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08 仮初婚?
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公爵様は眉間に深い皺を寄せながら私に尋ねてきた。
「そもそもシスター・メアリーから今回の依頼のことをどこまで聞いている?」
「ええとそうですね。公爵位を継いだものの婚約者がおらず、恋人さえもいないという状態で困っていて仮初の花嫁を求めているとお聞きしています」
正直に答えてみた。こういうことははっきり言っておいた方が良いと思ったから。
私もいちいち恥ずかしがる小娘でもないし。
サンドストーン公爵様は花嫁を探しているのは間違いないみたい。
あの後少しシスター・メアリーから聞いたことはどうやら公爵様は最初の婚約者に婚約を解消されてから女運がないとか呪われているとまで言われていた。今でも公爵様には何か欠陥があるのではとまで噂されている。
次に婚約者候補になった方とも上手くいかず、早々に婚約解消されたことから社交界では醜聞となり、次の婚約者候補になる令嬢が尻込みして、集まらなくなったらしい。
流石にあからさまに公爵夫人という地位や財産目当てな申し出はお断りしたそうだが、そうすると公爵家という高い身分にありながら、釣り合う令嬢は既に婚約者がいる状態になってしまった。
仕方なくお相手の条件を下げたのだけど裕福な家や騎士階級などの準貴族という階級では身分が釣り合わないとされ王家の許可が下りなかったようだ。それが噂をますます助長させていた。
それでどうしようもなくなった公爵様は母方の親戚であるシスター・メアリーに誰か貴族令嬢を紹介して欲しいと相談をしていたようだった。
丁度そこへ社交界の噂に疎く家から厄介者のように追い出されることになった私が相談に行って今回の話が舞い込んだのだ。
私の答えに公爵様は何故か困惑の色を深めていた。
「仮初? ……なるほど。ならば私のことについてはどの程度知っている?」
「全く存じません」
私が自信を持って言い切ると公爵様はピクリと眉を動かした。
器用よねと思いながら、私は社交界の噂は知らないし、公爵のそういったことも聞いたことはなかった。
嘘を言う訳にはいかないし。女運がなくてまるで呪われているみたいだとか本人には流石に言えないわよ。
「君はそれでも花嫁になる申し出を受けたというのか?」
公爵様の眼光が一層鋭く突き刺さるように感じた。
私は躊躇しつつ答えた。
「その、……実は私の家の経済状態がよろしくなかったので貴族の子弟が通うはずの貴族の学校に通えておりません。伯爵令嬢でありながら、お恥ずかしい話なのですが、その上、社交界デビューもしていません。だから、正直、公爵様のお名前も今回初めて知ったくらいです。何せ私は母を亡くしてから伯爵家のやり繰りの手伝いをしていてそれどころでなく、気がついたら適齢期をとうに過ぎていたくらいなのです。社交界にも疎いので公爵様の方がお困りになるかと思われます」
私の方にもそういった瑕疵がある。公爵夫人としてやっていけるマナーや教養が圧倒的に足りない。
公爵様がふうとため息をつかれた。
その様子から、やっぱりこの話を止めるとか言われてもおかしくないわよね。
「なるほどね。では何故あなたはこの話に乗ったのだ?」
「実は近々後継ぎの弟が成人したので結婚する予定になりました。それで、その、できるだけ早く私に家を出て行って欲しいと言われたのです。シスターからのお話では最初直ぐにでも住み込みのお仕事とお聞きしたので私にとっても魅力的なお話でした」
「ふむ」
公爵様はそう呟くと黙り込んでしまったので私は彼をじっと観察した。
騎士をされていたのも納得のできる美丈夫と表現しても良い感じのイケメン様よね。
勿体ないこと。モテそうなのだけど騎士階級なのに公爵家となるとお相手としては難しかったのかもしれない。
一体、最初の婚約者はどれだけ高望みをしていたのかしらね。
私なら……。
ふと公爵様の隣にいる自分を思い描いてしまった。
ありえないことだけど。そうね。壁に頭を打ち付けるならお止めしましょうかしら。ふふ。
眼前の公爵様は私の漏れた笑いを不思議そうにしていらした。
そうね。騎士とはいえ公爵家の三男だったのにどうして跡継ぎになったのかしら。
そんなことも考えつつ、でも、どうにかしてここで仮初の婚約者でも良いので採用していただきたいなと思う。
そして、婚約を解消した後はどこかでひっそりと暮らせるように用意して、ずうずうしいけれど生活が軌道に乗るまで援助していただくことはできないかしら。
お父様やサイモンは当てにならないもの。私はそんなことまで考えていた。
「そもそもシスター・メアリーから今回の依頼のことをどこまで聞いている?」
「ええとそうですね。公爵位を継いだものの婚約者がおらず、恋人さえもいないという状態で困っていて仮初の花嫁を求めているとお聞きしています」
正直に答えてみた。こういうことははっきり言っておいた方が良いと思ったから。
私もいちいち恥ずかしがる小娘でもないし。
サンドストーン公爵様は花嫁を探しているのは間違いないみたい。
あの後少しシスター・メアリーから聞いたことはどうやら公爵様は最初の婚約者に婚約を解消されてから女運がないとか呪われているとまで言われていた。今でも公爵様には何か欠陥があるのではとまで噂されている。
次に婚約者候補になった方とも上手くいかず、早々に婚約解消されたことから社交界では醜聞となり、次の婚約者候補になる令嬢が尻込みして、集まらなくなったらしい。
流石にあからさまに公爵夫人という地位や財産目当てな申し出はお断りしたそうだが、そうすると公爵家という高い身分にありながら、釣り合う令嬢は既に婚約者がいる状態になってしまった。
仕方なくお相手の条件を下げたのだけど裕福な家や騎士階級などの準貴族という階級では身分が釣り合わないとされ王家の許可が下りなかったようだ。それが噂をますます助長させていた。
それでどうしようもなくなった公爵様は母方の親戚であるシスター・メアリーに誰か貴族令嬢を紹介して欲しいと相談をしていたようだった。
丁度そこへ社交界の噂に疎く家から厄介者のように追い出されることになった私が相談に行って今回の話が舞い込んだのだ。
私の答えに公爵様は何故か困惑の色を深めていた。
「仮初? ……なるほど。ならば私のことについてはどの程度知っている?」
「全く存じません」
私が自信を持って言い切ると公爵様はピクリと眉を動かした。
器用よねと思いながら、私は社交界の噂は知らないし、公爵のそういったことも聞いたことはなかった。
嘘を言う訳にはいかないし。女運がなくてまるで呪われているみたいだとか本人には流石に言えないわよ。
「君はそれでも花嫁になる申し出を受けたというのか?」
公爵様の眼光が一層鋭く突き刺さるように感じた。
私は躊躇しつつ答えた。
「その、……実は私の家の経済状態がよろしくなかったので貴族の子弟が通うはずの貴族の学校に通えておりません。伯爵令嬢でありながら、お恥ずかしい話なのですが、その上、社交界デビューもしていません。だから、正直、公爵様のお名前も今回初めて知ったくらいです。何せ私は母を亡くしてから伯爵家のやり繰りの手伝いをしていてそれどころでなく、気がついたら適齢期をとうに過ぎていたくらいなのです。社交界にも疎いので公爵様の方がお困りになるかと思われます」
私の方にもそういった瑕疵がある。公爵夫人としてやっていけるマナーや教養が圧倒的に足りない。
公爵様がふうとため息をつかれた。
その様子から、やっぱりこの話を止めるとか言われてもおかしくないわよね。
「なるほどね。では何故あなたはこの話に乗ったのだ?」
「実は近々後継ぎの弟が成人したので結婚する予定になりました。それで、その、できるだけ早く私に家を出て行って欲しいと言われたのです。シスターからのお話では最初直ぐにでも住み込みのお仕事とお聞きしたので私にとっても魅力的なお話でした」
「ふむ」
公爵様はそう呟くと黙り込んでしまったので私は彼をじっと観察した。
騎士をされていたのも納得のできる美丈夫と表現しても良い感じのイケメン様よね。
勿体ないこと。モテそうなのだけど騎士階級なのに公爵家となるとお相手としては難しかったのかもしれない。
一体、最初の婚約者はどれだけ高望みをしていたのかしらね。
私なら……。
ふと公爵様の隣にいる自分を思い描いてしまった。
ありえないことだけど。そうね。壁に頭を打ち付けるならお止めしましょうかしら。ふふ。
眼前の公爵様は私の漏れた笑いを不思議そうにしていらした。
そうね。騎士とはいえ公爵家の三男だったのにどうして跡継ぎになったのかしら。
そんなことも考えつつ、でも、どうにかしてここで仮初の婚約者でも良いので採用していただきたいなと思う。
そして、婚約を解消した後はどこかでひっそりと暮らせるように用意して、ずうずうしいけれど生活が軌道に乗るまで援助していただくことはできないかしら。
お父様やサイモンは当てにならないもの。私はそんなことまで考えていた。
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