50 / 73
糖度11*戦う女!
3
私はハンカチを強く握り締め、覚悟を決めて話し出す。
有澄はやっと私の方を見てくれて、まだムスッとしている様な表情で頷いた。
「言わなきゃと思っていて、日にちだけが過ぎちゃってたんだけど…女の子の日が来ないの。旅行にぶつかるかなって思って、休みの初日に計画してもらったけど、もう10日近くは遅れてる」
「…えっ…!?」
怒っていた表情が緩んで、驚きを隠せない様子の有澄。
結婚したいって思ってくれてるのかもしれないけれど、"妊娠したかもしれない"は想定外だったよね。
嫌がらせよりも重荷になるなら、言わない方が良かったかな?
けれども、一人で検査薬を試す勇気も無くて・・・有澄にも言い出せなくて・・・。
「月初めなのに帰るって言わないからおかしいなっては思ってた。長い休暇だから、くるまでは俺に合わせて居てくれてるのかな?って勘違いしてた。
男だから、女の子の身体の事は良く知らなくて気づいてあげれなくてごめん…」
肩を抱き寄せられて、頭が有澄の胸板に収まる。
女の子の日が近づく前後は自分のアパートに帰ると約束しているが、ゴールデンウィークの9連休と重なる為、きたら帰ろうと思っていたのだけれど、こなかった為にズルズルと一緒に居たのは確かだ。
「結婚もするつもりだったし、俺は逃げたりしないから。帰ったら検査してみよ?」
頭を優しく撫でられ、いつも通りに戻った有澄に安心して寄りかかる。
「プロポーズは段取り踏んでからとか言っときながら、順序が逆になってしまったらごめん。それから、仕事の事もゆかりの事も…何て言ったら良いのか分からないけど、とにかくごめん」
有澄は一通り謝って、寄りかかっていた私を後ろから抱きしめた。
首筋にチュッと唇が触れる。
「…赤ちゃん、ゆかりに似て可愛い女の子がいいな。男の子だったら、外で沢山遊んであげるんだ」
「分かんないよ、まだ。遅れてるだけかもしれないし…」
「うん、でも、子供がいる未来も想像したら楽しそうだよね」
不安はないのか、目の前の状況を受け入れてくれようとしている有澄に私の心は救われた。
万が一、拒否された時の事を考えたら怖くてどうしようもなかったけれど、有澄が一緒なら結果が陽性だとしても乗り越えられそう。
「子供出来ました、結婚させて下さいって御両親に言ったら殴られるかな?」と有澄が心配しながら言うので、「逆に結婚してくれてありがとうって言うんじゃない?お見合いと孫まごうるさかったし」と言って二人で笑った。
この場所が"副社長室"だという事も忘れて、まるで自宅でくつろいでいるかの様に過ごしてしまった事は反省すべきところだけれど・・・。
笑った後に、有澄は
「…ゆかりが傷つくなら、このまま帰ってもいいし、ほとぼりが冷めるまで休んでもいいんだよ」
と言ってくれたけれど私は・・・。
「さっき、同じ台詞を誰かさんから聞いた気がする。私には有澄がいてくれるから、頑張れるよ」
職場でも日下部さんに同じ様な台詞を言われた。
そうだよ、迷っている暇はないんだ。
「迷惑かけてもいいって言ってくれたから、正々堂々戦うの。逃げたら思う壷だって言ったのは有澄でしょう?それに逃げても、モヤモヤして仕事も手につかないもん…」
「…そっか」
「…ねぇ、有澄。もう戻るから、ぎゅっとしてくれる?」
「うん…」
私は向きを変えて、有澄の胸に顔を埋める様にしてギュッと抱きしめる。
泣き腫らした目が重たくて悲鳴をあげているのに、瞼を閉じるとまた涙が出そうになる。
本当は色々と怖い。
入社して初めての嫌がらせ。
人生初の身体の変化。
「…色々、ありがと。私、前にも言ったけど、デザインの仕事、大好きなの。簡単に諦めるなんてしないよ。
だから…戦って来るね。もう逃げない」
多岐川さんとも戦う、検査が陽性だったとしても受け止める。
赤ちゃんが産まれて、この職場に復帰出来ないとしても自分の思いを貫く場所はきっとあると思うから・・・。
「有澄、ありがと。よしっ、行って来ます!」
そう言って立ち上がろうとしても、有澄が離してくれない。
「…っん、」
口角を上げられて唇が重なる。
唇が離れると、人差し指を立てて「相良には内緒ね!」と言ってから再び、重なる。
有澄の側を離れるのは名残り惜しいけれど、長い時間、職場を離れてしまったので戻らなきゃ。
そう言えば、有澄に抱き抱えられる様に職場を出たんだった・・・。
何とも恥ずかしいし・・・かなり気まづいなぁ。
「一緒に行こうか?」
「……大丈夫、一人で行ける。有澄、本当にありがと!」
職場に戻る決心をして、副社長室を後にした。
エレベーターが到着すると、降りてきたのは相良さんだった。
「相良さん、お疲れ様です。御迷惑おかけしてしまい、申し訳ありません」
すかさずお詫びを述べ、深々と頭を下げる。
「いえ、頭を上げてください。副社長の指示となれば業務ですからご心配なさらず。それより…」
「…はい」
「これは副社長の"知り合い"として聞きたいのですが…。花野井はいつもあんなにベタベタしてくるんですか?」
何を言われるのか、副社長室に長居してしまったからお説教かな?と思い内心ドキドキしていたが、拍子抜けした質問で思わず笑みがこぼれる。
有澄はやっと私の方を見てくれて、まだムスッとしている様な表情で頷いた。
「言わなきゃと思っていて、日にちだけが過ぎちゃってたんだけど…女の子の日が来ないの。旅行にぶつかるかなって思って、休みの初日に計画してもらったけど、もう10日近くは遅れてる」
「…えっ…!?」
怒っていた表情が緩んで、驚きを隠せない様子の有澄。
結婚したいって思ってくれてるのかもしれないけれど、"妊娠したかもしれない"は想定外だったよね。
嫌がらせよりも重荷になるなら、言わない方が良かったかな?
けれども、一人で検査薬を試す勇気も無くて・・・有澄にも言い出せなくて・・・。
「月初めなのに帰るって言わないからおかしいなっては思ってた。長い休暇だから、くるまでは俺に合わせて居てくれてるのかな?って勘違いしてた。
男だから、女の子の身体の事は良く知らなくて気づいてあげれなくてごめん…」
肩を抱き寄せられて、頭が有澄の胸板に収まる。
女の子の日が近づく前後は自分のアパートに帰ると約束しているが、ゴールデンウィークの9連休と重なる為、きたら帰ろうと思っていたのだけれど、こなかった為にズルズルと一緒に居たのは確かだ。
「結婚もするつもりだったし、俺は逃げたりしないから。帰ったら検査してみよ?」
頭を優しく撫でられ、いつも通りに戻った有澄に安心して寄りかかる。
「プロポーズは段取り踏んでからとか言っときながら、順序が逆になってしまったらごめん。それから、仕事の事もゆかりの事も…何て言ったら良いのか分からないけど、とにかくごめん」
有澄は一通り謝って、寄りかかっていた私を後ろから抱きしめた。
首筋にチュッと唇が触れる。
「…赤ちゃん、ゆかりに似て可愛い女の子がいいな。男の子だったら、外で沢山遊んであげるんだ」
「分かんないよ、まだ。遅れてるだけかもしれないし…」
「うん、でも、子供がいる未来も想像したら楽しそうだよね」
不安はないのか、目の前の状況を受け入れてくれようとしている有澄に私の心は救われた。
万が一、拒否された時の事を考えたら怖くてどうしようもなかったけれど、有澄が一緒なら結果が陽性だとしても乗り越えられそう。
「子供出来ました、結婚させて下さいって御両親に言ったら殴られるかな?」と有澄が心配しながら言うので、「逆に結婚してくれてありがとうって言うんじゃない?お見合いと孫まごうるさかったし」と言って二人で笑った。
この場所が"副社長室"だという事も忘れて、まるで自宅でくつろいでいるかの様に過ごしてしまった事は反省すべきところだけれど・・・。
笑った後に、有澄は
「…ゆかりが傷つくなら、このまま帰ってもいいし、ほとぼりが冷めるまで休んでもいいんだよ」
と言ってくれたけれど私は・・・。
「さっき、同じ台詞を誰かさんから聞いた気がする。私には有澄がいてくれるから、頑張れるよ」
職場でも日下部さんに同じ様な台詞を言われた。
そうだよ、迷っている暇はないんだ。
「迷惑かけてもいいって言ってくれたから、正々堂々戦うの。逃げたら思う壷だって言ったのは有澄でしょう?それに逃げても、モヤモヤして仕事も手につかないもん…」
「…そっか」
「…ねぇ、有澄。もう戻るから、ぎゅっとしてくれる?」
「うん…」
私は向きを変えて、有澄の胸に顔を埋める様にしてギュッと抱きしめる。
泣き腫らした目が重たくて悲鳴をあげているのに、瞼を閉じるとまた涙が出そうになる。
本当は色々と怖い。
入社して初めての嫌がらせ。
人生初の身体の変化。
「…色々、ありがと。私、前にも言ったけど、デザインの仕事、大好きなの。簡単に諦めるなんてしないよ。
だから…戦って来るね。もう逃げない」
多岐川さんとも戦う、検査が陽性だったとしても受け止める。
赤ちゃんが産まれて、この職場に復帰出来ないとしても自分の思いを貫く場所はきっとあると思うから・・・。
「有澄、ありがと。よしっ、行って来ます!」
そう言って立ち上がろうとしても、有澄が離してくれない。
「…っん、」
口角を上げられて唇が重なる。
唇が離れると、人差し指を立てて「相良には内緒ね!」と言ってから再び、重なる。
有澄の側を離れるのは名残り惜しいけれど、長い時間、職場を離れてしまったので戻らなきゃ。
そう言えば、有澄に抱き抱えられる様に職場を出たんだった・・・。
何とも恥ずかしいし・・・かなり気まづいなぁ。
「一緒に行こうか?」
「……大丈夫、一人で行ける。有澄、本当にありがと!」
職場に戻る決心をして、副社長室を後にした。
エレベーターが到着すると、降りてきたのは相良さんだった。
「相良さん、お疲れ様です。御迷惑おかけしてしまい、申し訳ありません」
すかさずお詫びを述べ、深々と頭を下げる。
「いえ、頭を上げてください。副社長の指示となれば業務ですからご心配なさらず。それより…」
「…はい」
「これは副社長の"知り合い"として聞きたいのですが…。花野井はいつもあんなにベタベタしてくるんですか?」
何を言われるのか、副社長室に長居してしまったからお説教かな?と思い内心ドキドキしていたが、拍子抜けした質問で思わず笑みがこぼれる。
あなたにおすすめの小説
絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。
孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。
その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。
そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。
同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。
春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。
昔から志穂が近くにいてくれるから……。
しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。
登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。
志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。
彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。
志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。
そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。
その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
✽全28話完結
✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
✽他誌にも掲載中です。
✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。
→表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。
**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密
まさき
恋愛
俺は今、東大院生の実験対象になっている。
ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。
「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。