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【番外編】人生で初めて愛おしい人と二人きりで過ごす誕生日(side:一颯)

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───翌朝、目が覚めた時には恵里奈が居なかったので、どこに行ったのだろう?と思い、慌ててしまった。結局、先に起きていた恵里奈がキッチンでお湯を沸かして、コーヒーを入れる準備をしてくれていたのだけれど。不本意ながらも慌てていた俺を見て、恵里奈は笑っていた。

「慌ててる一颯さんって、可愛くて好きです」

「……っるさい、休みのハズなのにお前が居ないと思ったんだよ!」

恥ずかしさを隠すようにコーヒーを飲み、スマホを見る。ウザイ位に朝から、姪っ子や姉の咲希、母や高根沢などから誕生日おめでとうメッセージが届いている。

32歳の誕生日にこんなにメッセージが来るとは思ってもなかったけれど。悪い気はしないか……。

「恵里奈、コレが前に言ってた姪っ子だよ。兄の娘。兄とは少し歳が離れているから、娘は中学生」

自撮りの写真を送って来た姪っ子の写真を見せた。

「可愛い~!先日、お伺いした時には会えなかったから今度会ってみたいな!」

「……単なるマセガキだけどな。俺にとっては依子みたいなもんかな?赤ちゃんの頃から面倒見てるしな」

「よりこちゃんも一颯さんに懐いてますもんね。二人?共に一颯さんが大好きってゆーのが伝わってきますよ。どちらも可愛いなー」

恵里奈はカフェオレを飲みながら、トーストを食べている。可愛いのは俺にとってはお前が一番なんだけれど……。

朝の貴重な一時ひとときはあっという間に過ぎてしまい、出勤する時間になってしまった。玄関先まで見送ってくれた恵里奈に「なるべく早く帰るように努力する」と言って、キスを交わした。

その日は結局、20時を過ぎてしまい、慌てて帰宅する。帰り道で恵里奈に電話をすると何だか周りが騒がしく、嫌な予感がした。

恵里奈の声を聞けただけで疲労が少し回復したような気がする。しかし……まさか、とは思って居たが悪い予感は的中する。玄関の扉を開けると突然のクラッカー音が鳴ったのだ。

「お誕生日おめでとう、一颯君!」
「おめでとう、一颯!」

………絶句。

今日一日、恵里奈の為だけに早く仕事を終わらせて帰ろうと努力して、二人きりで過ごそうとしていたのに……仕打ちとも言える現状に唖然とする。

「一颯さん、おかえりなさい!咲希さんとりんちゃんと一緒に御馳走作ってました!」

キッチンからひょっこりと恵里奈が顔を出した。恵里奈は動じず皿に盛りつけをしていた。凛とは、噂の姪っ子だ。

「お前ら、何で居るんだよ!」

「だって、凛も一颯君の誕生日を祝いたいから、咲希ちゃんに連れて来て貰ったの。……何でぇ?駄目?あー、分かった、一颯君は恵里奈ちゃんとイチャイチャしたりチューしたりしたいから追い出したいんでしょ!」

凛は俺のネクタイを掴み、必死で訴える。

「マセガキめ!あぁ、そうだよ、イチャイチャしたりチューしたりしたいから、食事が済んだら帰れ!」

「つめたぁい!一颯君のえろジジィ!」

「……はいはい、もう何でも良いよ」

凛の頭をグリグリと撫でたら、凛はギュッと抱きついてくる。会話を聞いていた咲希はニヤニヤしていた。当の本人の恵里奈は聞いていないふりをしながら取り皿を並べていたが、顔は真っ赤だった。

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