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第一章
死合わせ
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朝、銃撃音で目が覚める。でもその銃撃音というのは現実のものではなく、何処かの配信切り抜きで時折聞くような耳馴染みのあるものだった。
「…ん、いいよー!GG!ましろちゃん、がんばったね~!」
「………」
朝っぱらからこの人、顔出しでゲーム配信してる。しかも、天使界隈の水色の萌え袖パーカー着て女装してる。なんなんだこの地獄は。
「こんな時間までボイチャありがとね~!それじゃあまたねっ」
テロン、という通話の切断音。
「…あ、いたの?おはよ~。おはようっていうかもう昼だぞガキ。生活リズム破壊砲、ドカーン」
「おじさんの女装を起き抜けで見せられるこっちの身にもなってくださいよ、無敵バリアで防ぎます。無敵です、無敵。」
ヒュプノスに話を聞いてみると、彼はこうして自分と同じネカマの男を釣っているらしい。もっとも彼ほど素材のいい人間はいないため(神格と人間なのでもう比べること自体間違っている)ボイスチェンジャーを使った男か女声を使ってくる男が寄り付いてくる、という話を聞かされた。さっきの“ましろちゃん”も男らしい。
「かわいい低身長の女の子だと思ったら190cmあるゴリゴリの男って、わたしは泣きますけどそんなの」
「人の夢を壊す瞬間って一番楽しいよね~」
「最悪だこの人、いっそ心中で巻き込みたい」
「殺意が無理心中って形で出ることあるんだ」
三つ編みを弄りながら、そういえば、とヒュプノスが零す。
「お兄ちゃんが書き置き残してったよ」
「エッ、見ます。ほんとだ、枕元に。どれどれ…」
『冷蔵庫にサラダチキンがあるから食べなさい、野菜は自分で切ったり千切ること。ドレッシングもある程度買ったからかけて食べるといい』
「お母さん?」
「お父さんって言わないと多分拗ねるよ、タナトスは」
へらりと笑うヒュプノス。それに対して、じとりとした目線を送りつつ、内心で咲う。
なんだか、日常が一気に戻ってきた気がする。
最近、本当に目まぐるしい勢いで色んなことが起きていて、なかなか追いつけない。
ああ、今ってしあわせなのかもしれない。
こんなに、こんなにしあわせでいいんだろうか。
わたしだけこんなにのうのうといきて、しあわせでいて、ほんとうにいいの?
だめだよ。だって、
「遺すことで、生きてくれ」
そうだよ、そうだよ、私だけ幸せになったら、
あの人達はなんて思うんだ?
「…ガキ?なんだよ、急に黙って」
きゅる、きゅるきゅるきゅる。
「………思い、出さなきゃ、遺さなきゃ、だめなんじゃないですか?」
「………お前、目がやばいよ。どしたの」
目?すごく見開いてるとか、そういうことなのかな。わからない。でもなんか、視界がおかしい。カメラのフォーカスモードを弄った時みたいにぼやけたり鮮明になったりを繰り返してる。
それがだんだん、鮮明になっていく。
「あ、あ、おかあさん、おとうさん、やくしさん、ぴーこ、べりー、ゆまちゃん、たけとくん…」
「…ちょ~っとヤバいかな、これ。」
その声がした矢先、頭を掴まれて、
一点を弾かれたような鋭い衝撃が額に走った。
「もしもし。タナトス?見つかった。…こいつで合ってたっぽい。目で分かった。」
こいつが、この御影堂紫苑が。
『追憶の蔵書庫』
「絶対あの女狐がこっち来るじゃん、あー。」
「まだ時間はあるだろう、たまたまあの子供が生き残っていたから、まだ止められる可能性はある」
「そうは言ってもさぁ。」
「こいつ、絶対死なせちゃ駄目なのに死のうとするからね。頑張りなよ、お兄ちゃんも」
「善処する。絶対、ここで止める。」
昏い空間で聞こえる、ばしゃんという水音。
「うふっ、うふふふふふふふふふふ……」
なにか、強大なものが蠢く気配があった。
「…ん、いいよー!GG!ましろちゃん、がんばったね~!」
「………」
朝っぱらからこの人、顔出しでゲーム配信してる。しかも、天使界隈の水色の萌え袖パーカー着て女装してる。なんなんだこの地獄は。
「こんな時間までボイチャありがとね~!それじゃあまたねっ」
テロン、という通話の切断音。
「…あ、いたの?おはよ~。おはようっていうかもう昼だぞガキ。生活リズム破壊砲、ドカーン」
「おじさんの女装を起き抜けで見せられるこっちの身にもなってくださいよ、無敵バリアで防ぎます。無敵です、無敵。」
ヒュプノスに話を聞いてみると、彼はこうして自分と同じネカマの男を釣っているらしい。もっとも彼ほど素材のいい人間はいないため(神格と人間なのでもう比べること自体間違っている)ボイスチェンジャーを使った男か女声を使ってくる男が寄り付いてくる、という話を聞かされた。さっきの“ましろちゃん”も男らしい。
「かわいい低身長の女の子だと思ったら190cmあるゴリゴリの男って、わたしは泣きますけどそんなの」
「人の夢を壊す瞬間って一番楽しいよね~」
「最悪だこの人、いっそ心中で巻き込みたい」
「殺意が無理心中って形で出ることあるんだ」
三つ編みを弄りながら、そういえば、とヒュプノスが零す。
「お兄ちゃんが書き置き残してったよ」
「エッ、見ます。ほんとだ、枕元に。どれどれ…」
『冷蔵庫にサラダチキンがあるから食べなさい、野菜は自分で切ったり千切ること。ドレッシングもある程度買ったからかけて食べるといい』
「お母さん?」
「お父さんって言わないと多分拗ねるよ、タナトスは」
へらりと笑うヒュプノス。それに対して、じとりとした目線を送りつつ、内心で咲う。
なんだか、日常が一気に戻ってきた気がする。
最近、本当に目まぐるしい勢いで色んなことが起きていて、なかなか追いつけない。
ああ、今ってしあわせなのかもしれない。
こんなに、こんなにしあわせでいいんだろうか。
わたしだけこんなにのうのうといきて、しあわせでいて、ほんとうにいいの?
だめだよ。だって、
「遺すことで、生きてくれ」
そうだよ、そうだよ、私だけ幸せになったら、
あの人達はなんて思うんだ?
「…ガキ?なんだよ、急に黙って」
きゅる、きゅるきゅるきゅる。
「………思い、出さなきゃ、遺さなきゃ、だめなんじゃないですか?」
「………お前、目がやばいよ。どしたの」
目?すごく見開いてるとか、そういうことなのかな。わからない。でもなんか、視界がおかしい。カメラのフォーカスモードを弄った時みたいにぼやけたり鮮明になったりを繰り返してる。
それがだんだん、鮮明になっていく。
「あ、あ、おかあさん、おとうさん、やくしさん、ぴーこ、べりー、ゆまちゃん、たけとくん…」
「…ちょ~っとヤバいかな、これ。」
その声がした矢先、頭を掴まれて、
一点を弾かれたような鋭い衝撃が額に走った。
「もしもし。タナトス?見つかった。…こいつで合ってたっぽい。目で分かった。」
こいつが、この御影堂紫苑が。
『追憶の蔵書庫』
「絶対あの女狐がこっち来るじゃん、あー。」
「まだ時間はあるだろう、たまたまあの子供が生き残っていたから、まだ止められる可能性はある」
「そうは言ってもさぁ。」
「こいつ、絶対死なせちゃ駄目なのに死のうとするからね。頑張りなよ、お兄ちゃんも」
「善処する。絶対、ここで止める。」
昏い空間で聞こえる、ばしゃんという水音。
「うふっ、うふふふふふふふふふふ……」
なにか、強大なものが蠢く気配があった。
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