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糖度8*ハイスペック彼氏
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「どうやら二人だけで話があるそうですよ。そう言えば、申し遅れましたが私は秘書の相良と申します。以後、お見知り置きを… 」
名刺を渡されて、名前を見る。
秘書課 "相良 大貴(さがら だいき)"さん。
「わ、私、今は名刺持ってなくて…秋葉 ゆかりです」
私からも名刺を渡そうとしたのだが、いつもバッグの中に忍ばせて置くので手元にはなく、一先ず名前だけを名乗った。
「御存知ですから、御安心下さい。副社長をサポートする為に全社員のデータは把握済ですから。それより…」
相良さんは心配そうに副社長室を見たので、私も同じ方向を見る。
二人は何を話しているのだろう?
殴り合いの喧嘩になっていないだろうか?
「義兄弟とは言え、揃って同じ人を好きになるだなんて不運としか言えないですね」
その言葉に対して、私は何も答える事は出来なかった。
相良さんはあの二人の事をどれだけ知っているのだろう?
日下部さんも初めて会った訳ではなさそうだったし・・・。
「秋葉さんは副社長のどこが好きですか?私はすぐ拗ねて可愛らしいところと、見かけによらずインドア派で、経済学の本か経営者の自伝ばっかり読んでるところです」
沈黙の後、突如としてビックリな話題を振ってきた相良さんに驚きもしたが、それよりも顔色一つ変えずに淡々と有澄の好きなところを話すところがおかしくて、思わず笑ってしまった。
「あの人、暇さえあれば自伝ばっかり読んでるんですよ。面白いですよね、でもそんなところが好きです」
何を話しても相良さんの表情は変わらなくて不思議だったが、有澄の事を良く理解してくれていて好印象なんだろうと言う事が分かる。
「秋葉さんの答えを聞いていませんよ?」
「私は一緒に居ると穏やかな気持ちで居られるし、癒されます。日下部さんとは違い、紳士的な対応と笑顔が好きです」
「……そうですか。人それぞれ、感じ方は違うものですね」
・・・・・・ん?
相良さんの返事に間があったのが気になるし、返事の仕方も独特でよく分からない。
「私には副社長も日下部さんも似てると思いますが…」
似てるかなぁ?
日下部さんはガミガミうるさいし、意地悪ばっかり言うし、性格悪いし・・・
有澄は穏やかだし、優しいし、甘えて来て可愛いし・・・。
共通点あるのかな?
「考え込む事ではないと思いますが…秋葉さんは秋葉さんの見方があって、私には私の見方があると言う事です。お互いにしか見せない一面もあるのでしょうね」
「そうですね」
エレベーターの前で立ち話をしていたら、カチャリと副社長室のドアが開いた。
話し合いが終わったのか、日下部さんだけが出て来た。
日下部さんの顔を見ると落ち込んでいる様な疲れている様な顔付きをしていたが、目があった途端に睨まれた。
「秋葉、お前、まだ戻ってなかったのか!」
「す、すみません…今から戻りますぅ」
「私がお引き止めしました。申し訳ありません」
日下部さんに対して、私達二人で深々とお辞儀をして謝った。
不穏な空気が流れている中、顔を上げてエレベーターへと方向転換する。
機嫌の悪そうな日下部さんからは逃げるが勝ちである。
エレベーターよ、早く来てっ!
エレベーターの降下ボタンを連打したって早く来る訳では無いが、日下部さんと一緒に乗るのは危険・・・な気がして思わず連打してしまう。
エレベーターが止まると、端と端に乗り込む。
空気が重い。
日下部さんは壁際を見つめたまま、私は下を向いたまま、終始無言のままでエレベーターが企画開発部の前で止まる。
先に降りた私は深呼吸してから、職場に戻る。
日下部さんはそのまま、何処かに消えた。
「ゆかり、どこ行ってたの?」
「綾美、お疲れ様。ちょっと雑用…」
"副社長室"に行って、プライベートな話をして来ました・・・とは綾美にも言えないな。
有澄と日下部さんが義理の兄弟だと言う事はいつの日か知れ渡る事になるかもしれないが、私からは一切誰にも、綾美にも話さない。
私達だけの秘密だもの。
義理の兄弟だと言う事が知れ渡り、傷つくのは日下部さんだ。
平気な振りをしていても、清算出来ない過去もあるだろう、と私は思う。
詳しくは分からないが、忘年会前にお互いの事を知ったのなら・・・今までは義理の兄弟だと知らずに生きて来た二人。
お互いに葛藤などあっただろう。
「秋葉、配っといて」
突然、日下部さんが来てドサッと私のデスクに置いたと思ったら、目の前には社内報の山。
「日下部さん…」
「何?」
「あっ、いえ、何でもないです…」
日下部さんが戻って来たんだ・・・と思い、返事をする前に名前を呼んでしまっただけ。
社内報を担当しているのが総務課なので、総務課に行ってきただけなのかな?
もしかしたら高橋さんが作ってたりして?
「間違っても高橋が作った訳じゃないぞ。人事部が作ってるから」
「ま、まだ居たんですか?それに何でお見通しなんですか?」
「やっぱり、な。お前の考えそうな事だろ?」
名刺を渡されて、名前を見る。
秘書課 "相良 大貴(さがら だいき)"さん。
「わ、私、今は名刺持ってなくて…秋葉 ゆかりです」
私からも名刺を渡そうとしたのだが、いつもバッグの中に忍ばせて置くので手元にはなく、一先ず名前だけを名乗った。
「御存知ですから、御安心下さい。副社長をサポートする為に全社員のデータは把握済ですから。それより…」
相良さんは心配そうに副社長室を見たので、私も同じ方向を見る。
二人は何を話しているのだろう?
殴り合いの喧嘩になっていないだろうか?
「義兄弟とは言え、揃って同じ人を好きになるだなんて不運としか言えないですね」
その言葉に対して、私は何も答える事は出来なかった。
相良さんはあの二人の事をどれだけ知っているのだろう?
日下部さんも初めて会った訳ではなさそうだったし・・・。
「秋葉さんは副社長のどこが好きですか?私はすぐ拗ねて可愛らしいところと、見かけによらずインドア派で、経済学の本か経営者の自伝ばっかり読んでるところです」
沈黙の後、突如としてビックリな話題を振ってきた相良さんに驚きもしたが、それよりも顔色一つ変えずに淡々と有澄の好きなところを話すところがおかしくて、思わず笑ってしまった。
「あの人、暇さえあれば自伝ばっかり読んでるんですよ。面白いですよね、でもそんなところが好きです」
何を話しても相良さんの表情は変わらなくて不思議だったが、有澄の事を良く理解してくれていて好印象なんだろうと言う事が分かる。
「秋葉さんの答えを聞いていませんよ?」
「私は一緒に居ると穏やかな気持ちで居られるし、癒されます。日下部さんとは違い、紳士的な対応と笑顔が好きです」
「……そうですか。人それぞれ、感じ方は違うものですね」
・・・・・・ん?
相良さんの返事に間があったのが気になるし、返事の仕方も独特でよく分からない。
「私には副社長も日下部さんも似てると思いますが…」
似てるかなぁ?
日下部さんはガミガミうるさいし、意地悪ばっかり言うし、性格悪いし・・・
有澄は穏やかだし、優しいし、甘えて来て可愛いし・・・。
共通点あるのかな?
「考え込む事ではないと思いますが…秋葉さんは秋葉さんの見方があって、私には私の見方があると言う事です。お互いにしか見せない一面もあるのでしょうね」
「そうですね」
エレベーターの前で立ち話をしていたら、カチャリと副社長室のドアが開いた。
話し合いが終わったのか、日下部さんだけが出て来た。
日下部さんの顔を見ると落ち込んでいる様な疲れている様な顔付きをしていたが、目があった途端に睨まれた。
「秋葉、お前、まだ戻ってなかったのか!」
「す、すみません…今から戻りますぅ」
「私がお引き止めしました。申し訳ありません」
日下部さんに対して、私達二人で深々とお辞儀をして謝った。
不穏な空気が流れている中、顔を上げてエレベーターへと方向転換する。
機嫌の悪そうな日下部さんからは逃げるが勝ちである。
エレベーターよ、早く来てっ!
エレベーターの降下ボタンを連打したって早く来る訳では無いが、日下部さんと一緒に乗るのは危険・・・な気がして思わず連打してしまう。
エレベーターが止まると、端と端に乗り込む。
空気が重い。
日下部さんは壁際を見つめたまま、私は下を向いたまま、終始無言のままでエレベーターが企画開発部の前で止まる。
先に降りた私は深呼吸してから、職場に戻る。
日下部さんはそのまま、何処かに消えた。
「ゆかり、どこ行ってたの?」
「綾美、お疲れ様。ちょっと雑用…」
"副社長室"に行って、プライベートな話をして来ました・・・とは綾美にも言えないな。
有澄と日下部さんが義理の兄弟だと言う事はいつの日か知れ渡る事になるかもしれないが、私からは一切誰にも、綾美にも話さない。
私達だけの秘密だもの。
義理の兄弟だと言う事が知れ渡り、傷つくのは日下部さんだ。
平気な振りをしていても、清算出来ない過去もあるだろう、と私は思う。
詳しくは分からないが、忘年会前にお互いの事を知ったのなら・・・今までは義理の兄弟だと知らずに生きて来た二人。
お互いに葛藤などあっただろう。
「秋葉、配っといて」
突然、日下部さんが来てドサッと私のデスクに置いたと思ったら、目の前には社内報の山。
「日下部さん…」
「何?」
「あっ、いえ、何でもないです…」
日下部さんが戻って来たんだ・・・と思い、返事をする前に名前を呼んでしまっただけ。
社内報を担当しているのが総務課なので、総務課に行ってきただけなのかな?
もしかしたら高橋さんが作ってたりして?
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