社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"

桜井 響華

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条件11*彼氏の事情は公表しない事!

現在、私は膝の上の子猫状態。

さっきまでの大人な関係はどこに行ってしまったのか?と不思議に思う程、甘さだけをくれる相良さん。

またからかわれただけなんだ、きっと…そう思い、予感が的中するのもさほど時間はかからなかった。

「相良さんが選んでくれたんですか?」

「…うん。…と言っても店員のオススメから選んだだけだけど…。有澄君が秋葉さんの誕生日プレゼントを買いに行くからって一緒に行ったんだ」

「秋葉さんの誕生日も10月ですよね、確か…」

秋葉さんの誕生日は10月初旬、私は10月下旬。

秋葉さんは一つ年上。

副社長は私と同じ歳だと聞いた。

そう言えば…相良さんって何歳?

今の今まで、聞いた事がなかった。

聞いても教えてくれなさそうだったからスルーしてたけど、親交を深めた今なら聞けそう…。

「相良さんって、おいくつですか?」

「…和奏と同じだよ」

「………同じ?」

「同い年」

キッパリと答えた事に偽りはないだろうから、私の聞き間違いでは無いようだ。

同い年と言うことは・・・25歳。

職場での落ち着き様から、年上だと思っていただけに驚きを隠せない。

以前のデートの時に同い年位に感じられたのも、同等だったからだ。

「職場では冷酷だし、年上に見えるから、誰も近付いてこない。そんな中で和奏に告白されたのは驚いた…」

「…毎日、受付で見かける相良さんは凛としてカッコ良くて、身の程知らずだけど、いつの日か、声をかけようと思ってたんです」

「…少しずつ近付けたらと思って、とりあえずは挨拶から始めたんだ。初恋の人に再会したからって、中学生みたいに内心ドキドキしながら話しかけたりして」

「私達、相思相愛でしたねっ」

「…………」

最終的には無言で終わってしまったけれど、相良さんの本音が聞けて嬉しい。

無言のままだし、先程の副社長の話の時みたいに照れているんだってすぐに分かる。

そんな相良さんの膝の上で、飲みかけの紅茶に手を伸ばして飲む。

冷めてしまったけれど、美味しい。

紅茶を飲みながら、背中に相良さんの温もりを感じていると…玄関のチャイムがなった。

「ちょっと行ってくる…」

相良さんにヒョイっと持ち上げられ、隣側に移動させられる。

お客様がいらっしゃったみたいだから、食器を片付けなくては───……

食器を持ち、キッチンの場所を探り当てる。

キッチンを何となく探し当て見渡せば、広すぎるし、まるでドラマで見たレストランの厨房の様だった。

さすが、花野井家。

この様子だとトイレや浴室も凄そう…!

感動していると聞き覚えのある声がした。

「くるみちゃん、こんにちは。お昼ご飯を一緒に食べよ?」

「秋葉さん!?…えぇっと…」

突然の秋葉さんの登場に戸惑いを隠せずにいると「これから有澄君の部屋の荷物整理するんだって」と相良さんが言った。

勿論の事だけれど副社長も一緒に居て、秋葉さんが持参した手作りのサンドウィッチとおかずのお弁当を四人で食す。

「それじゃ、後は留守番よろしく」

「うん、分かった。またね、胡桃沢さん」

たわいのない会話をし、お弁当を食べ終わり、食器も片付けた後に相良さんは副社長に留守番を頼んでいた。

副社長と秋葉さんに見送られ、強引に荷物と身体を車に乗せられて出発。

泊まりに来たのにどこへ向かっているの?

副社長達が来たから、まさかの強制送還?

「相良さん…私はどこへ……!?」

「…さぁ、どこでしょう?」

意地悪そうに微笑んだ後、行き先と理由を教えてくれた。

社長夫妻が居ない日に副社長達が荷物整理に来る事は以前から決定していた。

普段から家を不在に出来ず、染野さんが居ない日は相良さんが留守番していたらしいけれど、今日は留守番を副社長達に頼んだらしい。

一石二鳥だと相良さんは言っていた。

「たまには息抜きも大切だと思うし、温泉って行った事ないから良いかなって思った」

「いつも突然だから驚きます!言ってくれれば良かったのに!」

いきなりの温泉旅行に驚き、サプライズ過ぎて思考がついて行けません!

「…副社長にとっては実家だけど、俺の実家ではないし、御両親が居ない日に泊まるのは和奏が心苦しいんじゃないかと思っての配慮なんだけど!ホテル泊まるなら、温泉でも良いかなって思ったんだ」

「配慮は有難いんですけど…私はお金ありませんし…」

嬉しいけれど、ギリギリ生活の派遣OLは贅沢出来ないのが本音で、最近では節約を重ねてデート服を買うのが精一杯。

相良さんに出して貰ってばかりじゃ申し訳ないので自分でもお金を出そう、とは常日頃思っているのだけれども、先に支払われたり、断られる事が日々ある。

「勝手に予約したの俺だから全額出す。それに…趣味もないし、和奏に使う位しか使い道がないんだから別にいいじゃん。結婚して子供が居る訳じゃないんだから…。ある程度の貯金もあるし、家庭持ったらもっと節約するよ」

「……相良さんって、結婚…したい人?」

「男だから結婚願望はないけど、いずれは円満な家庭を持てたら良いな、とは思う」

「……ふぅん、そうですか…」

話して行くうちに白熱してしまい、議論の内容がブレてしまっている。

結婚の話にまでなるなんて・・・。

「思春期迎える前には両親が渡米してしまったから、家族が離ればなれにならない様に暮らすのが理想。理想を叶えてくれる誰かが居れば良いんだけど…ね?、和奏?」

運転しながら、サラリと凄い事を言ってのけた相良さんは平然としている。

一瞬、ドキッと胸が高鳴った。

まるでお嫁さんに来る?せみたいな問いかけにズルいと思いながらも、顔は熱を持つ。

相良さんの理想は、当たり前の様で簡単な事ではない。

お互いの信頼性、仕事関係、はたまた子供が出来れば子供自身の事情だってある。

表に出さないだけで、相良さん自身はもっと御両親に甘えたかったのだと思う。

幼き日々は取り戻せはしないから、未来に託したいのだろう。

「…相良さんはマメだし、良い家庭を築けると思います。奥さんになる人は大切にしてもらえますね」

職場での落ち着き様からは想像出来ない程、無邪気な時もあれば、エスコートもしてくれて、二人きりな時は飛び切りの甘さをくれる。

子供に対しても、子煩悩なパパになりそうだ。

「…そんな日が来ると良いけどね」

ボソリと呟いた相良さんは少しだけ微笑んだ。

これから先の未来も相良さんと一緒に歩んで行けたら嬉しいなと心から願う。

窓の外を眺めては未来を想像する。

ずっとずっと、一緒に居られますように───……
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