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糖度9*傷だらけのウェルカムボード

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佐藤さんは素敵なお嫁さんになるでしょう。

挙式は6月かぁ・・・結構、急な感じもするね。

結婚しても辞めたりしないよね?

佐藤さんは大卒で入社したから、日下部さんの2つ歳上で、私にとっては先輩であり、お姉ちゃん的な存在。

企画開発部の先輩の中で一番大切な存在だから、ずっとずっと一緒に仕事をしたいな。

「佐藤さん、後から一緒に総務課に行きましょう。秋葉はさっさと終わらせて、通常の仕事をしなさい」

「はい、分かりました。よろしくお願いします」

嫌な足音が聞こえたと思ったら、真後ろに日下部さんが立っていた。

佐藤さんと一緒に総務課に行くとしたら、結婚関係の事だろうか?

「日下部君はいつもゆかりちゃんを気にしているのよね。ゆかりちゃんは鈍感なのかしら?」

うふふって優しく笑いながら話す佐藤さんに対して、日下部さんは何も語らなかった。

「ずっと二人を見てきたから分かるけど、お互いに信頼仕切ってる感じよね。だから、恋愛には発展しないのかな?影で応援してるんだけどなぁ…日下部君?」

日下部さんの目を見て話していた佐藤さん。

反則でしょうって位に、日下部さんは頬が赤くなり照れている姿は何だか可愛らしい。

「日下部君もゆかりちゃんも入社当時はどちらも初々しくて可愛いらしかった。まさか、こんなにも早くに日下部君が上司になると思わなかったけれど。
企画開発部にはなかなか新人は入らなくて、私にとって初めての後輩だから二人は特別なの。あと残り僅かになるけれど、よろしくね」

"二人は特別"という言葉に喜び、"残り僅か"という言葉に困惑する。

「残り僅かになるって、どういう事ですか?」

言葉の意味を聞き返す。

「それはね…」と佐藤さんが切り出した時、日下部さんが「佐藤さん、今が良いタイミングですから、帰りを待たずに皆に伝えたらどうですか?」とアドバイスをした。

佐藤さんは静かに頷くと、日下部さんが口元だけ微笑んだ様に見えた。

「皆、ちょっとだけ耳を傾けて下さい。佐藤さんからお話があります」

日下部さんが皆に話かけると電話をしている人以外は作業の手を止めて、佐藤さんの方向を見る。

一声で一斉に見る辺り、絶対的な統率力なのだ。

「実は…結婚する事になりまして、もうすぐ妊娠4ヶ月になります。挙式は安定期まで待って6月に予定しています。仕事は8月までになりますので、短い間になりますがよろしくお願いします」

「わぁ、おめでとうございます」
「お祝いしましょう!」

歓声が響く職場に私は驚きを隠せずにいて、気の利いた言葉が出てこない。

佐藤さんが居なくなってしまう寂しい気持ちと祝福してあげたい気持ちも混在している。

「ゆかりちゃん、私は8月で辞めるのよ。彼の東北の実家に一緒に帰ることになって、出産もそっちでするの。しばらくは専業主婦ね」

「佐藤さんが居なくなるなんて嫌です!どうしても帰らなきゃ行けないんですか?」

祝福したいのに、それよりも先に引き止める言葉ばかりが浮かぶ。

「彼の実家が旅館を営んでいて、御両親も私達が継いでくれたらと考えてくれていたから、ちょうど良い機会なの」

「佐藤さぁんっ…!」

「よしよし…」

私は寂しくて悲しくて涙が溢れてしまう。

佐藤さんは天使の様に優しく微笑み、私の背中をさする。

「おめでとうございます…先に言えなくてごめんなさい。佐藤さんが居なくなるって分かったら悲しくて…」

「私も同じだから分かるよ。私だって、本当は辞めたくないもん。出来ることなら、このまま皆と仕事したいのよ…」

佐藤さんも相当我慢していたのか、私の涙が引き金になって一気に涙が溢れ出した。

私よりも、もっと沢山、佐藤さんの方が寂しい思いをしているんだ。

結婚する時って、仕事関係は様々な事情により女性の方が不利になると思う。

今まで正社員で働いていた女性が専業主婦になるって、全く別の職種で働くってどんな感じなのだろう。

私にはまだ想像も出来ないな───・・・・・・

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「…でね、職場の先輩が辞める事になったの。私は凄く憧れてた先輩で泣いちゃった。先輩は凄く仕事が出来る人だったから、会社にとっても損失だよね」

最近では、珍しく早くに帰って来た有澄と一緒に夕食の時間。

有澄のリクエスト、揚げたての唐揚げを箸につまみながら話す。

「佐藤さん…?」

「そうだよ。副社長様は何でも知ってますね」

「相良経由でね。…そのたまに言う副社長様っていうの止めて!今だから言うけど、本当はもっと下積みを重ねてからなりたかったのに…仕方なく先回りしちゃっただけなんだから」

「そうなんだ…ごめんなさい。別に冗談のつもりで言ってただけだからもう言わない」
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