて主から戴いたプレゼント。


忘れることのない誕生日。




私はその日からこのブロンドの髪を伸ばし始めた。





















「―…ック、エリック」





そう呼ばれ夢から目を覚まし瞳を開けると、目の前に映ったのは、心配そうな顔で私を見ている愛しい旦那様だった。




「雅…」



「エリック、熱下がった?スープなら飲めるかな?」



そうだ、昨夜珍しく39℃熱を出して寝込んでいたんだ。



スープをテーブルに起き、寝ている私の脇の下に体温計を差し熱を確認する。



「37.8℃…もう少し寝たほうがいいね。って何笑ってるの?」


「いや。本当に私は熱があるのかと思って」



そう私が笑いながら問いかけると、彼は体温計を私に見せつけた。



本当に熱があるようだ。




「あるよ。ほら。何か笑ってたけど、いい夢でも見てた?」



そう問われ、ベッドに腰をかけて私の髪を優しく撫でる愛しい旦那様に昔話をした。




「昔、雅彦様が私に熱があるとバレる嘘をついて…」






執事になって初めての誕生日のこと。





「ヘアタイをくれて、髪を伸ばすことにしたんです―…でも…切れないと言っていたのに切れたんです。1人でスイスに行ったあの日」




あの日、母の葬儀で自分の髪を結おうとした瞬間にヘアタイが切れた。




その数日後に雅彦様が射殺されたと国際電話が入ったんだ。




「私が共についていけば、ヘアタイは切れていなかったのかもしれない…」




だからあのとき、自分の髪を切ろうと思っていた。




雅彦様が亡くなって居住が落ち着いたら。
失声症になった雅の声が出るようになったら。




そしたら雅彦様が綺麗だと言ってくださったこの長いブロンドの髪を切ろうと決めていた。





「でも雅が声を出せたとき、《綺麗なブロンドの髪だね》と雅彦様と同じ言葉を言ってくれたから…だから切らずに伸ばしていました。結局切ってしまったけど」



雅は掛け布団を上げて、私の隣へ潜り込む。



そして私の髪を撫でながら言う。




「ヘアタイなんて、切れちゃうよ。ダイヤモンドみたいに硬くないし。でも俺たちの指輪は切れないからさ、安心して」



左手に光るアイオライトの結婚指輪を私の目の前に差し出す。



その笑顔の彼を見て私もつられて笑顔になった。



「そうですね。雅…もう少し寝たいので、私が眠るまで抱きしめてくれますか?」



「はい。喜んで、奥様」



そして私は彼の心臓の音を子守り歌にして、眠りについた。










-数日後-









「エリックただいま」


「おかえりなさい雅…また買ってきたんですか?」


「うん」


あれから雅は、遠征で他の国へ行く度にヘアタイを買ってくるようになった。



これならいくら切れても大丈夫だよと。



「髪の毛、短いのも楽だと思っていたから切ろうか迷っていたんですが…」


「ヘアタイが全部切れたら短くしていいよ」


「どうせまた買ってくるんでしょう?切らせる気なんてないくせに」


「バレた?この綺麗なブロンドの長髪は俺だけのもの」


「髪の毛以外も全て雅のものですよ」



「Wow!愛が止まらない」





愛が止まらないのは私のほうだと言い返す前に、久しぶりに帰省した旦那様のペースで朝まで愛を確かめ合った。




―…さて、明日はどのヘアタイで髪を結おうか




【Blond Hair END】
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