糖度高めな秘密の密会はいかが?

桜井 響華

文字の大きさ
58 / 73
糖度12*決断すべき、お別れの時

その後はまた気まづい雰囲気になり、お互いに口を開かなかった。

何を話したら良いのか、分からなくなった。

窓の外を眺めていると高層ビルが増えてきて、会社に近付いて来ているのが分かる。

もうそろそろ、お別れ。

「起きろっ!」

「……もう着きました?」

見渡すと駐車場に着いていて、いつの間にか会社に戻って来た様だった。

話が弾まなくてスマホ見ているフリをして、有澄と綾美に『もうすぐ戻るね』ってメッセージを送って・・・その後は記憶がない。

「もうすぐ着くのに寝るなんて、信じられない奴だな!」

「あぁっ、ケーキ忘れてました!」

帰りにケーキ食べさせてくれるって言ってたのに・・・寝てしまった。

「起こしたのに起きないから勝手に選んだ。俺が許すから有澄と一緒に食べて来て」

小さなケーキの箱を目の前に差し出され、車から降ろされた。

日下部さんは会社付近のパティスリーでケーキを購入してくれていたらしい。

良く分からないけれど、「30分だけ行って来て」と言われてコソコソしながら副社長室に向かう。

エレベーターを降りて、通路で誰にも会いませんように・・・!と恐る恐る副社長室の前まで来ると、表札が来客中にはなっていないのでドアをノックする。

部屋の中から「どうぞ」と聞こえたので、ゆっくりと扉を開けると、有澄はデスクワーク中だった。

「さっき帰って来て、ケーキは日下部さんからお土産です。一緒に食べよ。相良さんは居ないの?」

「…おかえり。ありがと。相良は秘書室に居る」

日下部さんから受け取ったケーキの箱を応接テーブルにそっと置く。

デスクワークしていて集中しているのか、ご機嫌斜めなのか、ぶっきらぼうな答え方の有澄。

デスクの前に立って居ても、カチャカチャとキーボードを叩く音しか聞こえず、有澄は私を見ようともしない。

日下部さんと二人で外回り行って来たから、怒ってるの?

「あーりとっ。紅茶入れて来ようか?」

ご機嫌を取るかの様に、有澄の椅子の横まで行って顔を覗き込む。

「……ゆかり…」

有澄は急に立ち上がり、両手を束縛されデスクに押し倒された。

冷たく硬い感触が背中に伝わり、書類やペンが床に散らばる。

有澄に上から見下ろされ、思わず目線を反らす。

「…有澄、怒ってる?」

恐る恐る聞いたが返答はなく、唇を塞がれただけだった。

息も出来ない位の激しいキスの途中で、ブラウスのボタンを外す感触に気付く。

身動きが取れず、いつもとは違う優しさがない強引過ぎる有澄が少し怖くて目から涙がこぼれた。

「……ごめん、考えすぎだった」

右手で口を覆い隠す様にして話す有澄は私から離れて、椅子に座る。

私もゆっくりと上半身を起こし、ブラウスのボタンを止める。

「有澄が心配してる様な事は何もないよ?」

デスクの上に座ったまま、涙をぬぐいながら有澄に微笑む。

「信じてたんだけど…旅行に行った時にゆかりが"日下部さんの跡消して"って言ってたから、今日1日気になって仕方なかったんだ…。本当にごめん」

デスクに突っ伏し、うなだれる有澄。

旅行の日の夜は酔っていて記憶がないのだけれど、今まで隠していた日下部さんとの事を話していたらしい。

有澄は記憶がない私が話した事を聞かなかった事にしようとしていたらしいけれど、気付かぬ内にストレスを抱えていたのだろう。

全部、私が悪いんだ。

隠し事はなしって決めていたのに、私が話そうとしなかったから。

私達の間にわだかまりがあるとしたら、日下部さんとの出来事だったと思う。

「…ずっと前に日下部さんに告白されたの。言わなくてごめん。でも、今日ちゃんとブラコンは卒業するって言って来たよ」

私はデスクの上から降りて、有澄を包むように抱きしめる。

「本当にごめん…」

心配かけてごめんなさい。

「…ゆかりが謝る事なんてないよ。単なる俺のヤキモチだから…」

罪悪感に苛まれた大きな溜息が聞こえる。

私にしてみれば、有澄がこんなにもヤキモチを妬いてくれる事は幸せな事だ。

愛されてるんだな、私。

「…大好きだよ、有澄」

耳元で囁いてから、耳にチュッと軽く唇を触れさせて、

「ケーキ食べよっ」

と言って有澄から離れてソファーに座る。

「……!?い、今のは不意打ち過ぎるでしょ!」

「いつもの不意打ちのお返しっ!」

頬がほんのり赤く染まっている有澄がブツブツと独り言を言っていたが、私は構わずにケーキの箱を開けた。

ベイクドチーズケーキが3個。

スフレの様なふわふわなチーズケーキでもなく、アプリコットジャムが上に塗られているチーズケーキでもなく、ベイクドチーズケーキを選んでくれた辺りが日下部さんが私を見てきてくれた証拠だ。

ベイクドチーズケーキが大好きな事、覚えていてくれたんだ。

日下部さん、ありがとう。

感謝しながらいただきます。

今日の外回りの話をしながら、有澄と一緒にケーキを食べて、あっという間に約束の30分は過ぎてしまった。

ヤキモチ妬いたままなのか、有澄は不服そうだったので、「仕事だからしょうがないじゃん」と反抗したら「分かってるけど!」と言いながらも膨れっ面は変わらず。
感想 1

あなたにおすすめの小説

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
恋愛
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。