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息子
「旦那様、落ち着いてください!」
「ルーカスはどこだって聞いた!」
「今、乳母が見てます!落ち着いてください!」
「俺はまだ抱っこしてない!」
「はぁ…後で連れてこさせます…お茶入れるので座ってください…」
背中を押されソファに座るように促された。
「大丈夫なんですか?…」
「だから、ルーカス抱っこしたいんだよ。」
「じゃなくて、昨日までは…」
「あぁ…リアがルーカスを命を懸けて産んでくれたんだ。俺が大切に育てる。」
「!…あぁ…そう…ですね…。そうだよな…。」
ウィルは目を見開いて俺を見た後、すぐ自室から出て行った。
数分して、目元が赤いウィルが戻って来た。
「ん?泣いたのか?」
「…ルーカス様です。寝たばっかりなので、お静かに。」
ウィルは少し俺を睨んで、扉を大きく開けて俺の乳母であり、ウィルの母であるクロエを通した。
クロエの腕には、ルーカスが眠っていた。
「旦那様。腕はこのままにしておいてくださいね。起きてしまいますからね。」
クロエは俺の腕に、ルーカスを渡して部屋を出て行ってしまった。
「…っ…、…ちっさ…ぃなぁ…、おと、…っぅ…さ、まだよっ…、」
片手に収まる小さい息子は、俺の髪色で、魔力量も多かった。
顔を見ていたいのに、涙がかかってしまうから、上を向いたり、横を向いたり、肩で拭ったりしていた。
寝心地が悪かったのか、ルーカスがぅぅって小さく呻いた。
まずいと思った時には、目が開いた。
エミリアの瞳だった。
ルーカスは笑っていた。
18年もの間、恨んでしまっていたことを後悔した。
「ウィル!!起きた!!ルーカス起きた!!」
「そのまま抱っこ続けてください。念願の抱っこですよ。」
「いや、でも、俺、涙が、」
「でも、でも、だっては結構です。ルーカス様もお喜びですよ。」
俺はこの子のお父さん、この子は俺の息子だ。
エミリアが産んでくれた俺たちの宝だ。
「あぁ…可愛い…。ずっと抱っこできる。離れたくない。」
「そんな訳にもいかないでしょう…親バカがすぎます。働いてください。」
「でも…」
「でも、でもだっては--」
ルーカスは1年も経たずに死んだ。
ウィルはルーカスの死因を調べるべきだったと言っていた。
そばで守りたい。
「いや、俺が育てる。」
「はい?」
「俺が育てる。ちゃんと仕事もする。それならいいだろ。」
「できるわけないでしょう?」
「できるできないじゃなくてやるんだよ。」
18年も無駄に生きた。
前回の知識も経験も失敗も全て使って、ルーカスを守る。
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