糖度高めな秘密の密会はいかが?

桜井 響華

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糖度12*決断すべき、お別れの時

有澄は、私が日下部さんになびいてしまうかもしれないと心配しているらしい。

それはないって何度も言ってるのに・・・困ったもんだ。

゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚

約束の時間30分を少し過ぎて職場に戻ったが、日下部さんはまだ戻って来てなかったらしく、良かったと胸を撫で下ろす。

頂いたサンプル品を綾美に渡し、各部署に回して貰う様にお願いした。

その後はいつも通りの業務に戻り、綾美にも移動の件は聞けないままに退勤時間になった。

車の中で寝てしまったのに、まだ眠い。

残業する程でもないから帰ろうかな・・・と思っていると綾美が話しかけてきた。

「ゆかりに相談があるんだけど…ちょっとだけでもいいから寄り道しない?」

「うん、いいよ。高橋さんは?」

「たまには2人で話したいな!」

これはもしや移動の話では?

いつ切り出されるのかな?と思いながら、駅ビル内にあるコーヒーショップに立ち寄る。

「ゆかり、珍しいね、紅茶飲まないなんて?」

「うん、ちょっと遅れてて…今の所は陰性なんだけど念の為…」

「え?そうだったの!?来ないなら早めに病院行きなよ。もしかしたらもあるかもしれないんだからっ」

紅茶ばかりの私がホットココアを注文したので、綾美は珍しがっている。

あと3日位待っても来なかったら、二週間ちょっと遅れているから今度は病院行こう。

こんなにも遅れているなんて、段々と心配になって来た。

「ちょっと聞いて!高橋君がもしも結婚して子供が出来たら、自分が育休取得するから、綾美さんは自分の仕事を全うして下さいって言ったの!」

綾美がアイスコーヒーを飲みながら話した内容は、私が想像していた物とは違ったので驚く。

け、結婚?子供?

「……いつの間に結婚まで関係が進んだの?」

「将来的には考えてるけど、まだ先だよ。デートの時に佐藤さんの話になって、何となくそんな話になって…その延長上の話がさっきの話なの!」

ムスッとした顔をしながらアイスコーヒーをストローでクルクルとかき混ぜる綾美。

「日下部さんから聞いたかもしれないけど、バイヤーの話が出ていて正直迷ってるんだ。高橋君に先に話したら、さっきの話に繋がったの!ゆかりにも話すつもりでいたけど、高橋君のせいで前後が逆になってごめん!」

綾美が言うには、バイヤーになりたいけれど海外に行けば家を開ける日が多くなるし、自分だって子育てしたいのに!っていう気持ちもあるので葛藤中らしい。

高橋さんは高橋さんで、綾美の夢を叶えてあげたい思いで育休取得する話をしたのは綾美本人も分かっているみたいだけれど・・・納得はいかないらしい。

「綾美は幸せ者だよね。高橋さんと結婚したらきっと上手くいくよ」

「だーかーらぁ、まだ先の話なのっ!バイヤーの話を相談するつもりが変な話になっちゃった」

先の話と言いつつも、ムキになって怒っている綾美が可愛く見える。

仕事は難なくこなすのに恋愛となると不器用な綾美にとって、温厚で包容力のある高橋さんは選ばれるべき王子様。

私は綾美の事が大好きだから、高橋さんなら安心して任せられる。

そして、もう少し先の事だからバイヤーの件はメリットとデメリットを挙げてから、じっくり考える事になった。

綾美には幸せになって欲しいから、どんな決断でも全力で応援するよ。

「……お腹痛いと思ったらやっぱりきた」

帰り際にトイレに寄ると女の子の日になっていた。

綾美とのおしゃべり中に下腹部に痛みを感じていたのでもしかしたら?とは思っていたが、やっぱりだった。

2週間ちょっと遅れてきた女の子の日はいつもよりも痛みが強い様だったが、安心して肩の荷が下りた。

有澄に後から報告しなきゃなぁ・・・。

「あっ!王子発見!改札口付近に居るの違う?」

「…は、恥ずかしいから王子って言うのやめて」

「香坂君、絵本に出てくる王子みたいなんだもん。こないだのゆかりを抱き抱えて連れ去る所、完全に王子以外の何者でもないよ。ほら、行きなよ。また明日ね、今日はありがと!」

トンッて背中を押されて、綾美は別れを告げる。

綾美は電話をしながら人の波の中に消えていった。

きっと高橋さんに電話をしているのだろう。

改札口まで急ぎ足で行ったが、有澄の姿を見失う。

電話してみようかな?と思い、バッグの中からスマホを取り出そうと手を入れた時に私の事を呼ぶ声がした。

「ゆかりの姿が見えた気がして戻って見たら、本当に居たからビックリしたよ」

「今、帰りなの?いつもより早いね」

「杉野さんとお茶するってメッセージあったから、家に着いたら連絡入れようと思ってたんだけど…」

行き交う人の流れの中、偶然に会えるって嬉しい。

嬉し過ぎて、顔がニヤける。

そうだった、嬉しいけれど今日からしばらくは一緒に居れないんだ。

伝えなきゃ!

「あ、あのね、さっき…きてたの。だから、今日は帰るね」

「…そっか。残念な気持ちもあるよね…。でも結婚してからならチャンスはいくらでもあるし…焦らなくてもいいよね?」

「……チャンス?」

「うん、いづれは赤ちゃん欲しいよねって話」

周りに聞こえないようにコソコソと小声で話していたつもりだが、有澄が小悪魔的な笑みを浮かべて顔を覗き込まれたから赤面して立ち止まる。

「ほら、行くよ」って右手を差し出されて、左手を引っ張られる。

怪文書のお陰で私達の仲は公になったので、仕事帰りに堂々と手を繋いでも大丈夫なのかな?

「有澄…誰かに見られたら…」

「別にいいんじゃない?公認の仲だし。そんなんで副社長を解任されるんだったら、こっちから願い下げだよ。俺はゆかりを優先するよ」

さっき、綾美に王子だとからかわれた?せいだろうか?

日に日に有澄のキラキラ王子様オーラが増して見える。

有澄に翻弄されて、ゆでダコ状態な私はきっと酷い顔をしているに違いない。

「ゆかりの体調が大丈夫だったらだけど…ご飯食べて行く?」

「うん、何食べる?」

「駅前に新しく出来たイタリアンに行ってみよっか」

ちょっとお腹は痛いけれど鎮痛剤で何とかして、今日は有澄との時間を大切にしよう。

明日からは1人きり。

食事の後、自宅まで送って貰い、部屋の明かりをつけると急に寂しさが襲って来た。

荷物を取りに来るだけに化していた部屋は静まり返っていて、物悲しい。

冷蔵庫の中身も飲み物位しかなくて、生活感がまるでない。

ソファーに座ってテレビをつけて見ても、つまらない。

ダルいし、お腹痛いし、寂しいし。

早く終わって欲しい。

次の日、いつもより遅めに起きるとドアの外からガサガサと言う音がしたので、不審に思って開けてみると・・・ドアノブにコンビニの袋がかけられていた。

道路を見渡すと有澄の後ろ姿が見えたので、思わず叫んでしまう。

有澄は驚いた表情をして、私の元へと戻って来た。

「おはよ、ゆかり」

「どうしたの?朝早くから…。でも、パンありがと。何にも無かったから助かる!」

「そうかなって気になって来てみたけど、起こしたら悪いと思って袋にメモだけ入れといた」

玄関先に入るなり、朝からパジャマのままで抱きしめられているんですけど!?

夜の寂しい気持ちがどこかに吹き飛んでしまった。

有澄には叶わない───・・・・・・
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