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29 あなたの元へと(前半テオ視点・後半ミリア)
僕はただ運命を受け入れていた。それは諦めたのではない。今、ミリアと居られるそれだけを感じていたからだ。もう、それだけで十分だった。
するとモンスター達が一定の距離を開けて僕らを中心に円を描くように取り囲んだ。
「……何だ?」
するとモンスター達は僕らに次々と首を垂れて跪き始めた。こちらを襲ってくる気配はない。
そうしてモンスター達が僕らに向けて頭を垂れたままでいると天空から眩い光が降りてきた。とてつもなく眩しい光。僕らは気がつけば光の洪水のような柱に包まれていた。
すると腕の中のミリアが重みを増したことを感じて慌ててミリアの顔を確認する。
ミリアの瞼が震えるとそっと瞳が開いた。
あの綺麗なスカイブルーの瞳だった。
それは女神様へと続く空の色と同じだと僕は本能的に理解した。
僕の知っているいつものミリアの瞳だった。それが見ることができただけで僕はもう十分だ――。
「……テオ。大丈夫?」
柔らかいミリアの心配そうな声が聞こえてきた。夢じゃない。これは夢ではないんだ。
気がつけば、ボタボタとミリアの顔に僕の涙が流れ落ちていた。
「……本当に、大丈夫なんかじゃないよ。全然大丈夫なんかじゃなかったよ。ミリア。君がいないだけで僕は――、ミリアこそ、どこか痛いところとかはない?」
「あ、そうだった。私ってヘンリー様に切られたんだっけ。でも女神様が治してくれたはず。ほら」
そんなことをミリアは言って手を振って見せた。
普通の人なら何を言っているのだと笑うだろう。だけど僕の大切な人は聖女様だったのだ。女神様の祝福を受けることができた真の聖女。死にかけて女神様のところにいって傷を治してもらったってなんら不思議じゃない。
「ミリア、君は……」
何か言おうとして言葉が出なかった。そこでミリアのお腹がくうと可愛く鳴った。
「えへへ。お腹が空いちゃったみたい。ほら切られたからきっと治すのにお腹が空くんだよ。テオ。今度こそ美味しいものを一杯食べに行こう。私、全然食べ足りないよ!」
ミリアがいつもの調子で話す。
僕の頭は今の状況についていけないけれどミリアが元気そうに笑ってくれるので何もかも良くなってしまった。
「あ、ああ。国中の美味しいものを食べに連れて行ってあげるよ。今度こそ……」
すると僕達を取り囲んでいたモンスター達が静かに立ち去って行っていこうとする。それは不思議な光景だった。
それをミリアが手を振って見送っていた。
ありえない。先程まで獰猛な様子だったのに。冒険者のリーダー達も呆気に囚われて僕達を見ていた。
「モンスターさん達は人間みたいに不要な殺生はしないんだよ。お腹が空いたときだけなんだって。女神様が言ってた」
「モンスターをさん付けするのは多分ミリアだけだよ。はは」
僕は力なく呟いていた。でも、それもミリアだなと思った。
リーダーが近寄って来るのが見えた。いろいろと聞きたそうな顔をしているけれど僕だってどう話していいのか分からないだろう。
ただミリアが僕のところに戻って来た。それだけでいい。
〇 あなたの元へと 後半 私の選んだのは……
「女神様。例え地上に戻って直ぐにモンスターに襲われて死んだとしても最後の時まで私はテオと一緒にいたいです。それが今まで私が生きてきたことだから!」
――そう、今の私はテオや皆が支えてくれたから、それを忘れてやり直すなんてできない。
今の私は今までの私が精一杯頑張って生きてきたその証なのだから。聖女じゃないと言われても聖女として女神様に一心に祈りを捧げていた日々を自分だけは否定したくない。そして、それを見守ってくれていたテオに。
例え待ち受けるのが死しかない絶望の未来でも、私はテオと一緒に最後まで共にいよう。
「そう、あなたは彼を選ぶのね」
「はい。でも最後の時まで好きな人と一緒って、凄くないですか?」
私は女神様に無い胸を張ってみせました。すると何故かまばゆい光の女神様が爆笑したのを感じました。
――何か可笑しかったかしら?
「うふふ。そうね。でも良かったわ。家族を選んで昔に帰りたいなんて言われても流石に私も時間を遡ることはできなかったの」
「まあ、女神様でも嘘をつかれるのですね」
「うふふ。さあ、どうかしらね。じゃあ、それで良いのね。ミリア。テオと仲良くね。体は元に戻しておいてあげるわね。祝福は戻せないけれど」
「はい!」
そうして女神様の祝福の光と共に私は地上に戻ったのだ。愛おしいテオの元へと。
するとモンスター達が一定の距離を開けて僕らを中心に円を描くように取り囲んだ。
「……何だ?」
するとモンスター達は僕らに次々と首を垂れて跪き始めた。こちらを襲ってくる気配はない。
そうしてモンスター達が僕らに向けて頭を垂れたままでいると天空から眩い光が降りてきた。とてつもなく眩しい光。僕らは気がつけば光の洪水のような柱に包まれていた。
すると腕の中のミリアが重みを増したことを感じて慌ててミリアの顔を確認する。
ミリアの瞼が震えるとそっと瞳が開いた。
あの綺麗なスカイブルーの瞳だった。
それは女神様へと続く空の色と同じだと僕は本能的に理解した。
僕の知っているいつものミリアの瞳だった。それが見ることができただけで僕はもう十分だ――。
「……テオ。大丈夫?」
柔らかいミリアの心配そうな声が聞こえてきた。夢じゃない。これは夢ではないんだ。
気がつけば、ボタボタとミリアの顔に僕の涙が流れ落ちていた。
「……本当に、大丈夫なんかじゃないよ。全然大丈夫なんかじゃなかったよ。ミリア。君がいないだけで僕は――、ミリアこそ、どこか痛いところとかはない?」
「あ、そうだった。私ってヘンリー様に切られたんだっけ。でも女神様が治してくれたはず。ほら」
そんなことをミリアは言って手を振って見せた。
普通の人なら何を言っているのだと笑うだろう。だけど僕の大切な人は聖女様だったのだ。女神様の祝福を受けることができた真の聖女。死にかけて女神様のところにいって傷を治してもらったってなんら不思議じゃない。
「ミリア、君は……」
何か言おうとして言葉が出なかった。そこでミリアのお腹がくうと可愛く鳴った。
「えへへ。お腹が空いちゃったみたい。ほら切られたからきっと治すのにお腹が空くんだよ。テオ。今度こそ美味しいものを一杯食べに行こう。私、全然食べ足りないよ!」
ミリアがいつもの調子で話す。
僕の頭は今の状況についていけないけれどミリアが元気そうに笑ってくれるので何もかも良くなってしまった。
「あ、ああ。国中の美味しいものを食べに連れて行ってあげるよ。今度こそ……」
すると僕達を取り囲んでいたモンスター達が静かに立ち去って行っていこうとする。それは不思議な光景だった。
それをミリアが手を振って見送っていた。
ありえない。先程まで獰猛な様子だったのに。冒険者のリーダー達も呆気に囚われて僕達を見ていた。
「モンスターさん達は人間みたいに不要な殺生はしないんだよ。お腹が空いたときだけなんだって。女神様が言ってた」
「モンスターをさん付けするのは多分ミリアだけだよ。はは」
僕は力なく呟いていた。でも、それもミリアだなと思った。
リーダーが近寄って来るのが見えた。いろいろと聞きたそうな顔をしているけれど僕だってどう話していいのか分からないだろう。
ただミリアが僕のところに戻って来た。それだけでいい。
〇 あなたの元へと 後半 私の選んだのは……
「女神様。例え地上に戻って直ぐにモンスターに襲われて死んだとしても最後の時まで私はテオと一緒にいたいです。それが今まで私が生きてきたことだから!」
――そう、今の私はテオや皆が支えてくれたから、それを忘れてやり直すなんてできない。
今の私は今までの私が精一杯頑張って生きてきたその証なのだから。聖女じゃないと言われても聖女として女神様に一心に祈りを捧げていた日々を自分だけは否定したくない。そして、それを見守ってくれていたテオに。
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「そう、あなたは彼を選ぶのね」
「はい。でも最後の時まで好きな人と一緒って、凄くないですか?」
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――何か可笑しかったかしら?
「うふふ。そうね。でも良かったわ。家族を選んで昔に帰りたいなんて言われても流石に私も時間を遡ることはできなかったの」
「まあ、女神様でも嘘をつかれるのですね」
「うふふ。さあ、どうかしらね。じゃあ、それで良いのね。ミリア。テオと仲良くね。体は元に戻しておいてあげるわね。祝福は戻せないけれど」
「はい!」
そうして女神様の祝福の光と共に私は地上に戻ったのだ。愛おしいテオの元へと。
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